この物語は、「本を食べる、知識を食す」という考えをもとに書きました。

初めて小説を書いたので、つたないところも多いと思いますが読んでいただけと嬉しいです。

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叔父のリオンと甥のファナの物語です。


この世で一番うまいもの

 リオンは甥のファナが苦手だ。

 

家に帰ってくる度に抱きついてきて、遊べと駄々をこねる。

 

だが、ファナは旅の話をしてやると途端に静かになる。

 

それに気づいてからは家に帰ってきてまっさきにファナに旅の話をしてやる。

 

そうでもしないと昼夜を問わず

 

「お話聞かせて!」

 

「遊んで!」

 

と犬っころみたいに寄ってくる。

 

少し旅から帰るのが億劫に感じながらも帰路に着いた。

 

列車に乗り込んで夜空を眺めていた時リオンは

 

「ファナに本を読ませればいいのでは」

 

と思った。

 

リオンは自他ともに認める読書家だ。

 

それこそ月に20冊以上の本を読むほどに。

 

ファナを本の中を旅できるようになれば俺に付きまとうことが無くなるのではないかとリオンは考えた。

 

ファナも7歳になり、もう少しでエレメンタリースクールに通うことになっている。

 

「本を読むことは出来るだろう。」

 

そう思い列車を降りた後書店によって本を買った。

 

それは少年の旅の物語だ。

 

ドラゴンが出てくるなどといったファンタジー性はないが、情景描写がとても綺麗で本の中に惹き込まれる。

 

リオンは少し上機嫌で家に着いた。

 

 

 

 

 

 

 叔父が旅から帰ってきた。

 

そう聞いたファナは玄関へと走り出した。

 

ファナは叔父から聞く旅の話が大好きだ。

 

 

雲より高い山の山頂から見る日の出、

 

水中で煌めく水晶、

 

ジャングルの中に住む素手でライオンをも狩る戦闘民族、

 

そんな話を今回も聞ける!

 

 

そう思っていたのに、叔父は仕事があるとか言って、今は話してくれないらしい。

 

ファナは盛大に駄々を捏ねた。

 

今すぐ聞きたいのだ。明日じゃダメなのだ。

 

叔父が見聞きしたものを、体験したことを、早く知りたくてたまらなかった。

 

そんなファナを見て、おじは言った。

 

 

 

 

「なあ、この世でいちばん美味い食い物がなんだかお前は知ってるか?」

 

 

 

 

ファナは、「叔父が旅の話をしてくれる!」そう思って一生懸命考えた。

 

叔父に「この世でいちばん美味いもの」と言わせるほど美味しいものにとても興味が湧いた。

 

一体なんだろうハンバーグとかかな…

 

そんなことを考えていたファナには、叔父の答えは考えられなかった。

 

叔父は「本だ。」とそういったのだ。

 

ファナにとって本とは難しい言葉がただ列をなしてるようにしか見えないのだから。

 

そうなファナに叔父は笑って、一冊の本を取りだした。

 

 

 

 ファナは、夢中で本を読み始めた。

 

最初は叔父がそんなに言うならと渋々開いた本だったのに。

 

ひたすらにページを捲り、目を輝かせながら本を読んでいた。

 

それこそ誰が声をかけても気づかないほどに。

 

 

「ぷはっ」

 

 

そんな音と共にファナは顔を上げた。

 

時計を見ると21:00を指している。読み始めたのは9:00だったはずだ。

 

そんな長い本の旅から帰ってきたファナは、本を抱えて後ろに寝転んだ。

 

 

 

たった一冊の本を読んでいた。

 

ただそれだけのはずなのにファナは、確かに少年と共に『旅』をした。

 

 

草原を駆け回り、寝転んだ時の草の香りを、

 

初めて見た雪への感動を、

 

険しい山の山頂から見た美しい夕焼けを、

 

 

ファナは確かに感じた。

 

 

 

 

放心しているようなファナの姿を見てリオンは笑った。

 

ファナのその顔はとても面白い本を読み終えた時の自分の表情とそっくりだったからだ。

 

そしてリオンはこれから家に帰ってくる度にファナに本をねだられるのだった。

 


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