バーチャル世界で斯くありたい   作:じょんらーふ

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全品100%OFF

レイちゃんと雅ちゃんがお風呂に入ってる間に着替え終わった私は独り買い物へとお出かけ中である。

流石にあの状態の雅ちゃんは連れていけないし、雅ちゃん一人置いて買い物に行く訳にはいかないからレイちゃんとお留守番させている。

あいつ一人だと何するか分からないからな。

レイちゃんと二人っきりにするのも少し不安ではあるが、昼食はともかく5人分の夕食の材料を買ってこないといけない。

ピザとかの出前を取ってもいいが、今のところ収入はないから節約できるところは節約していきたいのだ。

昼はそうめんかざるそばとして、夕飯はカレーか冷しゃぶにするか。

いや、皆結構食べそうだから唐揚げもプラスしよう。

そんな事を考えながら最寄りのショッピングモールへと向かう。

ショッピングモールが近場にあると買い物が楽でいいよね。

車がないから大きな買い物はできないけど。

重い荷物を持って炎天下の中は歩きたくないもんな。

まぁ、重い荷物を持ってなくても炎天下を歩くのはおススメできないけどね。

 

うだるような暑さの外界も、モールの中に入れば冷房の効いた天国に早変わりだ。

シャツの胸元を掴んでパタパタと冷たい風を送り込んで体温を下げる。

チラチラと視線を感じるが、今は体温を下げるのが優先だ。

はしたなくって失礼あそばせ。

身体の外側から体温を下げるのもいいが、体の内側から体温を下げるのもいいかもしれない。

ここまで来るのに少し汗をかいてしまっている。

熱中症や脱水症状を回避するためには水分補給は大切だからね。

そうと決まればまずはフードコートへ立ち寄ろう。

 

土曜の昼前とあってフードコートはそこそこ混み合っているが、席が全部埋まっているという程ではない。

私はフラッペの幟が立つ店でラムネ味のフラッペを購入して空いている席へと移動しているところである。

紙製のカップであるためフラッペの冷気がカップを持っている手を冷やしていく。

カップを逆の手に持ち替えて、冷えた手で頬を触るとひんやりとして気持ちいい。

 

ドンッ―!

 

ビシャァ―

 

下半身と左手に衝撃を受け、利き手ではない左手に持っていたフラッペの入ったカップから中身が私の胸元に飛び出した。

突如として冷たくひんやりとした感覚とべっちょりと服が水分を吸収していく感覚に驚いた私は、情けなくも小さく悲鳴を上げてしまった。

多少のビックリには耐性はあるが、突発的なビックリには身体が反射で反応してしまう。

とりあえず、状況を確認しよう。

衝撃のあった方を見ると、小学生中学年から高学年ほどの女の子が尻餅をついてその場に座り込み、恐る恐る私の顔を眺めている。

なるほど、冷えた手で体温を下げることに意識が持っていかれていた私は、こちらに向かって走ってくるこの女の子に気が付かなかったみたいだ。

 

「立てる?」

 

私は手を差し出してそう尋ねた。

 

「う、うん…」

 

女の子が私の手を掴んだので引っ張り起こした。

立ち上がった女の子と視線を合わせるためにかがんで身長差を埋める。

 

「怪我はない?」

 

「ない…です

 ごめんなさい、おねーさん」

 

怪我がなくて安心したが、私はお姉さんではない。

だが、いちいち訂正するほどでもない。

ちょっと怖がってるし、余計に怖がらせたくないし。

 

「気にしなくていいよ

 私の服が暑いからってフラッペ飲んじゃっただけだから

 でも、危ないから今度からお店の中で走っちゃ駄目だよ?」

 

「うん

 ごめんね、おねーさん」

 

ちゃんと反省できて偉い女の子の頭を撫でて私はフードコートを足早に後にする。

さすがにひんやり状態の濡れた服を着たまま平静を保つのは一苦労であるので、あの場に留まってごたごたするのは避けたかったからだ。

とりあえず、シャツでも買って着替えよう。

そうと決まれば衣服を売っているフロアに移動である。

 

フロアを移動して多数の衣料品店が点在するエリアへとやってきた。

とりあえずシャツだけを買いたいからそのへんの店に適当に入るか。

そう思って目の前の店に入ろうとした時だった。

 

「ヘイ後輩、その店は止めときなー」

 

