大荷物を持って炎天下の中を歩いて帰ることになると言ったな?
あれは嘘だ。
いや、本当は歩いて帰るはずだったのだが、そこはリビングライブの敏腕ライバー屍生子先輩の粋な計らいでタクシーにて帰還できることになったのだ。
買い物中に既にタクシーを呼んでくれていたらしく、ショッピングモールを出てすぐにタクシーに乗ることができた。
こういう気遣いや手腕は是非とも見習っていきたいところである。
頼れる先輩のおかげで汗をかくこともなくマンション前まで帰る事ができた訳だが、大荷物を持って家の中に入るまでが買い物なのだ。
タクシーを降りてマンションの出入り口に辿り着くが、オートロック搭載の自動ドアとなっているためロックを解除しなければいけない。
タクシーを降りる前にテルテル先輩にキーホルダーを渡しておいたので、それで入口のロックを解除してもらう。
「テルテル先輩、その端末にキーホルダーをかざして貰えれば開きます」
「オープンセサミィ…」
そう言ってテルテル先輩はドアのロックを解除し、エントランスホールへと入っていく。
「言い方がラスボス主人公の吸血鬼なんだよなぁ」
「ほら、私不死者だから実質吸血鬼みたいなもんでしょ」
テルテル先輩の言葉に愛想笑いをしながら私もその後に続いてエントランスホールへと入る。
郵便物の確認は…今はいいか。
先にエレベーター前に辿り着いたテルテル先輩は上ボタンを押してエレベーターが下りてくるのを待っている。
「そう言えばなんだけど、エレベーターのボタンって連打したら早く来そうな気がしない?」
そう言いながらエレベータの上ボタンに指を近づけるテルテル先輩。
「小学生じゃないんだからやらないでくださいね」
「ナノは横断歩道ではよくやってるから小学生かどうかは関係ないと思う」
ナノ先輩なにやってんだよ。
やはり身体に年齢が引っ張られてるんだろうか。
なんて直接言ったらぶん殴られるんだろうな、などと黙考しているとエレベーターが一階に到着した。
「アニー、何階?」
先にエレベーターに乗り込んだテルテル先輩が開くボタンを押しながら私に尋ねた。
「最上階です」
「おー、良いところに住んでんじゃん」
そう言ってテルテル先輩は最上階のボタンを押して、閉まるボタンを押した。
1階から最上階である21階まで上っていくエレベーター。
重い荷物を持っていても一分そこらで最上階まで移動できるんだからエレベーターって偉大な発明だよな。
まぁ、どこかの誰かさんは階段で上がってきたけど。
最上階まで移動した私達はエレベーターから降りて自宅前まで移動する。
「テルテル先輩、鍵開けてもらえますか?」
「お、ピッキングは私の得意分野だぞ」
「鍵渡してんでしょ
普通に開けてくださいよ」
「はぁ…やれやれだぜ」
某第三部主人公のように呟いたテルテル先輩はインターホンを鳴らし、扉をドンドンドンと叩いた。
「開けろ!
デトロイト市警だ!」
「最新式試作アンドロイドかな?」
ゲーマーズの
あと、鍵渡してあるでしょ?
「いやー、ちょうど今シリーズ配信物としてやってる途中だからさ
どこかでやってみたかったんだよね」
「配信は見てるので知ってますけど、インターホン鳴らした意味ないでしょ
せめてインターホンに応答がなかった時にしましょうよ
いや、それ以前に鍵渡したでしょ
キーホルダーの一番右です」
「おっとそうだった」
テルテル先輩はわざとらしくそう言ってキーホルダーの中から一番右のカギを選んで鍵を開けようとしたその時、ガチャリと開錠された音が聞こえた。
そして、家の内側から扉が開かれる。
「おかえりアンちゃーん
あ、テルテル先輩もいらっしゃーい
…ん?
アイエエエエ!
テルテル先輩?!
