バーチャル世界で斯くありたい   作:じょんらーふ

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二期生お披露目配信・メロディア・リュツィフェール編

ゆきをちゃんのチャンネルから公式チャンネルへと戻ってきた視聴者達を生子先輩の笑い声が出迎えた。

スタジオの一角から生子先輩たちの姿がちらりと見える訳だが、よほどツボに入ったのかゆきをちゃんの配信中はほぼほぼ笑っていた。

それは配信が終わった今でも笑い続けており、無色さんの時と違って司会進行を続けることは難しいだろう。

 

「はい、スタジオの方に配信画面が戻って参りましたね

 どうも、リビングライブ二期生の十処府亭無色でございます」

 

「同じくリビングライブ二期生の百目鬼アイお姉さんでーす」

 

コメント欄

 

【コメント】:後ろから聞こえるゲラよww

【コメント】:おっ、司会交代か

【コメント】:まぁ、聞こえる限り無理そうやしなww

【コメント】:ゆきをちゃんの配信に耐えられんかったか

 

「ええ、この笑い声を聞けばお分かりでしょう

 コメント欄でのご指摘通り、生子先輩が笑いすぎて司会進行不可能と判断されたので、急遽あたしと百目鬼アイちゃんで代理として司会進行することになりました」

 

「代理とはいえ、デビュー初日に公式配信で司会進行役をすることになるとは思わなかったよね」

 

「そうですねぇ

 でも、あたし達にとっちゃこの経験は絶対にプラスになりますよ

 だから、気合入れていきましょう」

 

「ファイトー、おーっ!」

 

無色さんとアイちゃんの二人は突然の重責にも関わらず、代役の仕事を見事勤め上げようとしている。

私も手伝えればよかったのだが、今後の展開上手を貸すことができないので少し歯痒さを感じていた。

 

「えー、ゆきをちゃんの配信が終わった訳ですがね、いやぁ、凄かったですねぇ」

 

「本当にハチャメチャな配信だったわ

 普通カップ麺食べながら配信しないでしょ」

 

コメント欄

 

【コメント】:ほんとそれな

【コメント】:開幕ズゾゾは歴史に残る

【コメント】:僕はカップ麺食べながら配信見てます

 

「しかしですね、普通はしないであろうことをするのも配信者としては正解であるとあたしゃ思う訳ですよ」

 

「確かにそうかもしれないわね

 カップ麵とか以外は割とまともなことやってたと思うし、配信内の画像やアバターも自分で描いたものだもんね」

 

「そうそう、ゆきをちゃんは多才なんですよ

 瞬間記憶能力なんて憧れのそれじゃありませんか?

 本番前にした神経衰弱では一勝もできませんでしたからねぇ」

 

「神経衰弱もやってたの?!」

 

コメント欄

 

【コメント】:配信者向けの性格なんだろうな

【コメント】:おっぱいとかドМとかね

【コメント】:マジで多才だよな

【コメント】:師匠トランプ好きすぎでは?

 

「ハハ、配信中にゆきをちゃんも言ってましたけど、結構緊張していたみたいですからねぇ

 意外と私達以外のところにも行って緊張をほぐしていたのではないですかね?」

 

無色さんの言う通り、ゲネプロが終了してからゆきをちゃんと少し絡んだ記憶がある。

えっと、何をやったんだっけ?

…あ、そうだ、美容院ごっことか言って髪の毛を弄られてたわ。

三つ編みにされたりツインテールにされたりしてたわ。

あー、思い出した。

私も緊張してたから記憶曖昧なんよな。

 

「その辺はゆきをが合流した後にでも聞いてみましょうか」

 

「そうですね

 お、どうやら次の方の配信準備が整ったようですよ」

 

「良い子のみんな―、準備はいいかなー?」

 

アイちゃんの呼びかけにコメント欄がはーいというコメントで埋まっていく。

 

「よーし、それじゃあ、リビングライブ二期生第四走者のチャンネルへ乗り込めー!」

 

アイちゃんのその言葉と共に公式チャンネルから二期生四番手配信者であるレイちゃんのチャンネルへと移動する。

 

 

移動先の配信画面にはレイちゃんの―いや、リビングライブ二期生『メロディア・リュツィフェール』の『メロディアch.』だ。

アカウント画像には、セミロングの黒色の髪を音符の模様が付いた髪留めで右側にサイドテールとして纏めており、そのおかげではっきりと見える白いお顔にぱっちりと開いた碧色の大きな瞳とは対照的な小さなお口が特徴の美少女が描かれている。

ヘッダーにはアカウント画像には表示されていなかった赤いベレー帽と漆黒の片翼が背中の左側に表示されており、服装としては良く学校で見かける赤と黒のチェックスカートのセーラー服(夏服)の上に薄緑のパーカーを着用した全身のキービジュアルが表示されている。

そのキービシュアルの隣に片翼のエンブレムの下にメロディアch.と表示されている。

 

コメント欄

 

【コメント】:かわいい!

