エアグルーヴに「炉心融解」歌わせたったwww 作:かぶひこ
◆◇◆
扉を誰かがノックした。それはいつもの、というよりは耳慣れ過ぎたノックだった。頼りなさをどこかに内包したその音が私たち生徒会役員の注意をどれだけ引いたかは数えきれない。日に一度ならマシだと思うくらいのものだ。そんな音を私たちが聞き間違えるわけがない。扉の向こうに立っている人物を私たちは誰も確認しようとしなかった。勝手知ったる仲と思っているのか、実際そうなのだが、私のトレーナーはきちんと失礼しますと頭を下げてから入室した。
彼が入室したのを確認すると私以外の役員はすぐに意識を机の上へと戻した。まあ、この男が用件を持ってくるのなら私なのだから間違ってはいない。だがトレーナーが生徒会室にいるのを自然なこととして捉えているのには物申したい。仕事を手伝ってもらうことも増えたから理が会長側にあるのは否定しないが。
「それで、どうした? 場所は変えるか?」
「いや、ここでいいよ。エアグルーヴ、ひとつ頼みがあってここに来たんだ」
「頼み?」
珍しいこともあるものだ。たまに私から頼みごとをしていた覚えはあるが、彼から頼まれたことはない。言われるまで気付かなかったが、これは見落としだ。先頭に立つものとして報いる必要があるだろう。もはや私たちは平等なのだ。にわかに目くばせを始めた役員二人にはあとで話をするとして、まずはトレーナーの頼みを聞くことが先決だった。
私には彼の態度が測り兼ねた。日頃からもっと泰然としろ、と叱咤する程度には軟弱な振る舞いではあるが、今日ほどではない。そういえば私との間で口ごもる様子など久しく見た記憶がない。そんなに言いづらいことを彼が抱えるだろうか。かなり考えづらいがそう見るのが今は妥当だ。
「君にライブで歌ってほしい曲がある」
「は?」
「URAで優勝した君にもう一度レースで勝ってほしい。そして歌ってほしい」
珍しいことも、あるものだ。
◆◇◆
「なんというか、毛色の違う曲だな」
携帯に送られてきた動画サイトのページで流れるのは、弾けるようでソリッドな音楽に不格好な機械音声。これに私なりの命を吹き込めというのがトレーナーの言だった。純粋に難しい作品だ。ハイトーンもさることながら繊細なピッチの推移、よく聴けば肺活量も要求される。完璧に歌えば映えることは間違いないだろう。とはいえあの男が要求するのはそこではない。歌を完璧に仕上げる程度のことは私の条件でしかなく、それ以上のものを実現してこそエアグルーヴなのだ。彼はそれを私の次によく知っている。つまりあの男はそれを見たいのだ。
炉心融解。不思議な詞だ。文面通りに受け取ってはいけない箇所がいくつもある。これから彼の意図を汲み取るとなるとかなり厄介だ。色のない機械音声が邪魔になる。私たちが練習する曲には常に誰かがいる。私たちより先に歌った経験者もいれば、作詞や作曲担当と話をして解釈を深めていくことも多い。だが今回はそれができない。つまり最終的に解釈をするのは私ということになる。しかしそれは好き勝手に解釈していいことを意味しない。表現されるのを待っている何かがあるのだ。その何かが歌の核になることは疑いようがない。ならば私がそれをつかまなければならないことは言を俟たない。
まずは聴き込むこと、そして歌詞を読んでみよう。
ほとんど予想のうちではあったが歌詞についての理解はさっぱり進まない。どうしてこうも死が直截的に伝達されるのだろうか。「僕」と「君」は死を挟んで隣り合っていると言っていいくらいだ。歌のうちにそういったものがあるのは理解できるが、彼がそれを私に要求してくるとなると話は変わってくる。あの男は頼りない部分こそあるもののバカではない。少なくとも私が隣に立つことを認めた存在だ。
