ポケットモンスター 遥かなる高みへ 作:色即是空
シュートスタジアムの観客席。割れんばかりの大歓声と拍手が渦巻く中、ナオは両手で自分の口をぎゅっと押さえ、信じられないものを見るような目でフィールドを見つめていた。
「嘘でしょ……ハッサムが……あの兄貴のハッサムが負けた……!?」
隣に座るシオンも、青ざめた顔で冷や汗を拭いながら、固く握り締めた拳を震わせている。
「アランのキリキザン……あんな一瞬の隙を逃さず、一気に畳みかけるなんて……!」
そのすぐ傍らで、マリアンヌは胸元で両手を合わせ、祈るような切なげな瞳でカグヤの背中を見つめていた。カロスにいた時からずっとハッサムがどれほどチームの精神的支柱であり、カグヤにとってかけがえのない相棒であったかを知っているからこそ、その敗北がもたらす重圧の大きさに胸を痛めていた。
フィールドの中央。カグヤは静かに手元のモンスターボールを握り締め、胸の奥底からこみ上げてくる激しい動揺と喪失感を必死に押し殺していた。
実家で出会い、旅の始まりから今日に至るまで、共に汗を流し、数々の修羅場を乗り越えてきた仲間たち。今、フィールドや控えにいる手持ちのポケモンたちは、幼い頃から共に育ち、絆を紡いできた者ばかりだ。そのメンバーの中で最初に出会った最古参であり、絶対的なエースであるハッサムが倒されたという事実は、胸を抉られるほどの痛みを伴っていた。
(ハッサム……すまない。僕の指示が……いや、お前は最高の戦いをしてくれた……!)
震える指先でボールをそっと撫で、カグヤが唇を噛み締めたその時だった。
カグヤの腰のボールから、カイリューが勝手に出てきたのだ。手負いのカイリューの背中から、今まで以上に熱く、力強い闘気が一気に噴き上がった。
先ほどの激闘で全身に氷の傷痕を負いながらも、カイリューは大きな翼をバサリと羽ばたかせ、仲間の仇を取らんとばかりに鋭い竜の眼光をキリキザンへと据える。
さらに、控えているルカリオとゲッコウガもまた、ボールから飛び出してくる。両者もまたハッサムの敗北に臆するどころか、その背中から受け継いだ闘志を燃え上がらせ、互いの魂を共鳴させるように力強く大地を踏み締めた。
――ハッサムがやられたなら、次は俺たちがやる。アサメタウンから培った絆の深さで、この壁を絶対に穿つ。
言葉はなくとも、ポケモンたちの瞳が交わす強い意志が、カグヤの心に直接流れ込んでくる。
「……みんな……そうだな。下を向いてる暇なんてないか」
カグヤはぐっと顔を上げ、失意の底から再び闘志の炎を全身に宿した。
対するアランは、手元に構えたモンスターボールを静かに見据え、鋭い眼光のなかにさらなる熱量を宿している。
「強いな、カグヤ。お前のハッサムのキレと執念、見事だった。だが、勝負はここからだ!」
アランの力強い号令とともに、フィールドに残されたキリキザンがさらに凄まじい殺気を放ち、冷徹な刃をギラリと光らせる。
これでカグヤの手持ちは、手負いのカイリュー、ルカリオ、ゲッコウガの3体。アランの手持ちもリザードン、キリキザン、ファイアローの3体となり、互いに残された戦力は完全に互角だが、カイリューの消耗度を考えれば、若干アランが有利か。
世界王者の座をかけた準決勝は、アサメタウンからの絆を背負ったポケモンたちが魂の総力をぶつけ合う、真の激闘へと突入していくのだった。
【カグヤ】 【アラン】
ブラッキー ✕――◯ バンギラス
スピアー ◯――✕ バンギラス
スピアー ✕――◯ メタグロス
カイリュー ◯――✕ メタグロス
カイリュー ◯――✕ マニューラ
ハッサム ✕――◯ キリキザン