名探偵マヤノトップガン    作:激辛党

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出題編……9

<ファースト>所属 リトルココンへのインタビュー

 

「あ、もう始まってる? ……あ、ちょっと待って。まず訊いて良い? なんで今更アタシに? 普通最初でしょ、こういう時ってさ。いや、別に責めてるんじゃなくて……単純に不思議なだけ。事件の状況なら、あの日直接訊いた……? まぁそのくらいは確かに話したけどさ。

 知ってんだよ。アンタ、色々嗅ぎまわってるんでしょ。<ファースト>だけじゃなくて、学園中の子に手あたり次第。驚いた? 別にアタシ達だって、何にも動いてないって訳じゃないんだよ? ……ちゃんと、こっちはこっちで探ってる。

 んで、そのメイタンテイ? なアンタがどうして事件被害者にこんな後になって訊き込みにくるのかが分からないって言ってんの。

……は? んな話じゃないでしょ、誰が寂しいだなんて! 調子狂うなほんと……。

 あーもういいや、脱線しすぎ。お互い時間の余裕も無いことだし、そろそろ真面目にやろっか。アンタもそれでいいでしょ? ほら早く質問しなよ。

 ライスシャワーを目撃した時のことをもう一度? ……ふぅん、良いよ。

 水分補給の時間になったから、皆で一斉にベンチに向かって。あの時、私は走った後で喉が渇いてたからさ、真っ先にグラウンドのフェンスを抜けたのよ。そしたら、ベンチの脇にある旗を立てる台座のトコに、ライスシャワーがぽつんと立ってた。別チームの子がなんで? と思って近寄ってみたら、なぜかアタシの水筒を持っててさ。んで、その足元には今できたばっかりのような水溜まり。意味わかんなくて呆然としてたら、こっちに気付くなりアイツが凄い勢いで謝ってきて。

 まぁ、だいたいこんな感じかな。騒ぎを聞きつけて、皆集まってきて――そっからはもう説明するまでもないでしょ。

 ……うん、あの場にはライスシャワー以外いなかった。それは断言できる。だから、零したのもアイツで間違いないよ、絶対に。他に出来る人がいないんだから、確定でしょ。

 あれが故意だったと思うかだって? じゃあ逆に訊きたいんだけど、アンタはあれが事故だと思うのか?

 ふざけてんだよ、人の物勝手に触っておいて、謝ればそれで済むと思ってる。それも水筒だよ!? 私、あれに口をつけて飲むんだよ!? 同じアスリートだったら、それがどれだけ嫌なことか分かるでしょ……普通。潔癖症とかじゃなくってもさ。

 ……ごめん、ちょっとヒスった。昔、それ関連であんま思い出したくない事があって。忘れて……お願い。

 コホン。まぁとにかく、私は日向に置いてあったからどうとか、転んだからどうとか、そんな言い訳は全然これっぽっちも信用してないから。

 別に、許さないって言いたんじゃない。アイツが本当に申し訳ないって思ってるのは伝わって来るし、私だってずっと怒ってるのも大人げないしね。えーっと明後日だっけ? 例の野良レースやったら、それできっぱり白黒つけて、もうネチネチ言ったりしないよ。アイツだってその……<ブルームス>で肩身が狭いんでしょ? アタシは別にいいけど。そういうのアンタとかタイキシャトルは気に病んでそうだし。

 はぁ? 誰が心配なんか! 笑うな、もう! ぐぐ……なんでアンタが聞き込みに来るんだよホント……。

 んで次の質問は? あの日水筒を最後に呑んだのはいつだったか? そうだね……確か十五時ちょうどの休憩だったと思う。そこで半分くらいまで飲み終わって、それ以降は触ってない。もちろん蓋もちゃんと締めたし、位置も皆と同じ日陰に戻してるよ。……水筒のことはもうこんくらいでいいでしょ、何回同じ話したと思ってんの。

今度はなに……あの日のチーム全員のラップタイムが詳しく知りたいって? なんでまたそんな重箱の隅をつつくような事を言い出すんだか。記録ならちゃんと取ってあるし、まぁいいけどさ。

 あー、それはその通り。十バ身の差とか余裕でつけてる子はいたね。そもそもマイル距離が不得意な子も参加してたし、疲れてきたら軽く流すくらいで走ってる子もいたから、そういうのはたくさんあったと思うよ。グラッセなんか、下手すりゃ五秒以上早くゴールラインをくぐってたんじゃないかな。まぁ私はあの日、調子悪くてあんまり良いタイム出せなかったけどね。

 だいいち二人で一緒に走るってこと自体、別に競争してるわけじゃくて、効率良くグラウンドを使うためだから。そりゃ少なからず追い抜けば気持ち良いってのはあったと思うけど、先を行く相手を意識している子は、そこまでいなかったんじゃないかな? それより自分のラップタイムの方がずっと気になるだろうし。

 え? 途中の休憩時間はどのくらい取ってたか? だから水分補給なら時間を決めて――あ、そ……そっちの方ね。それもタイミングは同じってことになってたよ。ただ、第三グラウンドはちょっとばかり位置が悪くって……なんで両端には設置してるのに、ベンチ側には無いんだか……マジ最悪。

 だから、どうしても間に合わないとか、我慢できないって時はアタシかグラッセに一声かけてから行くって決まりだった。一応、皆でトレーニングやってるわけだから、急にいなくなったらビビるでしょ? で、あの日そう言ってきた子は一人もいなかった。つまり、『ちょっとお手洗いに』とかで誤魔化して、ベンチへこっそり行くような輩はいなかったってこと。ふふん、アンタが確認したかったのってこういうことでしょ? さっきも言ったよう、アタシもあれから色々考えたんだから。

 さて、これで一通り終わったかな……ってまだあるの? 凄いね、アンタ。どんだけ必死なのよ。

 え? 寮の門限? 事件の前日に<ファースト>のメンバーで、寮を抜け出した子はいなかったか? 知らないよそんなの。アタシは確かに副リーダーっぽいことやってるけど、管理を任されてるわけじゃないんだし。どうしても確認したいってのなら、そっちで勝手に各個人にそれぞれ聞いてよ。

 分かった、そうする……って。アンタ本気で一人一人に聞いて回る気? いや、そうしろって言ったのはアタシだけどさ。めちゃくちゃ大変だと思うよ? アタシほどじゃないけど、一筋縄じゃいかない子もチームに多いし……。アンタも今後の出走考えてるなら、探偵ごっこばっかりしてるわけにいかないでしょ? 少しくらいなら手伝おっか?

 だーかーら! 心配してるわけじゃないって! 誰がマヤノのことなんか……。

なに、急に笑い出して。やっと名前で呼んでくれた? あーうっさいもう! 出てけ!」

 インタビューは中断。

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