バーチャル世界で斯くありたい   作:じょんらーふ

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命名&タグ決め配信

時刻は14時55分。

パソコンの前に座り、配信開始時間を待つ。

ふと、ガチャッと言う扉の開閉音が聞こえ、私は振り返った。

扉を開けた主が誰かは言うまでもないが、レイちゃんが開いた扉の隙間から私を覗いている。

 

「レイちゃん、どうかしたの?

 そんなとこで覗いてないで入ってきたら?」

 

配信中ランプも既に点けている状態であるので、それでも部屋に入ってくるからには急ぎの事情でもあるのだろう。

 

「あのさ、アンちゃん、配信ここで見とってもいい?」

 

部屋に入ってきたレイちゃんの手には黒いメガホンと青いVメガホンが握られており、白黒の縦じまの法被と真っ赤なはちまきを装着されている。

何なんその欲張り応援団セット。

絶対配信見るだけで済まんやつやん。

 

「…配信準備は終わってるの?」

 

「うん、部屋に戻ったらすぐ配信できるように調整してきたよ」

 

 

うーん、ここで配信見る分には問題はないけど、見るだけじゃなさそうだしな…。

でも、面白そうだしいっか。

 

「なるほどね

 じゃあ、そちらの応援席へどうぞ」

 

私は隣に置いてあるゲーミングチェアを指し示す。

 

「ありがとー」

 

レイちゃんはそう言ってゲーミングチェアではなく私のベッドにダイブした。

人の話聞いてました?

いろいろ言いたいことはあるがもう時間である。

 

「はぁ、配信始めるよ

 配信準備画面で時間あげるからこっちおいで」

 

私はそう言って席を立ち、自分の座っていたゲーミングチェアに座るように促した。

 

「OK!

 天原レイラにお任せあれ!」

 

某ドラゴンロードさんを彷彿とさせる台詞を発しながらレイちゃんはパソコン前のゲーミングチェアに腰を下ろした。

 

「アンちゃん、この配信準備画面、うちが33分もたせてやる!」

 

「レイちゃんはいつから探偵になったん?

 なんやかんやで怒られると思うからやめてね」

 

「ざんねーん

 なんやかんや言いたかったのに」

 

レイちゃんのその言葉に期待と不安が入り混じった何とも言えない感情を抱きつつも配信開始ボタンをクリックする。

すると、待機画面から配信準備画面へと切り替わり、ゆきをちゃん作成の例のアニメーションが表示される。

 

コメント欄

 

【コメント】:待ってた!

【コメント】:昼活乙!

【コメント】:朝配信あったん?

【コメント】:朝活ラジオ体操やってたよ

 

コメント欄を見る限り、朝活配信があったことを知らない視聴者が結構いるようだ。

まぁ、告知も深夜だったし悪かったと思う。

皆が朝活配信に気づかなかったのは私の責任だ。

だが私は謝らない。

いや、謝るけどね。

 

「アンちゃん、エコーよろしく」

 

「エコー了解…っと

 ミュート解除するよー」

 

私はレイちゃんの両手サムズアップを確認してからエコーをかけてマイクのミュートを解除した。

 

「お待たせいたしました

 リビングライブ二期生、フィーネリア・リュツィフェールの配信、まもなく開始でございます」

 

コメント欄

 

【コメント】:ファッ?!

【コメント】:あれ?チャンネル間違えた?

【コメント】:この声メロちゃん?

【コメント】:多分そうやろうな

 

突如流れ出したメロディア・リュツィフェールの音声にコメント欄が困惑し始めた。

まるでウグイス嬢のようなレイちゃんのアナウンスにうっとりと聞き惚れてしまったが、この後のオチが読めてしまったので急いでマイクの音量を下げて耳を塞いだ。

 

「ファァァァァァァァァァーーーーーーーー!!」

 

コメント欄

 

【コメント】:うるせぇぇぇぇwwww

【コメント】:声がでかすぎるwwww

【コメント】:おっと、昼休憩の時間だ

【コメント】:甲子園かな?

【コメント】:おじいちゃんが空襲と勘違いしました

 

肌にビリビリくる衝撃。

耳塞いでても普通に聞こえるんだからかなりの声量だったと思う。

音割れてないか心配だったが、コメントを見る限りは音割れはなかったようだ。

レイちゃんもサイレン時にマイクから若干顔背けてたのも要因かもしれんね。

そんなことを考えながら画面を準備画面から切り替えて一旦マイクをミュートにしてからレイちゃんに席を代わってもらう。

ササッとパソコンの前に座った私はメロディアとのモーションの同期を一瞬確認してからマイクのエコーとミュートを解除した。

 

「皆さん、こんにちわ

 リビングライブ二期生の自称堕天使、フィーネリア・リュツィフェールです」

 

プレイボール!