残念ながら私は特別に感情の機微に明るいわけではない。感情などそもそもが複雑なのだから、もちろんわからないことのほうが多い。こう言い切れるようになったのも、わからないことはわからないと認めなければ一歩も先には進めないと学んだからだ。
明日は、そうだ、後輩の指導を任せていた。そこに顔を出して訊ねてみよう。生徒会は、まあ、おかげで余裕ができている。多少は席を外しても問題はないだろう。
URAが終わってから気付いたことだが、私はあまり彼の背中を見たことがなかった。というのも私とトレーナーの位置関係が定まっていたことに起因する。レースの前は私を後押しし、レースの後には私を迎え入れた。トレーニング中は私から目を外すことなく、ミーティングではいつも向かい合って話をした。だから練習用のコースに目をやる彼を見るのはまだ私にとって新鮮だった。
手元にはノートとペン。首からストップウォッチを下げているところを見るとラップタイムでも測っているのだろう。複数頭のタイム管理はそう簡単ではないだろうに、私の手伝いをしているうちに奇妙な技術を身に付けたらしい。トレーナー、と声をかけると振り向きもせずに応答があった。驚くかとうすく思ったのだが落ち着いて対応されると癪なものだ。
「貴様、私の首を絞める夢を見たことがあるか?」
「いいや、ないよ」
「そうか」
私とのあいだでは嘘をつかない。これはルールだ。私も嘘をつかない。これもルールだ。
デビューする前の彼女たちは懸命に走っている。その表情が真剣であり明るいものであればあるほど私が望んだものに近づいていく。それは前を見ていることの証明だからだ。その視線の先に私がいれば光栄だが、選択は個々人の自由だ。私が母に憧れたように。
「トレーニングの調子はどうだ?」
「順調も順調だよ。僕の仕事は君の組んだメニューを伝えるだけだ。休憩まで考えられてる」
「もともと一人でやっていたからな。無理をさせないための繊細な部分は貴様に学んだが」
「明日からでもトレーナーになれるね、その気があるなら推薦するよ」
「フン、URA優勝トレーナー様の太鼓判なら自信が持てる」
軽口には軽口で返す。私にもずいぶん精神的な余裕ができたものだ。前なら叱っていたに違いない。同じ三年間を過ごすうちにこの男の影響を受けたことを否定するつもりはないし、それを悪いものとも思わない。私にとっての理想と誰かにとっての理想は異なるものであり、そして理想は更新される可能性を持っている。ひらたく言ってしまえば私の理想には優しさの余地が生まれた。いつかそのことで誰かが傷ついてしまうかもしれないが、私はそれを選んだことを後悔も撤回もしないだろう。
◆◇◆
「で、なんや。ウチに相談て」
「曲の解釈について聞きたいことがありまして」
周りのテーブルもそれぞれの組み合わせで賑わっている。消灯時間はまだ先だが騒ぎ過ぎは感心しないな。明日に響かないように考えてほしいが、それは自分で気付くべきだろう。
「そーゆうのウチの担当ちゃうやろ。ルドルフでええやん」
「いえ、迷惑をかけるならタマ先輩かトレーナーと決めていますので」
「何ぺんも言うけどお前それ口説き文句やなくて殺し文句やからウチに使わんとき」
ほこほこと湯気の立つマグカップを傾けながらいつもの返しを口にする。何度こう言われても実際そうなのだから仕方がない。私が迷惑をかけていいと思えるほど気安く、そして頼れるのはその二人なのだ。
「タマ先輩はトレーナーの首を絞めたいと思ったことはありますか」
「なんや疲れとんのか。……お前があれに? どっちにしろ嘘やろ」
「そういう歌詞があるんですよ。それで参考に聞きたくて」
ああそういうことか、とタマ先輩は腕組みをした。小さな体でそのしぐさがよく似合う。
「ウチはない。けど考えたことあるのは案外おるような気はするな」
「そうですか」
「でもお前はそのタイプとちゃうもんな」
「ええ」
「いやもうちょっと重い意味やで? どうやってもそこにはたどり着かん、ってレベルの話」
