~茜 視点~
空洞前
不気味ねー…灯りはあるけど不気味ねー…
あ、どうも皆様方こんにちは。
今空洞前で立ち止まっている翼を仕舞った私と、右肩に止まっているイズナです。
何で立ち止まっているか。
不気味だから。
そんなので立ち止まるな?
いやー、厳しいわねー…怖いわー……
まあ、地下室よりましなんだけどね。
『…マジで不気味だな』
「うん、そうだけど…とりあえず行ってみよう?」
『へいへい』
と、空洞へと歩こうとした時
ザッ、ザッ…
奥から、地を踏む足音がしてきた。
『お、おいおい、まさか誰か来んのか?』
「らしいね…隠れても良いけど、鬼だと思うから好都合だよ」
『待つのか』
「進みたい?」
『勘弁してくれ…』
うん、待っておこう…さて、どんな鬼が来るのかなー……
ザッザッザッ…
人影が空洞の奥から見えて来た。
あれ、は…
ザッ……
「おや、人間と…珍しい鷹だねぇ、こんな所で立ち止まって、鬼退治でもするきかい?」
ほ、星熊ぁぁぁあ!!?
嘘でしょ…まさか星熊勇儀が来るだなんて……
星熊勇儀…金髪の長髪で額には立派な赤い一本角、その角には黄色い星マークがチャームポイントで体操着みたいな 上着と少し透明なスカート、鬼の四天王の一人で力ならどの鬼よりも最強
まさか、まさか星熊に会うだなんて…
確かに鬼だけどこの鬼だけは会いたくなかった!!
「えー、いやー…その、此処の鬼の偉い人に話をしたくてねー……」
「ほお、萃香と話をしたいと」
「まあ、そんな所ね…」
「じゃあ、私とちょっと相手になってもらえるかねー?」
止めて星熊さん!!
貴女が本気で来られたら私生きていけないから、いや真面目に…
まじでどうしよう、戦わないと先には進ませてくれそうにもないし……
だからって断ったらあれだし…
……………
「…別に良いけど、能力はありなのかしら?」
「能力があるなら使っても良いよ、代わりに私も使わせてもらうけどねぇ」
ふむ、能力の使用は許可された。
なら勝機はいちおある。
因みに星熊の能力は「怪力乱神を持つ程度の能力」だ。
どれくらい凄いかって言うと、足を踏み入れただけで近くの建物が倒壊するのだ。
そんな事をされると、地面に激しい振動が起きて、私の足は壊れてしまうであろう。
なので、先手必勝か、能力で相手を動けなくさせるか……
…いや、卑怯臭いのはやめよう。
普通に、戦って…みますか。
『お、おい…茜、まさか戦うのか?』
「戦わないと先に進めないじゃん」
『別に逃げても良いじゃねーか』
「逃げたら嫌われるのよ、鬼って言うのは臆病だったり虐弱だったり嘘を言う奴には容赦はないのよ。つまり嫌われる」
「ほお、誰に喋っているのかは分からないけど、アンタ鬼に詳しいんだねぇ、妖怪かい?」
「…そうよ」
私は仕舞っていた黒い翼を出した。
すると星熊は驚いたかのような顔をして、次に微笑んだ。
「良いねぇ、アンタ天狗かい?」
「まあ、そんな所よ」
「ほう、遂に鬼に挑む天狗がやって来たかい。気に入った!是非私と手合わせ願いたい」
「そう来ると思ったわ…イズナ、離れてて」
『あいよー、頑張れよ』
「ありがと、イズナ」
イズナは私の右肩から飛んで少し離れた木の上で止まった。
「イズナって言うのは、あの白い鷹かい?」
星熊は、木に止まったイズナに指を指して言う。
「えぇ、そうよ。イズナの言葉は、私にしか聞こえないの」
「動物と喋れるのかい。いやぁ、ますますアンタが気に入ってしまったよ!」
気に入って貰えるのは良いけど
また今度も喧嘩しようぜ!
って言われるくらいに気に入られたくはない。
故に、何も答えない。
…自己紹介でもしておこう。
「…私は紅夜 茜、只の天狗よ」
「鬼の四天王、力の勇儀こと、星熊勇儀だ。よろしく頼むよ」
「開始の合図はどうするの?」
「そうだねぇ、そっちから攻撃をしてきなよ、私に攻撃を当てた時が開始の合図だ」
「…ハンデって訳ね?」
「そうだ」
ハンデ…何故ハンデが付けられたのか…
それほど自信があるのであろうか?
