ポケットモンスター 遥かなる高みへ 作:色即是空
ハッサムが過酷な限界を迎え、控室のベッドで静かに休むことになってから数時間。
主力たちが重い空気を受け止める中、マホロバの地でカグヤの仲間となった比較的新しい面々――カメックス、ゾロア、ヒノヤコマ、ウパーの4匹が、控室の片隅で小さな輪を作ってひそひそと話し込んでいた。カグヤにとっては頼もしい後輩たちだが、チームの中ではまだまだ下っ端の彼らにとって、今回の事態はあまりにも衝撃的だった。
『(みんな聞いた……? ハッサム先輩、もうこれ以上は戦えないってさ……)』
甲羅を壁にもたれかけさせ、大きな体を縮こまらせながら、カメックスが不安そうに低い声を漏らす。その傍らで、ウパーがぷるぷるちんまりと尻尾を震わせ、『(うー……)』と心細そうに小さく鳴いた。
『(まさか、あのハッサム先輩がそんなことになるなんて……。マホロバで僕たちが加入したときも、一番かっこいい背中を見せてくれたのにさ……)』
素直な性格のゾロアがしゅんと耳をぺたりと伏せながら焦るように尻尾を揺らす。マホロバの地でカグヤに加わって以来、圧倒的な強さでチームを引っ張るハッサムの背中をずっと眩しく見上げてきただけに、動揺の色は隠せない。
『(くそっ……! 何でだよ、よりによってこんな大一番の直前に……!)』
4匹の中で最も負けず嫌いなヒノヤコマは、地団駄を踏むように鋭いくちばしを鳴らした。マホロバ組の中では誰よりも強気な彼だったが、いざアラン戦やこれまでの激闘を繰り広げたカロス組の戦いぶりを思い返すと、どこか気後れと圧倒的な畏怖の念が胸の奥をよぎる。自分たちが入り込む隙などないのではないかという、言い知れないプレッシャーがそこにはあった。
『ウパ……(ヒノヤコマ……)』
ウパーが小さな体を揺らしながら、おろおろと仲間に視線を巡らせる。
だが、ヒノヤコマは悔しそうに頭を振ると、声を潜めて続けた。
『(……だけどよ、悔しいだけで終わらせるわけにはいかねえよな。ハッサム先輩のためだけじゃねぇ。俺たちはマホロバで右も左もわからなかった新参者なのに、カグヤは俺たちを最初から大切な仲間として受け入れてくれた。あのカロス組の連中だってそう。圧倒的な実力を持ってるくせに、俺たちを一度も見下したりせず、対等な仲間として扱ってくれたんだからな)』
『(そうだよね……。僕たち、まだみんなみたいに上手に戦える自信ないし、怖いけど……でも、カグヤのためにも、みんなのためにも、僕だって何かしたいんだ)』
ウパーの健気な言葉に、ゾロアもキュッと力強く顔を上げた。
『(カメックスの言う通りだ……! 僕たちだって、マホロバでカグヤに拾われてから、ずっと強くなりたいって思ってきたんだ。もし出番が来たら、ハッサム先輩の分まで僕たちの力で思いっきり暴れてやろうよ!)』
『(よしっ、決まりだ!」カメックスが大きな前足で自らの胸をドンと叩く。「ハッサム先輩が安心して休めるように、そしてカグヤが笑顔で世界一になれるように、俺たちも全力でサポートするぞ!)』
絶対的エースの離脱という大きな試練の陰で、マホロバで出会った新しい仲間たちは、先輩たちへのリスペクトとカグヤへの感謝を胸に、熱い闘志を静かに燃え上がらせるのだった。