私達がリビングライブ二期生としてデビューしてから一週間が経った。
その間それぞれがそれぞれの配信スタイルを模索しており、試行錯誤を繰り返している状態である。
担当マネージャの鶴ケ谷さんからディスコールでメッセージが届いたのはそんな折だった。
『あと数日で二期生内のコラボが解禁されそうです』
他のメンバーにもそれぞれの担当マネージャーから連絡があったのか、ゆきをちゃんから二期生全員でコラボについて会議したいとメッセージが届いた。
時間などはゆきをちゃんが調整するらしいとのことなので、私は通話できる時間帯をメッセージで送って返答を待った。
リビングライブ公式アカウントを見る限り、今日は二期生の配信は予定されていない。
それもそのはず、今日は一期生のスクナ先輩とゲーマーズの錦先輩と地球子先輩の公式コラボ配信があるからだ。
因みにスクナ先輩が司会で、ゲーマーズのお二方がガチンコゲーム対決をするらしい。
ゲームの内容によっては地獄に発展するので期待半分不安半分である。
そんなことを考えているとゆきをちゃんから返信が来た。
『公式配信の一時間前までの間に集合』
公式配信の時間は午後8時。
なので午後7時までに通話に入ればいいってことだな。
因みに現在の時刻は午前10時過ぎ。
夕食の後に会議通話に入れば普通に間に合うな。
それまでは暇なので買い物行ったり久々に海外ドラマでも見るか。
そうと決まれば外出の準備だ。
レイちゃんも買い物に乗り気だったので、それぞれ部屋に戻って外出着に着替えてリビングに集合することになった。
私は外出着にそこまで頓着する方ではないのでパパッと組み合わせて準備を済ませるが、レイちゃんは華の女子高生なので準備には少し、もしくはしばらくかかるかもしれない。
レイちゃんを待っている間、リビングのソファーに座ってスマホでツイッテルのタイムラインを眺めて時間を潰す。
デビューして一週間ほどしか経っていないのに、二期生のイラストや漫画を投稿している人が結構いてビックリする。
ピンポーン
フィーメロてぇてぇ画像を閲覧しているとテレビドアホンの呼び出し音が鳴った。
このマンションは出入り口がオートロックタイプのマンションなので、訪問販売や勧誘などではないだろう。
となると、宅配かな?
私はスマホをテーブルの上に置いてテレビドアホンの画面を見に向かう。
テレビドアホンの画面を見ると、なんとそこには同期であるゆきをちゃんの中の人である
暑い外を歩いてきたせいなのか、左手でシャツの胸元を開けながらキャップ帽をうちわ代わりにして扇いでいる。
何か嫌な予感がするが、とりあえず呼び出しに応じる。
「何用?」
『遊びに…いや、コラボの打ち合わせに来たよー
開けてー』
「いや、今遊びにって言ったやろ
それに、コラボの会議は通話でやるんじゃなかったの?」
『一言も会議通話でするなんて言ってないけど?
あとの二人にもアニーん家に集合って言っておいたし』
何てことをしてくれたのでしょう。
匠のクソみたいな計らいで我が家が集会場に早変わりである。
下品で失礼。
因みにアニーは私のあだ名である。
「…そういうことは家主に予め許可取るのが筋ってもんじゃないか?」
『サプラーイズ!』
どこから取り出したのかクラッカーをパーンッと鳴らす雅ちゃん。
「サプライズじゃないが?
お前ちゃんと掃除しとけよ、ほんまに
管理人さんに怒られるの私やからな」
流石にちょっとイラっとしたので語気が少し強くなってしまう。
無意識にお前とか言っちゃったし、関西弁も出ちゃったし、雅ちゃんには悪いことをしてしまったかもしれんね。
『ごめんってー
それよりそろそろ開けてくれないかなー?
外暑いんだよー
ゴミも捨てなきゃだろー?』
雅ちゃんはクラッカーの後片づけをしているのか画面から姿が消えているが声だけは聞こえている。
ゴミは捨てんといかんから仕方なしに入れてあげようか。
「じゃあ、ロック解除するから」
『扉を開けられないだと?
