バーチャル世界で斯くありたい   作:じょんらーふ

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オール明けの朝活配信

お披露目配信が終わった頃には既に日付が変わってしまっていた。

元々このぐらいの時間に終わる予定だったので、打ち上げとかは勿論予定されてない。

総括マネージャーである春夏冬さんの指示で撤収作業をしているスタッフさん達に挨拶をしてから帰り支度を始める。

多くのスタッフさんは会社に泊まり込みになるだろう。

私達だけが先に帰る事を申し訳なく思っていたが、スタッフさん達は全然気にしていないようだった。

むしろ、こんな時間までありがとう、ゆっくり休んでくれ、と逆に気を使われてしまった。

 

さて帰るかと言ってもこの時間だ。

既に終電ギリギリの為、担当のマネージャーがそれぞれ社用車で自宅まで送ってくれることになった。

私とレイちゃんの担当マネージャーは鶴ケ谷千歳(つるがやちとせ)というありがたい名前の新入社員の女の子だ。

黒髪のショートボブで、ぱっちりとした瞳に幼さの残る顔立ちをしており、身長は150ぐらい。

山あり谷ありといった体型ではなく、極めて普通の体型だ。

マネージャー研修が終わったばかりで業務には慣れていないが、やる気と行動力が凄いので偶に圧倒される時もある。

 

リビングライブ本社の中で生子先輩達と別れ、鶴ケ谷さんの運転する車で自宅近くまで送ってもらう。

送ってもらったお礼を言い、自宅に辿り着いたころには1時を越えていた。

レイちゃんも舟を漕いでる状態なので、レイちゃんの部屋まで誘導して寝かしつける。

最低限手洗いと歯磨き、パジャマに着替えてから眠ってほしかったのだが仕方ない。

 

