名探偵マヤノトップガン    作:激辛党

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出題編……1

 私が今、慣れない筆を執って文章をしたためているのは、先日トレセン学園にて発生した、ある事件について記録を残すためである。

 いや、事件……と書くと大げさに感じる人もいるかもしれない。事実、その内容は日常の延長と評して差支えの無いごく平穏なもの。間違っても誰かが傷ついたり、あるいは傷つけたり……とか、そういった探偵ものにありがちな『事件』では断じてない。おそらく数か月もすれば『あ~そんなこともあったね』で済まされてしまうような、単なる青春の一コマである。

 だが、それゆえに事の顛末を文書として記録しようとするものはおらず、また今後も現れることはないだろう。よって、不肖この私ことマヤノトップガンがこのように堅っ苦しい文をこちゃこちゃ書いている――という次第である。……いちいち単語を調べたり、記憶を掘り返したりと面倒にもほどがあるが、こればっかりは仕方が無い。あの事件で、栄えある探偵役を務めていたのは他でもないこの私だったのだから。なにより、タイキシャトルさんやマチカネフクキタルさんが、こんなふうな文を書けるとも思えないし……とか言ったらさすがに失礼か。

話が逸れた。

 ここから先を閲覧するにあたって、読者諸兄にお願いしたいことがいくつかある。これは事件の全体像を正確に把握し、かつ関係者の心情に共感するため必要不可欠なものであるから、不躾は承知でどうか呑んでいただきたい。

 一つ目、このカチコチな文体を我慢すること。理由は単純で、普段の喋り方をそのまま筆記していてはいくらなんでも読みづらいからである。もう一つ、先ほどは平和な事件と言いはしたが、内容を深めていけば笑いごとで済まない事も多々あった。当事者達の心中をおもんぱかると、それらをきゃぴっ☆とした文で表現するのはいたたまれない。

 二つ目、全文を私『マヤノトップガン』の一人称で記述する。この記録は少々長い文書となるかもしれないが、その全編は私の主観のみで描かれる。ところどころにインタビュー形式の会話を挟む予定ではあるが、それもあくまで私が直接、当人と会話したものに限定する。

 ……とっくに解決された事件を振り返って書くのだから、三人称のいわゆる『神の視点』で筆致すべきという意見もあるかもしれない。……が、却下だ。

私は自分が見たり聞いたり言ったりしたことしか分からないし、他の人もおそらくそうだろう。ましてや、心の中で思っていることを、赤の他人に勝手にあれこれ書かれてはたまったものではない。そもそもの話として、神の視点などというものが本当にあるのなら、事件が発生した時点で『あ、それはそれとしてこいつが犯人です』と地の文で書いてお終いではないか。よーするに、読み物としてシンプルに凄くつまらなくなってしまうから、嫌である。

 三つ目、この文章を読み終えて、今回の事件がどういったものかを完璧に理解したとして。それを自分の口で誰かに伝聞するのは是非とも謹んで欲しい。この理由は様々あるが、やはり最もたるものは当事者のプライバシーやらプライドへの配慮だ。

 こうして自分で文にしておきながら何だが、この事件は年若い少女の内面に深く踏み込んだ、実に繊細なものである。また彼女らは今でもトレセン学園で元気に活躍する現役ウマ娘であって、見ようによっては醜聞となりえる本文書で語る事実は、黒歴史以外の何物でもない。……それらが広く伝わることは、彼女らの本意では決して無いだろう。よって、この文書を読み終えた者は、皆すべからく分かり得たことを胸の奥底にそっと仕舞い込み、堅く口を閉ざすべきである。……といっても私にそのような強制力は一つも無いので、これはやっぱり単なるお願いである。まぁ、この文書を見せるのは気心の知れた友人のみにする予定なので、そこまで言い含める必要も無いか。

 以上が読者の皆様に注意して欲しい点だ。

さて、前置きがどうも長くなっていけない。普段やり慣れていないことを無理にするとやはり仕事が乱雑になってしまう。トレーナーちゃんの言う事は本当だったな。

 では次のページからは、事の起こりについて書いていこうと思う。

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