ベアータ・ハルヴァー 鉄道警察官のウィッチ
ウンター・ハンドラ 郵便車乗務の郵便局員
アレッタ・デ・フラーフ 隻眼の黒いスーツの女
ベアータの突入により、居合わせた三人がそれぞれに銃口を向ける重々しい空気が広がった郵便車。その車内の静寂を破ったのは車両真ん中にいた郵便局員であった。
「皆さん、互いに人間ではありませんか。この連合軍の命運の一端を握る列車で同士討ちなんて何も生まない、無意味ですよ。」
そう言うと郵便局員は率先して自動拳銃を懐にしまう。二人に銃口を向けられている中、一番戦闘とは遠い様に感じる郵便局員の態大した度胸と冷静な態度にベアータは関心するとともに不信感も抱いた。
「それもそうだね、僕も彼女に賛成かな。今は人類で争っている場合じゃないからね。」
スーツの女も郵便局員に続いてすぐに銃口を下げた、穏やかな口調で常に片目を瞑っている彼女も妙に落ち着いていてベアータには怪しく見える。とはいえ一番戦闘に慣れているだろう立場の自分がいつまでも銃口を向け続けるのも気が引けたためベアータも二人に続いて銃口を下げる。それを見て郵便局員が口を開いた
「無事全員が人類の言葉を理解できて和解できたみたいで何よりです。それにしてもだいぶお慌てのご様子でしたが何事でしょうか?」
何も知らなそうなでもわざとらしい気もする雰囲気で聞いてきた郵便局員にベアータは躊躇いを感じながらも答える
「どうやらこの列車に爆弾を持っている人間が居ます。それも最低でも二人です、そr」
「なるほど。君の動き的にその人物はこの車両にいるといった感じかな?」
言い終わる前にスーツの女が口を挟んでくる、まるであるのを知っているかのような速さでありベアータの不信感は増すばかりである。とはいえ、冷静で反応が早いというだけでは二人を犯人とすることは出来ない。まずは身分の確認と荷物検査をしなければならない、ベアータは二人に近づきその旨を告げる。
「かまいませんよ。」
「もちろん構わないよ。」
即答である、余程自身があるとみえる。
「では自己紹介と身分証の提示をお願いします。」
日頃こんな事態に対処したことなどなく不慣れ、更に不信感からぶっきらぼうな態度になるベアータに二人は実に誠実に応じた。
「私はウンター・ハンドラ。オストマルクの郵便局員です、今日はこの列車の郵便整理の担当として乗務させていただいてます。」
郵便局員のウンターは先程向けてきた物の他に怪しいものを持っていなかった
「僕はアレッタ・デ・フラーフ。ブリタニア空軍のウィッチだよ、特命を受けて前線に行くためにこの列車に乗車したよ。ほら、指示書もある。」
郵便局員に何もなかった今本命となったこのウィッチも爆薬を持っていなかった。ベアータは二人をひどく偏見によって犯人と思い込んでいたことに罪悪感を覚えたと同時に、この車両に居る人物は誰も爆薬を持っていない現実に頭を抱える事となった。
「うーん・・・これは一体・・・誰も爆薬を持っていないなんて・・・」
「私はこの車両ではアレッタさんしか見かけていないですね。私は郵便物の整理をしていたのでウロウロはしていましたが爆薬など持ってません」
思わずぼやくベアータにウンターが語る。
アレッタ「僕がこの車両に来たときにはウンターさんしか居なかったよ。それに誰ともすれ違わなかったね」
アレッタも続いて付け加える、この時点で一応はウンターにはアリバイが出来アレッタは爆薬を持っていないので物証がない状態になり二人を主要な容疑者とするには行かなくなった。しかしこの列車に爆薬がどこかしらにある事実はまちがいない、改めて爆薬の位置を確認するともうこの車両には反応がなくなっていた。
あったのものがない、つまり火薬は未だに動いている事になる。ベアータは意を決した、目の前の二人をとりあえず信頼し火薬を探し出すしかない。この列車のいつ何処で爆発するかわからない今、とりあえずは犯人でなさ気な二人に協力を要請する、ベアータにはこれしか解決の糸口はないように思えたのだ。
「挨拶が遅れました、私はこの列車の護衛を担当している鉄道警察官のベアータ・ハルヴァーです。早速なのですがお二人にお願いがあります、どうか・・・この列車の中を移動する爆薬を探すのを手伝ってくれませんか?」
「もちろん構わないよ、同じ人類の為に戦うウィッチ同士じゃないか。僕の命にも関わるしね」
アレッタが快諾して優しげな笑顔を向ける
「是非協力させてください。同じ列車に乗務したのも何かの縁でしょうしこの列車を守るのは私の職務でもあります、共に爆薬を探し出しましょう。」
ウンターが力のこもった声で握手しながら答える。
列車にいた一次は犯人と疑った二人の協力を得れ一安心すると同時に、正体の掴めなかった移動する爆薬への焦りがベアータに募った。犯人は誰なのか、こんなことをする目的は何なのか、何一つわからない。ただ人類の醜い争いを直視し続けなければならない現状にうんざりしながら窓から顔を出し列車後方を眺める。
「・・・ふう・・爆薬は5両目と13両目にありますね、行きましょう」
ベアータが一息ついてから力強く言う
「ああ、行こうか」
「はい、行きましょうか」
二人はやる気十分といった様子で答えた。三人は続いてハシゴを登り屋根上に上がると、煤煙にさらされながら列車後方を見据えるとベアータを先頭に屋根を飛び越えて五両目へと向かった。全20両の貨物列車に存在する2つの絶え間なく移動する爆薬と三人のウィッチの追いかけっこが始まる。
第二話 完