心語り   作:赤目猫

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都市伝説

ーーピンポーン。

 

オフ会から数週間経ったある日の朝、私の家のインターホンが高い音を鳴らす。

玄関を開けると、そこには制服姿の芳がいた。

 

「…また学校サボったの?」

「おう」

 

あれから何度か、芳は学校をサボっては私の家に来るようになった。

気を使ってくれてるのか、休みの日だけだけど。

 

「…芳、これあげる」

 

私が芳に渡したのは私の家の合鍵。

芳になら、まあいいだろうという判断だ。

 

「いいの?」

「学校行きたくない気持ちはわかるからね、私もサボることよくあったし、ただあまりサボり過ぎないようにね、私の家には何時でもきていいから」

 

私は眠い目をこすりながら、芳を家の中へと招き入れる。

芳が私の部屋で座ったのを確認して、私はキッチンへ向かってコーヒーをつくりはじめた。

 

「ブラックでいいんだっけ?」

「うん、ありがと」

「いいよ」

 

しかし、この前ブラックを飲むやつは全員味覚がおかしいとボヤいたけれど、芳は味覚がおかしいのだろうか。

とは言わない。

 

出来上がったコーヒーを芳の元へ持っていく。

芳は大人しく座っていた。

 

「ゲームでもしてればいいのに」

「いや、一応人の家だから…」

 

普段セクハラやら遠慮がない癖に、こういう時は遠慮するのか。

ほんとに面白い子だな。

 

「芳、おいで」

 

私は芳に近くに座るよう誘導すると、芳は私の隣に座る。

なんか犬っぽいこの子。

私はそのまま芳の膝に倒れ込む。

所謂膝枕だ。

 

「ねえ芳、彼女とか作らないの?」

「…利音が俺の同級生だったとして、俺と付き合いたいと思う?」

「なるほど」

「なるほどじゃねぇよちっとはフォローしろ」

 

どうしろと言うのだ。

しかしまぁ、なるほどとは言ったものの、もし同級生なら、私は芳とは関わることはなかっただろう。

それほどまでに、性格が違いすぎるのだ、私達は。

私は芳にDSを渡し、私は近くにあった雑誌を読み始める。

 

多分30分くらいそうしていただろうか。

私はふと、思いついた。

 

「芳、デートしようか」

 

そう言い終わると同時に、私の顔面にDSが降ってきた。

…いたぁい。

 

「なんて?」

 

今度は芳は近くにあったバールのようなものを持つ。

いや、シャレにならないからそれ、てかなんで私の部屋にバールのようなものがあるんだ。

いやバールなんだけど。

…あそっか、私が面白そうと思って買ったやつだこれ。

 

「面白そうで買ったって発想がもう面白いんだよお前は」

 

軽く笑いながら、芳がそう言う。

そんな事言われても、面白そうだったものは仕方ない。

 

「んで何?デート?」

「そ、近くの公園にクレープ屋が来ててさ、面白いジンクスがあるんだよ」

「…ジンクスねぇ」

「曰く、そのクレープ屋でミックスベリーを買って一緒に食べたカップルは、永遠に結ばれるそうだ」

 

私も、どこから仕入れた情報だったかは忘れてしまったけど、私だって腐っても女の子だ。

どうせなら好きな男の子とそういうジンクスを試してみたい。

 

「…なるほど」

 

芳は少し考える素振りを見せてから、よし、じゃあ行くかと、腰を上げた。

 

「たださ、利音、お前が思う結果にはならないと思うぞ、そのジンクス」

 

芳はそう呟いた。

はて、どういう意味だろうか。

 

ーーーーーーー。

 

私の家の近くの、少しだけ大きい公園。

最近は危険だからという理由で、どこの公園も遊具が無くなってきている。

それを寂しく思いながら、目的のクレープ屋台を見つけた私達は注文をする。

 

「ミックスベリーください!」

 

私がクレープ屋のお兄さんにそう告げると、お兄さんは困ったように笑いながら。

 

「ごめんね、ミックスベリーは売り切れなんだ」

 

と、そう言った。

 

なんだ、売り切れたのか、なら仕方ない。

 

「じゃあ、ブルーベリーとストロベリー、1つずつください」

 

じゃあ何を食べようかと迷っていたら、芳が私の分まで勝手に注文していた。

何やってんだコイツは。

お兄さんは少し驚いた顔をしながら、「はいよ」と言ってクレープをつくりはじめた。

 

はて、お兄さんはなぜ驚いた顔をしたのだろうか。

私がそんなことを考えていると、クレープが出来上がった。

クレープを受け取り近くの椅子に座って2人で食べる。

 

「利音、気づいてた?あのクレープ屋、ミックスベリーなんてメニューはないよ」

 

そう言って、芳はメニューが乗った看板を指さす。

たしかに、そこにミックスベリーの表記はなかった。

 

「あれ?じゃあなんでこんなジンクスが出来たんだよ、それにお兄さんは売り切れって…」

 

ミックスベリーがないのならそう言えばいい、私のそんな考えは芳の言葉でいとも簡単に解決してしまう。

 

「そもそもこのジンクスはさ、なにかのアニメであったネタなんだよ、なんのアニメかは忘れたけれど、そこでたまたま、ミックスベリーのメニューが無いクレープ屋の屋台があったもんだから、誰かが面白がってそんなデマを流した、んでお兄さんもその話を知って乗っかってるって、そういったオチじゃない?」

 

…なるほど、なるほどなるほど。

そういう考え方なのか、目からウロコとはこの事だ。

 

「でもあれ?じゃあ芳が注文した時のお兄さんの驚いた顔は?」

「…利音、これ1口食べてみ?」

 

芳に差し出されたストロベリークレープを私は1口食べる。

 

「利音のも1口頂戴」

 

言われるがままに、私は芳にブルーベリークレープを差し出した。

芳はそれを1口食べる。

 

「あ」

 

ああ、そうか、そういうことか。

 

「そ、それぞれ違うベリー系のクレープを頼んで、それをシェアして食べる、そこまでが、このジンクスのオチだ、そこまで来て、やっとこのオチに落ち着くんだよ」

 

なるほど、アニメのネタとはいえ、バカには出来ない。

シェアして食べるほど仲がいいということは、傍から見ればカップルに見えるのだ。

 

「…このジンクスを考えたやつもそうだけど、私から話を聞いただけでそこまで読めたお前にも脱帽するよ、一体どういう見方をすればそんなふうになれるのやら」

「別に、見方なんて人それぞれだろ、強いて言うならものの見方ってやつだよ」

 

バカなくせに頭がよくて、変態なくせに紳士で、それでいて気を使える優しい男の子。

私はまた、一段とこの子を好きになってしまった。

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