バーチャル世界で斯くありたい   作:じょんらーふ

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二期生お披露目配信・二期生全員集合編・下

「おーっと、どうやら主役が遅れて登場するみたいだぞ―?」

 

生子先輩からの無茶振りに一瞬苦笑いしてしまうが、すぐに気を引き締める。

無茶振りに対応できてこそ一端の大阪人と自称することができるのだ。

 

「誰が来たかって?

 私が来た!」

 

某№1ヒーローの台詞をお借りして配信画面に登場する。

 

コメント欄

 

【コメント】:オール〇イト?!

【コメント】:ほんまいろんな声出せんのな

【コメント】:容姿と声のギャップよww

【コメント】:個性がなくてもライバーになれますか?

 

君もライバーになれる、なんて無責任なことは言えない。

実際個性ないときついと思うしね。

 

「私じゃ誰かわからんでしょ

 ほら、ちゃんと名乗って」

 

「どうも、リビングライブ二期生ラストライバーのフィーネリア・リュツィフェールです」

 

私が挨拶をすると生子先輩と同期達が拍手と歓声を上げる。

 

「はい、フィーちゃんも合流してくれましたー

 呼び方フィーちゃんでいい?」

 

「できれば呼び捨ての方がいいですね

 フィーネリア、フィー、フィーネ、フィーネル、ネリー、ネル、リア、どれでもどうぞ」

 

さすがにちゃん付けで呼ばれるような歳じゃないし、普通に恥ずかしい。

私の事をちゃん付けで呼んでくるのは両祖母だけだ。

だって、押しが強くて話聞いてくれないんだもん。

 

「じゃあ、フィーって呼ぶわね

 では、改めてフィー、初配信お疲れ様

 皆にも聞いてるけど、緊張とかはしなかった?」

 

「もちろんです、プロですから」

 

某映画の名台詞の一つを声真似すると、ブフッっと生子先輩が吹き出した。

笑いをこらえきれてないのか、口元を手で覆っているが肩が小刻みに震えている。

 

「ベ〇ット!

 殺されたんじゃ?」

 

私の声真似に以外にもノってきたのは無色さんだった。

こういうのちゃんと返してくれるとありがたいんだよなぁ。

 

「残念だったなぁ

 トリックだよ」

 

コメント欄

 

【コメント】:コ〇ンドーww

【コメント】:声真似をPONとしてくれたぜ

【コメント】:メイ〇リックス師匠ww

【コメント】:残念だったなぁ、リビングライブだよ

 

「くくっくふっ…

 ふぅ、悪いけど笑っちゃうから声真似禁止ね」

 

まだ若干笑いを引きずっている生子先輩がそう忠告するが、私からすればネタ振りにしか聞こえない。

それは他の同期達にとっても同じだったらしく、皆悪い顔をしている。

この流れではあの台詞で返すしかないだろう。

 

「「「「「OK!」」」」」

 

二期生全員の声がハモり、生子先輩はブハーッと吹き出してゲラゲラの海へと沈んでいく。

生子先輩がこうなってしまうと、もう司会進行の話どころではない。

誰かが生子先輩の代わりに司会進行を務めなければならない。

ならばここは私にお任せあれ、とスタッフさん達に見えるように右手の親指で自分自身を指し示してアピールする。

意思が伝わったのか、配信画面上の生子先輩のアバターがフェードアウトし、司会進行の立ち位置にフィーネリアが移動された。

こほんと小さく咳払いして喉を整える。

 

「皆さんこんばんデーッド!

 オリジナルの代わりに司会を進行する、見た目美少女アンデッド堕天使!

 屍生子ちゃんだぞー!」

 

アバターはフィーネリアのままだが、生子先輩になりきって挨拶をする。

生子先輩の声真似は初めてだが、わりかし似ているはずだ。

レイちゃんの方に視線を向けると、グッとサムズアップしているので問題はないはず。

コメント欄でもご本人登場、などとコメントされてるからこの声の感じで大丈夫だろう。

 

「それじゃあ、オリジナルに代わって二期生の皆に今後の目標などを聞いていこうと思うぞ

 では、まずは師匠からどうぞー」

 

「はい、十処府亭無色でございます

 今後の目標、うーん、まずは配信に慣れる、ですかねぇ」

 

「お、意外に初歩的な目標だねー」

 

「終わりの見えない世界ですからねぇ

 小さくとも確実に一歩ずつ、目に見える目標をクリアしていく予定ですよ

 そして、ゆくゆくは公式チャンネルで自分が企画した番組を司会したいですね」

 

コメント欄

 

【コメント】:いい目標じゃん

【コメント】:今のとこ公式番組持ってるの生子ちゃんだけやもんな

【コメント】:何やりたいんだ?

