レイちゃんからの一大決心を聞かせれ、さてどうしたものかと思考を巡らせる。
レイちゃんの瞳からは『絶対にやってやるぜ!』という熱意と気迫が伝ってくる。
冗談ではないということは理解できた。
「うん、レイちゃんがそうしたいならそうするべき―」
言い終わる前にレイちゃんは私に抱き着いてきた。
「ありがとうアンちゃん!!
アンちゃんなら応援してくれるって思ってた!」
私の同意を得られたのが嬉しかったのか、レイちゃんの喜びはしゃいでいる。
だからなのか、今の私の状態は頭に入っていないようだ。
私は所謂ゲーミングチェアに座っている。
先程までパソコンで海外ドラマを見ていたのだ。
レイちゃんが部屋に入ってきてから一度も立ち上がっていない。
レイちゃんは私より8歳年下の15歳であるが、身長は170cm前半と年齢にしても女性にしても高い方だ。
身長に比例してお胸もそこそこに大きい。
私が座った状態で抱き着いてくるということは、頭にお胸を押し付けられることであって。
「レイちゃん、ちょい離れて…」
私はタップするようにレイちゃんの背中を叩いた。
「あ、ごめんねアンちゃん!
痛かった?!」
状況を察したのかレイちゃんはパッと手を放して心配そうな表情で僕の顔を覗いた。
「いや、大丈夫やよ」
私の言葉に、ふぅ、レイちゃんは安堵の一息を漏らした。
「でも、さっきの話の続きがあるから、最後まで話聞いてな」
私はそう言ってもう一台のゲーミングチェアをレイちゃんの後ろに移動させた。
レイちゃんとは一緒にゲームをすることがあるのでこの部屋にはもう一台ゲーミングチェアがあるのだ。
「うん、わかった」
レイちゃんが座ると私も再びゲーミングチェアに腰を掛けた。
「さっきの続きね
私はオーディションの応募には賛成する
反対する理由がないからね
でも、レイちゃんの保護者は私じゃないんだから、ちゃんとお父さんとお母さんに許可をもらわんとあかんよ」
「パパとママにはメールで話があるって送ってるよ
今日帰ってきたら話すつもりだったし」
両親にちゃんと許可をもらおうとしていたみたいで安心した。
その時の思い付きで行動を起こしたのではなく、考えて行動を起こしていたのだから。
「そうやったんや
先走ってごめんね」
私は素直に謝った。
「ううん、うちのために言ってくれてるんやから別にいいよ
アンちゃんにはね、その…背中を押してもらいたかったんだ」
そう言ってれいちゃんはエヘヘと照れくさそうに微笑んだ。
私の妹は途方もなく可愛いのである。
拒否は許されない。
「まぁ、今のが私が言いたかったことの大半なんだけどね
その他のことはお父さんとお母さんが聞いてくれると思うし」
私がレイちゃんの保護者であったのならまだまだ問わねばいけないことがある。
しかしながら、私は兄であって親ではない。
レイちゃんが未成年である限り、最終的な決定権は両親にあるのだから。
「うぁ~…色々聞かれるんやろなぁ…」
レイちゃんの表情が少し曇った。
両親と楽しくお喋り、というわけではないので気持ちは少し分かる。
だが、これを乗り越えなければオーディションの応募にすら辿り着けない。
「ちなみにやけど、どんなこと聞かれるんかなぁ?」
ゲーミングチェアから立ち上がったレイちゃんはふらふらと歩きだして私のベッドにダイブする。
ほこりが舞うからあまりダイブはしないでほしい。
「一番の問題はリビングライブの本社が東京で活動拠点も東京ってところやと思う」
そう、東の京である東京なのだ。
対する我らが住まうのは西の京である京都。
…ではなく、そのお隣の大阪である。
東西の二大都市である東京大阪間は550kmちょい。
両親が可愛い妹を、未成年の妹を一人で東京に送り出すことは絶対にないだろう。
確定的に明らかである。
「家族みんなで引っ越し、とかはいかんかな?」
「いかんでしょ
二人にも仕事があるんだし」
「だよねぇ…」
枕に顔を埋めたレイちゃんは大きくため息をついた。
「まぁ、そこをなんとかするためにも、まずはおなかを満たすところから始めようか」
腹が減っては頭が回らないし、いい案も出ない。
時刻は十二時少し前。
調理時間を考えれば、昼食にはちょうどいい時間になるだろう。
「賛成に465票!」
枕からガバッと顔を上げたレイちゃんがそう答える。
一人で465議席所持してるとか国会議員も真っ青な独裁政権だ。
さすがはうちの可愛い妹ちゃんだ、次元が違いますよ。
「満場一致で採決が決まったな
リクエストは?」
「オムライス!
デミグラスのやつ!
OK?」
「OK!」
ズドン!とはならないが、それを合図に私たちはキッチンへと移動を開始したのであった。