 

ダン!ダン!ダンダンダン!

ダン!ダン!ダンダンダン!

 

コメント欄

 

【コメント】:キター!

【コメント】:こんにちわー

【コメント】:なんか後ろで聞こえるんだがww

【コメント】:ほぅ、球場で配信ですか

 

コメントで指摘されている通り、現在進行形でレイちゃんがメガホンを叩いてリズムを取っている。

プロ野球でよく聞くあのリズムだ。

 

ダン!ダン!ダンダンダン!

ダン!ダン!ダンダンダン!

 

「本日は自宅からの配信となっておりますが、何故かバッターボックスに立っているであろう私に対して応援団の人が後ろで応援してくれています

 あらかじめ言っておきますが、これはコラボではありません

 私の部屋に応援団の方がいらしているだけなので決してコラボではない、いいね?」

 

あ、はい、とコメント欄がズラーッと流れ出す。

一応コラボではないと予防線張っとかないと上の方から何か言われるかもしれないからね。

 

ダン!ダン!ダンダンダン!

ダン!ダン!ダンダンダン!

 

ウチーノシランウチニー

アサカツハイシンシテイター

ナーンデオコシテクレナイノー

オコシーテクレヨー

カットバセーア-ン-チャン!

 

よく聞くタイプの応援のテーマに合わせてレイちゃんが替え歌で応援してくれている。

いや、内容が普通に文句だったわ。

全然応援してくれてないやん。

レイちゃんの方を見ると楽しそうにメガホンを叩いている。

 

「さて、今回は視聴者の名前とかいろいろと決めていきたいと思います

 後ろの応援はBGMとして各自楽しんでください」

 

バックグラウンドメロディアデース!

 

コメント欄

 

【コメント】:コラボじゃない?!

【コメント】:本当の事やで

【コメント】:こんなん話入ってこんやろww

【コメント】:兄妹仲良くてうらやましい

【コメント】:OK!ズドン

 

最早お馴染みになっているコ○ンドーネタがコメントに流れる。

汎用性に溢れているから使いやすいんよな。

 

「まずは私の呼び名から決めていこうか

 コメントでもどう呼んでいいのか悩んでる方もいるみたいだしね

 まぁ、自称堕天使的にはフィー様とかお兄様とかおススメだけども応援団の方は何か候補ある?」

 

セバスチャン

 

「執事=セバスチャンやないんやで

 視聴者の方は何か候補ありますか?」

 

コメント欄

 

【コメント】:フィー様よりかはお兄様派

【コメント】:さすがです、お兄様

【コメント】:セバスチャンも悪ないで

【コメント】:フィーの兄貴

【コメント】:フィーの兄さん

 

何かヤのつく職業的な感じの呼び方になってないかそれ。

コメントを見る分にはお兄様の割合が多いか?

 

「お兄様が多いので『お兄様』に決定でーす

 今後私を呼ぶときはお兄様でお願いします

 じゃあ、この調子で視聴者さん達の呼び名も決めましょう

 自称堕天使的には狂信者とか邪教徒とかおススメ

 応援団の方は何か候補ある?」

 

イケニエ-

 

「配信してる内に誰もいなくなりそう

 私は自称堕天使であってアース神族でも悪魔でもないからね

 視聴者さん達は何か候補ありますか?」

 

コメント欄

 

【コメント】:狂信者とか僕らいったい何を信仰してるんですかねぇ?

【コメント】:クレイジーシスコン教団の邪教徒です

【コメント】:生贄は草

【コメント】:堕天使は悪魔だし生贄は普通にあり

【コメント】:執事だしご主人様とか

【コメント】:普通に信徒

 

いろいろな候補のコメントが書き込まれているが、割合的に信徒が一番多いかな。

 

「信徒が一番多いのでファンネームは『信徒』に決定です

 何の信徒かって?

 それは勿論我が愛しの妹であるメロディア・リュツィフェールを崇める教団の信徒ですよ

 信徒達よ、メロディアを崇めよ」

 

アガメヨー

 

コメント欄の信徒達が狂信者の如くメロディアを崇めよ三唱状態である。

普通に狂信者でよかったんじゃないか?

 

「もうこうなったら挨拶は『メロディアを崇めよ』しかないでしょ

 じゃあ、ちょっと配信の出だしをやってみようか

 信徒の皆さん、メロディアを崇めよ

 リビングライブ二期生の自称堕天使、フィーネリア・リュツィフェールです

 …どう?」

 

コメント欄

 

【コメント】:いいんじゃない?

【コメント】:さすがです、お兄様

【コメント】:メロディアを崇めよ

【コメント】:メロちゃんに様つけんでいいの?

