ポケットモンスター 遥かなる高みへ   作:色即是空

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故郷の画面越しに見た夢の続き

 

 カロス地方の静かな田舎町、アサメタウン。

 緑豊かな木々と穏やかな風に包まれたその一軒家のリビングでは、大きなテレビ画面の前に二人の人影と一匹の黄色い相棒がじっと息を呑んで釘付けになっていた。

 

「あっ……! 今の避け方、すごい……!」

 ソファの端で身を乗り出すように声を上げたのは、ハニートーンの美しいロングヘアを揺らすセレナだった。彼女の傍らには、夫であるサトシがどっしりと胡坐をかき、まるで自分がその場で戦っているかのように拳を固く握り締めている。その肩の上では、ピカチュウが「ピッカ……!」と鋭い気迫を宿しながら、画面の向こうで激突するゲッコウガとリザードンの姿を真剣な瞳で見つめていた。

 テレビ画面に映し出されているのは、遠く離れたガラル地方・シュートスタジアムで行われている大一番。一人息子のカグヤが、最強の壁であるアランを相手に繰り広げる準決勝の真っ只中だ。

 少し前、絶対的なエースであるハッサムがキリキザンに敗れ去った瞬間、リビングの空気が一瞬にして凍りついた。サトシは思わず「まっ……マジか……!」と絶句し、セレナも「ハッサムが……」と青ざめて口元を両手で覆った。あのハッサムが倒れたときは本当にどうなることかと思い、画面の向こうの我が子の背中を思わずハラハラと見守っていたのだ。

 

 しかし、そこから流れが変わった。満身創痍のカイリューが自ら飛び出し、圧倒的な執念と根性でキリキザンをギリギリのところで撃破したあの驚異的な奮闘劇。

 サトシは目を輝かせながら、膝を叩いて大きく頷いた。

「すげぇよ……! あのハッサムの敗北で一時はどうなるかと思ったけど、カイリューがあの凄まじい気迫で流れを引き戻したからこそ、あとのルカリオやゲッコウガに繋がったんだ。あのカイリューの踏ん張りこそが、今日のこの勝利を呼び込んだ最大の要因だぜ……!」

 かつて自分がカロスリーグで共に戦い、そして旅立った親愛なる相棒――ゲッコウガの姿や、数々の死闘を思い出させるような熱い戦いぶり。その深い絆のシンクロが、我が子であるカグヤとゲッコウガの間で完璧に昇華されている姿に、父としての胸が熱くならないわけがなかった。

「ふふ、本当にそうね。ハッサムが倒れたときは本当に肝を冷やしたけれど……子どもたちが紡いできた絆は、私たちの想像以上に強くなっていたみたい」

 セレナは優しく微笑みながら、胸元で両手をそっと組み、画面の向こうでボロボロになりながらも立ち続けるカグヤの姿に祈るような視線を送った。アサメタウンという同じ空の下で育ち、旅立っていった我が息子が、今や世界の頂点へと手を伸ばそうとしている。その眩しいほどの成長が、母の胸を温かい感動で満たしていた。

 

 そして――。

 画面の中で水手裏剣がリザードンの炎を両断し、主審がカグヤの勝利を高らかに宣言したその瞬間。

「ピカチュ───ッ!!」

 ピカチュウが両手を突き上げて歓喜の声を響かせ、サトシは「やったぁぁぁぁっ!!」とソファから飛び上がってテレビの前で盛大にガッツポーズを作った。セレナもまた、嬉し涙を少しだけ浮かべながら、満面の笑みで拍手を送る。

「勝った……! カグヤが、アランさんに勝ったぞ……!!」

 テレビの向こうの喧騒と歓声が、このアサメタウンの小さなリビングルームまで温かく伝わってくるようだった。

 故郷で見守る家族の温かい眼差しを受けながら、カグヤの伝説の続きは、いよいよ栄光の決勝戦へと動き出していくのだった。

 

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