仮題【魔術なし 身体能力マシマシ慎二くん】   作:いかのシオカラ

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ちょい短めです


4話

時刻は夜の夜中。

重くなった体をベッドに預け、先ほどのことを振り返る。

 

『まったく、深夜に来たと思ったら...、はい。これで魔力は私、令呪はあなたっていうことで契約できたわ。その代わり二画しかないけどね?あなたは私たちの恩人。でも、私たちは聖杯戦争から身を引いたの。あんまり面倒なことは持ち込まないでね。わかったから頭を上げて...ってああもう、泣きそうな顔しないで頂戴。私たちが悪者みたいじゃない』

 

...キャスターには迷惑をかけた。

手に刻まれた令呪に視線を移す。

自分は本当に何がしたいんだろうか。

聖杯戦争がうんぬんとか言って置いて自分はこのざま。

結局は僕も馬鹿と同じフィールドに立った大馬鹿ってことだ。

 

「ハハ...クソ!...クソクソクソ!」

 

なぜ、僕はアサシンを助けた。

こいつが衛宮たちを殺したらどうするんだ。

殺すつもりはなかったんですー、なんて言うつもりか?

自分の不甲斐なさに苛立ちが募る。

 

「あのー、」

 

「黙れ、今話しかけんな!」

 

「あー、ごめんね」

 

アサシンが現界して話しかけてくる。

流石に熱が入りすぎたか。一度落ち着こう。

深呼吸してアサシンを見つめなおす。

 

アサシン。真名マタ・ハリ

スパイ 女性で検索すれば、

辛うじてヒットするようなマイナー英雄。

本当にギリギリでサーヴァントになれてるような存在。

優れた武功も戦闘能力もなし。

本人も言っていたが諜報と魅了ぐらいが唯一の武器だ。

当然、僕よりも弱い。なんなら遠坂よりも弱い。

所謂ハズレサーヴァントというやつだ。

 

「...悪い、熱くなりすぎた。もう寝るから静かにしてろよ」

 

「ううん、こっちも無理言って現界させて貰ってる身だし...ね。それでなんだけど...」

 

「まだなんかあんの?」

 

「ここにもう一騎いるみたいなんだけど...」

 

「は?もう一騎?」

 

「うん。まあ私たちがこの家に来ても襲ってこないから...向こうも出かたを見てるっぽいけど...マスターは多分妹ちゃんだと思う」

 

あいつも参加してたのか...

拳骨でもして、契約を切らせよう。

まあ、それはそれとしてだ。

こいつを一人にしておけば当然そのサーヴァントに襲われる。

霊体化させておくか?

いやアサシンなら気配遮断があるし大丈夫か。

 

「わかった。なんかあったら起こしてくれ。そん時は対応するから」

 

「ありがと。それでそのー、これ以上はすごく申し訳ないんだけど...」

 

アサシンが毛布の中に入ってくる。

 

「は?ちょお前何して」

 

「こうしたら襲われることはないと思うから...ごめんね?」

 

「確かにそうだけど...」

 

甘い匂いが漂い、アサシンのきわどい部分に視線が向きそうになる。

が、無理やり視線を壁に向け、睡眠の姿勢を取る。

 

「...クソ、勝手にしろよ」

 

「うん、そうするわね」

 

はあ、ほんと明日からどうしよ

 

「やめろ、僕の体に腕をまわすな」

 

それだけ言ったところで睡魔がやってくる。

僕ば意識を手放し、思考も放棄した。

 

...

.....

.......

 

翌朝。

起床し、壁掛け時計で現在の時間を確認する。

 

「うわ、遅刻確定じゃん」

 

8時35分。おそらくホームルームが始まっているだろう。

そういえば今日は桜が朝練でいないんだった...

桜の有難みを再認識したところで

 

「アサシン、いるかー?」

 

虚空に向かって話しかける。

返事はすぐに返ってきた。

 

「はいはーい、いるわよー」

 

「僕はこれから朝食を食べて学校に行くけど、くれぐれも現界して馬鹿な騒ぎは起こすなよ?いいかもう一度言うぞ、現界するな、騒ぎ起こすな。以上だ」

 

「わかってるわよ、それぐらい」

 

「それならよし」

 

一階のリビングにおり、朝食をいただく。

とは言っても生の食パンと以前に買った缶コーヒーだが。

途中アサシンに

 

「食べ盛りなんだからもっといいもの食べないと...」

 

なんてお小言を色々言われたが、全部無視した。

 

「ごちそうさまでした」

 

簡素で少量のため、完食には数分とかからなかった。

玄関に置いたスクールバッグを持ち、靴を履き替える。

 

「いってきます」

 

「いってらっしゃい」

 

「お前も来るんだよ」

 

「そうだった」

 

昨日とは違い、今日は返ってきた。

 

...

.....

.......

