仮題【魔術なし 身体能力マシマシ慎二くん】   作:いかのシオカラ

9 / 9
8話

 

轟音が鳴り響き、バーサーカーの巨体が動き出す

一瞬で距離が詰められ、巨岩が如き手に持たれた武器が振り下ろされる。

が...

 

「っっぶね!」

 

ギリギリで回避、そのままアーチャーのもとまで退く。

 

「アイツ、前よりも速くなってる気がするんですけど!」

 

「...やつの名はヘラクレス。ギリシャの大英雄だ。一度戦った相手ならある程度は動きが理解できるのだろうな。全く恐ろしい」

 

...なぜこいつがそれを知っているのだろうか。

確か遠坂陣営が接敵したのは最初のセイバーだけであとは...。

なんて今考えても仕方がない。

表情や話し方から見ても嘘は言っていない。

この状況で真っ先に考えることは、デカブツを倒すこと。

もしこれから先にそれ以外のことを考えたとするなら...

 

「死ぬな」

 

つい声が漏れてしまう

 

「...?君にしてはえらく弱気じゃないか?...怖いか?」

 

挑発的な微笑をこちらに向ける。

カッチーン

 

「はああ!別に怖くないし!あんなの余裕だし!!」

 

「はっはっは、その意気だ!そら、使え」

 

アーチャーが魔術で一振りの太刀を製作。

それをこちらに放り投げてきたので、キャッチ。

 

「なにこれ?」

 

「太刀だ。奴には私が作製した武具でないとほぼ有効打はない。これから先は君が前衛、私はサポートに徹しよう」

 

「了解。間違えてもこっちを攻撃すんなよ」

 

「それは君次第さ」

 

「そうかよ」

 

冗談交じりにケラケラと笑いあう。

ふうっと息を吐き、太刀を鞘から抜刀。

切っ先を向け...一声。

 

「叩き潰す!」

 

真っすぐに奴に向かい、太刀を振るう。

ガギンと太刀と大剣がぶつかり合い、鍔迫り合いを行う。

っが押し切られてしまった。

 

「クッソ、なんて馬鹿力だ」

 

すれすれで追撃を交わしながら、体制を整える。

 

「こっちを忘れていないかね」

 

アーチャーが一声かけると矢が数射放たれた。

ヘラクレスはそれを大剣でガード。しかし、そこに隙が出来上がった。

股下をスライディング、背中側に滑り込みそのまま大きく右肩から袈裟斬り。

 

「◼︎◼︎◼︎ー!!!」

 

決まった。

背中に大きな斬撃痕が発生。

しっかりと核の部分も通過しているため、確実だ。

ふっと、安堵の息を漏らす。

...なにか忘れているような。

 

「慎二!まだ終わっていないぞ!!」

 

アーチャーの声で引き戻される。

目の前には大上段で振りかぶったヘラクレスが。

全神経を回避に集中、何とか一振り二振りを回避するが追撃の蹴りをモロに受けてしまった。

ガードも遅れ、そのまま吹き飛ばされ木にたたきつけられた。

 

「ガハッ!」

 

受け身なしで頭を大きくぶつけてしまったせいか意識が...だんだんと...

 

「クソ...」

 

 

...

.....

.......

 

 

「慎二...」

 

「シンジ...」

 

「慎二君...」

 

誰かに呼ばれる。

 

「誰?」

 

呼びかけるが返答はなし。

代わりに足元から腕がズルズルと伸びてきてそのまま体中を掴まれる。

 

「強く」

 

「倒せ」

 

「殺せ」

 

全身を手で覆われ、視界でさえも塞がれてしまう。

しかし、自然と悪い気がしない。

むしろ...

 

「気持ちいい...」

 

触れられる手がだんだんと自分と一緒になって、それがグズグズと溶けて...

 

...

.....

.......

 

 

視界がハッキリして声がかかる。

 

「慎二ッッッ!!!」

 

「◼︎◼︎◼︎ー!!!!」

 

目の前が大きな影と物体が。

大体理解した。

だからこそ

 

「うるせえよ」

 

起き上がると同時にジャンプ、そのまま回避する。

背中を向けているが...

追撃をそのまま避ける。

何故だろう、場所がわかる。

次は...右の薙ぎ払いか。

体を傾けると、頬に風と物体が過ぎ去る感触が。

ヘラクレスに向き直り、まっすぐと視線を奴に。

これから奴を僕が...。

風に心地よさを感じ、脳が雄たけびを上げる。

 

「お前、殺すわ」

 

自分の中でも出したことがないほどの冷たい声が出る。

どうしたというのだろうか、声高らかに笑い出したいような、奴を今すぐにでも元の場所に送ってやりたいような、感情が二分されたかのようにグルグルと駆け巡る。

ただ一つ言えるとすれば

この熱く冷たい殺意だけは本物だ。

 

「慎二ッ!」

 

「...なに?」

 

「随分と雰囲気が...いや、聞くまい。少しだけ時間稼ぎを頼めるか?」

 

「どれぐらい?」

 

「1分から2分ほど」

 

「余裕」

 

「...そうか。ならば、I am a bone of my sword。使いたまえ」

 

剣や槍が地面に数本突き刺さる。

 

「助かるよ」

 

右手に槍、左手に剣を持ち息を整える。

必要最低限の動きで奴に近づき、武器を振るう。

動きが読める。次がわかる。鼓動がだんだんと大きくなる。

金属音が鳴り響き、大英雄と人間擬きがぶつかり合う。

パワーと技術はこちらが確実に劣っているが、それを動きの予測でカバー。

お互い、引けを取っていない。

 

全力をぶつけ合うことが...