【コメント】:片翼の天使

【コメント】:羽の色的に堕天使じゃね?

【コメント】:天使のわっかはないのね

【コメント】:服の羽のとこどうなってんの?

 

メロディアの羽についての考察や、服装についての考察などがコメント欄で行われている。

配信待機画面には跪いて両手を合わせて祈りを捧げるメロディアのデフォルメ画像と『Now Loding…』という文字が繰り返し表示されている。

待機画像をゆきをちゃんが描いてくれたとレイちゃんが言っていたのを思い出す。

その背後でBGMとして可愛らしいポップな音楽が流れている。

 

コメント欄

 

【コメント】:何をお祈りしてるんやろな

【コメント】:そらこの配信がうまくいくようにやろ

【コメント】:この絵柄ニホンイエティ激カワ美少女イラストレーターちゃんじゃね?

【コメント】:ニホンイエティ激カワ美少女イラストレーターちゃんをゆきをって呼ぶな

【コメント】:BGMかわいいね

 

ゆきをを弄ったりするコメントも流れ出したりしている内に、待機画面の上方から照らされた光がメロディアを包み込み、光の方を見ながら立ち上がった。

そして、配信画面が切り替わる。

 

コメント欄

 

【コメント】:天啓を得た!

【コメント】:うぉぉぉぉ!!

【コメント】:こっちもアニメーションだ!

【コメント】:キター!

 

配信画面にメロディア・リュツィフェールのアバターが表示された直後に音楽と、それに続いて歌声が流れ始める。

 

「Magic navigation♪

 Miracle creation♪

世界たちまち揺れて~♪

 Tiny revolution♪

  a little evolution♪

 一瞬の間に光放て~♪」

 

コメント欄

 

【コメント】:?!

【コメント】:ナイ〇マやん!

【コメント】:歌うめぇ!!

【コメント】:見てるか一期生!

【コメント】:やるやん二期生!

 

レイちゃん―メロディア・リュツィフェールの歌声にコメント欄が高速で流れていく。

騎士と魔法の異世界ロボットファンタジーアニメの主題歌である『Hello!My World!!』である。

この曲はレイちゃんがメロディアとして初配信する時に絶対に歌うと練習していた曲だ。

 

「ずっとポケットの中に~♪

 そっと隠し持ってた夢が♪

 今目の前広がるよ~♪

 僕は生まれ変わった♪

 世界の原理(ルール)変わるのさ~♪」

 

コメント欄はアニメのテンプレやメロディアの歌唱力の高さなどで盛り上がっているが、聞き惚れているのかコメントの数自体は少なくなっている。

 

「Magic navigation♪

 Miracle creation♪

 信じる心持って~♪

 Tiny revolution♪

 a little evolution♪

 疑わないいつでも~♪」 

 

サビに入ってメロディアのボルテージが上がり、その歌唱力に更に磨きがかかる。

 

「さあ迷いや不安は脱ぎ去って~♪

 この希望を胸に~さぁ光ある明日へ~♪」

 

この歌詞の部分が特に自分に重なるんだとレイちゃんは言っていた。

天原レイラとしての迷いや不安を脱ぎ去り、メロディア・リュツィフェールとして希望を胸に光ある明日へ。

だから、うちはこの曲でデビューを飾るんだ、と嬉しそうに語っていたのを思い出す。

 

「Hello!My World!!それはMagic!♪

 Hello!New world!!まるで振り子のように♪

 揺れ続けてるんだ~片時も止まることなく~♪

 魔法今書き換えるよ~未来へ~行こう~♪」

 

サビが終わり、ヘイ!ヘイ!と合いの手を入れたりしながら二番に突入し、その後もメロディア・リュツィフェールのオンステージが続く。

 

コメント欄

 

【コメント】:感情籠ってんねぇ

【コメント】:すげぇかっけー!

【コメント】:ほんまうめぇ!!

【コメント】:一期生涙目ww

 

「さあ明日はどこまで行けるだろう~♪

 僕は僕のまま光の差す向こうへ♪

 消えない消えない消えない傷をいつも眺めては~♪

 還らない日々を懐かしんだりするの~?♪ 

 見えない見えない見えない明日をずっと怖れるの~?♪

 君も変われるよ~♪

 ほんの一歩をついておいで~♪」

 

間奏に入り、メロディアが間奏に合わせて頭を左右に揺らしてリズムを取っている。

ニコニコ顔でリズムを取っている姿が微笑ましくて自然と頬が緩んでしまう。

レイちゃんが今をとても楽しんでいるのが理解できたからだろうか。

本当にここに受かってよかったと心の底から思う。

そして、とうとう曲もクライマックスに突入する。

 

「Hello!My World!!それはMagic!♪

 Hello!New world!!まるで振り子のように♪

 揺れ続けてるんだ~片時も止まることなく~♪

 魔法今書き換えるよ~未来へ~行こう~♪」

 

コメント欄

 

【コメント】:8888888

【コメント】:うぉぉぉぉぉ!!

