冥獄界へは逝きたくない   作:TAKACHANKUN

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決戦開始

 

「やぁ…よく来たね。」

 

どれほどこの瞬間を待ちわびたことか…

 

発する霊気こそまだまだ微弱なものだが…中々の

逸材達だ。この目ではっきりと見たからこそわかる。

 

物語の中でも主要な人物のこの二人。

…生で見れて感動…と言いたいところだが、彼らにとって俺は敵である。ゆっくり談笑というわけにもいくまい。

 

「けっ!ちっとも妖気を感じねー!とんだハッタリ野郎だぜ!」

 

「いや…うまくは言えねーが…あいつは何だか得体の知れねェ感じがする…油断しないほうがいいぜ!」

 

桑原の発した言葉を浦飯が即座に否定する。

俺の強さを本能で感じ取ったか…さすがにそういった勘は鋭いな。

 

「彼の言うとおりだ…妖怪を見かけだけで判断するのはよくないねェ…クワバラ君。」

 

 

 

 

「そんなに怖けりゃそこで一生ビビッときやがれ!オレ一人でもやってやらァ!」

 

「あァ!?そうは言ってねーだろーが!」

 

…と思ったら、二人とも俺を無視して喧嘩してるよ…すごく恥ずかしいんだが…あと、さっさと始めたいんだが…早く終わらせてくれよ。

 

 

 

 

「とりあえず、続きはあのグラサンヤローをブッ倒してからだ!」

 

「おうよ!」

 

どうやら二人して俺をブッ倒す方向で話はまとまったようだ。

ちなみに一分くらい待った。

敵の俺が言うのも何だが大丈夫かこの二人は…

それにしてもグラサンヤローとは酷いな。

 

「あぁ、そういえば自己紹介がまだだったねェ…

戸愚呂だ。よろしく頼むよお二人さん。」

 

「よろしくする気はねーな!男、桑原和真!さっさとてめーをぶっ倒して、雪菜さんを救い出してやらァ!」

 

残念ながらよろしくする気はないようだ。

 

しかし、えらく気合いが入っているな…そういや彼女に一目惚れしたんだったっけ。

 

「惚れた女のためか…泣かせるねェ。」

 

「てめーらも…彼女と同じ妖怪だろーが!同じ妖怪が人間に利用されてんだぜ?本当に何とも思わねーのかよ!?」

 

「別に何も…強いて言うならば、利用されるほうが悪いのさ。弱者は強者の餌になる。それがこの世の道理ってもんだろう?」

 

「…そうかよ!なら、もう何も言わねー!遠慮なく細切れにしてやるぜ!」

 

わかりあえないと悟ったか、桑原はそう吐き捨てると霊気の剣を作り出した。

 

彼の代名詞ともいえる通称霊剣(れいけん)

これも生で見れて感動…と言いたいところだが、こっちもぼちぼち戦闘態勢に入らなきゃいかん。

 

「霊気の物質化能力か…いいねェ。なら、こっちも…目には目をだ…兄者。」

 

「おう!」

 

骨が折れるような音を立てながら兄者が変形する。兄者の武態…久しぶりに見るがやっぱり気味が悪い。

 

「なんだァ!?肩に乗ってたチビが…剣に変形しやがった…!」

 

「目には目を…剣には剣を…兄者は特異な体質でね…体をあらゆるものに変形させることができるんだ…そして俺は…」

 

気分が高揚する。

こんな感覚はいつ以来だろうか。

 

お礼と言っちゃあなんだが、特別にお前らも30%で相手をしてやるか。

 

「ぬうぅぅぅぅぅぅぁぁ!!」

 

「なにィ!グラサンヤローがどんどんデカくなっていきやがる!」

 

「…俺はそんな兄者の特性を十二分に発揮できる肉体を持つ!」

 

「…マジかよ…発する妖気もさっきとは比べものにならねェ…!」

 

さっきまでちっとも妖気を感じねーと言っていた

桑原もようやく俺の恐ろしさに気づいたようだ。

 

 

「もう一度自己紹介しておこうか。俺達は

戸愚呂兄弟!冥土の土産に覚えておくんだなァ!」

 

 

「来るぞ!」

 

そう言い、浦飯が構えるが…

 

「なっ…!」

 

一瞬で目の前に現れた俺に驚いている様子だ。

 

「うぉっ!?」

 

初撃は当たらず、かろうじて躱された。

良い身のこなしだ。あれを躱すとは上出来。

 

「っの野郎!喰らいやが…!?」

 

「浦飯ィ!後ろだ!」

 

霊丸を放とうとした浦飯の背後に回り込む。

 

「ちっ!」

 

振り向きざま、またこちらへ霊丸を放とうとするが…

 

「ちと遅いな…ぬんっ!」

 

「がぁっ!」

 

顔面にパンチをくれてやったが、思ったほど手応えはなかった…どうやらうまく衝撃をそらされたらしい。

 

「致命傷は避けたようだな…良い反応だ。」

 

「くそったれ…!浦飯ィ!仇はとってやらァ!」

 

今度は桑原が猛然と突っ込んでくる。

多分死んでないと思うけど?

 

元気なのはいいが、いかんせん動きが直線的すぎる。当ててくださいと言ってるようなものだ。

 

「ぐおっ!?ぐ…ぎぎ…な、なんてェバカ力だ…」

 

言わんこっちゃない。

完全に受け止められるとは思わなかったが。

 

「もうちょっと頭を使ったらどうかね?」

 

「う、るせェ…!」

 

「フ…忠告は聞くものだ。」

 

俺の蹴りがヒットし、桑原は大きく吹き飛んだ。

つい力を入れすぎちまった…生きてるか?

 

「…ぐ、ちくしょお!」

 

生きてたか。

タフなやつだ…

 

「よそ見してんじゃねー!」

 

「んっ!?」

 

浦飯!コイツいつの間に…しかも霊丸の構えに入っている。これでは避けきれん。

 

「そのグラサンごとふっ飛ばしてやるぜ!」

 

「くっ!」

 

「今度こそ喰らいやがれ…!!」

 

霊丸が…来る!

 


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