 

いつもと変わらない登校風景。

変わっていることと言えば、遅刻確定なので

登校している生徒がほとんど見られないことだろうか。

学校に行けば令呪のことを遠坂と衛宮に聞かれるだろう。

どう言い訳したものか。

 

「...そこの君」

 

「ん?ああ、僕ですか?」

 

不意に青髪でコートを着た男性に話しかけられる。

どこかで見たことあるような気がしたが...気のせいだろう。

 

「そうだ君だ。君が...間桐慎二くんだね」

 

「そうですけど」

 

「少し君と話がしたいんだが...いいかな?」

 

「...」

 

怪しすぎる。

魔術師だろうか?

いずれにせよこんな白昼堂々仕掛ける輩は、

なかなかいないだろう。生徒はいないとはいえ、

普通に一般人がいるこの中で魔術を作動させる

なんてことがあれば、僕はおろか一般人も巻き添えになるし、ならなかったとしても、魔術は秘匿するものという原則に反している。

そうなればあの神父や管理者の遠坂に目を付けられる。

最悪時計塔のやつらも来るかもしれない。

 

「わかった、向こうに公園がある。そこで話そう」

 

「...ありがとう」

 

公園に誘っても大人しくついて来ようとするあたり、

敵対心はなさそうだ。

 

...

.....

.......

 

あれから数分近場の公園に青髪の男を案内。

道中は魔術を使ってくる様子もなかった。

一応アサシンには

 

「なにがあっても現界するな」

 

と忠告しておいた。

 

ガコンっと自動販売機が揺れ、コーヒーが落ちてくる。

自分のものと合わせ二本購入した。

先にベンチに座らせておいた男性のもとに向かい、

隣に腰掛ける。

 

「ほれ、僕からのおごりだ。悪いが未成年でね。酒が欲しいなら近くのコンビニに行ってもらえる?」

 

「いや、ありがとう。あとで飲ませてもらう」

 

「...」

 

飲めばいざというときに使えるんだが...まあいい。

 

「...」

 

「...」

 

「なんか言えよ」

 

「最近学校はどうだね」

 

「誰が日常会話しろって言ったよ!話しかけたってことは理由があるだろ?それを言えっていってんだよ」

 

ボケているんだろうか?

 

「ああ、そういうことか、すまない。まともな会話は久しくてね」

 

「ふーん、そ」

 

魔術師は工房に引きこもるものもいれば、

一人前になるまで家からださないなんてところもあるもんだし、そういうやつもいるんだろう。

 

「...では、話をさせてもらおう。私はここ数日。この冬木の聖杯戦争を観測させてもらっていた。アサシンのマスターとしてね」

 

「もしかして僕が倒したのって」

 

「ああ、私のサーヴァントだ」

 

「ふーん。で、恨みを僕に?」

 

「いや、恨んでなどいないさ。ただ不思議に思ってね」

 

「...」

 

「君は魔術回路も刻印も持たない。運動能力が非常に優れているとはいえ、ただの一般人。現在は偶発的にアサシンのマスターになったとはいえ、元の君は己の身一つでサーヴァントと戦ってきた。...どうしてやつらと戦う?どうして見ぬふりをせず、危険を冒してまで...。私はその理由が聞きたくて、今日君に話しかけた」

 

男は僕の目をまっすぐ見つめ

 

「教えてくれ、どうしてなんだ」

 

「さあ、どうして...」

 

「頼む、教えてくれないだろうか」

 

男性は僕の言葉を遮り、立ち上がって頭を下げた。

...どうやら本気で話をしなければならないらしい。

さっき知り合ったばっかりの名前も知らない男と本音で

語り合うなんてバカバカしい。

バカバカしい...が、どうやら今日の僕はご乱心のようだ。

 

「...意地だよ」

 

「...意地?」

 

「ああ、汚く言えば意地。綺麗に言えば...願い。

僕ってばさ、あんたが言ったように人間というには歪な化け物だ。でも、そんな僕にも友達がいる。毎日馬鹿な冗談言って、くだらないことで笑いあって。そんな青春を僕は気に入ってんのさ」

 

ケラケラと笑いながら続ける。

 

「衛宮と柳桐...ってあー、友達なんだけど、それと退部した僕を気にかけてくれる女生徒に、ドジでゴリラだけどいいやつな魔術師、こんな兄貴を気にかけてくれる妹」

 

自分の日常を思い返す。

 

「ほんとうにありきたりな青春なんだろうけど、歪な僕にとっては誰よりも...その...あークソ、恥ずかしい。

...なんだよ」

 

「ん?すまない聞き取れなかった。もう一度言ってくれないか?」

 

「...一度しか言わないぞ。宝物なんだよ」

 

「触れれば一瞬で砕け散るようなガラス細工だ。でも、そんなものでもさ...守りたいんだよ、僕は。自分がいて、誰かがいて。そんなありきたりな毎日が壊れるのが嫌なんだ。...これが僕の意地だよ」

