ポケットモンスター 遥かなる高みへ 作:色即是空
草木の王・ゴリランダーを鮮やかに撃破したジュカインの快進撃は、シュートスタジアムの空気を完全に挑戦者側のペースへと引き寄せたかに見えた。しかし、無敗の王者の牙城がそれで揺らぐほど甘くはない。ダンデが静かに、だが素早く繰り出せた次の一手――それは、ガラル地方が誇る変幻自在の超高速アタッカー、エースバーンだった。
ゴリランダーとの死闘ですでに体力の限界に達し、荒い息を吐きながら踏みとどまるジュカインの前に、エースバーンが軽やかなステップで降り立つ。
「よくやった、ジュカイン。だが、ここからはスピードの質が違うぜ!」
ダンデの合図と同時に、エースバーンの特性「リベロ」が爆発する。繰り出す技の属性に合わせて自らのタイプを自在に変幻させるその姿は、まさに予測不能の曲者だった。
限界を超えた気迫で「インファイト」を叩き込もうと肉薄したジュカインに対し、エースバーンは紙一重でそのラッシュをかわし、纏う闘気を炎へと変化させて鋭い「かえんボール」を零距離で撃ち抜いた。
凄まじい爆風が吹き荒れ、ジュカインの体が大きく弾き飛ばされてフィールドの端に崩れ落ちる。
「ジュカイン、戦闘不能!」
審判のコールが響く。しかし、倒れ伏したジュカインの瞳には一切の悔いはない。その背中から放たれていた鬼気迫る気迫と、控室の廊下で見守るハッサムの姿、そして仲間たちの魂の熱量は、倒れたジュカインから次なる走者へと確実に受け継がれていた。
「……よくやった、ジュカイン。あとは任せろ」
カグヤが力強くボールを戻し、静かに、しかし底知れない熱を孕んだ瞳で次の一手を送り出す。フィールドに姿を現したのは、漆黒の毛並みを纏った闇夜の番人――ブラッキーだった。
ダンデは怪訝そうに眉をひそめた。ブラッキーといえば、その高い耐久力を活かして「どくどく」でじわじわと毒を盛り、「まもる」を挟みながら相手の体力を削る、いわゆる徹底した耐久・持久戦術の使い手として知られている。現にカグヤのブラッキーも、これまでのバトルで徹底的な耐久戦法で相手を削っていた。王者の陣営も、当然その警戒をして盤面を組み立てている。
しかし、フィールドに降り立ったブラッキーの様子は、これまでのどの試合とも異なっていた。
漆黒の体に纏うオーラは冷徹なまでの静けさではなく、ハッサムの不在を埋め、仲間たちの想いを背負った猛烈なまでの殺気と闘志に満ち溢れている。黄金のリングがギラリと狂気を孕んだ輝きを放ち、ブラッキーは四つ足で低い姿勢のまま、初手から猛然とエースバーンへと襲いかかった。
「なんだ……? ブラッキーが、自ら仕掛けるだと……!?」
予想外の仕掛けに、ダンデの表情から余裕の笑みが消え去った。
「どくどく」を構えて様子見をするどころか、ブラッキーは驚異的な足腰の強さを活かした物理の猛攻と、不意を突く体当たりでエースバーンの懐へと容赦なく飛び込んでいく。普段の堅実な戦法を完全にかなぐり捨てた、泥臭くも狂気じみたアグレッシブな猛撃。
常道の枠を自らブチ破ってきた漆黒の番人の牙が、無敗の王者の計算を根底から狂わせていく。
【カグヤ】 【ダンデ】
スピアー ✕――✕ ドラパルト
ジュカイン ◯――✕ ゴリランダー
ジュカイン ✕――◯ エースバーン
ブラッキー ―― エースバーン