その先の勝利を考えることが...

自分がこの場に立てていることが...

 

「気持ちいい...」

 

「◼︎◼︎◼︎」

 

ヘラクレスが少し笑った気がした。

 

「っと」

 

少し距離を取った瞬間、体から少し力が抜けてしまった。

ガクンと倒れ、膝をついてしまう。

どれほどかはわからないが、あれに対してしばらく時間を稼げたんだ。

体が悲鳴を上げるのも無理はないだろう。

 

「◼︎◼︎◼︎ー!!」

 

「っは、まだまだ。これで終わりなわけないでしょ」

 

少し痛む体を立たせ、もう一度武器を構える。

その瞬間、景色が一変した。

焼けたような空、灰色の大地、そこに突き刺さる無数の剣。

 

「待たせたな。何分こうでもしないと奴を倒せないものでね」

 

「へえ、固有結界か。無数の剣...いったいどこの英雄なの、お前?」

 

魔術の極致である固有結界。

普通なら使ったやつを私怨で殴り飛ばしているところだが、今はいい。

近場にあった剣を一本引き抜き、もう一度空を見る。

とても悲しい場所...しかし、こんな悲しい場所を奴は人生で張り通した。

だとしたらこれは綺麗なんだろう。

 

「嗚呼、綺麗だ」

 

「綺麗?ここがか?」

 

「悲しくも見えるが、お前はここを張り通した。だとしたらそれ以外に感想はないだろ」

 

友達なら真っ先に引っ叩いてるけど。それだけ吐き捨て、丘の上の大英雄と視線を交わす。

 

「...」

 

心臓の鼓動の音はさっきよりも大きくなっていた。

 




お久しぶりです...
例のウイルスで色々ごたつき、
「更新は...また今度でええか!」
っと明日やろうは馬鹿野郎病を発症していました...
今後もゆっくり投稿になりますがよろしくお願いします...!

Ps.爺ちゃんが色々やらなければ起き上がった時のワカメは爆笑してました。
詳しくは更新を待ってね...
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

Fate/BlackRod(作者:雑草弁士)(原作:Fate/)

雨生龍之介が呼び出したのは、『青髭(あおひげ)』ジル・ド・レェでは無かった。ぎりぎりの瞬間に、その召喚に割り込んだ物があったのだ。もっとも、その存在にとってもソレは本意では無かったが。▼公安組織によって強制された、自己精神拘束(セルフギアス)により自らを縛るという約定より逃れる事が叶ったその男は、しかして想像以上に良心的かつ人間的な男であった。その彼が、Fa…


総合評価:561/評価:8.45/完結:17話/更新日時:2026年08月06日(木) 02:27 小説情報

Fate/hollow adaptation――異戒の華は冬木に咲く​(作者:りー037)(原作:Fate/)

十年前の冬木。第四次聖杯戦争の裏側で、大聖杯のシステムすら想定し得なかった「致命的なバグ」が産声を上げた。▼魔術師たちの野望と妄執が渦巻く中、地獄のような環境から一人の少女が解放される。▼間桐桜。彼女の足元に広がる「虚数」の影は、マスターを失い世界から消滅するはずだった理外の怪物――あらゆる事象に適応し破壊する『異戒の神将』と奇跡的な融合を果たしていた。


総合評価:3935/評価:8.57/連載:32話/更新日時:2026年08月11日(火) 02:54 小説情報

距離を置きたいだけなんだけど(作者:ろしでれ)(原作:時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん)

▼転生した先は、異世界ではなかった。▼慣れ親しんだ現代日本――そして、中学三年の春に思い出した。▼ここは、前世で読んだ事のある『時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん』の世界だと。▼ハーレム系な主人公が苦手な僕、真田伊織は、原作主人公・久世政近と少しずつ距離を置くことを決意するはず、だったんだけど………


総合評価:3838/評価:7.9/連載:23話/更新日時:2026年09月20日(日) 16:04 小説情報

せっかくモードレッドに憑依したんだから遠坂凛ちゃん助けちゃおうぜ!(作者:主(ぬし))(原作:Fate/staynight)

 第五次聖杯戦争を舞台とした、言わずと知れた名作『Fate/staynight』。戦争開始前夜、アーチャーとして遠坂凛が召喚したのは、なんと『叛逆の騎士』モードレッドだった。破壊された天井の下、ソファにちょこんと座るモードレッドが頭を抱えて涙目で弱々しく呟く。▼「よくあるやつだこれぇ……」▼ 実は中身は、モードレッド本人ではなく、彼女に憑依した極普通の男子大…


総合評価:9094/評価:8.45/連載:16話/更新日時:2026年08月31日(月) 02:32 小説情報

虚飾の権能を持ってTS転生した上で英霊として召喚されましたが、マスターが可愛いので満足です(作者:プラチナムウィッチ)(原作:Fate/)

ところでマスター?私に肉弾戦をやらせようとするのはやめませんか?見てください。この細腕と細脚を。


総合評価:10440/評価:8.54/連載:8話/更新日時:2026年09月06日(日) 12:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>