「私には理解できないということでしょうか」
もう一度タマ先輩はマグカップを傾ける。私からは見えないが、夜空はすっかり落ち着いているだろう。学園の辺りは空気が綺麗だから今日も星がよく見えているはずだ。
そうして言葉を探しながら二度首を振った、私はただ待つだけだ。
「その主体がお前やったらな。そんな妄想するんは夢見がちなロマンティック乙女だけやって」
なるほど私には思い当たる節がないわけだ。理解してみようと頭を働かせてみた今でさえもそんな彼女たちの思考回路がわからない。相棒たるトレーナーが死んでしまえば困るはずなのに。私からすればそれはひとつの、かつ決定的な結末だ。どこにも行けないし何にもなれない。私は自らそんなものは選ばない。そして選ばせない。
「心の動きがわかりませんね」
「好奇心の暴走みたいなもんと思っとき。この人がいななったら自分はどうなるんやろう、とか、自分がそんなことをしたらこの人はどないな顔するんやろ、とかな」
「趣味が悪い」
「ホンマにな。でもそうでもせんと収まらん感情があんねん」
そういう心情の吐露を何度か聞かされてきたのだろう。まるで自身の思いを撫でるように小さな口から、彼女に言わせればガキの特権の本質がこぼれた。直後のため息の中にはぶっきらぼうな善意が詰まっているような気がした。私を含め多くから相談が持ちかけられるのはこういうところのせいだろう。
「ウチんとこもそっちもそーゆうのとはちゃうわな。相方とか、そんなんや」
「ですね。ロマンティックなものを求めるとも思えない」
ならば首を絞める主語は決まりだ。そうなると話がひとつ変わる。炉心融解の歌詞自体が直接的なことを意味しないのなら、その先の解釈について信頼していると言われたに等しい。あの男がそうした理由はわかる。直に話をしては成立しないタイプの事柄なのは私も認める。まあ、しかし、面倒なことだ。
今度時間のあるときに先輩に食事をごちそうする約束をした。こういうのを喜んで受けてくれるから私も心おきなく頼れるのだ。
◆◇◆
目覚まし時計が鳴り出す前に起きてスイッチを押す。誰だって耳障りな音で起こされたくはないだろう。私の場合は脳がそれを拒否して先に自分で起きるという習慣がついただけのことだ。何を言われる筋合いもない。
ルームメイトを起こす前に顔を洗う。タオルで拭って鏡を見る。そこにあるのは見慣れた顔だ。カーテンを開けると朝の光が差し込んだ。離れ小島のような雲が浮かんでいるだけで快晴だ。これだけ眩しい日差しなのだからそれだけで目を覚ましてほしいと思うのだが、私のルームメイトはそうぬるい相手ではない。まずは布団を剥ぐところから始まるのだ。
朝の支度を済ませて向かうのはトラックだ。生徒会の仕事を残していない土日はそんなパターンが出来上がってしまった。ただ練習の様子を眺めるだけ。こちらからは余計な口出しはしないことに決めている。私が外縁の芝に座り込むころには当たり前のようにトレーニングが始まっている。美しい光景だ。そして炉心融解によれば、すこしずつ死んでゆく世界でもある。
私たちの目を通して価値を失くしていく世界とは、私たちが必要条件でなくなることを意味する。そしておそらくはそこに私たちの居場所はない。アポトーシスなのだ。つまり “私たち” という個は消滅する。私たちは夢の中で他のウマ娘たちの夢を死なせてきたのだ。もちろんそれは現実であり、すべて終わったことであり、そこに何かを思うような時期はだいぶ前に過ぎてしまった。勝敗とはそういうものだと言えば軽く聞こえるかもしれないが、それ以上の表現が不可能なのだ。あとはそこにどれだけの覚悟を見るかの話だ。少なくとも私は尋常でない覚悟をいくつも目にしてきた。それでも私が勝ち残ったというのは、私の何かひとつが優れていたことの証明だ。
「僕のいない朝は今よりずっと素晴らしくて、すべての歯車がかみ合った、きっとそんな世界だ」
