岸辺露伴は動かない エピソード#EX 三女神 作:アイン_BD’sR
ほんっっっっっっっとに遅れました。待っていてくれた方、お待たせいたしました。
仕事とか仕事とか仕事とかがめちゃくちゃ忙しくて、こんなに遅く……
というわけで第3話です。どうぞお楽しみください。……ちゃんと書けてるか心配だなぁ。
彼女は普段から笑顔を絶やさない優しいウマ娘……
でも……あの日の彼女を見て知ってしまった。
無理矢理作る笑顔……確かにその下には彼女の本当の感情があった……
自分が知っているあの笑顔は仮面……何重にも重ねられた仮面だった。
私はあの日からずっと考えてしまう……
この友情は本物なのか……それとも…………
……それでも、私は信じたい。
例えその友情がただの上っ面でも……
貴女をずっと見ていたのは……ずっと関わっていたのは……ずっと信じていたのは……
……私なんだ。
「じ、自分が……あの『チームスピカ』に……!?……っとと。」
「この僕がいる間だけどな。ま……体験みたいなもんさ。」
昼飯を持って現れた彼女……『アハラクローバー』は手に持っているおにぎりを落としかけながら驚く。
この事については昨晩泊まる部屋を案内されている時に提案しておいた。協力関係になったチームスピカと素早い連絡が取れるようにな。
昨日は反対していたあのトレーナー……アハラの話をしたら結構乗り気だったけどな。
昨日約束した昼休みの話し合い……場所を指定していなかったが、スピカのトレーナーから彼女の担任まで繋いで貰いなんとかなった。
そんなトライだが、「チームスピカって言ったら……あのサイレンススズカさんやトウカイテイオーさん………他にも………」とブツブツ……トレーニングの相談の事など忘れて独り言を言っている。元々チームスピカに興味があったのか。……なら何故入らない?
「……それで『トライポケット』も一緒に参加させる事になったんだが、奴………彼女は今どこにいる?」
「あ……っ。えっと、それが……ですね。」
アハラの様子が突然変わる。テンションが上がり喜んでいた様子から一転して暗い表情を見せる。ウマ娘特有の耳も先程までピコピコと激しく動かしていたのに突然垂れてしまっている。
……『ウマ娘』というものは感情がわかりやすい。ヒトとは違いウマ耳や尻尾があるからな。そういうところが良いところと考えている人が多いが、この僕からしたら明らかな欠点だと思う。
「ハァ……『トライポケットは昨日から帰って来てない』『学校にも登校していない』……ってとこか?」
「えっ……!?な、なんで!?」
「そんなもん見ていればわかる。」
あまりにわかりやすい謎解きや伏線は読者からも好まれないからな。
感情が表に出やすいという事は嘘や隠し事が難しい……だけじゃあない。考えを読まれてしまうのだ。尤もそんなウマ娘ばかりでは無い事はわかっている。しかし、ヒトやウマ娘……いや全ての生物において考えが読まれてしまうということは致命的な欠点だ。相手がヒトのような考えを読むことに優れて、それを利用しようとするなら尚更だ。
……ひとまずこの事は置いといて、問題は『トライポケット』だな。
「帰って来てない……か。となると昨日の僕と話す前までは確認していたんだよな?どんな様子だった?」
「……はい。露伴先せ……トレーナーに会う前に教室で別れました。その時以降は一度も見ていません。特に変わった事は無いようないつも通りのトライでしたよ。」
「ふむ……」
正直厄介だ。その行動が『トライポケット』のものなのか……それとも『アイツ』のものなのか……判断する情報があまりにも無い。
そしてそれが『トライポケット』ならまだしも『アイツ』だとしたら……目的でさえ見当も付かないな。
……いや、もしも……が僕の事を……しているなら……?
