ウマ娘全てに愛を振り撒くデジたんと、そんなデジたんに自分だけを見て欲しいと考えるウマ娘概念   作:こー

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お馬のアグネスデジタルさん。
今までありがとうございました。
心よりご冥福をお祈りいたします。


ライブを楽しむデジたんと、なんか勝手にブルーになってしまった幼馴染みウマ娘概念

 この日も、わたしはデジちゃんの趣味に付き合っていた。今日はレースの後にライブがあるみたいで、ペンライトやうちわが入ったバッグを背負って気合い十分な感じでわたしたちは会場にいた。

 一応わたしはわたしでペンライトを持ってる。デジちゃんほど本格的なものじゃないけどね。

 

「ナナさん、今日は楽しみましょうね!!」

「うん、めいっぱい楽しもうね」

 

 息苦しいけどそれが醍醐味らしくて、なんというか圧倒されちゃうけどそれに感動を覚えちゃう、それがライブ。

 レース勝ったウマ娘ちゃんがセンターを彩り、周りの人たちは負けはしたけども楽しそうにステージで歌って踊る。個人的にはここが、皆は敵同士ってわけじゃなくてあくまで『ライバル』なんだなって感じがして好き。

 

 だけどそれ以上に、デジちゃんがそれを見て楽しそうにしているところが好き。幸せそうに必死にコールするデジちゃんが本当に好き。

 ……その表情が別の人たちに向かれているのが羨ましい。それでもそれをすぐ近くから見れているからそれでいいんだ。これ以上は、望めない。

 

 ──そして、ライブが始まった。

 

 さっきまでバラバラだった会場が一気に一つになっていくのを感じる。ステージにいるウマ娘ちゃんのたちの発する声で、盛り上がっていく。

 すごい、としか表現が出来ない。何度かデジちゃんとライブには行ったことがあるけれど、いつまでも慣れる気がしない。

 

 ちらっとデジちゃんのほうを見てみる。予想通り、凄く楽しそうに振り付けやコールをやっていた。

 わたしも振り付けやコールを控えめながら行いつつ、時折デジちゃんの様子を見る。割と激しい運動を結構やっているのに全然疲れを見せない。……すごいなぁ。

 目線をステージのほうへと移す。レースの割とすぐ後なのに、彼女たちも疲れは見られない。あれがプロなんだろうか。

 

 ……ふと、考える。わたしがもしレースで一着になれば、デジちゃんはわたしだけを見てくれるのかな、と。すぐ結論を出した。そんなわけないと。

 

 確かにセンターのウマ娘ちゃんは一番目立つ。そういう風に出来ている。だけどデジちゃんは全員のウマ娘ちゃんのことを見ている。視界に入る機会はセンターが多いんだろうけど、均等に推しているから、仮にわたしがセンターになってもわたしだけを見てくれるなんてあり得ない。

 それにそもそもわたしがセンターになるなんて不可能だ。あんまり運動向きな身体じゃないし、なにより脚が遅い。正直なんでトレセン学園に入れたのか不思議に思ってるほどだから。

 

 なんて、折角のライブ中なのにちょっと気分が落ち込み気味になっていた……そんな時、隣からこちらへ小さくかわいい声がかけられた。

 

「……あの、ナナさん。大丈夫ですか? あんまり気分が良くなさそうですけれど……」

 

 まさかのわたしの心配。今はわたしよりも優先にすべきイベントの真っ最中なのに、どうしてかわたしの心配をしてくれている。

 

「もしかして、酔っちゃいましたか? 本当に大丈夫ですか? 無理しちゃダメですよ?」

 

 昔、初めてデジちゃんとライブに一緒に行ったとき、あまりの人の多さに凄く人酔いしちゃってデジちゃんに迷惑をかけたことがある。今は殆ど慣れたけどそれをデジちゃんは覚えているみたい。

 わたしのことを覚えてくれてた嬉しさと、そういうわけではないのだということから来る罪悪感を味わいつつ、笑顔の表情をすぐに作って小声だけど元気そうに答える。

 

「ううん、大丈夫。ごめんね、折角のライブを邪魔しちゃって。さ、ラストの大盛り上がりが近いし、続けよう?」

「……はい」

 

 あんまり納得がいってなさそうに元の方を向いて再開するデジちゃん。だけどどこかさっきより応援の元気がないような気がする。

 ……もしかして、わたしのこと気にしてくれてるのかな。それはそれで嬉しいことではあるけど、そのせいでデジちゃんには苦しんでほしくはないから、こういう時は存在を忘れてくれてもいいのに。

 

 わたしも応援を再開するけど、たまに隣のデジちゃんのほうからの視線を感じる。

 ……なんだかなぁ。こんなことさせたいわけじゃないのに。もっと楽しいことを目一杯楽しんでほしいのに。意識はしてほしいって思ったことはあったけど、デジちゃんの趣味の二の次でいいのになぁ……。わたしの存在じゃ、デジちゃんのあのかわいい笑顔は引き出せないから……。

 

 