背後からかけられた声に振り返ると、そこには見知った人物が立っていた。

リビングライブ一期生である屍生子先輩の中の人である。

一期生やゲーマーズの先輩達はリアルでは本名ではなくあだ名で呼び合っているので、生子先輩の本名を私は知らない。

因みにあだ名は『テルテル』らしい。

 

「あー…テルテル先輩、こんにちわ」

 

とりあえずライバー名は出さないように生子先輩もといテルテル先輩に挨拶をする。

 

「ういっすアニー、奇遇だね

 買い物?」

 

「はい、服にフラッペをこぼしてしまいまして

 シャツでも買おうかなって」

 

「はー、なるほどねー

 じゃあ、私に任せておきなよ

 こう見えてもファッションには自信あるネキだからさ」

 

そう言って右手親指で自分を差すテルテル先輩の私服は黒と赤を基調にしたパンキッシュなパンツルックファッションで全体的に格好良く決めているので、ファッションに自信があるというのは間違いないだろう。

しかしながら、テルテル先輩の胸元にチラ見えする個性的なプリントがされたシャツに関してはセンスを疑わなければならないのかもしれない。

『殺伐としたTシャツに(イヌ)が!』と言う文章と狐がプリントにKUMA(らいおん)と名前を紹介されているTシャツを着ているからだ。

 

「うん?

 このシャツが気になるかい?

 イケてるだろ?」

 

「あー…イケてるっちゃイケてるんじゃないですかね?

 大阪の人間は好きだと思いますよ」

 

「じゃあ、アニーも好きなんじゃん

 いいセンスしてんじゃないか、このこのー」

 

そう言って肘で私を突っついてくるテルテル先輩。

まぁ、その服のセンスは私は嫌いじゃないよ。

センスが良いとは断定できないけど。

 

「よし、じゃあついてきなよ

 オススメの店があるんだ」

 

そう言うとテルテル先輩は私の意見を聞かずに歩き出してしまった。

仕方がないので私もその後について歩き出す。

とは言ってもすぐに目的地らしい店に着いたらしく、店内へと入っていく。

その店内の一角が目的地だったらしく、そこはテルテル先輩が着ているようなオモシロTシャツが陳列されているコーナーだった。

 

「ここの店は個人出品のTシャツとかも委託販売している店でね

 サイズも品揃えもいいからオススメだよ

 因みにネットで注文もできるから出不精にもオススメ」

 

そう説明しながらテルテル先輩はオモシロTシャツをハンガーラックから取り出して私の身体に合わせ始めた。

 

「サイズはM?」

 

「そうですね

 部屋着にするなら一つ大きめのサイズですが」

 

「あー、わかるわかる

 ゆったりさせたいもんね

 でも、普段着使いするんだからMでいいでしょ」

 

普段着にすることが強制的に決められてしまった。

流石は先輩、決定力と圧が凄いんよ。

まぁ、リビングライブ本社に行く時用だと思えばいいか、面白いし。

そう割り切ってよさげなオモシロTシャツを厳選すること数分。

 

『仕事は避けられない

 あんたも働くし、俺だって働く

 皆いつか働く

 だが今日じゃない』

 

と表面に書かれたTシャツを購入することにした。

地上波で放送される度にチキンブリトーが爆売れする有名な艦船とエイリアンの映画の名台詞のパロディー構文だ。

因みに裏面には『チキンブリトー買ってくるぜ!』と書かれている。

まるでニートが働かない言い訳をしてチキンブリトー買いに行く、みたいなのが私達の評価ポイントに引っかかったのだ。

テルテル先輩は自分用に何着か購入していたが、私に気を使ってか同じTシャツは購入していなかった。

流石に同僚でペアルックは気まずくなるもんな。

私は購入したTシャツにその場で着替えてみるが、なかなか似合ってるんじゃないか?

 

 

「で、アニーはこれからどうするの?

 服を買いに来た訳じゃないんでしょ?」

 

「まぁ、服を買いに来たのはアクシデントがあったからですしね

 今日は夕飯の材料を買いに来たんですよ」

 

今日の来店の目的を聞いたテルテル先輩は何か考え込んでいる。

 

「アニーの家ってここから近いんだっけ?」

 

「そうですね

 歩いてこれるので結構近めだと思いますよ」

 

「だから今日は一人で来たの?」

 

どうやらレイちゃんが一緒にいないのが引っかかっていたようだ。

流石に四六時中一緒にいる訳ではないので認識を改めていただく方向でお願いしよう。

聞き様によっては私が一人では出歩けないみたいじゃないか?

