ポケットモンスター 遥かなる高みへ   作:色即是空

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竜の怒り、鋼を貫く闘気

 

 シュートスタジアムの広大な競技場。真紅のエース・ハッサムが倒れたその熱気が冷めやらぬうちに、カグヤの腰のモンスターボールから勝手に飛び出した手負いのカイリューが、大地を揺るがすほどの重厚な咆哮を轟かせた。

 全身には先ほどのマニューラ戦で負った深い氷の傷痕が刻まれ、その呼吸は荒く乱れている。しかし、その巨大な翼を広げたカイリューの双眸には、仲間の仇を討つという強い決意と、底知れない闘気の炎が燃え盛っていた。

「カイリュー……お前、自ら……!」

 カグヤが息を呑んで相棒を見つめると、カイリューは巨体をわずかに振り返り、力強い鳴き声で主の背中を押すように頷いた。

 その直後、並び立つルカリオとゲッコウガもまた、ボールの束縛を自ら振り解くように飛び出し、カイリューの両脇を固めるように大地をしっかりと踏み締める。ハッサムの敗北という絶望的な痛手を乗り越え、アサメタウンの頃から共に歩んできたポケモンたちの魂が、今ひとつになってアランのキリキザンへと向けられた。

「面白い……! 仲間が倒れた怒りと絆を、その巨体に宿して向かってくるか!」

 アランの口元に不敵な笑みが浮かび、闘志の炎がその瞳の奥でギラリと光る。

 王者の背中を守るキリキザンは、冷徹な刃のような両腕をクロスさせ、微動だにしない絶対的な要塞の構えを崩さない。

 

「いくぞ、カイリュー! その傷だらけの体で無理をさせるが……この一撃にすべてを賭けろ、『ドラゴンクロー』だ!」

 カグヤの叫び声に呼応し、普段は温厚なカイリューの巨大な両腕に鮮烈な竜のエネルギーが極限まで収束した。

 傷ついた肉体とは思えないほどのすさまじい加速で、カイリューの巨体が砲弾のごとくキリキザンめがけて突進していく。

「迎撃する。『アイアンヘッド』だ、キリキザン!」

 アランの冷徹な号令のもと、キリキザンは頭部に硬質な鋼の闘気を纏い、正面から正面へと突き進む。

 ガキィィンッ!! と、シュートスタジアム全体が大きく鳴り響くほどの凄まじい衝撃波が爆発し、周囲の空気が激しく歪んだ。

 互いの巨体と技が真っ向から激突し、一歩も引かない力比べが展開される。カイリューの圧倒的なパワーがキリキザンの鋼の装甲を押し込もうとし、キリキザンはその鋭い刃でカイリューの懐を切り裂こうとせめぎ合う。

 観客席では、ナオとシオンが息を忘れたように見つめ、マリアンヌが祈るように両手を固く握り締めていた。

「押し切るぞ、カイリュー! みんなの想いを乗せて、その壁を穿て……!!」

 カグヤの魂の叫びがフィールドを切り裂き、カイリューの全身からさらなる限界を超えた爆発的なエネルギーが噴き上がった。

 バキバキバキッ! と、キリキザンの周囲を覆っていた鋼の闘気が悲鳴を上げてひび割れていく。圧倒的な耐久力と底知れない執念が、キリキザンの防御を文字通り物理的にねじ伏せていく。

 

「なっ……この満身創痍の状態で、まだこれだけの力を……!」

 アランの表情に初めて焦りの色が走る。しかし、すでに手遅れだった。

 カイリューの渾身の『ドラゴンクロー』がキリキザンの防御を完全に粉砕し、そのまま凄まじい遠心力とともに地面へと叩き伏せる。

 ドゴォォォンッ!! と、競技場の床が大きく陥没し、砂煙と衝撃波が四方に猛烈な勢いで吹き荒れた。

 砂煙がゆっくりと晴れていく中、キリキザンは両目を渦巻き状に変え、ピクリとも動かずに倒れ伏していた。その傍らで、カイリューもまた膝をつきかけながら、荒い息を整えて必死に立ち続けている。

「キリキザン、戦闘不能! カイリューの勝ち!」

 主審の力強い宣言が鳴り響いた瞬間、シュートスタジアムは割れんばかりの大歓声に包まれた。手負いの竜が、王者の鋼をギリギリの極限状態で打ち砕いたのだった。

 




【カグヤ】      【アラン】
ブラッキー ✕――◯ バンギラス
スピアー  ◯――✕ バンギラス
スピアー  ✕――◯ メタグロス
カイリュー ◯――✕ メタグロス
カイリュー ◯――✕ マニューラ
ハッサム  ✕――◯ キリキザン
カイリュー ◯――✕ キリキザン
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