ポケットモンスター 遥かなる高みへ   作:色即是空

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初ゲット

 新しく着いたアコマシティにて。カグヤは川沿いの道を歩いていた。その目的は、運が良ければ水タイプのポケモンをゲットできればという考えにあった。

 彼の手持ちは、二体とも炎に弱い。かつてのカロスリーグでも、メガリザードンを相手に大苦戦。相性の不利さとパワーに圧倒され、エース二体が抜かれてしまった。その時はゲッコウガが何とかリザードンを止めたものの、今は手持ちを離れている。手持ちのタイプの偏りと弱点を補う事は、上に行くためにも必要な事であった。

 とはいえ、強引にゲットする気は無い。きちんと自分に賛同し、自らの意志で一緒に戦ってくれるのでなければ意味が無い。そんな姿勢だから、カグヤは未だにポケモンをゲットできずにいた。

(せめて、ゲッコウガが居てくれたら……)

 そう思わないでもないが、マホロバ地方の規定で連れてこられないものは仕方が無い。気を取り直して、カグヤはゆっくりとポケモンを探し続けるのであった。

 

 そんなカグヤのもとに、一匹のポケモンが飛び込んでくる。

『ウパーッ!』

 飛び込んで来たのは、ウパー。何かから逃げてきたらしく、震えながら半泣き状態でカグヤにくっついている。

 直後に、モンスターボールを手に持った男が現れる。

「そのポケモンをよこせ」

見た目からしていかにも頭悪そうなその男は、横柄な態度でカグヤに迫る。

「……一応聞くけど、アイツがトレーナーなの?」

『ウパッ、ウパーッ!』

 カグヤの言葉に必死でブンブンと首を横に振るウパー。その様子で、カグヤは大体の事情を察した。

「あー、なるほど。こいつ嫌がってるから、ゲットは諦めたら?」

「うるせえ! 後からしゃしゃり出てくんじゃねえ! 早くよこせっ!」

「そう言われたら、ますます渡せないな」

 男の要求を突っぱねるカグヤ。その言動にますます激昂した男は、完全に標的をカグヤに変更した。

「痛い目見せたるっ。出てこい、ラッタ!」

 男はいきなりラッタを繰り出し、命令を出す。

「行けっ、『必殺前歯』」

 初手から大技で仕留めようとする男。痛い目を見せるどころか、一歩間違えば命の危険でしかない。それでも、男は躊躇無く突撃命令を下し、ラッタも迷うこと無くカグヤに迫る。普段から、こういった荒事に慣れているのだろう。

 半分マサラ人の血が入っているとはいえ、あんなものを食らえばカグヤだってただでは済まない。しかし、ラッタの前歯はカグヤに届かない。カグヤが繰り出したポケモンによって、それはガッチリと止められたからである。子ども相手だからと舐めていた事もあり、思いもしない事態に男はあっけにとられる。

「ハッサム、頼んだ」

『ハッサ!』

 カグヤを守るようにして間に割って入ったハッサムが、ラッタの前歯を鋼鉄の鋏で受け止める。そして、空いているもう一方の鋏でラッタの横っ面を思い切りぶん殴った。思いっきり殴られたラッタは吹っ飛び、男の足元にまで吹っ飛ばされる。

「ラッタ!」

 男が吹っ飛ばされたラッタに声を掛ける。しかし、返答は無い。見れば、ラッタは目を回して完全にダウンしてしまっていた。

「くそっ、覚えてろ!」

 まさか、ハッサムを連れているとは思わなかったのだろう。完全に形勢不利と見た男は、まるで悪役のような捨て台詞を残し、ラッタを回収すると一目散に逃げだしていった。

 

「危なかったな、もう大丈夫だぞ」

 懐でじっとしていたウパーを、そっと水辺に降ろすカグヤ。せっかく水タイプのポケモンをゲットできるチャンスだというのに、彼にはその意思が無さそうに見える。これはカグヤのモットーに関係するのだが、ポケモンのゲットは、あくまでもトレーナーとポケモンの同意があってこそだとカグヤは考えていた。

 昨今では、野生のポケモンにバトルを吹っかけて弱らせて強引にゲットする方法が一般的である。だが、その方法ではポケモンと信頼関係を築くのに時間がかかるし、そもそも強引にゲットしたポケモンが懐くかどうかは別問題である。よほど優れたトレーナーでない限り、信頼関係を築くのは至難の業であり、結局は自分に合わないと捨てる輩が出る始末である。そして実際、捨てられたポケモンが至る所に存在するようになり、問題となっている。

 カグヤに手持ちのポケモンが極端に少ないのも、上記のような考えがあるからであった。だから彼は、ウパーをゲットしようとはせず、逃がすという選択肢をとろうとしたのだ。

『ウパーッ』

 ただ、ウパーはカグヤから離れようとしない。カグヤに身体を引っ付けたまま、懇願するような眼でじっと見つめている。

「……もしかして、一緒に行きたいのか?」

『ウパー、ウパーッ!!』

 カグヤがそう尋ねた瞬間、そうだと言わんばかりにブンブンと首を縦に振るウパー。よほどカグヤの事が気に入ったのだろう。

「分かった。じゃあ、一緒に来い」

 モンスターボールをコツンっと当てると、あっさりとボールに収まるウパー。そしてそのまま、何の障害も無く、簡単にゲットされた。

 あまりゲットらしくないゲットだが、これがカグヤの通常運転。彼は決して無理強いを好まず、ポケモンの気持ちを第一とする。だから、ゲットする機会そのものが少ないものの、それだけにポケモンとの信頼関係が厚く、ハッサムのような従順な戦士が出来上がるのである。

 とはいえ、ウパーは種族として臆病な性質があり、またのんびりした個体が多く、あまりバトルに向いているとは言えない。実際、このウパーも臆病な性格であり、貴重な水・地面の混合タイプであるものの、戦力としては計算しにくかった。

(……まあ、良いか)

 バトルが不向きなら不向きで仕方が無い。カグヤはそう割り切る事にした。とにもかくにも、これがマホロバ地方で最初のポケモンゲットであった。

 




カグヤの手持ちポケモン

●ハッサム

●????

●ウパー
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