仮題【魔術なし 身体能力マシマシ慎二くん】 作:いかのシオカラ
ガラガラガラ
「お、やっときた。遅いよお前ら。時は金なりッて言葉知らない?」
「いやーすまん、来る途中で弓道部の子に片づけ頼まれちゃって」
「まったく衛宮め。あの程度のものなんぞ断ればいいだろうに」
「いやいや、向こうも困ってたみたいだしさ」
「...理由なんて興味ないよ。さっさと座れよ」
「おう、失礼する」
「では...まて間桐。何を読んでいる?」
「今日発売された漫画」
「神聖な学び舎で漫画とはいい度胸だな。...これは没収だ」
「この前お前が割った花瓶」
「!?」
「掃除中に体育の練習だかなんだか知んないけどさ、モップぶつけて地面に落ちて割れちゃったやつ。あれ校長が実費で買ったやつらしくてさ。いやー、たまたま僕の家に同じ奴があったからよかったんだけどさー...」
「...今回だけだぞ」
「サンキュー」
「...あれ慎二、その机の上の紙って?」
「進路希望調査。昨日配られただろ?今書いてたところなんだけど、正直進学以外書くところなくってね、漫画読んで出てきた職業にするわ」
「進路を舐めすぎだ貴様は」
「成績優秀なもんでね。んで、そっちはどうなんだよ」
「俺は柳桐寺を継ぐつもりだ。一応大学は出る予定だがな」
「なんの面白みもない返答ありがとう。...ま、いいんじゃない?んで、衛宮は?」
「あー、えっと、俺はー」
「...なんでどもるんだよ。あんまり決まってない感じ?」
「いや決まっているというか..,なんというか...笑うなよ?」
「それはお前次第だよ」
「なんだよそれ...。まあいいよ」
「俺は、正義の味方になりたい」
「ほう」
「ふーん」
「...笑わないんだな」
「笑うわけなかろう」
「同じく。馬鹿だとは思うけど笑う気にはならないね」
「前に仲良くなった子にこれを言ったら笑われてさ」
「随分とひどいな」
「は、人の夢を笑うやつは大抵夢に折れたやつなんだ。
よかったね、そんなしょうもないやつよりこんな素敵な友人たちに巡り合えて」
「...そうだな」
「なに?なんか不満でもあんの?」
「いや、そうじゃないんだ。ただ...」
「ふむ」
「俺ってさ、憧れの人の夢が凄くきれいだったから正義の味方になりたいんであって、別に俺がなろうとしたわけじゃないんだ」
「...」
「...」
「だから、どうなのかなって」
「...」
「...くだらない」
「え?」
「くだらないねほんと。こんだけ時間使ってそれ?」
「な、おい。俺は真剣に...!」
「じゃあなんで、お前は今日人助けをしたんだ?」
「...それは」
「使命感か、正義の味方になりたいがためか?」
「...」
「お前が僕の知っている衛宮士郎なら違うはずだ。助けたいと思ったから助けたんだろ?誰かの受け売り?なら今漫画読んで決めようとしてる僕はなんだよ。夢や理想なんてもとは誰のものもあるんだ。それをどうこう言ったって先に進めないだろ...って今読んでる漫画に描いてあった」
「かーっ、たまには間桐もいいことを言ったと思ったら」
「たまにはってなんだよ。いつも金言しか言ってないんですけど?」
「あはは」
...
.....
.......
キーンコーンカーンコーン
「おっと、次は移動教室だな。悪いが、先生にカギを頼まれているんで、先に失礼する」
「そっか。じゃあ慎二、二人で行くか」
「むさい男じゃなくて美女がいいんだけどね」
「わがまま言うな」
「...なあ」
「ん?」
「さっき言った話の続きだ」
「さっきって...夢の話のことか」
「そ。いいか衛宮、夢ってのはいつだって否定する奴が現れるんだ。理想が高ければ高いほど厄介になる奴がね。...自分だ。
いつだって自分の夢を否定するのは自分なんだ。お前がもしその夢を貫き通したいなら...自分にだけは絶対負けるな。
その道のりは果てしなく長く険しいものだろうさ。だからこそ、自分に負けて折れるでもなく、答えを急くのでもなくただ歩み続けろ。
いいか、人生は数学だ。覚えた技術で難解な問題に挑み続ける。途中式を書かずに問題を解けば間違えるし、筆を折ってしまえば、そこで終了だ。だからこそ、たとえそこが剣山だろうと歩み続けろ。その道の先にゴールはある。
...以上が僕のお節介だよ」
「それは漫画にあった言葉か?」
「...どうだろうね。さ、とっとといくよ」
「おい、待ってくれよ」
ありきたりな言葉。
ありきたりな風景。
されど、その問答に意味はあり。
弓兵はただ一人、剣の丘にて...
ランキングに乗っている夢を見ました。
普通に夢でした。