初めてのお使いじゃないんだぞ。

 

「あー、話せば長いんですが…」

 

私はサプライズパーティー野郎こと雅ちゃんのやらかしたことを簡単に説明した。

もちろん今日の夜二期生が我が家に集まることもである。

どうせならテルテル先輩も誘ってみるか?

コラボ経験が豊富だし、何か助言を貰えるかもしれない。

 

「ってな訳なんですけど、お暇ならテルテル先輩もどうですか?」

 

「え、いいの?」

 

そう聞き返してくるテルテル先輩だが、この提案に対してはまんざらでもないらしく、かなり嬉しそうに見受けられる。

 

「もちろんですよ

 こちらとしても初コラボ企画の助言とかしてもらえるとありがたいんで」

 

「そう言われると断るなんてできないよなぁ

 わかった、私も参加させてもらうよ

 どうせこの後はナノのせいですることなかったしね

 なぁ、聞いてくれよー」

 

そう言ってテルテル先輩はスクナ先輩の中の人であるナノ先輩の愚痴を話し始める。

どうやら今日のゲーマーズコラボの司会は本当は生子先輩が担当するはずだったらしい。

だが、他の一期生に経験を積ませるために急遽スクナ先輩に変更に司会が変更になったらしい。

そのことに対してかなり憤っているらしく、その後も延々と愚痴をこぼされた。

私はテルテル先輩の愚痴に相槌を打ちつつ、当初の予定通りに夕食の買い出しに戻ることにした。

 

フロアを移動して地下食料品売り場へとやってきた私達は買い物カートのカゴに食材を入れていていく。

因みに食材をカゴに入れているのがテルテル先輩で、買い物カートを押しているのが私である。

テルテル先輩に今日の夕飯の献立を聞かれたのでカレーか冷しゃぶだと伝えると、『馬鹿野郎、私がいるんだから肉だよ肉!』と言われて焼肉に変更になったのだ。

肉は精肉専門店で買うらしく、ここでは米や野菜、焼き肉のタレと飲み物などを購入するらしい。

支払いも全部持ってくれるらしく、こちらとしては願ったり叶ったりである。

全品100%OFFなのでブルドーザーでダイナミック入店する必要があるのでは?

そうなると専用BGMも流さないといけないな。

でも既に入店しているから必要ないか。

 

「よし、次は肉を買いに行くぞー」

 

「了解でーす」

 

テルテル先輩に続いて地下食料品売り場から精肉専門店へと移動する。

食料品売り場と比べれば肉の総数は劣るが、質と部位は精肉専門店の方が勝っている。

やはりと言っては何だが、質のいい国内産のブランド肉はお値段がお高い。

 

「とりあえず、カルビとロースをそれぞれ3キロ、ハラミ2キロ、バラ、タンをそれぞれ1キロ

 あと、黒毛和牛のサーロインステーキ600gを6枚

 他に何かいる?」

 

「いや、多すぎでは?」

 

テルテル先輩の注文に対してツッコミを入れる。

肉だけで全部で10キロ以上あるんだが、6人で食べきれるか?

野菜もそれなりにあるんだぞ?

いや、雅ちゃんはかなり食うからな。

配信中いつも何か食べてるイメージあるし、案外完食してしまうのでは?。

 

「育ち盛りだから皆食べるって

 それに足りないよりは余った方がいいでしょ?」

 

「育ち盛りはレイちゃんだけなんですがね

 まぁ、お金出すのはテルテル先輩なんで懐と相談してから決めてくださいよ」

 

「バッカ野郎

 私が月いくら稼いでると思ってるんだ?

 会社随一の稼ぎ頭だぞ」

 

屍生子先輩はリビングライブのライバーの中でもグッズの売り上げ、スパチャやメンバーシップ登録も一番多く、企業案件も多数扱っている。

やっぱりかなりの額を稼いでるんだろうか。

稼いでるんだろうなぁ。

さっきの支払いの時ブラックカード使ってたもん。

 

「まぁ、こんだけあればいっか

 じゃあ、以上でお会計をお願いします」

 

テルテル先輩は財布からシュバッとブラックカードを取り出して支払いを済ませ、購入した肉を私が受け取る。

分かっていたことだがくっそ重い。

肉だけで13キロほど。

米10キロと野菜は2、3キロほどか。

飲み物などを合わせれば合計30キロほどある訳で。

流石にテルテル先輩に持たせる訳にはいかないので私が全部持つことになる。

重い荷物を持って暑い外を歩かなければならない帰り道の事を思うと憂鬱になってしまう私なのであった。

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