ベアータ・ハルヴァー 鉄道警察官
アレッタ・デ・フラーフ ブリタニア空軍のウィッチ
ウンター・ハンドラ 郵便局員
ゼルマ・ローマン カールスラントの警察官
闇夜を行く列車の上を3つの影が飛び跳ねていく、その3つの影は列車5両目と6両目の間に消えていった。
「ふぅ、走っている列車の屋根を走るというのはなかなかにスリリングなものですね。」
2番目の影、郵便局員のウンター・ハンドラが服を払いながら全く思ってもいなそうな調子で感想を述べる。それを聞いて1番目の影、鉄道警察官のベアータ・ハルヴァーが返す。
「全然そうは・・・見えない・・ですけどね・・・」
息が上がり足が震え、声が震えている(よっぽど自分のほうがスリリングに感じた)とベアータは内心ぼやく。
「君は大分スリルを味わえたようだねぇ。僕は爽快だったな。」
気楽そうに3つ目の影、ブリタニア空軍のアレッタ・デ・フラーフがベアータの背中を擦る。ついさっきようやく和解したばかりの3人はすでに屋根を飛び越えただけで友情でも蓄積したような、和やかな雰囲気を醸し出していた。しかし今回の目的は交流会ではなく一刻を争う事態である、息を少し整えると3人は武器を構え5両目の車両に入り中を確認した。車内はほぼ満載に積まれた荷物で一人がようやく通れるかもしれない程度しか隙間がない、こんな中に犯人が居るとすれば見つけるのは困難である。また同時にもし爆薬の起爆を許せばこれだけの物資が失われることも示していた。早急に爆薬を発見しなければならないとの思いに駆られながらベアータは荷物をかき分けて車内を捜索する。ベアータは能力を使うことによって隠されていようと爆薬を可視化できるが代わりにその間は視界がほぼ暗転する、もし1人ならば万が一にもテロリストがいるかもしれない車両でその様な無防備な状態になるのは避けたかったが今は2人がいる躊躇いなく能力を使う事ができた。
「・・・居た!車両の前よりの箱の山の中に居る!」
見えた瞬間思わず叫んでしまった、まだ視界が暗転している中ガタタッと荷物が倒れた音と共に銃撃音がして思わずしゃがみ込む。数発の弾丸が放たれた様だが恐怖で目が開けられずにいると、音が収まると同時に聞き慣れない声が叫んだ。
「わかったわかった降参する!俺はカールスラントのオルポの者だ!」
ゆっくりと目を開くと、目の前にはウンターが庇うように居て木箱の隙間から緑の如何にもカールスラントの軍服といった形の制服を着た女が両手を上げて出てくるのが見えた。アレッタがカールスラント人に拳銃を向けた拳銃を下ろすが車内に広がる緊張感は消えない、オルポはカールスラントの警察組織であるが列車担当のベアータにはこんな警察官が一緒に乗車すると言う旨の連絡は聞いていないのだ。ウンターも知らないのか強く自称オルポの女を不審そうに睨みつけている。
「ゼルマ・ローマンだ、嘘は無い・・・ほら身分証だ・・見るにこの列車の護衛のウィッチか?」
自称オルポの警察官は身分証と武器を投げて放棄する、それを見てようやく我を思い出したようにベアータは腰を上げ身分証を確認しに行く。照らし合わせて見るに本当にオルポの警察官のようであるが、そうならばなぜこの警察官は爆薬などを持っているのだろうか。身分を確認しても尚不信感に包まれながら答える
「はい、鉄道警察官のベアータ・ハルヴァーです、この列車の護衛任務を任されています。こちらはブリタニアのアレッタ・デ・フラーフさん、あちらは郵便車担当の・・・ウンターさん撃たれたんですか!」
全員を見ながら紹介する、改めて見るにウンターは自分をかばった際に怪我をしたのか左腕から流血していた。咄嗟に駆け寄り自らのカバンから医薬品袋を取り出そうとするとウンターはそれを止めてゼルマを指差し言った
「こんなのかすり傷ですよ、奇襲だったので貰いましたが大丈夫です。それより先に彼女の荷物検査を、それがあなたの仕事ですよ。」
あまりに冷静なウンターの態度に自然と納得してしまい心配ながらゼルマの荷物検査を行う、ポケットからは時限式の爆弾が見つかり動く爆薬1つ目の正体は彼女に間違いなさそうである。ひとまずこのテロリストを拘束しなければならないが、その前にまずはこの時限爆弾を解除しなければならない。そう思いよくよく爆弾を見るとコードが切られ時計は止まっている
「・・・黙って乗っていたのは謝るが、俺はテロリストじゃないぞ。この列車が狙われていることが俺の調査でわかったんだ。運転士や乗務員全員が怪しいからな、内密な任務として乗ってたが・・・杞憂だったようだな。改めてすまない」
爆弾を眺めていると背後からゼルマが誤ってきた、なるほど理解できた。つまりのところこの列車がテロリストに狙われていることに間違いはなく、この警察官は私達すらを疑い寧ろ私より先に爆弾探しをしていたのである。とはいえ私含めこの列車に居る4人、その内自分とウンターの二人は正式に書類上も乗務していることが明記されている。が逆に言えば二人も不正にしかもその理由は互いの国家の不信感という無意味なことから乗っているのだ。テロリストの件だけでも十二分に人類が足並みを揃えられていないのをまざまざと判らされたのに、今は間違いなく味方である警察官同士ですら相互不信に陥り疑い合ってこうして連絡を故意に怠り結果として無意味な怪我人を出しているのである。何が信じられるのかわかれば判るほどわからなくなった。
オストマルク、ガリア、ブリタニア、カールスラント。各国の不信感の表れを載せた列車は闇夜のガリアの大地を緩やかに進んでいく、未だもう一つの爆薬の危機のある中で。
第三話 完
ちょっと展開が急すぎる気もしますし、内容も薄い気もしますが生暖かい目でご覧ください。