リビングライブ公式チャンネルへと戻ってきた視聴者たちを迎えたのは屍生子先輩と先程配信を終えてスタジオに合流した十処府亭無色さんだった。
「はーい、百目鬼アイちゃんの配信が終わってスタジオに画面が戻ってきましたよー!
そしてー、トップバッターでお披露目配信を終えた十処府亭無色師匠が合流してくれてまーす
師匠、お疲れ様でーっす」
「ありがとうございます、生子先輩
改めまして十処府亭無色と申します、皆様どうぞよろしくお願い致しますね」
生子先輩の隣に表示された無色さんのアバターが頭を下げるような動きをする。
年下の先輩と年上で後輩な師匠という訳の分からない構図になっている事にコメント欄も面白げにその速度を増していく。
「師匠、師匠の配信が二期生の中で最初の配信だった訳だけど、緊張とかはしなかった?」
「はい、それはもう緊張しましたよ
緊張のし過ぎで、配信開始直前までスタッフさんと大富豪してましたからね」
「いや、余裕綽々だなぁ?!」
コメント欄
【コメント】:緊張ってなんだっけ?
【コメント】:私は大貧民派
【コメント】:師匠の緊張どこ行った?
【コメント】:君のような勘のいいガキは嫌いだよ
「いえいえ、緊張をほぐすための大富豪ですからね
周りのスタッフさんからすれば、あたしは余裕があるように見えて安心できますし、あたしは緊張をほぐせる訳です
一石二鳥の妙案でしょう?」
無色さんの考えを聞いて、生子先輩がおーっ、と感嘆の声をあげた。
「なるほど、経験の成せる技って奴ですか!
流石師匠、って言ってやりたいけど、普通は緊張ほぐすために大富豪しねえんだよッ!!
第一、トランプ持ち歩いてんのかよ!!」
「いつトランプが必要になるか分かりませんからね
もちろんUNOもありますよ
あと、いつ決闘を挑まれるか分からないので、遊戯○のデッキをいくつかですかねぇ」
「修学旅行中の男子学生かッ!!」
コメント欄
【コメント】:これは策士無色
【コメント】:旅行鞄にはUNO常備してる
【コメント】:おい、決闘しろよ
【コメント】:生子ちゃんのツッコミキレッキレやなww
二人の漫才のようなやり取りでコメント欄も大いに盛り上がっている。
師匠についてのコメントが結構流れており、それに気づいたのか生子先輩がこほん、とわざとらしく咳払いをした。
「あー、何か師匠への質問コメントが多いみたいだね
私も質問したいことがまだまだあるけど、それは師匠がお披露目振り返り配信する時用に取っておこうか」
「それがいいですね
話のネタが温存できて助かりますよ」
無色さんとのトークで結構時間を使っていたらしく、生子先輩と無色さんは上手い事話を纏めた。
まぁ、お披露目振り返り配信は個人ですることになっていたので、その場の思い付きとかではない訳だ。
「それじゃあ、今し方配信を終えたばかりの百目鬼アイちゃんについて話そうか
アイちゃんの魅力はやっぱり見た目とのギャップだよね
元ヤンで保育士っていう組み合わせで、性格とか話し方は保育士さん、ってかお母さんに近いのかな?」
「子供好きというか、世話好きなんでしょうねぇ
そういうところで母性が滲み出てしまうのではないでしょうか」
「でも、ちゃんとあのリンゴの件で元ヤンアピールもちゃんと見せつけてくるんだもんね」
「調子に乗ればお前もこうなるって意味ですよ、あれは」
コメント欄
【コメント】:アイちゃん見た目怖めだけど優しさがにじみ出てるよね
【コメント】:ママみが深い
【コメント】:元ヤンでも普通リンゴは握り潰せんから
【コメント】:これは悪い子も良い子になってしまう