【コメント】:大喜利とかじゃね?

 

「なるほど、小さな目標からからコツコツと目標を達成していく、という事だね

 そしてゆくゆくは自分が企画した公式番組を持つと

 その時は是非私を起用してくださいねー」

 

「生子先輩かフィー君のどちらか分からないけど考えておきますよ」

 

私の売り込みにハハハと笑いながら返事を返す無色さん。

彼には既に自分が公式番組を持つ姿が見えているのだろうか。

まぁ、無色さんなら普通に上の許可取れそうな感じがする。

 

「ありがとうございまーす

 では、続いてアイちゃんに聞いてみましょーう!」

 

「はーい、百目鬼アイお姉さんだよー

 お姉さんの目標はねー、一期生とゲーマーズの皆と一緒にお歌を歌う事だよー」

 

アイちゃんの発言にコメント欄が騒然となる。

『歌えないリビングライブ』と称されてきた一期生とゲーマーズである。

先輩達は音痴やリズム感がないといった理由でまともに歌を歌う事ができないことで有名なのだ。

 

「実はお姉さん、保育士の他にボイストレーナーもやってるんだよね

 まぁ、ボイストレーナー自体は資格とかないから誰でも名乗れるんだけど、ちゃんと有名なボイストレーナーさんのもとで修業積んでお墨付きはもらってるから問題はないわよ」

 

「なるほど、一期生とゲーマーズにボイストレーニングをするってことだね

 壮大な目標だなぁ」

 

コメント欄

 

【コメント】:その先は地獄だぞ

【コメント】:アイお姉さんも多才だなぁ

【コメント】:ボイトレで歌えるようになるれべるなら既に歌えてるやろ

【コメント】:不可能に近いレベル

【コメント】:そんなに自信あるの?

 

「お姉さんは不可能だとは思っていないわよ?

 まぁ、かなりのスパルタになるでしょうけど、先輩達なら乗り越えられると信じてるからね」

 

そう言ってアイちゃんはニカッと笑う。

その表情は自信に満ち溢れており、自分ならやり遂げられると確信しているようだ。

根拠のない自信だが、アイちゃんなら本当にやってくれそうな気がする。

 

「アイちゃんの腕の見せ所だね!

 私も皆で歌えるようになるのを楽しみに待ってるよ

 それじゃあ、次はゆきを、よろしく!」

 

「あーい、ニホンイエティ激カワ美少女イラストレーターのゆきをだよー

 ボクの目標はいっぱいあるよ

 公式イラスト描いてみたいしー、ボクの新衣装も作ってみたいしー、自分で3Dモデルも作ってみたいしー、三期生が入ることになったらキャラデザも描いてみたいよねー」

 

「おー、ゆきをはやっぱりイラストレーター系の目標なんだね

 そういえばゆきをってリビングライブの専属イラストレーターってことになるの?」

 

私は気になっていたことを尋ねてみた。

 

「それが微妙なとこなんだよねー

 ボクはゆきを名義でしかイラスト描いてないからさー、リビングライブのライバーが描いてるって扱いになっちゃうんだよねー

 専属って訳じゃないんだけど、権利的なものが発動しちゃう訳さねー

 仕事は選べるけど、仕事として描きたいならリビングライブを通さなきゃならないって感じかなー?

 あ、ツイッテルとかには自由に投稿できるよ、登録してないけどねー」

 

コメント欄

 

【コメント】:ライバー兼イラストレーター

【コメント】:まぁ、同じ名義じゃあなぁ

【コメント】:なんか複雑だなぁ

【コメント】:してないんかいww

 

「多分次の配信でタグとか決める時に作成すると思うよ

 だから今のうちにチャンネル登録をしておくんだ!

