仮題【魔術なし 身体能力マシマシ慎二くん】   作:いかのシオカラ

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8話

 

轟音が鳴り響き、バーサーカーの巨体が動き出す

一瞬で距離が詰められ、巨岩が如き手に持たれた武器が振り下ろされる。

が...

 

「っっぶね!」

 

ギリギリで回避、そのままアーチャーのもとまで退く。

 

「アイツ、前よりも速くなってる気がするんですけど!」

 

「...やつの名はヘラクレス。ギリシャの大英雄だ。一度戦った相手ならある程度は動きが理解できるのだろうな。全く恐ろしい」

 

...なぜこいつがそれを知っているのだろうか。

確か遠坂陣営が接敵したのは最初のセイバーだけであとは...。

なんて今考えても仕方がない。

表情や話し方から見ても嘘は言っていない。

この状況で真っ先に考えることは、デカブツを倒すこと。

もしこれから先にそれ以外のことを考えたとするなら...

 

「死ぬな」

 

つい声が漏れてしまう

 

「...?君にしてはえらく弱気じゃないか?...怖いか?」

 

挑発的な微笑をこちらに向ける。

カッチーン

 

「はああ!別に怖くないし!あんなの余裕だし!!」

 

「はっはっは、その意気だ!そら、使え」

 

アーチャーが魔術で一振りの太刀を製作。

それをこちらに放り投げてきたので、キャッチ。

 

「なにこれ?」

 

「太刀だ。奴には私が作製した武具でないとほぼ有効打はない。これから先は君が前衛、私はサポートに徹しよう」

 

「了解。間違えてもこっちを攻撃すんなよ」

 

「それは君次第さ」

 

「そうかよ」

 

冗談交じりにケラケラと笑いあう。

ふうっと息を吐き、太刀を鞘から抜刀。

切っ先を向け...一声。

 

「叩き潰す!」

 

真っすぐに奴に向かい、太刀を振るう。

ガギンと太刀と大剣がぶつかり合い、鍔迫り合いを行う。

っが押し切られてしまった。

 

「クッソ、なんて馬鹿力だ」

 

すれすれで追撃を交わしながら、体制を整える。

 

「こっちを忘れていないかね」

 

アーチャーが一声かけると矢が数射放たれた。

ヘラクレスはそれを大剣でガード。しかし、そこに隙が出来上がった。

股下をスライディング、背中側に滑り込みそのまま大きく右肩から袈裟斬り。

 

「◼︎◼︎◼︎ー!!!」

 

決まった。

背中に大きな斬撃痕が発生。

しっかりと核の部分も通過しているため、確実だ。

ふっと、安堵の息を漏らす。

...なにか忘れているような。

 

「慎二!まだ終わっていないぞ!!」

 

アーチャーの声で引き戻される。

目の前には大上段で振りかぶったヘラクレスが。

全神経を回避に集中、何とか一振り二振りを回避するが追撃の蹴りをモロに受けてしまった。

ガードも遅れ、そのまま吹き飛ばされ木にたたきつけられた。

 

「ガハッ!」

 

受け身なしで頭を大きくぶつけてしまったせいか意識が...だんだんと...

 

「クソ...」

 

 

...

.....

.......

 

 

「慎二...」

 

「シンジ...」

 

「慎二君...」

 

誰かに呼ばれる。

 

「誰?」

 

呼びかけるが返答はなし。

代わりに足元から腕がズルズルと伸びてきてそのまま体中を掴まれる。

 

「強く」

 

「倒せ」

 

「殺せ」

 

全身を手で覆われ、視界でさえも塞がれてしまう。

しかし、自然と悪い気がしない。

むしろ...

 

「気持ちいい...」

 

触れられる手がだんだんと自分と一緒になって、それがグズグズと溶けて...

 

...

.....

.......

 

 

視界がハッキリして声がかかる。

 

「慎二ッッッ!!!」

 

「◼︎◼︎◼︎ー!!!!」

 

目の前が大きな影と物体が。

大体理解した。

だからこそ

 

「うるせえよ」

 

起き上がると同時にジャンプ、そのまま回避する。

背中を向けているが...

追撃をそのまま避ける。

何故だろう、場所がわかる。

次は...右の薙ぎ払いか。

体を傾けると、頬に風と物体が過ぎ去る感触が。

ヘラクレスに向き直り、まっすぐと視線を奴に。

これから奴を僕が...。

風に心地よさを感じ、脳が雄たけびを上げる。

 

「お前、殺すわ」

 

自分の中でも出したことがないほどの冷たい声が出る。

どうしたというのだろうか、声高らかに笑い出したいような、奴を今すぐにでも元の場所に送ってやりたいような、感情が二分されたかのようにグルグルと駆け巡る。

ただ一つ言えるとすれば

この熱く冷たい殺意だけは本物だ。

 

「慎二ッ!」

 

「...なに?」

 

「随分と雰囲気が...いや、聞くまい。少しだけ時間稼ぎを頼めるか?」

 

「どれぐらい?」

 

「1分から2分ほど」

 

「余裕」

 

「...そうか。ならば、I am a bone of my sword。使いたまえ」

 

剣や槍が地面に数本突き刺さる。

 

「助かるよ」

 

右手に槍、左手に剣を持ち息を整える。

必要最低限の動きで奴に近づき、武器を振るう。

動きが読める。次がわかる。鼓動がだんだんと大きくなる。

金属音が鳴り響き、大英雄と人間擬きがぶつかり合う。

パワーと技術はこちらが確実に劣っているが、それを動きの予測でカバー。

お互い、引けを取っていない。

 

全力をぶつけ合うことが...

その先の勝利を考えることが...

自分がこの場に立てていることが...

 

「気持ちいい...」

 

「◼︎◼︎◼︎」

 

ヘラクレスが少し笑った気がした。

 

「っと」

 

少し距離を取った瞬間、体から少し力が抜けてしまった。

ガクンと倒れ、膝をついてしまう。

どれほどかはわからないが、あれに対してしばらく時間を稼げたんだ。

体が悲鳴を上げるのも無理はないだろう。

 

「◼︎◼︎◼︎ー!!」

 

「っは、まだまだ。これで終わりなわけないでしょ」

 

少し痛む体を立たせ、もう一度武器を構える。

その瞬間、景色が一変した。

焼けたような空、灰色の大地、そこに突き刺さる無数の剣。

 

「待たせたな。何分こうでもしないと奴を倒せないものでね」

 

「へえ、固有結界か。無数の剣...いったいどこの英雄なの、お前?」

 

魔術の極致である固有結界。

普通なら使ったやつを私怨で殴り飛ばしているところだが、今はいい。

近場にあった剣を一本引き抜き、もう一度空を見る。

とても悲しい場所...しかし、こんな悲しい場所を奴は人生で張り通した。

だとしたらこれは綺麗なんだろう。

 

「嗚呼、綺麗だ」

 

「綺麗?ここがか?」

 

「悲しくも見えるが、お前はここを張り通した。だとしたらそれ以外に感想はないだろ」

 

友達なら真っ先に引っ叩いてるけど。それだけ吐き捨て、丘の上の大英雄と視線を交わす。

 

「...」

 

心臓の鼓動の音はさっきよりも大きくなっていた。

 




お久しぶりです...
例のウイルスで色々ごたつき、
「更新は...また今度でええか!」
っと明日やろうは馬鹿野郎病を発症していました...
今後もゆっくり投稿になりますがよろしくお願いします...!

Ps.爺ちゃんが色々やらなければ起き上がった時のワカメは爆笑してました。
詳しくは更新を待ってね...
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