「露伴トレーナー……トライは一体どうしたんですか……?最近様子がおかしくて……何回か聞いてみたんですけど『なんでもない』ばかりで……」
「…‥………」
「ろ、露伴トレーナー……?聞いてますか……?」
「ン?あぁ……すまないな。ちょいと考え事をしていた。気にしないでくれ。」
彼女もやはり心配している様だな。流石に『アイツ』の事には感づいてないようだが、時間の問題だろう。
腕時計を見ると彼女と話し始めてから30分は経っていた。あと少しで予鈴がなる時間だろう。
さて……やるべき事をさっさと終わらせて彼女を教室に帰さないとこの僕が怒られちまう。あの子供理事長に色々言われるのは面倒だしな。
「……もうこんな時間か。そろそろ教室に戻る時間じゃあないか?」
「あ……!本当ですね。それじゃあまた放課後に。」
「授業に遅れるんじゃあないぞ!結構ギリギリなんだ。」
ベンチを立つアハラクローバーに向かってそう言う。その手に帰りの交通費は支給されると言われ学校で購入した昼飯代わりのジュースと『Gペン』を持ちながら。
「……?ギリギリってまだ時間に余裕は……
「『ヘブンズ・ドアー』悪いな。少しだけ見せてもらうぜ?」
「……!!これ……は……?」
アハラクローバーの顔が本になりその勢いでパラパラッとページが捲れる。『ヘブンズ・ドアー』によって倒れる彼女を支えながら、その本に変えられた顔を捲り目的のページを探す。
流石に先程言っていた発言が真実なのか確かめる時間を考えると……そう、かなり『ギリギリ』だな。
「……さて。それ以外の所を見ている時間は無いしな。それに他の人に見られたらまずい。昨日のページだけ見させてもらおう。」
…………結果として嘘は無かった。彼女が言っていたことは全て事実であり、隠してる事も無かった。予想外の事は起きていたがな。
ダンッ……ダンッ……
あの後記憶を消したトライポケットは不思議そうな顔をしながらこちらを見つつ、急いで教室に戻った。まあ、当たり前か。いつの間にか時間が飛んでいるんだからな。
ダンッ……!ダンッ……!
そして放課後までにあの子供理事長に会って宿泊場所を相談しておきたかったが、こんな時に限って用事があり外出中とは…………まあいい。昨晩使った教室で寝泊まりをしていいと理事長秘書に言われたから問題は無いな。ちゃあんと鍵も貰えたしな。
ダンッ……!!ダンッ……!!
……さてそんな僕が今何をしているかと言うと。
「ろ、露伴トレーナー……これ、本当に意味があるんですか……?」
「……フン!あくまで僕なりのトレーニングなんだ。この僕の事を信じれないのなら、今すぐに中断してあのスピカのトレーナーの所に行けばいいじゃあないか。」
「そ、そんな言い方……しないでーーっ!」
彼女には全身に重りを着けさせて走らせている。……簡単に言えば、『ドラゴンボールZ』の修行みたいな感じだな。妙に大きい音はそのせいだろう。
この僕はトレーニングの事なんて分からない素人だからな。最初はスピカのトレーナーに任せようとしたさ。
だが、『アハラクローバーに足りないものは単なるトレーニングでは身に付かないと俺は思っている。露伴トレーナーが思った事をやらせてやってくれ。』と言われてな。
「ひぃ……ひぃ……と、トレーナー……この重りどのくらい……あるんですか……?」
「ン?そうだな。君達ウマ娘は普通のヒトよりも力が強いんだ。並の重さでは無いことだけは言っておこう。」
「いくら……なんでも……この重さは……ハァ…ハァ……規格外……だよぉ……」
……あの重りは実際なんて事ない普通の重りだ。それをウマ娘がキツくなるくらい装備するとなると、どんなに小さなものでも走りに支障が出るくらいの量になるだろう。
だから彼女にはこの僕の能力を使った。『ヘブンズ・ドアー』によってその重りは『20倍の重さ』へと感じられる。以前あのクソッタレ仗助に『後方へ飛ぶ』ように書いてそのまま飛んでいった様に、その負荷は本物になる。あまりにもブッ飛んだ内容だと不可能だがな。
「アハラクローバー…だいじょうぶ?そこまで重そうには見えないけど……その重りってそんなに重いの?」
「と、トウカイテイオーさん……!いえいえ!!これくらいなんでもありませんよ!!」
「ふーん?そうなの?結構汗かいていているし……」
「もしよろしければ私達も一緒に走りませんこと?それなら様子も見れて安心ですわ。」
「メジロマックイーンさんまで……!ありがとうございます!!」
「よっしゃー!それじゃあアタシの後に続けー!」
「ちょっ……ゴールドシップ!?ターフの上でセグウェイに乗らないで下さいまし!?」
……彼女もちゃんとトレーニングをしてくれている様だしな。一旦トレーナー室に行かせてもらおうか。昨日から約1日、あのトレーナー……色々と調べてくれているらしいからな。
『トライポケット』の走る様子を少し見て問題がないと思った僕はトレーナー室へ「オラオラ!!ゴルシちゃん号の本領発揮見せてやるぜー!!」………トレーナー室へ向かった。
「それで、何か分かったことでもあったのか?トレーナーにスペシャルウィーク?」
