ウマ娘全てに愛を振り撒くデジたんと、そんなデジたんに自分だけを見て欲しいと考えるウマ娘概念   作:こー

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キャラ崩壊注意です。


静かなデジたんと、本気で走る幼馴染オリウマ娘概念

「すぅー……はぁ……」

 

 いつもの体操着に着替えて、自分の番を今か今かと待つ。現在時間は放課後。これから定期的に行われる選抜レースに出場する。

 自分の番はまだ先のはずなのに、ついチラチラと時計を確認してしまう。時間が一分一秒ごとに近付いくごとに、心臓の鼓動が全身に伝わってくるのを感じる。さっきからずっと深呼吸をして整えようとしているのに、全然整ってくれない。

 

「…………」

 

 こうして選抜レースに出ることは初めてじゃない。だけど、やっぱりこの感覚には慣れる気がしない。

 なのにわたしの周りは皆走ることを待ちきれないかのような目をしている。全く緊張してる様子を見せない。凄いなぁ……。

 

 多分、ここにいる人たちはみんな夢があるんだろう。このレースで活躍がしたい。あの舞台で勝ちたい。否定なんて許されない美しい夢を抱いて、この選抜レースに臨むんだろう。

 でも、わたしにはそれがない。親に言われるがままにここへ来て、ただ怠惰に過ごしているだけ。勿論努力はするけど、その目的を見つけることはできていなかった。そう、『できていなかった』なんだ。

 

 ふと、視線を観客席のほうに移す。

 そこにいるのは今走ってるウマ娘たちに向かって声援を送っているデジちゃんと……何故かアグネスタキオンさん。ルームメイトなのは知ってるけど何でそこにいるんだろう。こういうのに興味はなさそうだと思っていたのに……。まぁ、いいか。

 

 改めて視線をデジちゃんに。もしこのままデジちゃんが帰らなかったら、わたしの走りを見てくれることになる。

 見てくれてるなら、手を抜いて走りたくない。全力で走るのはあまり勧められていないんだけど、それでも全力でデジちゃんに魅せたい。勝てない可能性のほうが高いけど、それでも見てくれてるなら勝ってみせたい。勝ちに近付きたい。

 

 普段はこういう思考はしないのに、レースが近くなるとちょっと考えが変わってしまう。ウマ娘の性ってやつなのかもしれない。

 でも今はそんなのどうだっていい。これはわたしのレース時に感じる思いだ。本心だ。

 

 これがわたしの、今の走る理由。他の人とは違う完全に私欲のため。決して尊いものではない。人には話せない非難されるであろうおかしなもの。きっとデジちゃんにこんなこと知られたら距離を置かれてしまうだろう。そんなの尊くなんてない、と。

 

 だけど……思うことはどうか許してほしい。口には絶対しない。広めることは決してしない。ただ自分の中に留めておいて、深く思うことくらいは……許してくれる、よね?

 

「『ナナシノゴンベエ』さん。そろそろ出走のお時間です」

「あ、はい!」

 

 職員の人に呼ばれて指定された場所へと向かう。

 心臓のバクバクは止むことを知らない。深呼吸をしても収まらない。でも……やってやる。デジちゃんが見てくれるなら、全力で──!!

 

 

 ────────

 

 

「おや、そろそろ『ナナシノゴンベエ』くんの出番かな?」

 

 どこか見たことあるような無いような、そんな黒髪ポニーテールのウマ娘がゲート付近に向かっているのが遠目から見えたタキオンは呟く。

 選抜レース内容は想像よりも面白かったとタキオンは感じている。これから輝くかもしれない存在がここに混じっており、さらにそれらが全力で勝ちをもぎ取りにきているのだ。見るという視点から見れば割と違った形になっているところを見つけ、面白味を感じる。気が向いたときまた見に来ても良いのかもしれないなとも感じていた。

 

 だが、今回の目的はただ見るわけじゃあない。デジタルの理解者である『ナナシノゴンベエ』、彼女が目的だ。

 一体どんな走りをするんだろう。話は聞いたことがないとはいえ楽しみであった。

 

「デジタル君、君はどうだい?」

「──」

「……デジタル君?」

 

 いつもならこちらよりも遥かに強い熱気で返事を返してくるデジタルだが、急に黙り込んでしまっている。先ほどまではいつも通りであったために、タキオンは思わずデジタルのほうに振り向く。

 

「…………」

 

 見ればデジタルの顔は何かを心配するようなとても不安そうなものになっていた。見つめる先には『ナナシノゴンベエ』であろうウマ娘。キャパオーバーして意識を失っただけ思っていたタキオンは予想外なことに困惑する。

 

「……あの顔……大丈夫かな……」

「おーい、デジタル君? どうしたんだい?」

「うひゃぁい?! ご、ごめんなさい! ちょっと考え込んでしまって……」

「ほう、考え事? これまたいきなりだねぇ。何かあったのかい?」

「……ちょっと、ナナさんについてでして……」

 

 ほんのり笑いを浮かべながら答えるデジタル。しかしそこには先ほどから抱いていた不安は隠せていない。

 

