ウマ娘全てに愛を振り撒くデジたんと、そんなデジたんに自分だけを見て欲しいと考えるウマ娘概念   作:こー

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終盤に入りましたね。


改めて自分にとってのあの娘とは何かと考えると同時に、その娘との出会いを思い出すデジたん概念

 タキオンさんにお話を聞いて頂いて、暫く考えるようにと言われてから、あたしはずっと部屋で一人考え込んでいます。

 

 内容は、ナナさんは本当に『推し』であるのかということ。それについて考えろとタキオンさんから言われたため考えてはみてるのですが、逆にナナさんが『推し』ではなかったら何だと言うんでしょう……?

 

 あたしにとってウマ娘ちゃんとは、皆様等しく尊くて、推されるべき存在。比較するなんて烏滸がましい。

 あたしがこう思っている事をタキオンさんはおそらくですが知っているはずです。なのに、どうしてあんなことを……?

 

 そもそも不調気味という話でしたのに、どうしてナナさんが……? タキオンさんは、あたしの不調はナナさんが関係しているとおっしゃっていましたが、どうしてもそうは思えません。

 

「……」

 

 ……ですが、ナナさんへの感情も別問題ではありますが、深刻な問題です。

 あの謎の感情が消えるまで避けようと決意して何日か経ちましたが、結局消えることはなく、むしろ増幅傾向にあるのではないかとすら思えてしまいます。

 これを何とかしないとナナさんに会うことは許されないのに……。

 

「……会いたいな」

 

 思わず口から溢れる本音。

 ……本音?

 

「──!? 今あたしは何を……!?」

 

 口を手で塞ぐ。今の発言はウマ娘ちゃんを一歩引いて眺める立場の者としてあるまじきもの。そんなことを考えることは絶対に許されないのに……! 本音であってはいけないのに……!!

 

 首をぶんぶん振ってこの考えを失くそうとします。なのに追撃と言わんばかりに蘇ってくるナナさんとの思い出。どれも輝いているものばかりです。

 

 あたしの趣味に唯一付き合ってくださるウマ娘ちゃん。所謂こちら側ではないのにあたしの趣味を否定せず、あたしの会話にも結構ついてきてくださって、一緒に楽しんでくれる優しいウマ娘ちゃん。

 ……あたしのことを、大事に考えてくれるウマ娘ちゃん。

 

「っ!!」

 

 顔が熱くなった気がして、冷ますのと雑念を払うためにもう一度首を振ります。

 これ以上考えたら、ダメだ。消さないと。考えないようにしないと。

 

 それは、分かっているはずなのに──

 

『で、デジちゃん……』

『……デジちゃん?』

『デジちゃん!』

 

 再生されるあたしを呼ぶ色んなナナさんの声。一緒に思い出される色んな表情。

 恥ずかしがっている時のナナさん、あたしを案じてくれる時のナナさん、ライブを楽しんでくれてる時のナナさん。

 

『──デジちゃん』

 

 優しいお顔で声をかけてくれる時のナナさん。

 

 どのナナさんも可愛らしく尊いものばかり。だからこそ──

 

 ゴンッ!

 

 壁に頭を打ち付けて、その痛みで冷静になります。

 ──だからこそ、ナナさんは推されるべき存在。あたしの推しであるはずなんです。これ以上はナナさんを推す者として、考えてはいけないこと。

 

 ……それが、正しいはずなんです。間違いないはずなんです。

 

「すぅ……ふぅぅ」

 

 一度深呼吸をして気持ちを落ち着かせます。

 

 タキオンさんには申し訳ないですが、やはりナナさんは『推し』です。そうでなくてはいけないんです。これが真理なんですから。

 

 ……何故か、何か引っ掛かるようなものがありますが、無視していいでしょう。これも謎の不調によるもののはずですから。

 

 答えが出たところで一息つきます。すると唐突に、ある疑問が浮上してきました。

 

 ──そういえば、あたしのナナさんが出会ったのは──?

 

 ──うちの近くの公園。確か、小学生のころだったはず。

 

 何気なく出てきた疑問に反射的に答えます。

 そうしたら、次々に断片的に出てくる出会いの思い出。少し振り返ってもいいかもしれないと思い、きちんと思い出してみて、ちょっとだけ懐かしさに浸ってみることにしました。

 

 

─────────

──────

───

 

 そう、あれは秋ごろだったはず。確かその頃に、ある噂といいますか、変な話が広がっていたんです。『変なウマ娘ちゃんがいる』というよく分からない話が。

 詳しくは覚えてないんですが……そのウマ娘ちゃんを皆さん怖がっていたということは覚えてます。そして、そのウマ娘ちゃんは自分の隣のクラスにいる黒髪の子だということも。

 

 当時からウマ娘ちゃんという存在の素晴らしさに気が付いていたあたしは、『ウマ娘ちゃんなんだから怖いとかあるわけがない』という思考に至っており、休み時間や放課後にそのウマ娘ちゃんを一目見ようと、目立たないようにしてその子を探していました。

 しかし、どういうことか出会えることはありませんでした。後から聞いた話によれば、休み時間は図書館や一人になれる教室でお勉強をされていて、放課後は帰りの会が終わると同時に帰路についておられていたのだそうです。

 

 悲しいことに、そのような発想に至れなかったあたしはしばらくの間無駄な努力をしてなんとか会おうとしていたのです。結果は当然ながらよいものではなく、何とかして会おうと策を練りながら帰り道を歩いていた──そんな時でした。

 