 間にあわなくなってもしらんぞーっ!!」

 

「野菜の王子様かな?」

 

ダニィ!?とコメント欄にベジタブルなコメントがあふれ返る。

ちゃんとチャンネル登録しないとお料理地獄を味わう羽目になるぜ。

知らんけど。

 

「とりあえず、ニホンイエティ激カワ美少女イラストレーターゆきをへのお仕事のご依頼はリビングライブ上層部で一度判断されるってことで皆さんよろしくー!

 じゃあ、次はメロちゃんおねがーい!」

 

「はいはーい、メロディア・リュツィフェールですー!

 うちの目標はですねぇ、やっぱライブすよ、ライブ!

 リビングライブやし、ソロでもいいからリビングでライブして歌いたいなー!

 って感じかな?」

 

「まぁ、メロちゃんならそう言うと思ったよ

 でも、せっかくアイちゃんが一期生とゲーマーズのボイトレしてくれるんだから、やるならオールスターライブでしょ」

 

「フィー、えーっと、生子先輩の代理の言う通りだぞ

 お姉さんが先輩達をビシバシ鍛えてあげるから、やるならオールスターにしましょう」

 

私の提案にアイちゃんも賛同し、コメント欄もオールスターライブの可能性を期待し始めている。

 

「それええですね!

 リビングライブオールスターライブを目標に頑張っていきまーす!

 …何したらええのか分からんけど」

 

コメント欄

 

【コメント】:リビングライブオールスターライブ!

【コメント】:あり得るのかその世界線…!

【コメント】:たまに出る関西弁可愛い

【コメント】:わからんのかーいww

 

「とりあえずは一期生とゲーマーズが歌えるようにならないと始まらないので気長に待ちましょうってことで

 じゃあ、最後にフィー、頼んだわ」

 

「はい、フィーネリア・リュツィフェールがトリを務めます」

 

生子先輩の声から普段の声に変える。

ここからは一人二役だ。

 

「私の目標は全力で楽しむことです

 と、言いますのも、私は他の同期達と違って、ここで何かを成し遂げたいなどの明確な理由を持って所属した訳ではないからです

 まぁ、メロちゃんのサポートを身近でするため、という理由はありますが、あくまでそれは兄としてですので

 だから、一瞬一瞬を楽しんで、その姿を見た人達にも楽しんでもらう、そんな配信がしたい、そこから始めていきたいと思います

 そして、いつか私の配信を見て少しでも心救われる人がいれば、生きる糧になればいいなと思います」

 

レイちゃんもリビングライブの先輩達の配信で心を救われたのだ。

私も誰かの心の助けになれる配信をしていきたいと思う。

 

「いいんじゃない?

 簡単そうに見えて難しい、一朝一夕では成し得ないことだと思う

 でも、諦めなければいつかは叶うかもしれないよ」

 

この声は私ではない。

いつの間にか復活していた生子先輩がそう答えていた。

 

「生子先輩!

 笑い死んだんじゃ?」

 

「残念だったなぁ

 トリックだよ

 いや、アンデッドだから正確には死んでるんだけどね!」

 

私のネタ振りにきちんと対応してセルフツッコミを入れる生子先輩。

生子先輩が復活したならもう司会進行しなくてもいいか。

生子先輩に『任せます』と合図をすると、生子先輩は『任せろ』と合図を返してくれた。

 

「よし、オリジナル生子ちゃんが復活したから、ここからは再び私が司会進行を担当するわよ

 って言っても後はお報せとかだけなんだけどね」

 

生子先輩がそう言うと配信画面が切り替わってお報せの情報が描かれた画像が表示された。

今後の公式配信の情報やグッズ販売の情報、二期生のコラボ配信の解禁時期などを順に生子先輩が説明していく。

二期生内のコラボは近いうちに解禁されるらしいが、一期生やゲーマーズの先輩達とのコラボ解禁はまだ先になるとのことだ。

そして、またお報せの画像が切り替わる。

それを見たコメント欄は今日一番の速度で流れていき、目で追えない状況だ。

 

「リビングライブ一期生3D化企画進行中!

