ポケットモンスター 遥かなる高みへ 作:色即是空
先鋒同士の壮絶な相打ちによって、シュートスタジアムの空気は一変していた。無敗の王者・ダンデの筆頭級であるドラパルトを、挑戦者カグヤのスピアーが捨て身の猛毒と執念で道連れにしたのだ。観客席のあちこちから、事前の大方の予想を完全に踏みにじる展開に対するどよめきが、どす黒い波のように広がっていく。
「ふっ……大したもんだ、カグヤ。相打ちに持ち込むとはな」
ダンデは微塵も動揺の色を見せず、むしろ一段と愉しげな笑みを浮かべながら、手元で新たなモンスターボールをクルリと回転させた。王者の余裕か、それとも純粋な強者との対峙に昂る戦闘狂の血か。その瞳には熱い炎が灯っている。
対するカグヤは、手元に戻したスピアーのボールをしっかりと握りしめ、静かに、しかし激しく波打つ呼吸を整えた。スピアーが切り拓いてくれたこの「一歩」を、絶対に無駄にはしない。ハッサムの不在を補い、カロス組全員でダンデを破る。
「さぁ、次だ……!」
ダンデの闘志に満ちた号令と同時に、手から光弾が放たれた。
フィールドの中央で眩い閃光が弾け、地面を大きく震わせる重低音と共に姿を現したのは――ガラル地方の豊かな自然そのものを纏う、圧倒的な巨体を誇る草木の王「ゴリランダー」だった。
ゴリランダーが重い両腕で地面を叩きつけた瞬間、スタジアムの人工芝が一瞬にして瑞々しい草花へと書き換えられ、フィールド全体が「グラスフィールド」へと変貌する。足元から湧き上がる生命力が、ゴリランダーの巨体に絶え間ない回復とさらなるパワーの源を与えていく。
「圧倒的なパワーと、毎ターンの回復……厄介な要塞だな。だが、それを正面から切り崩すには、こいつしかいない」
カグヤが力強く視線を向けた先。ダンデのゴリランダーに対抗すべくフィールドへ降り立ったのは、常に冷静に戦局を見据えてきたカロス組の鋭利なナイフ――ジュカインだった。
ジュカインは不敵かつ冷徹な闘気を帯びた眼光で、目の前にそびえ立つ王者の巨木を見据える。
「ほう、ジュカインか。草タイプ同士の真っ向勝負、しかもこちらのグラスフィールドを逆に利用するつもりらしいな」
「草の王を相手にするなら、こっちの誇り高きハンターをぶつけるまでだ。行くぞ、ジュカイン……あの巨木を丸裸にしてやる!」
カグヤの叫びに応えるように、ジュカインが低く鋭い鳴き声を響かせた瞬間、その姿がかき消えた。
グラスフィールドの恩恵を自らの足場に変え、音速の立体機動で翻弄するジュカインと、巨木の丸太をドラムのように叩き鳴らしながら重撃の隙を伺うゴリランダー。
激しい初撃の交錯とともに、フィールドのあちこちで草木が激しく砕け散り、第二陣の戦いは一気に最高潮へと加速していく。ジュカインの鋭いリーフブレードが王者の巨体に肉薄し、静寂を切り裂くような一閃が放たれるのだった。
【カグヤ】 【ダンデ】
スピアー ✕――✕ ドラパルト
ジュカイン ―― ゴリランダー