ウマ娘全てに愛を振り撒くデジたんと、そんなデジたんに自分だけを見て欲しいと考えるウマ娘概念 作:こー
実は当初こんな雰囲気で終わる予定でした。
「──やっぱり、ナナさんはアタシにとって大切な『推し』なんです」
「告白はすごく嬉しかったです。……本当に」
「ですが……想いには答えることができません。何より、それはアタシが許せません」
「ですから……ごめんなさい」
────────
分かっていた、結末だった。僅かながらに期待していた自分がいたことは否定しないけど、そうだよねとなんとか受け入れさせた。
「──そっか」
言葉が溢れた。デジちゃんが伝えてくれてからようやく吐き出せたものだった。きっと、長い沈黙だったんだと思う。
「あっはははは! ……うん、そうだよね」
そう、これでいい。ずっと秘めておくべきだった、伝えても無駄だと分かってたことを伝えてしまって、結局やっぱり駄目だった。それだけの話だ。
「あ、あの! あのですね、決してナナさんが嫌だということではなくて……」
「うん、分かってるよ」
元より、分かってたはずだ。デジちゃんはデジちゃんであるからいいんだって。わたしみたいな枷が付いていたら、デジちゃんがデジちゃんでいられなくなる。
デジちゃんの生きる道にわたしが必要とされてないことくらい分かっていた。
「あはは、ごめんね? なんか気を遣わせてしまって。あの時わたしが変なこと言っちゃったから悪いのに」
「……いえ、そんなことは」
「ありがとう。お世辞でも嬉しいよ」
これ以上変な空気になったらデジちゃんも嫌だろうから、なんとか元気に振る舞ってみる。普段より意識して、プラス五割増しくらいの勢いで。
少しでも明るくしておけば、デジちゃんが罪悪感みたいなのを持たないでくれるはず。実際デジちゃんは何にも悪くないから、そんな不安そうな表情をしないでほしい。
あぁ、終わっちゃった。いや、でもいつか向き合うときが来たはずだから、時間が早くなるか遅くなっただけだね。つまり、仕方がないこと。うん、そうなんだ。
これでおしまい。これで終わりなんだ。だから早くデジちゃんに迷惑にならないようにしなきゃ。
思っていた以上にわたしは冷静だった。
「……ね、最後に伝えさせてほしいことがあるんだ。聞いてくれる……?」
少しの間があって、一回こくんと頷かれる。それを見て、今出来る精一杯の笑顔を作って、勢いのままに告げた。
「デジちゃん……ありがとう。好きにならせてくれて。そしてどうか、幸せな人生を送ってほしいな」
告げ終わり、一度深呼吸。デジちゃんからの反応はない。そしてそのまま続ける。
「気持ち悪かったよね、ごめん。じゃあ、
「あっ……」
最後の言葉を告げた後、その場から離れる。
実感がわいてなかったんだと思う。この後どこに行ったのか、何をしていたかは覚えてない。
そして、気がついたら部屋についていた。誰もいない。いたら笑い話として今までの話を聞いて貰おうとおもったのに、残念。
今日はもうやることもないしということで、ベッドに横になる。
「……振られ、ちゃったな」
なんとなく、意味無しに呟く。何でもない呟きのはずだった。けれど、段々と景色がボヤけていく。一粒、何かが頬を伝っていく。
「あ……」
──もう、抑えられない。
なんとか涙を手で拭き取ろうとする。しかしそれをするばするほど止まらない。むしろ増えている。
同時に思い出すさっきのこと。段々と認識がはっきりしてきたみたいで、気が付けば声を上げて泣いていた。
あぁ、わたしはダメなんだ。デジちゃんはわたしのことひつようないんだ。
なんで、だめなんだろう。わたしは、こんなにデジちゃんのことがだいすきなのに。
なんで、すきになっちゃったんだろう。いっそのこときらいになっちゃえば、こんなにかなしくないのに。
なんで、わたしはウマむすめなんだろう。もしちがったら、『おし』でみられることはなかったかもしれないのに。
なんで、なんで、なんで──。
浮かんでくる疑問。たまに派生するもしも。何か一つ違えばまた違う結果になって、こんな気持ちにならなくて済んだかもしれない。
でも、それは妄想でしかない。こうやって泣いているわたしが、現実。変わることはない、事実。
いつか、これらを乗り越えていかないといけない。だけど、今は──こうやって、泣いて整理する時間が、どうしても必要なんだ。
だから……もう少しだけ、『わたし』でいることを許してデジちゃん。もうすぐ『私』になるから。もう二度と、あんなことはしないから。ちゃんと受け入れるし、離れるから。
──────
一方、アグネスデジタルはその場から動けずに、ずっと立っていた。目線は変わらず、ナナが出ていった出口。
「……これで、よかったんです」
ぼそりと呟くデジタル。胸から響く痛みを手で押さえながら、何度も何度も深呼吸をしながら頷く。
「……あんなおかお、はじめて」
にこやかに振る舞っていたナナが最後ここを去る際、絶望に染まっていたような顔を見てしまい、その光景が頭から離れない。
しかし、だからといって同情して付き合うことなんてナナに対して失礼であるし、それは本当に好きだからなのかと問われたら分からなくなるものである。
「……」
デジタル自身、後悔がないかと言われたら嘘になる。反面、あの場面でどのように答えたとしても後悔していただろうとも。
あの時出した自身の結論は間違っていない、とデジタルは思う。必死に考え、出した結論。嘘ではない真実の気持ち。だがそれでも、胸の痛みは消えない。
「……ごめん、なさい」
誰に対しての謝罪なのだろう。一つ漏らしてしまってから、身体はがくりと崩れ落ち、うずくまった姿勢になりながら、同じ言葉を繰り返していた。
「ごめんなさい、ごめんなさい……!」
自分でもどうしてこんな行動をとっているのかわからない。けれど、止まれなかった。不思議と湧き上がってくる涙を流し、自身では表現できない感情に揺さぶられ、しばらくデジタルはそこに居続けた。
ナナのことを『推し』であると自身の中で定めてしまい、それが揺らがなかった、と見ることもできる。
それも一つの答えだろう。さらにいうならば、これらの選択に正解はない。
しかし、解法を一つに固定してしまったのはよくはない。数学や物理のようにこのパターンの問題はこの公式を用いる、などは心の選択では通じない。もしかしたら別の解法があって、また別の結果になったかもしれない。本当にこの解法しかなかったかもしれない。探してみないとそれらは分からない。
ただ、それが出来るほどまだデジタルは大人ではなかった。それだけの話だった。