「……そうだな。正直に言おう……何も分からなかった!」
「そうか。それなら集めた情報でも聞くか。」
「オイオイ……もう少しいい反応してくれよ。」
そう言いながら頭を掻くトレーナーとその隣にいるスペシャルウィークを前にドカッと椅子に座る。
僕が着席した事を確認したトレーナーはテーブルに置いてある資料を手に話し始めた。
「トライポケット………8月9日生まれのウマ娘。中等部でスペ、お前と同い年だな。」
「はい。私とは違うクラスですが、同じ転入生で私より後の方に入学しましたね。クラスのアハラクローバーさんと同室で仲がいいのですが、最近は一緒にいる所をあまり見ないです。」
「ありがとなスペ。基本的な情報はこんな感じだ。レースについては露伴トレーナー……あんたも知ってるだろうが、復帰レース前までは戦績は微妙だった。しかし……」
「復帰後は圧倒的な力を身に付け、連戦連勝の負け無し……だな?」
きっとレースの事を思い出したのだろう。スペシャルウィークが僅かに震え、ウマ耳を垂らす。しかしその目は以前見た覚悟を決めた目のままであり、その様子に何処か僕の親友を重ねてしまう。
僕の言葉に頷いたスピカのトレーナーは先程とは違う別の資料を手に持ち再び話し始める。
「次に……俺とスペがトライポケットに関わったヒトとウマ娘に片っ端から話を聞いてきた。流石に今日だけじゃ時間が無いからまだ全員ってわけじゃ無いけどな。」
「まずはレース関係だ。トライポケットとレースを走ったウマ娘全員に会ってきた。そこで聞けたのは……
『レース中に話しかけられる事なんて無かったし、彼女がおかしくなる事も無かった。』
……って事だけだ。それ以外の情報は無いと言っていい。」
「……フム。それで?他はどうだった。」
「そうだな。彼女自身についての情報は無かった。普通のいつも通りのトライポケットだと。そして昨日の放課後に図書室で見たという情報から今の今まで誰も彼女の姿を見てないらしいな。」
……何も分からなくてもしょうがない様な情報だな。ほぼ無いといってもいいんじゃあないのか?これはまだ聞けていない関係者に賭けるしかないな……尤もそいつらも情報を持っているとは限らないけどな。
①『アイツ』は何が目的でこの僕を屋上から落としたのか……
②何故『アイツ』はスペシャルウィークに話しかけたのか……
③そして何故今『アイツ』は姿を現さないのか……
今考えるべきなのはこの3つだな。さて……どれから手をつければいいのか。
「あと最後に1つ。スペ、お前の母親から手紙だ。一応お前がトライポケットの事を調べると連絡したらな、昨日の今日で送ってきたんだ。」
「お、お母ちゃんが……!?どうして……?」
「………待てッ!それはまさか……トライポケットの……『アイツ』についての内容なのかッ!?」
「あ、あぁ……そう聞いてる。何か知っている事があったらしい……な。」
その事を聞いて真っ先に思い出した事……それは吉良吉影の「バイツァ・ダスト」だった。
「わかった……わかったぞ……」
「『アイツ』がこの僕を殺そうとした事とスペシャルウィークに話しかけた事……ずっと別物の謎だと思っていた……だがそれは違ったんだッ!!」
川尻隼人はあの事件の後詳しく話してくれた。
『バイツァ・ダストは吉良吉影の正体を探ろうと仕掛けた人に話しかけたり質問したら発動する爆弾なんです。』
『アイツ』は『同じ』………吉良吉影と『同じ』なんだッ!!奴の狙いは……
「自分を探ろうとしている者達の排除なのかッ!!」
「……なんだとっ!?」
「そ、それじゃあこの手紙……一体何が……?」
スペシャルウィークが震える手で封筒を開けようとする。『アイツ』の話しかけた言葉も漸くわかった。あれは警告だったんだ。「貴女はその手紙を見てはいけない。」と警告していたんだ。
そして、そこまでして見られたくない内容であることもわかった。それはとても重要な内容だと……
封筒の縁を手でビリッと破き始める。中の手紙まで破かないようゆっくりと……しかしその手は止まる。止められてしまった。
突然叩かれる鉄の扉によって。
「いやー!疲れた疲れた!!早くアレ飲みたいぜ!」
「何よあんた……元気いっぱいに疲れたって矛盾だらけじゃない……しかもアレって麦茶のことでしょ?カッコつけて……」
「うるせーな!いいだろ別に!!」
「ねーねーマックイーン!アハラ凄かったね!」
「ええ……!あのスタミナには目を見張るものがありますわ!!私達より前から走っていましたのにまだ走っているのなんて……!」
「うんうん!ゴルシも凄いと思わない?」
「アタシのゴルシちゃん号の方が先にリタイアするとは……まさかヤツは永久エネルギーのアンドロイド……!?」
「……あら?スペちゃん……それにトレーナーさんと露伴さん……でしたか?どうしたの……?固まって……」
「……び」
「「「「「「び?」」」」」」
「びっくりさせんなよ!!!お前らぁぁぁぁぁぁ!!!」
「…………ふきゅぅ」
「スペちゃん!?」
どうやらトレーニングから帰ってきただけっぽいな。……オイオイ、スペシャルウィークのやつ変な声出しながら倒れちまったぞ?