テルテル先輩ナンデ?!」
笑顔で私達を出迎えてくれたレイちゃんはテルテル先輩の顔を二度見して絶叫した。
あまりの声量に持っていたビニール袋が衝撃でビリビリと波打っている。
まぁ、憧れの先輩が家の前にいるんだもんな。
驚いても仕方ないけど、テルテル先輩はニンジャではないよ。
「ドーモ、レイラ=サン、テルテルセンパイです」
ニンジャだったテルテル先輩が手を合わせてオジギと共にアイサツする。
「ドーモ、テルテルセンパイ=サン、アマハラレイラです」
レイちゃんも手を合わせてオジギと共にアイサツを返す。
何だこのニンジャ達は…。
このままここで戦闘に入るのは止めていただきたいところである。
「詳しいことは後で説明するから、先輩をリビングまでご案内してあげて」
「あ、うん、わかった
テルテル先輩、こちらへどうぞ」
「ありがとー」
先に家の中に入ったテルテル先輩はレイちゃんの案内でリビングの方へと進んでいく。
その後に続いて家の中に入った私は一度家の中に荷物を置いて玄関の扉と鍵を閉めた。
そして、脱いだ靴を下駄箱に直してから食材をキッチンへと運ぶ。
冷蔵庫に肉や野菜を仕舞い、レイちゃん達が集まっているリビングへと向かう。
まぁ、ダイニングキッチンであるのでリビングの様子は見えているのだが。
リビングに設置されたソファーに座るテルテル先輩とその隣に座るレイちゃん。
そして、二人の膝の上に身体を横たわらせている雅ちゃん。
膝枕などという事ではなく、隣り合った二人の膝の上に雅ちゃんの背中の部分が乗っているのだ。
まるで、液体状の猫である。
「で、これはどんな状態なの?」
「知らーん」
「わかんない」
「気付いたらこうなってた」
三者三葉の回答を聞いてはみたものの、まったく参考にはならない。
何故こうなったのかが結局わからない。
まぁ、誰も気にしてないみたいだし気にしなくてもいいか。
そう結論を出した私は一人掛け用のソファーに腰を掛けた。
レイちゃん達が座っているソファーは三人掛けだが、雅ちゃんが横になっているので座れないし、座れたとしても雅ちゃんが膝の上に乗ってくるならどちらにしろお断りなので選択肢は最初からないのである。
無色さんの中の人―
そんなこんなで時間は過ぎていき、2時半過ぎにホールケーキを手土産に寧々ちゃんが、3時手前には源さんもホールケーキを手土産に家へやってきた。
うーん…ホールケーキとホールケーキでケーキがダブってしまった。
しかも同じケーキ屋さんの同じ苺のショートケーキである。
時間差で来店していたらしいのでこういうことが起こってしまったようだ。
まぁ、仕方ないと言えば仕方がないが、夕食の事を考えると完食は厳しいだろうな。
そして当然と言えば当然だが、二人ともテルテル先輩の存在に大変驚いていたが、そこは奇人変人の巣窟であるリビングライブのライバー。
驚いていたのは最初だけで、その後はまるで10年来の親友同士であるかのようにこの空間に馴染んでいる。
テルテル先輩の人柄のおかげもあるのだろうが、ここにいる皆が遠慮なく自分を出し合えているのが大きいのだと思う。
レイちゃんも楽しそうで何よりである。。
そして今は私以外の皆でババ抜きをしている最中だ。
「さぁ、始めましょうか
世界の命運を賭けたババ抜きを」
「勝たなきゃ誰かの養分…」
「俺のターン!
ドロー!」
「
「はい、UNOって言ってないー!」
傍から聞いているとババ抜きをしているのかどうかは怪しいところだが、ちゃんとババ抜きをしているのでなんら問題はない。
いきなり
そんな中私は何をしているのかと言うと、キッチンへと戻りホールケーキを6等分して3時のおやつの準備を始めているのだ。
3時のおやつとして苺のショートケーキと紅茶を味わったその後に、待ちに待ったコラボ会議を開始することになっている。
さて、一体どうなることやら…。