冥獄界へは逝きたくない   作:TAKACHANKUN

8 / 18

思ったよりもお気に入りが増えていて驚きました。
見切り発車なうえ、稚拙な文章ですがこれからもお付き合いいただけると嬉しいです。


鴉と武威

「ふぅぅぅ…」

 

ここまで長かった。

ようやく能力の制御が効くようになった。

今なら5%単位での調整(コントロール)もお手の物である。

 

「お前もオレのような便利で応用の効く

能力なら良かったんだがな。」

 

は?俺の能力ディスってんの?

許さんぞ貴様。

 

「気味が悪いねェ…」

 

あちこち変形させながら喋らないで

ほしいんだが…

 

「そうか?オレは結構気に入っているん

だがな。」

 

わかったからやめてくれる?

トラウマになるわ。

 

「ところで…どうしてるだろうな…あいつは。」

 

「何の話だ?」

 

「幻海さ。お前も気になってるんじゃないのか?」

 

「…別に。」

 

「くくく…素直じゃないな。」

 

うるせぇ。

余計なお世話だよ。

 

「それにしてもいい女だったよなぁ…

勿体ないことをしたもんだ。」

 

挽き肉にすんぞお前。

 

「そう怒るな…冗談だよ。」

 

…弟もよくこんなのと長いこと一緒にいれたもんだよな…俺なんて何度バラバラにして魚のエサにしてやろうと思ったことかわからんっていうのに。

 

「!!」

 

と、そんなことを思っていたら…

とてつもなくドデカい気が近づいてくるのを

感じた。

 

「…兄者。」

 

「…あぁ、どうやら今までの連中とは違うようだな。」

 

今まで感じたことのないほどの…巨大で禍々しい妖気。しかも、それが二つ。

 

明らかにこちらへと近づいてくる。

通りすがり…というわけでもなさそうだ。

 

さて…鬼が出るか蛇が出るか…

 

 

 

現れたのはマスクをした長髪の男と

がっしりとした鎧を着込んだ男だった。

 

…見覚えのある二人。

間違いない…俺はこの二人を知っている。

 

…といっても、()()()で会うのは

初めてだが。

 

 

(からす)武威(ぶい)

 

 

後にチームを組み、戸愚呂チームとして

暗黒武術会でともに戦う仲間…いや、仲間というには少々語弊があるか…

 

そうか…誰かと思えばお前達か。

 

「何が可笑しい?」

 

鴉が不思議そうに尋ねてくる。

 

「いや、すまない…嬉しかったものでね…つい。」

 

だって、鴉と武威だぜ?

本物よ本物?

テンション上がるの不可避だろ。

 

「あぁ、自己紹介はいいよ。お前達のことは

よく知っているからねェ…」

 

「そうか、それは手間が省ける。」

 

「わざわざ談笑しに来たわけでもあるまい?やるなら早く始めちまいたいんだが…」

 

「話が早くて助かるよ。そう来なくては。」

 

「兄者。」

 

「あぁ。」

 

バキバキと音を立てながら兄者が剣へと変形する。毎度思うがその音何とかならない?

 

「はあぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

「ほう…!」

 

「…!!」

 

鴉と武威の表情が驚愕に染まる。

いや、武威はわからんかった。

60%…果たしてどこまでヤツらに通用するのか。

 

「なるほど、自らの妖気を自在にコントロールできるのか。」

 

「残念ながら、これしか能がないものでね…他に見せられるものは何もないよ。」

 

「いいのか?むざむざ話してしまって。ブラフというようなわけでもなさそうだが?」

 

「大した問題じゃあないさ。」

 

「面白い…噂の戸愚呂兄弟がどんなものか確かめさせてもらうぞ。」

 

…噂ね。

 

ガシャ…と大きな音がしたほうを見ると、今まで沈黙を貫いていた武威が鎧をはずすところだった。

 

「いいのかね?せっかくの鎧を…」

 