その後、シャワーなどを浴びて諸々の家事を済ませていたら時刻は2時を越えていた。

そろそろ眠るか、と自室に戻ってベッドの中に潜ってはみたが、初配信の興奮からか目が冴えてしまって眠れない。

こういう時って妙に考え事をしてしまうゾーンみたいなものがあるんだよな。

どうでもいい事を考えている間に目が暗闇に慣れていたのか、真っ暗な部屋の中でも家具のシルエットが確認できる。

このままぼーっとしていても眠れないだろうと思い、私は個人用スマホを操作してツイッテルを起動した。

二期生全員のアカウントはまだ作られていないが、天原アナスタシアのアカウントは過去に登録して作成している。

キーワードを『フィーネリア』と入力し、つぶやきを検索する。

結構な数のつぶやきが投稿されていたみたいで、肯定的なものから否定的なものまで様々であった。

否定的なつぶやきの大半が、私がスカウト枠だという事に対してだった。

まぁ、気持ちは分かる。

コネ入社みたいなもんだもんな。

これに対しては実力を示していけばすぐに収まっていくだろう。

対して肯定的なつぶやきはと言うと、容姿や属性などを褒めたものや、メロちゃんに対しての愛情度などだ。

中には配信が楽しみだといった期待を込めたつぶやきも多く、嬉しさでますます眠気が覚める。

そこまで期待されちゃ仕方ないよな、と呟いてツイッテルを閉じてベッドから起き上がる。

そして、デスク前のゲーミングチェアに腰かけてパソコンを起動した。

ヨーチューブのフィーネリアのチャンネルを開き、配信開始予約を今日の6時15分にセットする。

元々レイちゃんの健康管理の為に早朝配信は企画しており、配信に必要な準備もすでに終えている状態である。

ただ、レイちゃんは疲れているだろうから私一人でやるつもりだ。

私はライバー用スマホから連絡用コミュニケーションツールのディスコールを開いた。

マネージャーの鶴ケ谷さんに『早朝配信を一日前倒しで始めたいので、公式アカウントで配信開始時間つぶやいてもらえますか?』と送る。

少しして鶴ケ谷さんから『疲れは残っていませんか?』と返信が来たので、『問題ありません』とディスコールに書き込む。

それに対しての書き込みは『了解しました、公式アカウントでつぶやいておきます』、とのことだった。

ツイッテルで公式アカウントからつぶやかれているかを確認し、その反応も確認する。

この時間でも起きている人は結構いるみたいで、お披露目配信翌日の朝早くから配信すると知って驚いていたり、心配していたりといった反応が見られた。

時計を確認すると時刻は2時半過ぎ。

朝食などの準備を5時半から始める予定なので3時間ほど自由時間がある。

時間を潰す為にヨーチューブのおススメとして表示された動画のサムネイルを眺める。

ちなみに私が登録しているのはリビングライブの全ライバーと公式チャンネル、それと、レイちゃんがおススメしてくれたVチューバー数人が登録されている。

その影響でおススメ動画にはリビングライブ系の切り抜き動画や他事務所のVチューバーの動画が表示されている訳だ。

よく見るとお披露目配信の切り抜き動画も既に投稿されている。

仕事が早い。

この切り抜きを含めたおススメ動画を見て時間を潰そう。

 

 

5時半までの間に見応えのある動画を十何本か見終え、私はキッチンへと向かう。

さて、今日の朝食の献立は白米、卵焼き、納豆、味噌汁、ほうれん草のおひたしである。

関西人は納豆が嫌いな人が多いらしいが、我が家ではみんな普通に食べている。

健康にもいいし、美味しいもんな。

 

鼻歌を口ずさみながら冷蔵庫の中から材料を取り出して調理を進めていく。

本当ならあったかいうちに食べた方がいいのだが、レイちゃんがまだ寝ているので、とりあえずは配信が終わるまでは食べるのは待っておこう。

 

時刻は6時を過ぎた頃。

自室に戻って配信準備を始める。

自宅からの初配信となるので少し緊張している。

各チェックを済ませ、配信開始ボタンを押せば配信が始まる状態で待機する。

その間に自室入口の外側にある配信中のランプのスイッチをオンにして部屋の中に戻る。

これは私とレイちゃんがお互いに配信しているのを部屋に入る前に確認できるように入居する時に設置してもらったものだ。

名前を呼び間違える事を防ぐのが目的なので、ほぼ私専用の注意喚起ランプと言ってもいいかもしれない。

パソコンの前に戻り、待機画面のコメント欄を眺める。

 

コメント欄

 

【コメント】:フィーちゃん朝活派なんかな?

【コメント】:今日休みでよかったー!

【コメント】:休日出勤前視聴

【コメント】:今日は休め

【コメント】:OK!ズドン

【コメント】:休日出勤兄貴は頑張って生きて

【コメント】:生ぎたいっ!!!!

 

コメント欄兄貴姉貴達のやり取りを見ているとくすりと笑えてしまう。

まだガンには効かないが、鬱には効きそうな感じがする。

 

さて、時間になったので配信開始ボタンをクリックする。

待機画面がサムネイルからゆきをちゃんに貰った待機アニメーションに切り替わり、各チェックをしてから配信画面へと移動する。

フィーネリアとのモーションのリンクを確認し、マイクのミュートを解除する。

 

「あー、あー、聞こえてるかなー?

 音量調節問題ないかなー?」

 

聞こえてるよー、音量ちょうどいい、などのコメントから音声に問題ないことを確認した。

 

「よし、じゃあ始めていこうか

 改めまして、おはよう!

 私はリビングライブ二期生の自称堕天使ライバー、フィーネリア・リュツィフェールです

 今日はほぼ突発的な配信になったけど、見に来てくれてありがとうね」

 

コメント欄

 

【コメント】:おはよー!