…………何か違和感がある。アハラクローバーが今ここに居ないのはわかっている。トウカイテイオーも言っていた通り『まだトレーニング中』なんだろう。だからそこではない……しかし、何か嫌な予感が……
『露伴トレーナー……トライは一体どうしたんですか……?最近様子がおかしくて……何回か聞いてみたんですけど『なんでもない』ばかりで……』
「………まさか」
もし、その『聞いてみた』が『アイツ』を探っていると捉えられたら……?そうなれば『アイツ』が昨日からその姿を見せないのも理由ができる……
もし『アイツ』がアハラクローバーが1人になった瞬間を『この失踪したタイミング』で狙っていたとしたら……ッ!
夕焼けが辺りを紅く照らす頃。様々な物から出る影が1日の中で一番長く伸び、そしてそれが暗闇に飲まれ消え始める頃。
2人のウマ娘はそこに立っていた。
「………トライ?どこにいたの?昨日からずっと探していたんだよ!?」
「……………」
「ど、どうしたの?トライ……?大丈夫?何かあったの……?」
「……………………」
「少し前から様子がおかしかったけど……今回も同じなの……?まるで………
何か悪いものに取り憑かれているみたいな……」
その言葉を聞いた瞬間に銀の長髪が揺れ、表情に笑みが浮かぶ。しかし普段の表情と……見知っている表情と正反対のように歪む。歪み。歪み。歪みきり、それは見たことのないであろう……彼女が絶対に見せないでろう……恐ろしい『笑顔』だった。
「「「……………フフ」」」
「と、トライ……!?一体どうしちゃったの……!?」
夕日に照らされるトライポケットから伸びる影にはウマ耳が『何十個』も付いていた。
………いたッ!アハラクローバーと恐らく『アイツ』がッ!!しかもアハラは奴が何をする気なのか気づいていないだろう……『アイツ』が歩いてくるのに棒立ちだ……このままだと『始末』されてしまうッ!!
「間に合うか……ッ!?『ヘブンズ・ドアー』!!」
「お前はそこで『動けなくなる』ッ!!!」
「「「……っ…………フフフ」」」
やはりダメか……ッ!文字を書き込んだ衝撃で少し止まったが再び動き出したッ!!以前考えた通り日本語が通じない。『アイツ』の文字は見たことのないものだった。それは恐らくどんな言語も当てはまらないものだろう。
つまりコイツには何語だろうと意味が通じない……つまりこの僕の『ヘブンズ・ドアー』が通用しないッ!!!
「露伴……トレーナー……!?」
「アハラッ!!このトライポケットはお前の知っているトライポケットじゃあない!!何かに取り憑かれている。そしてお前を襲うッ!!ひとまず逃げろッ!!」
「でも!露伴トレーナーは!?」
『アイツ』がこの僕に気づくと進行方向を変える。抵抗手段の持たない『アハラクローバー』より『ヘブンズ・ドアー』という幽波紋を持つ僕を先に消すつもりなのだろう。
心配そうにこちらを見るアハラを横目に、あの時と同じくこちらも笑みを浮かべる。
「アハラ……!詳しい事は後で話すが……今はアイツを止める手段が一切無いッ!!お前が考えるんだッ!!ここは僕に任せてアイツを止める手段を考えろッ!!!」
「と、止める手段……!?自分が……!?」
アハラクローバーは少し名の売れたウマ娘とそのトレーナーの後輩から生まれたウマ娘である。母親のウマ娘は事故により自身のトレーナーを亡くし、そのショックから引退をした。そして娘の名前には不幸が起こらない幸福の証『クローバー』を娘自身の決められていた名前『アハラ』とくっつけて『アハラクローバー』となった。
母親のトレーナーが事故に遭った事から気まずさも含め母親は友人のウマ娘とも会わなくなっていった。そのせいか、アハラクローバーは自分と母親以外のウマ娘に会うことが無かったのである。彼女が小学生中学年になるまでは……
『今日からみんなの仲間になります『トライポケット』ちゃんですよ。ささ……挨拶してね。』
『はい、トライポケットといいます。よろしくおねがいします。』
そんな彼女が初めて出会ったウマ娘……それが『トライポケット』だった。
学校にも少なかったウマ娘が同じクラスに転校してきたので自然と話すようになり、どんどんと仲が良くなっていった。
そして親友とも呼べる程にまで親しくなったのである。