確かに鬼なら並大抵の攻撃は効かないであろうが…ふむ。
「分かったわ…じゃあ、行かせて貰う」
私はそう言い、静かに、小さく構える。
さて、何処を攻撃するべきか…
~勇儀 視点~
私は今、紅夜 茜と言う鬼に挑む天狗に出会い、とても心から嬉しい。
私は茜が気に入ったので、ハンデを付けさせた。
開始の合図は、茜が私に攻撃を当てた時が合図にさせたのだ。
こんなハンデはかなりキツイものだが、挑んできた意気込みに興味を持ち、どんな攻撃を仕掛けてくるのか楽しみだったのだ。
さぁ、どんな攻撃をしてくるのであろうか…
っと、考えた次の瞬間…
ドッ!!!
いきなり私の腹に『誰か』が殴ってきた。
その『誰か』と言うのは、たぶん茜と言う者であろうが、速すぎて見えなかった。
私は急な事に受け止められず、後ろへと大きく吹き飛ぶ。
ドシャッ!!ドシャ、ゴロゴロ…
地面に叩き付けられ、気付けば空洞の奥、広間まで飛ばされた。
「…ん?星熊さん!どうしたんだ!?」
と、広間に居た鬼達が私が吹き飛んで来たのを見て、心配をしてくる。
「いやぁ、なに…ちょっと、喧嘩をしているだけさ」
まさか一発だけで此処まで私を吹き飛ばすとは…私は茜を舐めていたかもしれない。
あの綺麗な体の何処にこんな力があるのか。
とても不思議になるくらいであった。
「相手は誰なんだ?」
一人の鬼が、私に問い掛ける。
「もうじき来るよ」
ザッザッ
私の予想は当たった。
茜がようやく広間まで来た。
しかし翼は、無かった。
何らかの意味で仕舞ったのであろう…
そして後ろからイズナ…?と言う白い鷹も飛んで付いて来て居た。
その後、そのイズナは周り見た後、近くの屋敷の上で止まってこちらに目を向けていた。
「………………」
「よく来た。此処は私等鬼の家みたいなモノだよ、どうだい?」
「…………」
茜が周りを見渡して鬼がたくさん居る事を見てから、何も答えず黙って私を見つめる。
何故何も喋らないのであろうか。
不思議で堪らない。
そう考えた時だ。
茜の口が、少し動く。
「――無駄言葉は無用。ただ攻めるのみ……」
そう言う。
その言葉に、私は我に返る。
今は戦っている。
今は喧嘩をしているんだと。
私はその事に気付き、愚かな自分の事を鼻で笑う。
そうだ、何を喋っているんだ、私は。
喋るなんかよりも、もっと楽しい事が出来る舞台に、私は居るじゃないか。
「応っ!」
そう一言、私は口にして気合いを入れ直すと、茜は両拳を反転させて左右の横腰に置く。
何をするつもりであろう。
そう考えた時だ
「気合い、入れてっ、行きます!!」
力強く、前を向いて言った。
たぶん彼女も今ので気合いを入れたのであろう。
喧嘩は最初の一発で開始されている。
――此処からが本番だ!
私は心の中でそう叫び、茜に突撃した。
そして大きく右腕を後ろに下げて、顔面目掛けて力強く拳を振った。
しかしそれを下に体を下げ、そこから左足を一歩私の隣に踏み込んで鳩尾(みぞおち)に右拳で殴ってきた。
「ッ!」
痛い。
――痛いが、こんなもんじゃあくたばれない!
私は攻撃を止めない。
右に行った茜に体をそちらに向けて背中に強引に左拳を振る。
だが、その攻撃の気付いた茜は器用に体を捻り、私の左拳は少し掠れただけだった。
そして勢いが止まらず、地面におもいっきり叩く事になった。
瞬間、そこからは大きな音と砂が舞散り、地面には体くらいの大きさのクレーターが出来上がった。
私は左腕を上げて、いつの間にか距離を取って離れている茜に体を向ける。
その向けた時だ、茜が突然として残像を残して視界から消える。
――何処に行った!?