ふざけるな、アニー!
こんな見つかりやすい場所に立たせるつもりか!』
「開けるっつってんだろ!」
雅ちゃんは核戦争後の新聞記者なの?
あいつは人の話を聞かないからなぁ。
扉のロックを解除してあげると雅ちゃんの姿が画面から消える。
私はテレビドアホンをオフにしてからレイちゃんに雅ちゃんが来たことをディスコのメッセージで伝えておく。
さて、私は雅ちゃんを迎え入れるために玄関前で待つことにしよう。
テレビドアホン越しの第二回戦は避けたいからね。
玄関前で雅ちゃんを待ち構えること十数分。
外出準備を終えたレイちゃんも私と一緒に玄関前で待っている状態だ。
それなのに雅ちゃんが一向に現れる気配がないんだけど?
ここはマンションの最上階である21階で廊下は一直線の作りなので、エレベーターから降りれば姿が確認できるはず。
これはおかしい。
おかしくない?
もしかしたら雅ちゃんの身に何かあったのかもしれない。
通話にも出ないし、メッセージに既読は付くものの反応はない。
まぁ、既読ついてるってことは無事ってことなんだろうけども。
「来んねー」
「そうだね
心配だからちょっと見てくるわ」
「見てこいカ○ロ」
「見てくるつってんだろ!
あと、フォークで刺されそうだからやめてね」
レイちゃんとのイチャイチャを切り上げてエレベーターホールまで雅ちゃんを探しに行く。
二基のエレベーターは停止している訳でもなく正常に起動している。
とりあえずエレベーターを呼び出して一階のエレベーターホールを確認しに行く。
エレベーターから降りてパッと見る限り一階にはいないようだ。
いったいどこに行ったのか。
エレベーターに乗らないで上に向かうなら階段か?
もしや、階段で21階まで登っていこうとしているのか?
もしそうなら途中で力尽きてしまっている可能性もある。
そうなったらエレベーターに乗るかもしれないし、既に乗っているかもしれない。
階段を上りながら確認するのが手っ取り早いが、階段はこのマンションの左右2ヶ所にあるのでどちらを探せばいいのか…。
とりあえずレイちゃんに連絡を取ってみるがまだ着いてないらしい。
雅ちゃんにも連絡を取ってみるが、こいつは意地でも出ないらしい。
さて、どうするか。
思考を逡巡させた結果、我が家に戻ることにした。
別に探さんでも家に来るなら探す必要ないだろ。
とりあえずディスコで雅ちゃんに捜索を断念しましたってメッセージを送っておけば大丈夫だろ。
そうして最上階に戻った私はエレベーターから降りた瞬間によろよろと廊下を歩く雅ちゃんとばったり出くわした。
マジで階段を上って来たらしい雅ちゃんは汗だくで服もびちゃびちゃになっており、息も絶え絶えな状態だ。
「おい、雅ちゃん、大丈夫か?」
「あ、アニー…
た、たす…」
雅ちゃんのもとに駆け寄った私に寄りかかる雅ちゃん。
ビチャッという音に少し顔をしかめてしまうが、今はそんなことを気にしている場合じゃない。
「さ、さぷら、らーい、ず」
「サプライズはもういいから黙ってろ
担ぐからちょっと失礼」
私はそう言って雅ちゃんを肩に担いだ。
子供が喜ぶ米俵スタイルである。
米俵役の雅ちゃんはうーうーと唸っていたが、こうなったのは君のせいなんやで?
玄関前で待っていたレイちゃんが私達の姿を見て駆け寄ってきたので、お風呂の準備をしてもらうように指示を出して先に戻ってもらう。
流石にびちゃびちゃな状態だとあれなので、レイちゃんに頼んで雅ちゃんをお風呂に入れてもらうことにしたのだ。
外出準備してもらったのにゴメンね。
これも全部奥山雅って奴の仕業なんだ。
雅ちゃんには説教確定として、とりあえず私も服を着替えたいし、さっさと家に戻ろう。