ポケットモンスター 遥かなる高みへ 作:色即是空
シュートシティの夜空には、決勝戦を告げる巨大なホログラムのカウントダウンが青白く輝いていた。街の喧騒が遠くの波音のように響くなか、宿泊施設の広めの作戦部屋には、張り詰めた緊張感と、それを上回る熱い決意が満ちていた。
カグヤは机の上に広げたノートに、これまでの戦績と対戦相手であるダンデのデータ、そして手持ちたちのコンディションを細かく書き殴っていた。部屋の隅では、タケシが差し入れてくれた栄養剤や特製ケア用品を使い、セレナやサトシがポケモンたちの最終的なメンテナンスを手伝っている。
「……さて、と」
カグヤはペンを置き、じっと自分の手持ちたちが集まる空間へと視線を向けた。
本来であれば、チームの絶対的エースであるハッサムがその中心にいるべきだった。しかし、蓄積疲労の限界を迎えたハッサムは、別室の静かなベッドで深い眠りについている。エースの不在という過酷すぎる現実を前にして、カグヤは一度深く息を吐き出し、自らの心を落ち着かせた。
「みんな、聞いて」
カグヤの低い、しかしハッキリとした声に、部屋の空気がキュッと引き締まる。
作戦部屋に並んだのは、ルカリオ、ゲッコウガ、カイリュー、ジュカイン、スピアー、ブラッキーのカロス組6体だった。ハッサムを除けば、このベテランの6体だけでちょうどパーティーの定員が埋まる。
カロスで培った確固たる絆と、数々の死闘を共に潜り抜けてきた彼らがそのまま最後の舞台の主役になる――誰もがそう確信した空気が部屋を満たした。
「明日の決勝戦……ダンデを相手にするメンバーは、この6体で行くよ」
カグヤが力強く告げると、ルカリオが鋭い波動を揺らし、ゲッコウガが静かに青い瞳を細めた。カイリューは腕を組んで豪快に笑い、ジュカイン、スピアー、ブラッキーもそれぞれのやり方で静かな闘志を肯定のうなり声に変えて返す。相手は公式戦無敗の絶対王者。その圧倒的な火力と最強のリザードンを打ち破るには、この長年培ってきたカロス組の連携が何よりも不可欠だった。
だが、その手持ちたちの列のすぐ後ろには、カメックス、ゾロア、ヒノヤコマ、ウパーの後輩組4体もしっかりと並んで控えていた。彼らは自分たちが直接のメンバーに選ばれなかったことを悟りつつも、どこか誇らしげな、そして引き締まった表情で先輩たちを見上げている。
カグヤはそんな後輩たちの方へとしっかりと視線を向け、真っ直ぐな声で言い放った。
「今回は、このカロス組の6体でダンデさんに挑む。だけどな……だからといって、お前たちの役割が終わったわけじゃない。マホロバからここまで一緒に戦い、泥まみれになりながら僕を支えてくれたお前たちの存在が、間違いなく僕たちの力になっている。控室の裏から、そしてベンチから、僕たちを支えて欲しい」
カグヤの言葉に、カメックスが大きな前足で力強くうなずき、ヒノヤコマが鋭いくちばしを鳴らして炎を散らす。ゾロアは尻尾を誇らしげに振り、ウパーは「うぱーっ!」と精一杯の気合の声を響かせた。
エースの離脱という最大の試練を背負いながらも、カロス組の精鋭たち、そしてマホロバで結ばれた後輩たちの想い――そのすべてを一つに背負い、カグヤとポケモンたちは世界王者の待つ決戦の舞台へと静かに、しかし力強く歩み出そうとしていた。