【コメント】:いい歌声だったよー!

【コメント】:アンコール!

 

一曲歌い終わり、コメント欄も大盛り上がりの状況である。

 

「みんなー!

 聴いてくれてありがとー!

 うちはリビングライブ二期生のメロディア・リュツィフェールやよー!」

 

メロディアは息切れすることもなく、歌を聴いてくれたお礼を言って自分の名前を名乗った。

 

「そいじゃあ、次は自己紹介したいからプロフィール画像出すよー

 はーい、どん!」

 

その掛け声と同時に配信画面上にメロディアのプロフィール画像が表示された。

 

「改めまして、メロディア・リュツィフェールです

 バーチャル天界で大天使をしていました

 まぁ、今は訳あって堕天使なんだけどね

 羽が片方なのは堕天した時に罰としてもがれちゃってね、そのせいなんだ

 年齢は15歳でーす」

 

コメント欄

 

【コメント】:大天使!

【コメント】:やっぱり堕天使だったか

【コメント】:もがれたんかその羽

【コメント】:訳アリって訳かい

【コメント】:15歳若い!

【コメント】:時々関西弁出てるよね

 

メロディアの自己紹介にコメントが反応していき、コメント欄の速度がすごい勢いで流れていく。

 

「関西弁出るのはうちがバーチャル天界関西地区出身やからやね

 普段は抑えてるんやけど、テンション上がったり無意識やと出てまうんよね」

 

そう言ってアハハと笑うメロディア。

まぁ、アニメとかテレビ番組ってローカル放送じゃない限りは標準語だから、方言で喋る人と話さないと自然と標準語の方に染まってしまうんだよね。

 

「それで、リビングライブを知ったのは堕天して引き籠ってた時ですね

 そこで二期生オーディションの事を知って、引き籠りから脱するためにうちもライバーになりたいって思ったんです

 さっき年齢を言いましたけど、うち未成年なんで両親の承諾とかが必要だったんですよね

 それで、アンちゃんも一緒に両親を説得してくれて、ようやく応募できることになったんです」

 

コメント欄

 

【コメント】:関西弁可愛い!

【コメント】:今の若い子は標準語多いからなぁ

【コメント】:引き籠ってたんか…

【コメント】:アンちゃんってお兄ちゃんってこと?

 

「そうそう、うちのお兄ちゃんね

 うち三人兄弟の末っ子なんだけど、二人お兄ちゃんがいるんだ

 上のお兄ちゃんをニーちゃん、下のお兄ちゃんアンちゃんって呼んでるよ

 それで、書類審査とか面接とかを乗り越えて合格が決まって、今こうしてみんなの前で歌う事が出来たんだ

 家族のみんなには本当に感謝しかないよ」

 

ありがとう、と感謝の言葉を伝えるメロディア―レイちゃんの言葉に涙腺が崩壊しそうになる。

だが、涙を堪えてレイちゃんの雄姿を―往く道を見届けなければいけない。

 

コメント欄

 

【コメント】:お兄ちゃん二人いるんだ

【コメント】:お兄ちゃんっ子っぽいよね

【コメント】:ええ子やな

【コメント】:メロディアちゃんの家族にありがとう!

 

「とにかく、うちは歌う事が好きだから歌配信がメインスタイルになると思う

 これからは『歌えないリビングライブ』なんて一切言わせないから、うちの歌が聴きたいって思った視聴者さんは是非チャンネル登録していってね」

 

自分のチャンネルを宣伝しつつ、その後もプロフィールを元に話を進めていく。

プロフィール紹介を終え、雑談などを交えて気が付けば決められた終了時間まで僅かになっていた。

 

「え、もう時間?

 あー、残念ながら配信終了時間がきてしまったみたいです

 もっともーっと歌ったり雑談したりしたかったんだけど、今日は配信時間が決まってるから仕方ないよね

 名残惜しいですが、今日のメロディア・リュツィフェールの枠での配信は以上となります

 この後は再び公式チャンネルの方へ配信画面が移動しまして、多分回復しているであろう生子ちゃん先輩の説明があって二度目の休憩に入りますのでそれまではお付き合いくださいねー

 それでは、スタジオにお返ししまーす」

 

ほなまたねー、とメロディアが笑顔で頭を振りながら配信画面が切り替わり、配信は終了しましたという表示が出た後に公式チャンネルへと自動的に移動される。

この配信内で歌ったのは一曲だけだったが、それでもその歌声は視聴者の、そしてスタッフさんや私達の心に大きく響いた。

メロディアがこの配信で成し遂げたことの大きさを知る者は少ないはずだ。

他人から見ればリビングライブとして最初の一歩を踏み出した、ぐらいにしか映らないだろう。

だが、天原レイラを知る者からすれば、それは始まりの一歩であり大いなる一歩に映った。

勇気を出して前へと進み始めたメロディア・リュツィフェールに対し、私とスタッフさん達、それにスタジオ内の生子先輩達も盛大な拍手を送ったのだった。

 

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