 偶然気分を変えて少し遠回りして通った公園の前。そこのベンチに黒髪のウマ娘ちゃんがうちの学校の体操着姿で何やらトレーニングをしていたのです。そんな尊い姿をみてしまったことと、目的のウマ娘ちゃんであろう子に出会えた嬉しさから昇天しかけましたが、ここで倒れては気が付かれてトレーニングの邪魔になってしまうと思いなんとかぎりぎりで踏みとどまり、すぐさま音を立てないようにして茂みに身を潜めてその様子を眺めさせてもらいました。

 今考えてもこの日のあたしグッジョブです。ですがこの後は、結果としてはよかったですが行動は悪いものでありました。

 

 ストレッチを主にしていたそのトレーニングを眺めさせてもらってから数分後くらいでしょうか、なんと不意に茂みで音を立ててしまったのです。それもかなり大きめの。咄嗟に静かにしたのですが、気が付かれないわけありませんでした。

 

『だれか、いるの?』

 

 幼いナナさんの声。疑問の形になっていましたが、誰かがいると確信しているような声掛けでした。ここでいるのかいないのか迷ってるようでしたら引き続きこうしていましたが、いると分かってるような声でしたので、諦めてちょっと恥ずかしさを覚えながら出ました。

 

 なんとお声掛けをすればいいのか考えていたところにナナさんからお声をかけてくださったのです。

 

『ねぇ、きみは?』

『は、はい! アグネスデジタルです!』

『ありがとう。それで、アグネスデジタルさんはどうしてそこに?』

 

 無表情で尋ねるその子。なんだか、眼の色が輝いていなかったことは覚えています。

 

 そこまで振り返ると、噂のことについて段々と詳細も思い出してきました。曰く、目が怖い。曰く、当たり前のようにテストで点数を取るし喜ばなくて不気味。曰く、ちょっとした休みでもずっと何かの勉強をしてる──等々。

 

 ここであたしはこの子が噂の子なんだと確信しました。

 

『その……トレーニングをみていたんです』

『わたしの? ……なんで?』

 

 見られた方からすれば至極当然の疑問。この時は特に何も思わなかったのですが、今考えてみるとどこか違和感があるといいますか……。

 

『えぇと……みたかったから、です』

『……そう、なんだ。でもわたしのなんてみてもいみないよ』

 

 ……そうでした。この頃から自己肯定感が低かったんです。記憶の中のため多少違いはあるでしょうが、なんだかこの時のナナさんはどこか寂しそうな様子だったんです。

 

 それを何だか見過ごせなくて、思わず声に出してしまったんです。

 

『あの! ……おなまえ、きかせてくれませんか?』

『……ナナシノゴンベエ』

 

 最初は何だかそっけない様子。これがナナさんとの出会い──。

 

───

──────

─────────

 

「……懐かしいですねぇ」

 

 そこを起点に再び蘇ってくるナナさんとの思い出。色んなことがありました。

 ナナさんに愛称を付けさせていただいたこと。本人の前で素晴らしさを語ったこと。段々と雰囲気が柔らかくなっていったこと。その頃から確かあたしの趣味に興味を持ち始めたんでしたっけ。他にもたっくさんあります。……詳しくすれば一生語れるほどにまで。

 

「………………」

 

 振り返れば振り返るほど、ナナさんのお顔をまた見たいというものが湧いてきてしまいます。そのようなやましいものがあるからこそ会うわけにはいきませんのに……。

 

 しかし、今回のではっきりしたことがあります。それはナナさんはやはり推しであるということです。逆にナナさんほどに尊い方をあたしが推さない方がどうかしてます。

 

 何度も自分の心の中でそれを唱えて納得させます。ナナさんは推しに決まっているはずですのに、何故か素直に飲み込めていないところがあるからです。

 ……納得も何もこれが正しい関係です。覆しちゃいけない。これが最善なんですから。

 

 そうして、ナナさんに対することを自分の中で再構築しているその最中──

 

 ゴンゴンゴンッ!

 

 少し荒っぽいドアのノック音が。突然のことでしたのでかなり驚きましたが、続けて聞こえる外から焦ったようにしてあたしを呼ぶ声が聞こえてきたので、恐る恐るドアを開けると、そこにはナナさんのルームメートウマ娘ちゃんがいました。

 

 緊迫としたその表情に、どこか嫌な予感がします。軽くパニックになっているその子に深呼吸をしていただき、お話を聞かせてもらうことにしました。

 

 落ち着かれたその子はゆっくりと、けれども強く訴えるように告げました。

 

「──え?」

 

 最初、その言葉を聞いたとき何も感じられなくなりました。

 

「ナナさんが……たおれた……?」

 

 しかしそのすぐ後、とてつもない寒気が全身を支配したのです。思い出すのは先日の選抜レースで倒れてしまったときのこと。あの時は、なんとか無事に済んでくださり助かりましたが、今回は────?

 

「ッ! な、ナナさんは今どこにッ?!」

 

 いてもたってもいられなくなり、すぐにナナさんのところに行かなければという気持ちしかなくなりました。すぐにその子は保健室ですと教えてくれ、あたしは気が付けば走って保健室へと向かっていました。

 

 ──ナナさん、どうか無事で……!!




地味にほんの少しだけ他の話で修正してるところがあったりします。

最後に、またまたですが紹介させてください。
oinktonkatuさん(@oinktonkatu)さんにナナちゃんを描いていただきました!

【挿絵表示】

このようなかわいらしいイラストを多く描かれておられる方なので、気になった方はぜひともこの方のツイッターをご覧ください!
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