私は辺りを探し回ろうと顔を右に向けようとした。
が、急に右頬から誰かが力強く殴る。
急だったことに、またもや私の体は飛んで行く。
しかし、今度はただ飛んで行くだけではなかった。
途中に横腹から衝撃が走る。
上から殴ってきたのだ。
体はそのまま地面に叩きつけられ、少し地面にめり込む。
――何だ、今のは
私は頭の中で考えていた。
――速すぎる…
考えながらも、体をゆっくりと起こしていく。
またもや距離を取っている茜に顔を向け、体勢を取る。
彼女は何もして来ず、私をただ見つめていた。
――動かないのであれば、私から行く!
無策のまま、私は茜に走っていった。
地を蹴り、徐々にと距離を詰める。
そして、最初と同じように右拳を後ろに下げ、左足を一歩前に出して顔面に振るう。
その拳は、軽々と避けられた。
すると、そこから茜は左拳で私の顔面に殴りかかってくる。
私は避けられず、直で受けた。
しかし、それでも、痛さを我慢して茜の左腕を掴む。
「!?」
茜は掴まれた事に驚きの表情をした。
「捕まえたあぁぁーっ!!」
動けない茜に、私は体を真正面に向けて空いている右拳で後頭部目掛けて殴る。
「ぐっ!!」
当たった。
しかし、当たったのは後頭部ではなく、それを防いだ右腕であった。
微かにミシッっと、その腕から音が聞こえた。
骨が折れたのであろう。
そう確信した時だ。
茜は左脚で私の両足を後ろから凪ぎ払ってきた。
それに私はバランスを崩して膝をつく瞬間、茜は掴んでいた左手で私の左腕を掴み、グンっと、力を入れる。
――投げ技か!
そう確信し、私は持ち上げられるのを阻止する為に腰を深く下ろす。
「――ぬおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉーっ!!」
「――ぐうううううぅぅぅぅぅぅぅぅぅーっ!!」
お互いは声を張り合い、一歩も譲れない力比べをする。
持ち上げられるか、持ち上げられないか…
そこに、私の左腕にもう一本、掴む感触を感じ取れた。
そこからは少し軋んだ音が聞こえる。
――まさか、折れている右腕を…!?
その精神に、私は驚いた。
すると鈍い音がし、次に私の体は少し浮いた。
「いっけええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーっ!!!」
茜はそう強く叫び、私は持ち上げられ、そのまま頭部から地面に叩き付けられる。
「がはっ!?」
ズドォン!っと言う大きな音がなり、私は
吐いた口から血が出てきているのが見えた。
それと同時に、掴んでいた左手の力が少し緩み、その瞬間に茜は左腕を握っていた私の左手から抜き、少し距離を取った。
「……いっつつ…」
私はその様子を少し見てから、無理矢理体を起こし、少しばかり震える脚を無理にでも言う事を訊かせて立ち上がる。
――楽しい、この戦いが
そんな感情が、押し上げてきた。
本心からなのだ。
此処まで私とやり合って居られているのは、彼女が初めてなのだ。
――もっと殺り合いたい
戦闘狂な気持ちが出てくる。
それほどに、楽しいのだ。
彼女は私を楽しませてくれる。
此処まで戦闘に興奮をさせてくれる。
次は何処から攻撃をしてくるかに緊張をさせてくれる。
死ぬかもしれないと言うことに恐怖をさせてくれる。
そんな色々な気持ちが、私を楽しませてくれる。
彼女となら、何処までも…いや、私が力果てるまで、何処までもやり合って行けそうだった。
しかし、その力果てると言うのは、もうじきなのかもしれない。
少し、ほんの少しだが、視界がボヤける。
もうじき限界かもしれない。っと、私の心が勝手に答える。
だったら、あとちょっとで終わるんだったら。
彼女に、私の全てを受け取って欲しい。
「私の全てを、茜。アンタにぶつけるよ」
意を決して、彼女に告げる。
「四天王奥義――」
大きく右足を上げ、地面を強く踏みつける。
一瞬回りの地にある土が少し浮き、地に落ちる。
「三歩必殺!!」
周りに響き渡るほど力強く言い放つ。
~茜 視点~
勇儀を空洞奥まで吹き飛ばしちゃった。
うー、これは向こうに行かないと駄目ね。
『茜、お前吹き飛ばし過ぎだろ…』