具合のいい斜面にごろんと寝転ぶと芝が頬をくすぐった。そうか。貴様の言いたいのはそういうことか。私たちが、「僕」がいなくなっても、いやいなくなればこそ、より学園は発展していくんだな。ああ、確かにそうだ。憧れなんてものは手に届かないほうが都合がいいものだ。気が付けば伝説になるための材料は揃ってしまっている。あとは手順を踏めば完成だ。
いま私は寂しさを感じている。そして炉心融解を歌うとき、私の感情はピークに達するだろう。核融合炉に飛び込んでみたいと思うだろう。私たちを待っているのは分離だからだ。
そう思った瞬間にその歌は身体化されていた。作詞者や作曲者、あるいはミキシングの担当者がどんな意図を込めたのか、正確なところは尋ねてみないとわからない。だがそれでも炉心融解は私のものとしてかみ合ってしまった。もし解釈が違ってしまったとしてもアンプが変わって出力も変わってしまったのだと諦めてもらうほかない。クレームはトレーナーに、だ。
歌の練習は繰り返しだ。ピッチを取るのもブレスのキープも、変調転調に表現のための技術的なものもすべて繰り返して叩き込む。ある一か所が良くなるかもしれないと思えば試し、そのために全体が歪めばそれを修正し、結局はもとに戻すなんてことも珍しくない。たとえばうまぴょい伝説はその極地と言っていい。楽しそうな曲だし実際楽しいが、あれだけ微細なところに気を遣う曲もない。テクニカルな部分を意識しなくても問題ないほど身になじませて初めて楽しく舞台で歌えるのだ。感情を乗せるのも簡単な話ではない。
カラオケに入っている曲だったことは私にとってプラスだった。まさか今さらレッスンルームを借りるわけにもいくまい。これから羽ばたいていく若い世代のための場所を奪う気は私にはない。それにトレーナーが私にすべてを任せている状況でもある。彼の伝えたかったことも含めて自力で仕上げる必要があった。
◆◇◆
「トレーナー、いいか? 頼みごとについて聞きたいことがある」
「いいよ」
「振付けはどうなっている? さすがにゼロから作るのは手に余るが」
「考えなくていい。ライブだからって踊らなきゃいけないなんてルールはないさ」
なるほど。それならそれで構わない。練習項目が少ないならそのぶん他に打ち込める。
「わかった。もうひとつなんだが、私はどのレースに出走するんだ?」
「エアグルーヴ特別だよ」
「は?」
「だから、エアグルーヴ特別。レースを立てたんだ。オープンだけど」
「たわけを通り越して呆れるぞ貴様。そうそう個人でやれることでもなかろう。資金は?」
「心配しないで。この三年間でちょっと想像を超えて増えてたから」
「だとしても自分のために使うのが筋だろう。それは貴様への報酬だというのに」
「好きに使うとこうなるんだよ」
頭痛がするようなやり取りだ。押そうが引こうが考えが変わらないのは自明だ。それにレースを立てたと言っているのだからもう何も覆るまい。トレーナーの中でこれはやって然るべきことと判断されているのだろう。別にその行動力を責める気はない。仮に事前に話し合いが持たれたとして結論が変わるとは思えない。それに、むしろこちらのほうが重要だが、話し合いがあったとしたら彼の重視している意図が壊れてしまいかねない。大事にしようじゃないか。最後なのだから。
「まあいい。それにしても、そんなレース誰が出るんだ」
「大人気だよ。抽選が決まってる」
「……物好きどもめ」
「みんな理想の君と走りたいんだ、わかるだろ?」
「ああ。わかっている」
思ってもみなかった。引退も遠回しに言えばさして耳障りでもないんだな。
炉心融解を通すことで彼の言いたいことは理解していたが、言葉にされてみると手に持てるような気さえした。私もこの男も、いったん舞台を去るのだ。
