うちの名前は
今年高校生になったばかりの青春真っ盛りな15歳児です。
まぁ、1回も高校には通ってないんやけどね!
頭の中でドカーッと大爆笑が起きる。
妄想くんは何でも大爆笑に変えてくれて頼りになるなぁ。
しかしながら現実は、世間は厳しんじゃ…。
自虐ネタを現実でやるとドン引きされて友達から距離置かれてしまうんよね。
まぁ、そもそも友達おらんのやけどね!
頭の中で以下略。
現在脳内フェスティバルの脳内エレクトリカルパレードで脳内麻薬がドバドバのドヴァーキンの真っ最中だ。
何故こんなにうちのテンションがぶっ飛んでるのかというと、何とリビングライブ二期生募集オーディションに合格し、念願のバーチャルライバーとして活動することが決まったからだ。
『どうぞお気をつけてお帰りください』ではなく、『
うちは
圧倒的ッ…感謝ッ…!
いや、圧倒的感謝じゃねぇんよな!
黒服になりたくて面接に来たわけじゃねぇんよ!
コホン、改めまして私、天原レイラはリビングライブの一員となりました。
夢への第一歩である。
嬉しみが溢れ出して止まらない。
さて、ぶっ飛んだテンションで最終審査を終えたうちはルンルンステップでアンちゃんの待つ待合スペースへと戻る。
うちが合格したと聞いたらどんな顔をするだろうか。
期待に胸を膨らませ、待合スペースに辿り着くと同時に、ソファーに横になるアンちゃんの姿が目に入った。
「アンちゃん?!」
目の前の状況に混乱してしまい、うちはソファーに足をぶつけながらもアンちゃんの元へ駆けつけ、名前を呼びかけながら肩を掴んで身体を揺らす。
「う、うぅぅ…」
気持ち悪そうな呻き声が微かに聞こえた。
どうやら最悪の状態は回避されたようだ。
うちは安堵の息を漏らし、ソファーの前に跪いてアンちゃんを抱きしめた。
「苦労をかけるねぇ、レイちゃんや」
「おとっつぁん、それは言わない約束でしょ」
このやり取りに二人してフフと笑みをこぼす。
パチリと目を開いたアンちゃんは、上体を起こしてソファーの背もたれに背中を預けた。
フーっと大きく息を吐いて辺りに視線を彷徨わせる。
「あー…寝てたわ
意識を刈り取るタイプの死神に反省を促されそう」
「お疲れ様やね、ほんま」
意味不明な事を呟きながら、ふわぁーっとあくびをするアンちゃんに労いの言葉をかけながら、うちはアンちゃんの隣に腰を下ろした。
うちのワガママのために一緒に東京に来てくれたんだ。
慣れない旅で疲れが溜まっているのかもしれない。
少し罪悪感が湧いてしまう。
「いや、お疲れ様はこっちのセリフよ
面接終わったんやろ?」
「おかげさまでその場で合格もらったよ!
すごいやろ!」
すごいすごい!おめでとう!とうちの肩を抱いて頭を撫でてくれるアンちゃん。
褒めてくれるのが嬉しくて、これだけでも合格した甲斐があったと言える。
「流石はレイちゃん、期待を裏切らない
日本の、いや、世界の至宝やね
これからは同期として頑張っていこうね」
「うん!
同期として頑張っていこうね!」
うちもアンちゃんの肩を抱き、空いた手を天高く振り上げた。
「ん?
同期?」
同期ってなんだ?
振り向かないことではないのは確かだが、同期と言った?
動機かもしれないし、動悸かもしれない。
「そう、同期
レイちゃんが面接してる間に偉い人にスカウトされちゃってね
スカウト枠でリビングライブ二期生に採用されたって訳よ」
美しいって罪よね、と笑いながら語るアンちゃんに、掛ける言葉が咄嗟に出てこない。
突然のことに思考がフリーズしてしまったようだ。
「レイちゃん、私もライバーとして頑張っていくよ
だから、見ててね
天原アナスタシアのライバーとしての生き様を」
アンちゃんはうちの肩から手を離して立ち上がった
そして、真っ直ぐにうちの瞳を見つめる。
「だから、見せてね
天原レイラの全力を
ライバーとしての生き様を」
アンちゃんはリビングライブのライバーとして、うちの同期として、友として、ライバルとして、共に歩いて行こうと手を差し出した。
思考が再起動する。
アンちゃんが言った言葉を頭ではなく心で理解した。
うちは迷いなくその手を取って立ち上がった。
「うん、目に焼き付けるよ、アンちゃん
だから、うちの勇姿も目に焼き付けてね」
微笑んで頷くアンちゃんの手を離し、目の前で拳を握った
うちとアンちゃんのライバーとしての人生がここから始まるのだ。
どんなに道が険しくとも進むことを諦めたりはしない。
歩み続けるのだ。
過ぎた過去を悔いるのではなく、訪れる未来に思いを馳せる。
やってやれないことはない。
うちは解いた拳を頭上に挙げて人差し指を天高く差した。
「お見せしよう、天原レイラの往く道を!」