 そしてそのままずるずる進んでいって、なんだか思っていたよりも重めの空気のままライブが終わってしまった。いつもならニコニコしてライブの余韻に浸りながら熱く語るデジちゃんも今日はどこかそんな感じじゃない。

 

 ……明らかにわたしのせいだ。わたしのせいでデジちゃんはライブに100%専念出来ないで楽しめなかった。もっと上手く表情が隠せていたらこんなことにはならなかったのに……。

 さすがにこれは謝らないといけない。それにこんなことが続くなら、もうわたしはデジちゃんの趣味に付き合わない方がいいかもしれない。……内心では凄く嫌だけど、デジちゃんには幸せでいてほしい……。

 

 とりあえず、声をかけよう。

 

「「あの」」

 

「「…………」」

 

「「お先にどうぞ」」

 

「「…………」」

 

 どういうわけか発言のタイミングが一致していたため、被ったかと思えばお互いに黙ってしまう。また被るのはあれだからもう少しタイミングを置こうとするとデジちゃんもそのつもりだったのか沈黙の時間が続く。

 ……それなら、わたしから先に言わせて貰おう。

 

「……じゃあ、わたしから言うね」

「あ、はい!」

「──ごめんなさいっ!」

「……えっ!?」

 

 頭を深く下げてデジちゃんに謝罪。謝られた本人は何がなんだか分かってない風な雰囲気を見せるものの、絶対分かってるはずだから敢えて無視。とにかく謝罪を続ける。

 

「今日の目玉の一つのライブ、それをめちゃくちゃにしてしまって……そのせいでデジちゃんが全力で楽しむことが出来なくて……本当にごめんなさい。あの時、ほんの僅かでも迷惑だと思ってたら、どうか遠慮なく言ってくれると嬉しい」

「え、えーっと……」

 

 デジちゃんからの言葉を待つ。実際は一分も経ってないだろうけど、一時間くらいに感じられた時間を経て返ってきた。

 

「あの、まず聞きたいんですが……ナナさんは大丈夫なんですか? もう気分は悪くないですか?」

「え?」

 

 まさかのそっちの話。しかも心配してくれてる。予想とまるで違った返事。これに一瞬呆けてしまったけど、待たせるのはダメだからすぐに返した。

 

「う、うん。大丈夫」

「そうでしたか……よかったです」

 

 なんなら気分が悪くなってすらいないからね。勝手にブルーになっただけだから、デジちゃんに心配されるようなことはないんだけども……。

 これにデジちゃんはめちゃくちゃ安心したかのような様子。……かなりの罪悪感が。

 

「それじゃあ、これでその話はおしまいですね。じゃあ次はあたしの話を──」

「……え、待って待って!」

 

 当たり前のようにわたしの話を終わらせようとするデジちゃんを慌てて止める。

 いや、なんでって顔をされても……したいのはこっちのほうなんだけども……。

 

「……迷惑、じゃなかったの? デジちゃんが迷惑だったなら、もう一緒に来ないつもりだったんだけど……」

「まさかとんでもない! 迷惑なんかじゃありませんよ!」

「……え?」

 

 これも当然であるかのように言うデジちゃん。演技っぽさはない。なんなら今日が酷かっただけで今までも本当はデジちゃんはわたしのこと邪魔とか思っていたんじゃないかと思ってたから、これには驚いた。

 

「だって、わたし……」

「かなり失礼なことを言いますけど……ナナさん、たまにあたしにもっと自信を持った方がいいと言ってくれますが、ナナさんももっと自信を持つべきだと思います!」

「っ!」

 

 ぐいっと接近してきたデジちゃん。普段はこんなことをしないのにいきなりやってきた。発言に夢中で気がついてない……!?

 

 ち、近いぃ……! デジちゃん近いよぉ……!!

 

「あたしはナナさんのことを迷惑だと思ったことは一度もありませんし、むしろ楽しいです! というか逆にあたしなんかといていいものなのかと考えちゃうほどなんですよ! 正直あたしとしても他の方といられたほうが楽しめると思いますし、それを眺められますし!」

 

 で、デジちゃんがわたしといて楽しい……?!!!?

 近いだけでもあれなのにさらにその言葉で心臓の鼓動が速くなる。

 

「そもそもですね、もっとナナさんは自覚するべきなんです! 自分がどれだけ素晴らしいかを! 多すぎるのでここでは全ては語れませんが、語ります。いいですね!」

「ぇ、ぁ」

「いきますよ、一つ目────!」

 

 そこから始まるデジちゃんによるわたしの誉め殺しショー。デタラメなんかじゃなくて、きちんとわたしのことを見てくれてたんだと伝わる言葉を沢山言われた。

 今だけはわたしだけを見てくれることによる嬉しさ、誉められ続ける恥ずかしさ、顔の接近によるバクバク音で限界を迎えようとしていた。

 

「きゅぅ……」

「──って、ナナさん!? 大丈夫ですか!?!??」

 

 ──もう、死んでもいいかもしれない。

 

 気を失う直前、わたしの脳裏に過った最後の言葉。実際こうやって死ねるなら、本望なのかもしれない。




続きません。……多分。
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