死者は戻っては来ない。
それは誰もが知っていること。
けれど、魂の行き着く先は誰も知らない。
遥か昔から、遠い未来まで──
それは変わることはないだろう。
墓の前で手を合わせる。
「…誰が泣くかってんだよ。」
自分が死んでも泣くな。
以前そんなことを言った人物に向けて嫌味ったらしくそう言ってやった…聞こえているのかどうかはわからないが。
お墓の前で泣かないでください…とかいうそんな歌なかったっけ…ないか。
「元気でやってんのかね?」
どこにいるのか…それもわからないけど。
そもそも、元気でっていうのもおかしな話か。
「俺は泣かないからさ…」
いつかはわからないその時まで…俺は精一杯生きてみるからさ…だから…
「アンタも達者でな。」
部下を持つというのは以前の俺ならば
考えられないことだった。
自分自身、誰かの上に立つような人間(今は妖怪だが)だとは思っていないし、そういうガラでもない。俺のどこに惚れ込んだのかはわからないが
近頃はそういった連中が増えつつあった。
自分を慕ってくれているのだから悪い気はしないのだが…
「戸愚呂様!」
「お疲れ様です!」
全員が一様にこんな感じなのだ。
むず痒いったらありゃしない。
慣れていないんだよこういうのは。
そもそも部下にしてほしいっていうのも断ってはいるんだが…こう見えて押しには弱いもんで…気づいたら何十人をも越える大所帯となっていた。
正直言って全員を詳しく把握しているかと言われると怪しいところなのだが…皆、純粋に俺を慕ってくれているというのはわかる。だから、邪険にしたりはしない。
そんな部下達は様々な情報を俺にくれたりもする。
その情報の中に気になるものが一つあった。
「
朱雀といえば
「えぇ、何でもやったのは一人の人間の少年だそうで…」
やはり、そのまさかか…!
「…そいつはウラメシとかいう名前じゃないかね?」
「いえ、名前まではわかりませんが…何でも最近
霊界に雇われたとか…他にも、奥義破りを専門とする妖怪の
「…そうか。」
乱童と朱雀を倒した少年。
十中八九間違いない…
霊界探偵の
誰もが知る物語の主人公だ。
…嬉しいねェ。
ずっと待っていた。
お前が俺の目の前に現れるのも…そう遠くはないのだな。
無論、それまでお前が生きていればの話だが。
その前に死ぬようなそんなヤワな男ではないだろう。
「ずいぶんと嬉しそうだな。」
「ん?」
珍しく兄者が話しかけてきた。
「お前がそんな風に感情を表に出すことなど、数十年はなかったことだ…ただの人間の小僧がそんなに気になるのか?」
「あぁ、まぁ…」
「オレ達の脅威になるとはとても思えないがな。」
「今は…ね。」
それにただの人間ならそうだが、あいにくとヤツはそうじゃない。
なんせ、
…何より主人公だし。
「くっくっく…」
何はともあれ、久しぶりに気持ちが昂る。
ついに、戦えるのだから。
ずっとずっと待ち望んでいた相手と。
浦飯幽助と戸愚呂。
暗黒武術会の決勝戦で文字通り死力を尽くし戦った二人。
どちらも限界以上の力を出しきった壮絶な戦い。
その戦いに戸愚呂は敗れた。
限界を越えたがゆえに──
仲間も誇りも…何もかもを捨て、強さを追い求め続けた男の最期は…どこか嬉しそうでもあった。
だが、そうなるはずだった未来はもうどこにもない。
…俺が辿るのは一体どんな道筋なのだろう。