「…心配なら無用だ。オレの鎧は相手からの攻撃を防ぐためのものではないのでな。」

 

着けたままでは勝てないと判断したか。

鎧の下からは渋めのおじさまが姿を現した。

ウチのオカンが好きそうなタイプ。

 

…そういや、オカン元気かな…今さらだけど。

早々に死んじまうなんて悪いことしちまったな。

でも安心してくれ(?)今はマッチョな男に生まれ変わって頑張ってるよ。

 

「来るぞ!」

 

兄者の一言で我に返る。

…目の前に鴉が迫っていた。

 

「あ」

 

「もう遅い。」

 

轟音と衝撃。

並の人間や妖怪なら余裕で五体がコナゴナに吹き飛んでいることだろう。

 

「…無傷か。」

 

危なかった…兄者が盾に変形してくれなければ手痛いダメージを喰らっていただろう。

すまん…今回ばかりは助かった。

これからはほんのちょっとだけ優しくしてやるよ。

 

「間一髪だったぞ…お前ともあろう者が油断したか?」

 

だからごめんて。

もう油断はせんから。

 

「爆弾か。」

 

「…ご名答。オレ達のことを知っているというのはハッタリではないようだな。」

 

ごめん、違うのよ。

お前の能力は事前に予習済みなんだ。

不可抗力だから許してくれ。

 

「しかし、足元がお留守だな。」

 

「!」

 

どこかで聞いたような台詞。

同時に俺の両足が何かに固定された。

見ると、足に悪趣味なデザインの何かが

絡みついていた。

 

マズイ…爆弾…!

油断しないって数秒前に誓ったばかりだってのに…

 

地下爆弾(マッデイボム)

 

「ぐっ…!」

 

結構痛い。

…幸い動けないほどのダメージではないが。

機動力を削ぎにくるとは中々にエグいな(アイツ)

 

「どうする?別れて戦うか?」

 

分が悪いと判断したのか、兄者からそんな提案があった。

 

うん…最初からそうすれば良かったかも。

でも、今さら格好悪いしな…

 

「いや、大したことない…かすり傷だ。このままで問題はないよ。」

 

「ふっ、強がりもいつまで持つかな?」

 

やかましい。

懐に入っちまえばこっちのものなんだよ。

まずはお前だ鴉。

 

「むっ…」

 

よし、絶好の間合いだ。

ガードするしかない。

腕ごとぶち抜いて…

 

「オレを忘れていないか?」

 

武威!

何てタイミングで割り込んでくるんだお前は。

 

「きくねェ…」

 

殴られてふっ飛ぶなんて初めてだ。

さすがに強い。このままでは、ちと厳しいか…

 

「立ちあがったところ悪いが…囲まれているぞ。」

 

なんと、周囲に無数の爆弾がスタンバイ。

容赦ないねェ…

 

「…BANG!」

 

 

 

 

 

 

 

「く、くく…くっくっく。」

 

追い詰められているはずなのに、笑いが溢れる。

 

「恐怖のあまりおかしくなった…というわけではなさそうだな。」

 

「…何故だろうねェ…こんなに楽しくて愉快なのは。」

 

「今のお前は心底嬉しいのだろうな。死というものを実感させてくれる相手にめぐり会えて…退屈だったろう?だが安心しろ…それももう終わる。」

 

終わる?俺は死ぬのか?

 

「…いかないねェ。」

 

「何?」

 

「まだ死ぬワケにはいかないねェ。」

 

「強がりはよせ。」

 

「感謝するよ…アンタ達には…60%では失礼だったようだな。」

 

実戦に勝る修行はない…

まさにその通りだったな。

 

「ならば、見せてみろ。」

 

「…いいだろう…望み通り見せてやるよ…」

 

初めてだが、今がその時だ。

今まで無意識のうちになるのを恐れていたこの俺の…

 

 

「…80%の姿をなァッ!!」


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。