名探偵マヤノトップガン    作:激辛党

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エピローグ

 チーム<ブルームス>を震撼させた恐ろしい事件はかくして幕を閉じた。文章にとして改めて思い返してみると、あたかもチームの結束力を試されるかのような、度し難い複雑さを孕んだ試練だった。ただ一人の協力でも欠けていれば、真実に辿り着くことは不可能だったことだろう。

 協力といえば<ファースト>の人達も、難しい立ち位置を迫られながらも聞き込みなどで助力を惜しむことは無かった。この点については感謝してもし足りないくらい。とりわけ直接の被害者だったリトルココンに関しては、解決時の不手際で非常な負担を強いることになってしまった。ここに改めてお詫び申し上げたい。あれから一週間経って調子も戻り、いつものシニカルな態度でメンバーをきりきり舞いさせているとのことだが……。いつか時間を見つけてデートスポット巡りにでも誘うことにしよう。

 ……クレセントエースについてはやはり厳罰は免れず、二か月の停学処分と無期限の公式レースへの出走停止が下された。といっても両チームからの嘆願もあってかなりの減免はされたらしく、早ければ来年の四月にも復帰できるとのこと。ただ、実際に走れるかどうかは本人のメンタル次第。いつその時が来るかは分からないが、もし彼女が戻ってきたなら、私は出来る限りの笑顔でそれを迎えたい。

 それともう一つ……これは余談となるが、事件の影で冤罪の被害者となっていたスイープトウショウは、真犯人が捕まったことで無事に資料室掃除の刑から解放された。生徒会は審議について過ちを認め、総出で彼女に対し陳謝したそうで、その中にはあの女帝の姿もあったらしい。スイープはこの顛末に随分と気を良くし、満面の笑みとともにいつもの怪しげな魔法の研究を再開していたが……。あの調子にノリっぷりでは、また掃除を命じられるのもそう遠い未来では無いだろう。

 さて、長々と偉そうに他人への評価を書いてきたが、探偵役を僭越ながら務めた私ことマヤノトップガンの能力不足も痛感しているところだ。特に、再三再四ライスシャワーに指摘された証拠不足は言い訳のしようが無い。確かに時間は経っていたが、本気になって探せば一つくらいは物証が見つけられた可能性はある。例えば、ソースが混入していたであろうベンチの水溜まりの再調査だとか……。今回の失敗を活かし、今後はよりいっそう精進していきたい。

 ……なんだか反省文のようになってしまった。私はこんなことが書きたいわけじゃないのに。

 そもそも反省しなければならない事と言えば、この文書全体にしてもそうである。誰にでも読めるよう堅い文を心掛けたつもりなのに、地の方にもときおり口語が混じってしまっている。トレーナーのことを『ちゃん』づけで書いてしまっていたり、やたら私情というか私の想いについて書いていたりだとか……これではただの日記ではないか。一番酷いのは深夜、寮から抜け出すシーンだ。なぜ私の失恋について長々と感想を述べている? こんなのトレーナーちゃんに見せられるわけないじゃ

 

「おーいマヤノ? さっきから何こちゃこちゃやってるんだ?」

「わひゃっ! トレーナーちゃん!?」

「へぇ珍しいな。マヤノが書き物をするなんて。なんだ? 日記か?」

「み、見ちゃダメ~! ぜったいぜったいダメ!」

「そんなに必死に隠さなくてもいいのに。それにしても君にそんな几帳面なところがあるなんてな。意外っていうかなんというか……素直に驚いた」

「も~マヤだって色々考えてるの! ていうか、乙女の部屋に入って来るならノックぐらいしてよぉ。もし見られてたらと思うと……」

「いやここは部室であって、共用のスペースなんだが……。まぁいいや、ライスが一緒に走ろうって呼んでたぞ。あの子の長距離の並走に付き合えるのは、<ブルームス>じゃ君とフクキタルしかいないから」

「分かった~! すぐに行くね。あ……でもトレーナーちゃん。その前に一つだけ良い?」

「どうした急に。改まって」

「ライスちゃん……元気になったよね?」

「……ああ、そうだな。一週間前とは見違えるくらいに」

「マヤ知ってるの。ライスちゃん、学園を辞めようとしてたよね」

「そっか、知ってたか。……もう、いいそうだ。本人から聞いた。色々悩んでたそうだけど、全部解決したって」

「それも知ってる。……トレーナーちゃん、私が聞きたいのはね……。えっと、その……つまるところ、嬉しい?」

「へ?」

「ライスちゃんがいてくれて、嬉しい? って、嬉しいに決まってるよね。そうじゃなくってだから……ああもう!」

 何もかもじれったくなって、私はさっきまであれこれ書いていたノートを放り投げると、トレーナーちゃんに真正面から向き合って叫んだ。

「ライスちゃんのこと好きなんでしょ? だからこれで良かったよね……! マヤ、頑張ったよね!? トレーナーちゃん、喜んでくれたよね!?」

「な、え……? 泣いてるのか? マヤノ」

「答えてよっ!」

「そりゃもちろんライスシャワーのことは好き……。あー……たぶん、そういうこと言ってるんじゃないよな。えーっと……」

 少し難しい顔をした後、トレーナーはすっと手を伸ばすと私の頭の上に優しく置いた。

「俺はチームの皆のことが好きだよ。誰も特別扱いはしない。だいたい俺はチーム担当トレーナーだ。教え子によこしまな真似はしないさ。……これでいい?」

「ダメ。……じゃあなんで<ブルームス>にしたの。マヤのでも良かったじゃん」

「いやあれはまずいだろ!? 最悪外交問題に発展するって!」

「じゃあなんでライスちゃんとだけ海行ってるの!」

「行ってない、誤解だって! あれは単になぜか浜辺で迷子になったライスを迎えに行っただけで……」

「じゃあなんで顔逸らすの! こっち向いて!」

「えっちょ待って……痛い痛い!」

「今日という今日はもう逃がさないもんね~! とことんマヤに付き合ってもらうんだから!」

「勘弁してくれ! だから重いって! 君、去年からどんだけ体重増えたと……ぎぶぎぶぎぶ!」

 トレーナーと二人きりで揉みくちゃになってじゃれ合う。

 きっと彼にはやっぱりそんなつもりは無いし、私もそこまでできる気はしない。

 でも、もうちょっとこんなつかず離れずの感じでも良いかな? 

 まだまだ青春は始まったばっかりで、この先もずっと続くんだから。





犯人を当てることは出来ましたか?

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