別に自身の能力が落ちたとは思わないし、実際に時計もキープできている。でも、それでもこの男には見えているのだろう。境目、分水嶺、ピーク。どれでもいいが、そこを過ぎれば私は理想でいられなくなる。もちろん私にだって意地があって、まだやれると思いたい。しかし私のトレーナーが限界と言っているのだ。私たちのあいだに嘘はない。そのことの意味はきっと私たちにしかわからないだろう。
現在というあまりにピンポイントな生にピントを合わせてきたせいなのだろう、私には未来など想像ができなくなっていた。現役を退いて、その先に何があるのか。確信を持てるのは齢を重ねることくらいだった。そしていつか死ぬ。
「勝つよ。勝つ」
トレーナーは頷いた。
◆◇◆
のどスプレーをかける。これで準備は完了だ。
ステージの向こうには大勢の観客が押しかけているらしい。まったく、物好きな連中だ。
舞台用のシューズのグリップも問題はない。
血が冷えていく。レースとは別の神経回路が開く。
ステージのライトが落ちる。
前奏の入りを少しだけ聴かせて、そして私は舞台に上がる。
「街明かり華やか エーテル麻酔の冷たさ」
ああ、華やかだ。サインライトが揺れている。
「すべてがそう嘘なら本当によかったのにね」
でも嘘はないんだ。それが二人のルールだから。
「核融合炉にさ 飛び込んでみたいと思う 真っ青な光 包まれて 奇麗」
何をいまさら。融合なんて並び立つことに比べれば。
「融けるようにすこしずつ すこしずつ死んでゆく世界」
そうだ。時間とともにエアグルーヴは死んでゆく。わかりきっている。
「誰も皆消えてく夢を見た」
いずれ夢は現実になる。首も絞めた。理想は更新される。
「核融合炉にさ 飛び込んでみたら」
「そしたら きっと眠るように消えていけるんだ」
「僕のいない朝は 今よりずっと素晴らしくて」
「すべての歯車がかみ合った きっとそんな世界だ」
ここが頂点だ。この青い光に包まれて、最後を迎えて。
エアグルーヴという理想をひとつここに打ち立てて。
さようなら。URA優勝コンビは一度身を引こう。
そして明日、きっと新しい理想が始まることを願おう。
◆◇◆
大々的に引退を取り上げてもらえたのはありがたい限りだが、それでも私は生徒会役員としての仕事をこなしている。結局はトレセン学園の生徒にとってよりよい環境を作るのが目指すところだからだ。書類仕事もあれば個人の相談に乗ることもある。レースを見据えたトレーニングをしなくなったくらいで、意外と生活は変わらないものだ。食事の量を調整する必要はあるが、とくに困難を感じない。
生徒会室の扉を誰かが叩く。また耳慣れた音だ。ちょうどいい。これからのことを彼と話したいと思っていたところだ。
「失礼します。あ、エアグルーヴ、よかったここで」
「ああ、私も用があったところだ」
「じゃあ先に聞くよ」
「わかった。これから先のことだ。考えがあれば聞きたい」
「僕の要件もそれだ。ねえエアグルーヴ、真剣にトレーナーになってみる気ない?」
水を打ったように生徒会室が静かになった。キーボードやペンの音さえ聞こえない。役員がいる中で個人的な話をしていることが慣例化してしまっているのはあまりよろしくはないのだが、それはこの際どうでもいい。もしかして、ずっと考えていたのか。私が自分で練習計画を立てて、また誰かの練習を見てやっている姿を見たときから。だから私に指示をするのではなく、ミーティング形式で向かい合ってきたのか。
「本気でいいトレーナーになれると思ってる。僕だからわかる」
馬鹿げている。力が抜けて笑ってしまった。
「まさかこのことを伝えるために引退レースまでやったのか?」
「ここまでしないと話を聞いてくれないと思ったんだ。向かないとかそんなこと言ってね」
その通りだよ。
「わかったよ。参った白旗だ。真剣に勉強してみよう」
「よかった。今度は理想を生み出す側になるはずだよ、君は」
それもまあ、アリか。
炉心融解(作詞:kuma様 作曲:iroha(sasaki)様)