 

この挨拶は信徒達にもなかなかの好感触だったようで、コメント欄は肯定的なコメントやメロディアを崇めよというコメントで溢れている。

 

「応援団の方、信徒側はメロディア様を崇めよの方がいいですか?」

 

サマハイラナーイ

メロディアヲアガメムノーン

 

「ギリシア神話かな?

 アガメムノン王は関係ないんよなぁ

 とりあえず、応援団の方の話では様はつけなくてもいいそうですよ

 我がフィーネリアch.の挨拶は『メロディアを崇めよ』に決定でーす」

 

さて、あとは何を決めればいいんだ?

ツイッテル用のタグと配信タグとファンアートタグの3つか?

他にあったら信徒達が教えてくれるだろう。

 

「次はタグ決めね

 ツイッテル用、配信用、ファンアート用の3つを考えたいと思います

 これは私からのオススメはないからまっさらな状態で始めましょ

 応援団の人は何か候補はありますか?」

 

オニイサマノカメラトカ?

 

「お兄様のカメラね

 これはファンアート用で使えるかな?

 信徒の皆さんは何か候補ありますか?」

 

コメント欄

 

【コメント】:♯メロディアを崇める教団

【コメント】:♯お兄様がみてる

【コメント】:♯自称堕天使

【コメント】:♯堕天使のお兄様

【コメント】:♯リュツィフェールフラッシュ

【コメント】:♯堕天使崇拝者の集会(サバト)

 

いろいろな候補がコメントされていく。

この中で各タグに対応するように仕分けして、と。

その中で割合的に多いのは…。

 

「ツイッテル用のタグは『♯堕天使のお兄様』

 配信用のタグは『♯堕天使崇拝者の集会』

 ファンアート用のタグは『お兄様のカメラ』で決定でーす

 これで全部決め終わったかな?

 他に何か決めることあったら教えておくれよ」

 

コメント欄を見る限り、あとは締めの挨拶ぐらいとのコメントが見受けられる。

締めの挨拶か…。

 

「応援団の方、締めの挨拶の候補は何かある?」

 

サヨナライブ

 

「リビングライブが終わりそう

 信徒達は何か候補はある?」

 

コメント欄

 

【コメント】:さよなライブ好き

【コメント】:メロディアを讃えよ

【コメント】:メロディアの加護あれ

【コメント】:昇天

 

最後の堕天使じゃなくなっちゃうじゃん。

でも、他のはいい感じだな。

割合的にはメロディアの加護あれ、が多いかな。

 

「締めの挨拶は『メロディアの加護あれ』に決定ですね

 これで一通り終わりましたね

 時間的にもいい感じなんで、告知とかして今日の配信は終わりたいと思います

 まぁ、告知と言っても2つしかないんですけどね

 まず一つ目、リビングライブ2期生のツイッテルアカウントが開設されました

 各ライバーのアカウントはチャンネルの概要欄に記載されていますので、そちらからフォローお願いしますね

 2つ目はこの後16時から我が愛しの妹であるメロディア・リュツィフェールの配信がありますので、信徒の皆さんはお見逃しなく

 各ライバーの配信予定はツリビングライブの公式ツイッテルアカウントに日付変更と共に毎日更新されていますので、公式アカウントのフォローもお忘れなく」

 

とりあえず告知はこんなところか。

 

「応援団の方は何か告知ありますか?」

 

コノアトハイシンアルヨー

 

「はい、配信のこと以外にはないみたいですね

 では、この辺りで配信を終えたいと思います

 それでは信徒の皆さん、メロディアの加護あれ」

 

メロディアの加護あれ、とコメント欄がその挨拶で埋まったのを確認して配信を切る。

無事配信が終わったのを確認して大きく息を吐いた。

 

「アンちゃんお疲れー」

 

配信中やりたい放題やっていたレイちゃんが私の肩を揉みながらねぎらいの声をかけてくれた。

意外にも緊張していたのか肩が凝っているようで、肩揉みが気持ちいい。

一日の疲れも一気に吹っ飛んじゃいそう。

披露がPON!と抜けるぜ。

 

「れいちゃんもお疲れ様

 って言っても、レイちゃんはこの後本番だからね

 早く部屋に戻って準備しなさいよ」

 

「りょうかーい

 アンちゃんはうちの配信に出てくれる?」

 

「洗濯物取り込んだり夕飯の準備があるからちょっと難しいかな」

 

私がそう言うとちょっと悲しそうな顔をするレイちゃん。

罪悪感はあるが、家事をしなければならないのでしょうがないじょないこ。

渡る世間は鬼ばかりではないが、天原アナスタシアは家事の鬼なのだ。

レイちゃんの為に手抜きは一切しないぞ。

 

「まぁ、しゃあないよね

 時間あったら合間に応援しにきてね」

 

そう言ってレイちゃんは私の部屋を出ていった。

私もちゃっちゃと家事を片付けてレイちゃんの配信を応援しに行こう。

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