【コメント】:ツイッテルでつぶやかれたの2時半ぐらいやもんな

【コメント】:早起きは三文の得だわ

【コメント】:前日お披露目配信やったんだから普通は疲れて寝てるで

 

「えーと、実はですねぇ

 本当は明日の朝から朝活配信を始める予定だったんですけど、興奮して眠れなくてですね…

 だったら一日前倒ししてやろうってことで今日から朝活配信をすることになりました

 朝の6時15分からする配信と言ったら何かわかるかな?」

 

コメント欄にいろいろな回答が書きこまれていくが、そのほとんどがネタに走っており、最早大喜利会場と化している。

そんなに大喜利がしたいならしようじゃないか、少しだけ。

 

「朝の6時15分からする配信と言ったら何か

 そうだね、プロテインだね

 いや、パッションやないんよ!

 胸板叩かんからね、私は

 えー、朝の6時15分からする配信と言ったら何か

 そうだね、粛清だね

 自称堕天使でも悪政は布いてないんよ!

 配信二日目でクーデターは止めてクレメンス!」

 

適度にコメントを拾っていき、配信を盛り上げる。

だが、寝てないためかあまり頭が回らない。

朝の早から大喜利なんてするもんじゃないな。

 

「いやー、突然の大喜利で盛り上がったけど、全然違うんよなー

 正解はー、ラジオ体操でしたー!

 正解者に拍手ー!」

 

よくできました!よくできました!と、平成の教育的なクイズ番組のように正解者を称賛する。

もしくは、世界から不思議を見つけ出すクイズ番組のように不正解者から人形を没収してもいい。

スーパーな人形を賭けた不正解者は残念だったね。

 

「このラジオ体操企画は毎日朝6時15分から配信する予定です

 最初の10分間は雑談などをして、25分からラジオ体操を始めます

 ラジオ体操の音源は著作権の都合で流せませんが、私の鼻歌を聞きながらしてもらう形になります

 因みにこの企画はメロちゃんの健康改善のための企画なので、本来ならメロちゃんも一緒にラジオ体操をする予定でしたが、流石に昨日の今日で疲れてると思ったので起こしていません

 今日は私だけですが、のびのびと身体を動かしましょう」

 

企画の説明をしながらイヤホンを付けたスマホからラジオ体操の音源を再生する準備を済ませた。

時刻が25分になり、イヤホンを付けてラジオ体操の音源を再生する。

 

「デーンデーンデデッデッデッデ♪

 ドゥーンドゥーンドゥドゥットゥルトゥードゥ♪

 フンフフフーフーフンフフフーフーティロリロリン♪」

 

鼻歌のようなものを口ずさみながらラジオ体操を始める。

コメントの流れが止まったので視聴者の皆もラジオ体操をやってくれているのだろう。

順調に、軽快にラジオ体操の項目を順番に済ませていき、深呼吸をして今日のラジオ体操は終了だ。

 

「はい、みんなおつかれー!

 ちゃんと身体はほぐれたかなー?

 これから毎日リュツィフェール兄妹とラジオ体操して健康的な身体を手に入れようね」

 

コメント欄

 

【コメント】:草

【コメント】:もはや鼻歌じゃねぇだろww

【コメント】:BGMが気になりすぎて体操できんわww

【コメント】:夏休みのラジオ体操の音源にしてほしい

【コメント】:メロディアちゃんもこれ口ずさむとか狂気の沙汰では?

【コメント】:メロちゃん堕天使だから平気平気

 

爆速で流れるコメント欄に草が生い茂る。

いや、ちょっとちょけただけやん。

企画の段階ではちゃんと鼻歌だったし、実際鼻歌の部分もあったから間違いじゃないでしょ。

私は悪くねぇっ!

 

「今日は15時からタグ決めなどをする配信をします

 メロちゃんの配信は16時からなのでそちらもお忘れなく

 それでは、朝活配信はこれまでー

 はなまたー、ばいばーい」

 

締めの挨拶をして配信を終了する。

初の自宅配信を終えてふーっと息を吐く。

やりきった達成感と安心感からか少し気が緩み、ぐーっとお腹が鳴る。

お腹が空いたのでレイちゃんを起こして朝食にしよう。

私はパソコンの電源を落としてレイちゃんの部屋へと向かった。

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