 

「...そうか」

 

「あー、もう、これでいい?」

 

今すぐ帰ってベッドに顔を埋めたい。

そのまま引きこもりたい。

 

「十分だ。ありがとう。今度は私の番だな」

 

「...お前も話すのね、いやいいけどさ」

 

それから男の話が始まった。

曰く、この世すべての悪を根絶しようとした

曰く、そのために聖杯を利用しようとした

曰く、そのことを忘れて先日までただ聖杯を求める怪物になった

男がポツポツと話す。

僕はコーヒーをすすりながら聞く。

相槌はなく、ただ聞いているだけ。

それでも、今のこの空間には十分だった。

 

「これが、私という男の話だ」

 

「...ふーん」

 

「様々なものを犠牲にした。

その中には10歳にも満たない少年と少女がいた。

どうして...こうなってしまったんだろうな。

笑ってくれ、私の愚かさを」

 

「笑うかよ。お前はお前で願いをかなえるために何かを犠牲にしたんだろ?だったらお前のアサシンを倒した僕も、願いのためにアサシンの命を犠牲にしたんだ。同類だよ。お前を笑えば僕は自分を笑うことになる。あいにくそこまで馬鹿じゃないもんでね」

 

俯いた男がこちらを向き、視線が交差する。

 

「...それに、だ。お前は正しいよ。やり方は正しくなくなったんだろう。けど、その根底にあったのは誰かを助けたいっていう純粋な願いのはずだ。だったら、それはきっと正しいものなんだろうさ」

 

一人のバカの背中を思い出し苦笑する。

 

「僕の友達にもそういうやつがいてね。多分お前もそいつと同じ類の馬鹿だよ」

 

「...そうか、そうだったのか、私は...」

 

青髪の男が目から涙をこぼし始める

 

「ああ、なんだ、最初からそうだった。こんなにも簡単なことを...どうして私は...」

 

「...気は済んだか?それなら僕はもう行くよ。悪いけど泣いている男をあやす趣味はないんでね」

 

「ああ、待ってくれ、すぐに泣き止むから...」

 

「...ったく」

 

それから数分。男が泣き止むには少し時間がかかった。

通行人にちらちらとみられたが...こいつを置いていく気にはなれなかった。

 

「泣きやんだか?」

 

「ああ、ありがとう」

 

「それじゃあ、僕は...」

 

「待ってくれ...!」

 

「頼みがある...私の夢を継いでくれないか?」

 

「この世すべての悪の根絶ってやつ?」

 

「そうだ」

 

「いやなこった」

 

「...後生だ」

 

男性が深々と頭を下げる

 

「...それでも嫌だね」

 

「...そうか、すまない」

 

「っま、頭の隅にくらいは置いておくよ」

 

「...ありがとう、それでは」

 

「すこし痒いぞ」

 

首筋に何かを刺される。

意識がだんだんとぼやけていき、最後には...

 

「お前...なに...」

 

「すぐに終わるさ」

 

脳がシャットダウンし、意識がとんだ。

 

...

.....

.......

 

気が付いた時には時刻は昼。

いまから学校に行けば昼休みごろだろう。

ベンチでに寝転んだ体を起き上がらる。

体になにかをされた形跡もなし、記憶もハッキリしてる。

アサシンも現界しないという約束を守っていたらしい。

話を聞くに、僕が意識を失った後、男性が何かしらの魔術を

3時間ほど僕にかけ、そのまま僕をベンチに寝かせ、

どこかに去っていったらしい。

人払いの結界を張ったのか、周囲には誰もおらず、アサシンと僕しかいない

 

「なにがしたかったんだ?」

 

「...もう、心配したんだからー!」

 

「途中何度現界しそうになったことか...!」

 

「悪かったよ、心配かけて...ってあれ?」

 

「...どうしたの?もしかして何か盗まれたり...」

 

「いや、制服の内ポケットに紙が...」

 

ポケットにおそらく男性がいれたであろう

小さく折りたたまれた紙が入っていた。

広げてみると

 

『桜ちゃんをキャスターのもとへ連れていけ。

缶コーヒー、ありがとう』

 

っとだけ書かれていた。

桜を柳桐寺へ...?

どういうことだろうか。

謎はさらに深まる。

アサシンがここにいる以上、向こうになにかあったわけでもなさそうだ。

...とにかく登校しよう。

 

ゆっくりと腰を上げ、学校に向かう。

願わくば何も起こらないことを祈りながら

 

 




ランキング入りありがとうございます!
これもみなさんのおかげです!
夢がかないました(本当の意味で)

以下本編で省いた設定↓

・慎二はマタ・ハリに気配遮断がないことを知りません
・青髪の人は7:00ぐらいからずっと慎二が通るのを待ってました
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