「……良ければ聞かせてもらえないかな?」

 

 俄然、『ナナシノゴンベエ』というウマ娘に興味が出てきたようだ。ルームメイトのデジタルにここまで多彩な感情を引き出させるという事実、そしてその関係性に。

 

 タキオンの問いを受け、デジタルはゆっくりと言葉を紡いでいく。

 

「……ナナさんはですね、とってもがんばり屋なんです。だから、無茶をよくしちゃうんですよね。……昔から、そうでした。その度に反動……といいますか、それがやってきてて、苦しんじゃうんです。今のナナさんの顔は、無茶をするときの顔だったので、ちょっと怖くなってしまって……」

「……なるほどね」

 

 色々気になる単語が出てきてはいたが、一つ一つを突っ込んでいると目の前のレースが見れないため一旦引く。詳しい話は今ここではできないと悟り、簡単な質問を投げ掛ける。

 

「普段からあんな感じなのかい?」

「いえ、普段はそんなことはしてないはずです。レースも久々のはずなのでもしかしたら前のレースではしていたのかもしれませんが……」

「ふぅん……」

 

 質問が終了する頃に、スタート数秒前に。

 舞台は短距離、距離にして1500mほど。芝の戦場のゲートに8人のウマ娘たちが待ち構えている。

 少しの間静寂が世界を包み込んだかと思えば────ゲートが開かれる。瞬間一斉にスタートを決めた。

 

「(……ほう、『逃げ』るのか。彼女は)」

 

 先陣を切ったのは『ナナシノゴンベエ』。脚の回転速度は速く先頭に躍り出た。熱意が伝わってくる走りだ。

 

 だが序盤からかっ飛ばしすぎているとも感じた。短距離の選抜レースに出ていることからあまり体力に自信はないものと思われる。それなのにいきなりあのペースならば終盤に入る頃には崩れ落ちてしまうのだろう。

 

 予想通り、最終コーナー付近で後続が先頭を捉え始めてきた。追い抜かれるのも時間の問題だろう。

 

 だが、タキオンはここで目を疑った。『ナナシノゴンベエ』が追い抜かれたかと思えば、先ほどとは違って力強い走りになっていったからだ。

 そう、まるで差しの走りのようになっていったのだ。

 

「(……器用、だね。面白い。だけど──)」

 

 ──なんだけど不思議だ。こんな走りをするなんて今日始めて知ったからだ。もっと噂になってもおかしくないはずなのだ。なのにどうして……。

 

 レースは残り200m。追い抜いてきたウマ娘と差している『ナナシノゴンベエ』の一騎討ち。互いに競り合っているが……勝利の女神が微笑んだのは、前者のほうだった。

 

 最終結果は2着。悪くはない。むしろ良いほうだろう。掲示板から目線を『ナナシノゴンベエ』へと移すと──芝に倒れ込んだ瞬間が目に入った。

 

「……!」

「ナナさんッ!!!!」

 

 刹那、デジタルが立ち上がり猛スピードで『ナナシノゴンベエ』のほうへ向かった。後にタキオンは続く。

 

「ヒュー……ヒュー……」

 

 聞こえてくる浅い笛のような呼吸音。微かにゼーゼーとも言っているように聞こえる。加えて虚ろっぽい目。すぐさまデジタルは背中をさすりながら飲み物を用意していた。

 

「ナナさん大丈夫ですか? ほら、水です。ぬるま湯ですよ。ゆっくり飲んでくださいね」

「ぁ……と……」

 

 力無さげにゆっくりとコップを手に取り、少しずつ飲んでいく。

 

「(……喘鳴(ぜいめい)か)」

 

 喘鳴とは、狭くなった気管や気管支を無理に通る空気で喉が笛のように鳴っている状態のことをいう。これが起こる原因として強く言われているのは、気管支喘息だ。

 とにもかくにも、このままにしては居られないだろう。

 

「……とりあえず保健室へ運ぼう。寝かせておくにもベッドがいいだろうからね」

「……そうですね。ナナさん、これから保健室に行きましょう。申し訳ないですけど、背負わせて頂きますね」

 

 すぐに背負わされて、保健室へと運ばれる。職員の人が運ぶ際事前に連絡をしていたことからスムーズにベッドへ寝かせれた。

 苦しそうではあるものの徐々に回復していってる。

 

「……よかった……本当に」

「……」

 

 タキオンは思い出していた。走り終わった最後、『ナナシノゴンベエ』がこちらを──デジタルのほうを見ていたことを。やりきったぞとこちらにアピールしているようだったのを。

 

 二人は幼馴染みであったと聞く。加えていつも一緒にいる。

 

「……」

 

 ある可能性が頭に過った。だとしたら、色々な意味で興味深い。面白い存在だ。

 

「……気に入ったよ、『ナナ』君」

 

 デジタルに一言告げて、タキオンはこの場を去る。自身の部屋へ戻るその最中、喘息へ効く薬はあったかを思案し始めるのだった。




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