ポケットモンスター 遥かなる高みへ 作:色即是空
シュートスタジアムのメインアリーナでは、もう一つの準決勝が静かに、そして圧倒的な熱気の中で幕を閉じようとしていた。
対戦相手のトレーナーが最後の気力を振り絞るように立とうとするが、すでに限界だった。最後の一匹が重い音を立てて戦闘不能となって倒れ伏す。
主審が力強く旗を振り上げ、宣告の声を響かせた。
「リザードン、戦闘不能! 勝者、ダンデ選手! したがって、決勝進出はダンデ選手!」
スタジアムを埋め尽くした観客席から、地鳴りのような歓声と絶叫が爆発した。しかし、その熱狂さえも、勝者である男の圧倒的な存在感の前では霞んで見えるほどだった。
無敗のままここまで駆け上がってきたガラル地方の絶対王者・ダンデは、汗一つかかぬ涼しげな顔つきで、相棒のリザードンの首元をポンと軽く叩いた。
「よくやったな、リザードン。お前のおかげで、また最高のバトルが楽しめそうだ」
「グルァァッ……!」
リザードンが力強く咆哮を上げ、王者の背中を頼もしそうに見上げる。
今大会におけるダンデの戦績は、文字通りの『完全無敗』、そして『全試合圧勝』だった。予選からこの準決勝に至るまで、相手に主導権を一度たりとも渡さず、すべてのポケモンを圧倒的な火力と戦術で文字通りねじ伏せてきたのだ。戦った相手トレーナーたちが口を揃えて「壁ではなく、まるで自然災害のようだった」と評するほどの絶対的な強さ。
控室へと続く選手通路を引き上げながら、ダンデは片手でモンスターボールを軽く放り投げ、鋭い瞳の奥に静かな興奮を宿していた。
「……ふっ。カグヤ、だったか」
ダンデの脳裏に浮かんでいたのは、先ほど別のアリーナで行われていたもう一つの準決勝、アランとの死闘を制した若きトレーナーの姿だ。満身創痍になりながらも、カイリューの執念、ルカリオの波動、そしてゲッコウガとのシンクロを駆使してアランを撃破したその泥臭くも熱い戦いぶりは、王者の心を確実に捉えていた。
「アランを破ってここまで這い上がってきたその気迫、素晴らしいものがある。俺のすべてを受け止めるだけの熱量を、次の決勝の舞台で見せてくれよ……!」
無敗の王者が放つ圧倒的なプレッシャーと、次なる好敵手への純粋な期待が交錯する中、スタジアムの外や街の大型ビジョン前では、3日後に迫った決勝戦を巡って早くも熱狂的な議論が巻き起こっていた。
「おい見たかよ今の試合! ダンデは今大会も一回戦からずっとストレート勝ちだぞ! 相手に攻撃すらほとんどさせねぇんだ、決勝も秒読みで王者の勝ちに決まってるだろ!」
「いや、待てよ! 準決勝のアラン戦のカグヤの粘りを見ただろ!? ハッサムが倒れてからのカイリューの執念、そしてあのゲッコウガのシンクロ……! 満身創痍になっても這い上がる底力は、今大会で一番のドラマだぜ。もしかするともしかするぞ!」
「とはいえ、ダンデの圧倒的な壁を破れるビジョンが湧かねぇよ……。あのリザードンをどうやって攻略するってんだ」
絶対王者ダンデの隙のない完全勝利を信じる声と、アランという最強の壁を血路を開くようにして打ち破ってきたカグヤの奇跡を期待する声が、街のあちこちでぶつかり合う。
世界中の注目が一点に集まる中、無敗の王と、泥まみれになりながらも絆を紡ぎ続ける挑戦者による、運命の決勝戦の幕が上がろうとしていた。