ある日の体育の時間、アハラクローバーとトライポケットはウマ娘という事もあり2人で競走をする事となった。アハラクローバーは母親としか走った事が無い為とても楽しみにしていた。
しかし、そこでアハラクローバーが見たものは『自分よりも自分の母親よりも圧倒的に速いトライポケットの姿』だった。そして走り終えた後のトライポケットが見せた清々しい『笑顔』だった。
アハラクローバーはとても不思議に思った。勿論彼女自身も走る事は好きだし、母親とよく走っていた。しかし彼女はどうして走ったことでそこまで喜べるのか。
『ねーねートライ?なんであんなにうれしそうにしていたの?そんなに走るのが大好きなの?』
『……違うよ。わたしはーーーーーーーー
トライポケットはこの瞬間、アハラクローバーに寄せる思いが友情から憧れに変わっていった。ウマ娘としての本能が彼女に初めて憧れを覚えさせたのである。
『でもその時見せた笑顔も偽物かもしれない』
「………そんなことはない!トライはあんなに綺麗な笑顔をしていたんだから……あんなに素敵な夢を持っていたんだから……」
『それはあの時と同じだろう?苦痛に歪んだ顔を無理矢理笑顔に書き換えていた時と』
「あの時はきっと……トライも辛かったんだ……だから自分にも隠して……」
『ならなんで隠していたんだ?親友……じゃあなかったのか?信用されていないんじゃあないのか?』
「違う……違う……!」
『ほら貴女の漸くできたトレーナーもその何かに殺される。貴女が憧れたトライがトレーナーを殺すんだ。貴女が何も行動しないせいで……』
「やめて……やめてよ……」
『貴女は何がしたいんだ?トライが自殺しようとした時も岸辺露伴。トライを探そうとする時も岸辺露伴。トライから逃げようとする時も岸辺露伴。貴女自身は何がしたいんだ?』
『……貴女自身は何を求めるんだ?』
「自分が………欲しいもの……?」
「…………トライを助けたい。……トライを助ける力が欲しい……!あの何かからトライに手を伸ばしたいッ!!」
「………………けど自分にできることなんて。」
『できる。』
「……え?」
『貴女にはもう既に力がある。貴女はもう既にその力を……私を手にしているッ!!さぁ……叫べッ!私の……名前を……ッ!!』
「名前……あなたの名前は………ッ!」
「『DA2U………!!!!』」
「……っく。ヤバイな……」
「「「「………キャッハハハハハッ!」」」」
後ろを見ながら走って逃げているが、相手はウマ娘……僕も筋トレや運動はかなりしている方だが、距離がどんどん近くなっていく。この場で『アイツ』を止められる手段を持つ可能性があるのはアハラだけ……昨日の夕方何故か拾っていた『あの矢』を持つ彼女だけなんだッ!!
「くそ……ッ!まだなのかッ!?まだ彼女は発現しないのかッ!?」
アハラクローバーを逃した方向を見る。が、そこに彼女は居ない。どこか安全な所に下がったか、それとも………
そんな事を考えながら再びトライポケット……『アイツ』の方を見る。逆光のせいかあまり見えないが、彼女の脚は弱まる事を知らず距離を縮めていく。沈み行く太陽を背中に浴びながらこちらに走ってくる様子は……
どこか新たな力を感じた。
「露伴トレーナーーーーーーッ!!!」
太陽が沈み切りほんの少し赤い空の下彼女は走っていた。岸辺露伴を目指して、届きもしないレースに勝ったトライを追い越して、その肩に乗った小さな『何か』と共に……
………『アハラクローバー』は走っていた。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
本来なら戦闘終了まで書こうと思ってたんですけど、キリが良かったのとそれやると後2週間くらいかかりそうだったので……
今回はかなり謎が解けてきましたね。まだまだ残っていますが、考えるの大変だった……
アハラクローバーもとうとうスタンドを出しましたよ。よかった……出せて……
元ネタに気づけた人はどれくらいいるのでしょうかね?ぜひ考えてみてください。『DA2U』は略語ですよ。
あと、最後に走ってくるアハラはアプリのウマ娘からガチャ演出です。……わかるかな?ガチャで初めて出たキャラが走ってくる奴ですよ。
そんなわけで第3話でした。後これで漸く半分くらいかな?長い……
それではまた次回!……次回いつになるかな?