ポケットモンスター 遥かなる高みへ   作:色即是空

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不純なる逆襲、決死の救出劇

 蓄電槽の爆発は、地下広間を支える柱を根こそぎ粉砕した。天井のコンクリートに亀裂が走り、その隙間から地上を流れる運河の水が、滝のような勢いで流れ込み始める。

「クハハ……! 終わりだ! 私の完璧な都市が汚されるなら、すべてを水底に沈めてやる!」

 狂気に駆られた市長は、非常用ハッチから地上へと逃走した。残されたのは、崩落に怯える無数の囚われのポケモンたちと、出口を塞がれたカグヤ一行だけだった。

「……っ、このままじゃみんな溺れちゃう! 兄貴、どうすればいい!?」

 ナオが濁流に足を取られながら叫ぶ。

「ナオ! お前はナエトルと一緒に、あそこのガラス管を全部壊せ! 中のポケモンたちを逃がすんだ!」

 カグヤは迫り来る崩落の瓦礫を、ルカリオの波導で弾き飛ばしながら指示を出す。

「で、でも、僕一人じゃ……」

「お前は俺の弟子だろ! 自分の力を信じろ、そしてナエトルを信じろ!」

 カグヤの怒号に近い激励に、ナオの瞳に火が灯った。

「……分かりました! やるぞ、ナエトル!」

「ナエッ!」

 ナオとナエトルは、押し寄せる水に逆らい、ガラス管の列へと駆け寄った。

「『はっぱカッター』! ピンポイントで接続部を狙え!」

 鋭い葉の刃が次々と装置を切り裂き、囚われていたポケモンたちが解放されていく。だが、浸水は止まらない。水かさはすでに彼らの腰の高さまで達していた。

 

 その時、シオンとシャワーズの前に、再び管理局の警備ドローンが立ち塞がった。それも、自爆覚悟で特攻を仕掛けてくる、プログラムの末路だ。

「シャワーズ、私たちの後ろには解放された子たちがいる……一歩も引いちゃダメ!」

 シオンはシャワーズの背に手を添え、あえて冷徹な「計算」を口にした。

「現在の浸水速度と瓦礫の配置から算出した、私たちの生存率……それは0.1%よ。……でも、その0.1%には、あなたの『勇気』が含まれていないわ!」

 シャワーズが力強く咆哮し、周囲の水を巨大な渦へと変えた。ドローンたちを水流に巻き込み、壁へと叩きつける。

 カグヤはその隙に、ハッサムの『シザークロス』で出口を塞ぐ鉄扉を切り裂いた。

「よし、出口は作った! ナオ、シオン、みんなを連れて外へ走れ!」

「兄貴は!?」

「俺は、まだ残ってるヤツがいないか確認していく! 先に行け!!」

 カグヤはウパーを抱きしめたまま、崩れゆく広間の奥へと逆走した。そこには、エネルギーを吸い尽くされ、動けなくなっている一匹のゼニガメがいた。

「……待たせたな。今、助けてやるぞ」

 カグヤがゼニガメを抱き上げた瞬間、天井の巨大な梁が音を立てて崩落した。

「兄貴ぃぃぃ!!」

 ナオの叫びが響く。土煙と水飛沫が視界を遮り、カグヤの姿が闇に消えた。

 だが、その沈黙を切り裂いたのは、鋭い銀の閃光だった。

 

「――悪いな、うちの『家族』はしぶといんだ」

 土煙の中から現れたのは、ハッサムの硬い殻で守られ、無傷のカグヤだった。その腕にはゼニガメ、そしてスリングの中には安堵して欠伸をするウパー。

「……さあ、脱出だ。ミナモシティの空気を、全部入れ替えてやろうぜ」

 一行は、迫り来る濁流をシャワーズが制御し、ルカリオが道を切り拓き、一丸となって地上への階段を駆け上がった。

 背後で地下施設が完全に水没する轟音が響いたが、彼らの手の中には、確かに温かな「命」が握られていた。

 

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