バーチャル世界で斯くありたい   作:じょんらーふ

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一次審査合否通知

両親の帰宅を待ち、一大決心を打ち明けるレイちゃん。

結果から言えば許可された。

レイちゃんの一歩も退かぬという姿勢と、いくつか約束事を守るということを条件に承知させた。

約束事は三点。

一つ、合格した際には私が一緒に上京すること。

一つ、合格したのであらば決して投げ出さないこと。

一つ、生活習慣を改善すること。

この3つの条件である。

なんだかんだ言って両親もレイちゃんには甘い。

今は家を開けているが兄さんもレイちゃんに甘い。

家族全員、いや、一族皆がレイちゃんに甘いのである。

仕方ないよね、可愛いんだから。

 

 

そんなこんなでレイちゃんがオーディションに応募してから一週間が経った頃。

 

「アンちゃーん!!」

 

レイちゃんが大声をあげながらバタバタとリビングに駆け込んできた。

現在は夕食の仕込み中であるが、手を止めてキッチンからリビングに移動する。

 

「アンちゃん!

 ついに着たで!」

 

レイちゃんはテーブルにノートパソコンを置いて画面を私に見せる。

メール受信画面であり、そこには未読のマークが付いたメールが1件ある。

件題は『リビングライブ二期生オーディション一次審査合否通知』と書かれている。

メールを開かないとどちらかが分からないというのは担当の遊び心か、はたまた性格が悪いからなのか。

 

「で、開かんの?」

 

「無理ッ!

 怖いやんかこんなん!

 なんで合否通知やねん!

 合格通知か不合格通知か件題でわかるようにせぇって!」

 

私の問いにレイちゃんは半狂乱で通知に対してキレ気味のツッコミを入れた。

 

「まぁ、レイちゃんの言いたいことはわかるけど開かんと先に進まんよ?」

 

「分かってるよ!

 だから、開けてやアンちゃん!

 一生のお願い!」

 

レイちゃんは両手を合わせて私にお願いする。

豆知識だが『一生のお願い』は『一生の内に何度も使われるお願い』の略だ。

可愛い女の子の頼みを聞いてしまうのは人として当然のことだと思う。

可愛い妹の頼みなら尚更である。

 

「別に構わんよ

 じゃあ、開けるで」

 

私はパッド部分を操作し、件のメール部分にカーソルを合わせた。

 

「ちょっと待って!」

 

すーっはーっ、と深呼吸するレイちゃん。

その間手を止めてレイちゃんの緊張がほぐれるのを待つ。

 

「よしッ!

 もう大丈夫」

 

「それじゃ、開きますよ」

 

パッド部分をダブルクリックしてメールを開く。

そこにはでかでかと一次審査合格と書かれていた。

しかしながら、レイちゃんの声は一向に聞こえてこない。

いや、ぅぅぅといったような小さな唸り声は聞こえてくる。

レイちゃんの方に目をやると、顔を画面から逸らし、薄目で画面を確認しようとしている姿が目に入った。

 

「アンちゃん…?

 合格してる…?」

 

頑なに目を開こうとしないレイちゃんに、「いや、自分で確認しろや」と思ったけど口にはしない。

レイちゃんは可愛いからな。

可愛いは正義なのだ。

 

「おめでとう」

 

私は拍手をしながらそう答えた。

一瞬ぽかんとした表情になるレイちゃん。

最終回っぽい雰囲気を出しているが、まだ物語はスタートしていない。

 

「え?!

 マジで?!」

 

レイちゃんはガバッとノートパソコンを掴み、食い入るように画面を凝視した。

 

「ご、合格…!!

 アンちゃん!!

 一次審査合格!!」

 

やったー!!と両手を高く上げるレイちゃん。

某海外ドラマの1シーンを思い出すほどの渾身のヤッターである。

ちなみにパソコンからは手を放していたので放り投げて壊れたといった心配はないし、時空間移動もしていない。

 

「レイちゃん、喜ぶのも大事だけど二次審査の内容とかもあるからちゃんと本文を読もうね」

 

「あ、そうだね

 確認しなきゃ」

 

そう言ってレイちゃんはメールに記載された情報を確認し始めた。

ちなみに一次審査は書類審査であった。

履歴書と5分前後の自己PR動画を送付するだけ。

『瀬戸内のローレライ』を自称するレイちゃんは歌動画で勝負を挑み、見事に勝利したのだ。

 

「二次審査は…免除だって」

 

免除という言葉に私は疑問を持った。

レイちゃんも持っているだろう。

この界隈のことはよく知らないが、よくあることなのか?

 

「理由とか書いてる?」

 

「えーっと…

 本来は電話で質疑応答とかをするのが二次審査らしいんだけど、採用担当と上司の人の判断で免除になったらしいよ

 次は最終審査になるらしいから、二次審査期間後に面接に来れる日と時間帯を教えてほしいって」

 

「なるほどなぁ…」

 

免除の理由はよく分からんかったが、それだけレイちゃんが魅力的だったということで納得しよう。

見る目があるな、リビングライブ!

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