ポケットモンスター 遥かなる高みへ 作:色即是空
凄まじい衝撃波が霧散したフィールドの中央。砂煙が晴れると、そこには限界を超えた攻防の爪痕が生々しく刻まれていた。
先手を打ったダンデのドラパルトは、スピアーの渾身の「どくづき」による猛毒が全身の血管を駆け巡り、激しい苦痛に身を震わせながらも、鋭い尾を支えにして辛うじてその巨体を立たせていた。
「よくやったな。だが――勝負はここからだ」
ダンデの揺るぎない声が響く。しかし、その王者の瞳に、わずかながらも警戒の色が灯っていた。
対するカグヤのフィールド。スピアーは両手の双針を地面に突き立て、かろうじて全体重を支えている状態だった。ハッサムの不在を埋めるという執念と意地が、その小さな体に気迫と根性の火をともし続けている。
「スピアー……! まだやれるか!?」
「……ジジッ……!」
主人の呼びかけに応えるように、スピアーがカッと複眼を紅く燃え上がらせた。
もうこれ以上は一歩も動けない。それでも、ここで退くわけにはいかない。控室で眠る相棒のため、そして仲間たちのために、スピアーは自らの命を削るような最後の特攻を決意した。
「いけぇっ! 『ミサイルばり』……すべてを出し切れ!」
スピアーの体が最後の光を放ち、無数の鋭い光の針が、まるで豪雨のようにドラパルトへと降り注ぐ。
ドラパルトもまた、残された全ての力を振り絞り、漆黒の「ドラゴンアロー」を放ちながら正面から激突した。
閃光。そして、すべてを押し流すようなすさまじい轟音。
直後、二筋の光が交錯した中央で、スピアーが力尽きたようにパタリと地面に倒れ伏した。その小さな体から闘気がスッと引いていく。
だが、その直後だった。
「なっ……!?」
ダンデの驚愕の声と同時に、これまで微動だにしなかったドラパルトの巨体が大きく揺らぎ、耐えきれないといった様子でガクリと膝をついた。全身を蝕む猛毒のダメージと、スピアーが命を削って放った最後の弾幕が、ついに王者の先鋒のHPを完全に削り切ったのだ。
ドラパルトの目が渦を巻き、ガタリとフィールドに崩れ落ちる。
「ドラパルト、スピアー。両者共に戦闘不能! 」
審判の高らかなコールが、静まり返ったシュートスタジアムに響き渡った。
世界王者の先鋒と、ハッサムの想いを背負ったカグヤの先鋒。互いの意地と執念がぶつかり合った結果は、まさかの両者相打ち。
静寂を破るように、観客席からどよめきと、そして挑戦者の健闘を称えるどよめきに近いざわめきが広がっていく。
「よくやったぞ、スピアー……! 最高の仕事だ!」
カグヤはボールを戻し、倒れ伏した相棒の姿を心の中でしっかりと抱きしめた。
初戦から互いのエース級を削り合う、文字通りの死闘。次なる一手で、王者の牙城に迫るのはどのポケモンか――熱狂の渦は、さらに激しさを増していくのであった。
【カグヤ】 【ダンデ】
スピアー ✕――✕ ドラパルト