 続報はツイッテル公式アカウントや私を含めた一期生の配信内で随時報告していくぞー!

 ツイッテル公式アカウントを登録してない亡者達はこの機会に登録しておくことをお勧めするぞ!」

 

リビングライブに待望となる3D化の波が来たことに視聴者達は興奮を隠しきれないようで、コメント欄はお祭り騒ぎになっている。

 

「いやぁ、私がこの情報知ったの今日の午前中だったから、本当にびっくりしたよね

 後輩ができて、3D化の企画も始まって、私は幸せ者だなぁ!」

 

3D化の情報は私達二期生には知らされていなかったので純粋に驚いている。

私達がお祝いの言葉をかけると、生子先輩はとても喜んでくれた。

 

「お報せも終わったとこでそろそろ締めに入るよ

 それじゃあ、最後に一人ずつお言葉をもらっていこうか

 師匠!」

 

「はい、本日は長時間に及ぶ我々二期生のお披露目配信をご視聴いただきまして、誠にありがとうございました

 初配信、しかも公式チャンネルを絡めてという事で、思ってた以上の方々にご視聴いただきまして、終始手汗が凄かったですねぇ

 でも、目一杯楽しめました

 これからも十処府亭無色とリビングライブ一同の応援をよろしくお願いします」

 

スタジオ内に拍手が響き、コメント欄では888とコメントが流れる。

 

「アイちゃん!」

 

「はーい、良い子のみんなー、長時間のご視聴お疲れ様ー!

 今日はたくさんの良い子のみんなにお姉さんの配信を見てもらえてとても嬉しかったよー!

 これからもいーっぱい楽しんで、一緒に思い出を創っていこうねー!

 これからもリビングライブ一同と百目鬼アイをよろしくお願いしまーす!」

 

先程と同じくスタジオ内に拍手が響き、コメント欄では888とコメントが流れる。

 

「ゆきを!」

 

「みんなお疲れー

 今日はたくさんの人にゆきをとボクのイラストを見てもらえてとても嬉しかったです

 また公式配信でカップ麺食べたいと思いまーす」

 

カップ麵テロ予告するな、と半笑いの生子先輩にツッコまれてスタジオ内に笑いが起きた。

コメント欄ではそれを期待しているコメントもちらほら見られる。

 

「メロちゃん!」

 

「はい、メロディアです!

 視聴者さんも長時間のご視聴お疲れ様

 うちも結構疲れてるけど、初配信超楽しかったよー!

 これからも皆でいっぱい楽しめるとええね!

 皆どうもありがとー!」

 

スタジオ内の拍手が小さく聞こえるぐらいの盛大な拍手をする私は、傍から見れば発表会に現れた保護者のようなものだろう。

その保護者ムーブに皆は若干引いていた。

コメント欄でも贔屓が過ぎる、拍手でかすぎ、などのコメントが流れている。

別にええやろがい!

可愛い妹の晴れ舞台やぞ!

 

「じゃあ、最後!

 フィー!」

 

「はい、長時間のご視聴、本当にありがとうございました

 このお披露目配信は視聴者の皆さんと、裏方として支えてくれたスタッフさん達、私達を導いてくれた一期生とゲーマーズの先輩達、全ての方々の協力で無事に終えることができました

 皆さんには本当に感謝の言葉しかありません

 この場を借りてお礼申し上げます、ありがとう!

 これからもリビングライブ一同と妹のメロディア・リュツィフェールをよろしくお願いします!」

 

自分ではなく妹の名前を宣伝して皆に苦笑いされるが、レイちゃんはグッと右手の親指を立てていた。

コメント欄でもシスコンが過ぎるとコメントされている。

シスコンが過ぎて何か困る事でもあるのか?

いや、ない。

 

「はい、みんなありがとう!

 長時間のご視聴、誠にありがとうございました

 これにてリビングライブ二期生お披露目配信は終了となります

 それでは皆さん、またそれぞれのチャンネルでの配信、公式配信でお会いしましょう!

 乙埋葬ー!

 ばいばーい!」

 

生子先輩の別れの挨拶と共にばいばーい、乙埋葬ー、などのコメントが流れ、長時間に渡って行われたリビングライブ二期生お披露目配信が終了した。


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