【コメント】:握力強いけどピアノの音は綺麗なんだよなぁ
「そうそう、ピアノも上手だったよね
あの待機画面のも自分で弾いたやつみたいだし、もう、すごいしか言葉が出てこんのよ
音楽ができる人はそれだけで尊敬できるわ」
生子先輩のしみじみとした言葉にさすがの無色さんも苦笑いをしている。
リビングライブが誇る音痴、いや、Vtuber界一の音痴との呼び声高い生子先輩の発言だけに、コメント欄も言葉を選んでいるありさまだ。
「じゃあ、アイお姉さんと一緒に歌の練習をしましょう!」
お通夜ムードを一瞬で吹き飛ばすかのような凛とした声。
その声にコメント欄はうおぉぉッ!と歓声で溢れ返るようにその速度を増す。
「「アイちゃん!!」」
生子先輩と無色さんの声が重なって声の持ち主―百目鬼アイの名を呼んだ。
「はーい、改めまして、リビングライブ二期生の百目鬼アイお姉さんだよー!」
アイちゃんの名乗りに合わせ、配信画面に百目鬼アイのアバターが表示された。
「アイちゃん、お疲れーい」
「アイちゃん、お疲れ様」
「生子先輩、師匠、ありがとー」
ワーワーと頭を左右に振って喜びをアピールするアイちゃんに、それを真似して生子先輩と無色さんの二人も頭を左右に振る。
コメント欄
【コメント】:アイお姉さんキター!
【コメント】:登場の格好良さよ
【コメント】:アイお姉さん、おつかれさまー
【コメント】:かわいいが過ぎるんだが?
「いやー、本当は休憩の後に合流の予定だったんだけど、走ってきちゃった」
「走ってきたのに息一つ切れてないのやばすぎん?
スタジオとの距離結構あるよ?」
「鬼ですので!
人百倍くらい体力ありますよー!」
ドヤ顔でフンフンッと身体を左右に動かすアイちゃん。
もしかしたら力こぶでも作っているのかもしれない。
「さすがは鬼だなぁ
それじゃあ、アイちゃんが走ってきてくれたことだし、先に聞いとこうか
さっき師匠にも聞いたんだけど、初めての配信で緊張はしなかった?」
「そうですね、お姉さんは普段から子供達を相手に話をしてますから、普段通りでそこまで緊張はなかったですね」
「ほほう、腕っぷしだけじゃなくてメンタルも強い鬼かぁ
先輩相手でも物怖じしなさそうだから、コラボとかも問題なさそうだね」
「はい、コラボ解禁になったら是非コラボしましょう!
歌の練習もその時にしましょうね!
その時を楽しみにして体を鍛えてなおしておきます!」
「私とコラボするのに鍛えなおす必要ある?」
コメント欄
【コメント】:フィジカルつよつよ
【コメント】:メンタルもつよつよ
【コメント】:プロのアスリートかな?
【コメント】:鍛えなおさんでもろて
「なんか身の危険を感じるけど、コラボする時を私も楽しみにしておこう
アイちゃんへの質問などは、百目鬼アイちゃんねるのお披露目振り返り配信でよろしく!」
「よろしくねー!」
わーッと再びアバターの頭を左右に振るアイちゃんの姿に、コメント欄もご満悦のコメントで溢れている。
「振り返り配信の宣伝もしたところで今後の予定を説明するぞ
十分後にこの公式チャンネルから三番手の子のチャンネルに直接移動されることになる
この配信画面にカウントダウンが表示されるから、それを参考にしてくれ
それじゃあ、一旦解散!」
配信画面が切り替わり、十分のカウントダウンの数字が映し出される。
生子さん達のアバターは画面が切り替わったと同時に消えており、BGMのみが聞こえている状態だ。
ここまでで全行程の三分の一。
まだまだこれからが正念場なのである。
私の出番まではまだ時間があるが、今後の演出の為にスタジオ内のスペースへと移動を始めるのだった。