「仕方ないじゃん、手加減出来ないんだし」
私はいちお、翼を仕舞って奥へと走って行った。
イズナも、私に付いて来た。
少女移動中…
ガヤガヤ
奥から、眩しい灯りが見えてきた。
そこには、多くの鬼達が居た広間であった。
屋敷が1つあるくらいの、大きな広間…
『ほー、何かすげーなー』
「イズナ、あの屋敷の上にでも止まっていると良いよ」
『ん?おぉ、分かった』
そしてイズナは、右手側にあるボロボロな屋敷の上へと行って、勇儀の方を見た。
…それにしても、本当に鬼が多いわねー…
あの中に萃香も居るんだよね、はぁ……
んー、それよりもまず星熊だ星熊…
最初の殴り、実は本気で殴ったのだ。
そう、超本気で…
それがあれだ。
まだピンピンして立ってやがる。
何だあれ、もう常識を越えている化け物である。
ゲームで言う、超カッチカチな奴と超ムッキムキな奴を合成させて超激カチムチな奴が完成し、そいつと相手をしているようなもんだ。
ステータスを見れば、攻撃力と防御力は論外な程にズバ抜けてはみ出ている状態であろう。
あぁ怖い。
そんな相手にどう立ち向かえって言うんだ。
って言うか、何か星熊さんが色々喋っているのだけれども、何を言ってるのか何故か聞き取れない。
何故であろう?っと聞けば、集中しているから、と言う答えが出てきた。
まあ何でも良いんだが、これ以上星熊を喋らせてあげても、聞こえないので、私は口を開き
「無駄言葉は無用。ただ攻めるのみ」
「応っ!」
ホワワーンと、浮かんできた手短の単語を並べたらそんな言葉が完成してしまった。
しかもその言葉を聞いた星熊が気合いを入れて答える。
何故か、返答は聞こえた。
集中力が切れてきている証拠であろう。
仕方がない、此処はあの言葉で私も気合いを入れてやろう。
私は両手を握り、反転させて横腰に付くか付かないかくらいのところに置き、前を向く。
「気合い、入れてっ、行きます!!」
一瞬だが、シャキーンっとなった気がする。
…あぁ、やっぱしこの言葉が一番気合いが入る。
っと、心の中で安諸としていると、勇儀は私に突撃をしてきた。
そして右腕を大きく後ろにさせてから振ってきたのだ。
確かにあれは当たったら痛いけど、隙がデカイし避けやすい。
私はしゃがんで、左足を一歩前に出して右拳を勇儀の鳩尾目掛けて殴る。
勇儀は声を出すのを我慢した。
少し痛そうにしていたが、構うもんかと言わんばかりに攻撃を続けてきた。
今度は背中か…
私は体を捻って、それをギリギリでかわす。
星熊の拳が地面に当たり、その地面にはクレーターが出来ていた。
もし翼があったら私は翼を殴られて致命的な痛さを感じられていたであろう。
流石、力の勇儀…恐るべし。
心の中でそう思いながら、一旦距離を取る。
さあどうする。あんな怖いパンチを食らえば、私は即行であの世行きなんじゃないかと、ハラハラしながら私は考える。
…受けるよりも、まず攻撃あるのみか?
やってみよう。
私は星熊がこちらに向いた瞬間に、目にも止まらぬ程の速さで背後へと入る。
星熊はあまり慌てもせず、顔を右から振り返ろうとしてきた。
え!?何故慌てない!!?
まさかバレているのか?
え、ちょ、見ないで!!
ドゴオォ!!
私は気付けば、左拳で星熊の頬をおもいっきり殴っていた。
その後、星熊は奥へと飛んで行く。
いや、待て、今は戦闘中だ。
どんな事をしてでも良い。と言うわけでもないが、攻撃は当たり前…追撃をしておこう。
私は星熊の吹き飛んで行く先に移動し、右拳を大きく上に上げ、絶妙なタイミングで本気で下に殴り付ける。
すると星熊は横から地面に少しめり込んだ。
……後が怖そうだ…
私はそんな恐怖心が出てきたので、急いでまた距離を取る。
頼むから、もう立ち上がらないで欲しい。
二撃共、私は本気で殴ったのだ。それで立ち上がるのは、まず見た事がない。
しかし、だがしかし、常識を打ち破るかのように、ゆっくりと星熊は立ち上がった。
そんな馬鹿なっ!?
心の中で、私は本心から驚く。
此処までして、まだ立ち上がる。
やはり、星熊は伊達じゃなさそうであった。
そんな事を考えていた時だ、気付けば星熊は走って来ていた。
あ、ヤバイ、どうしよう……
一瞬、その迷いの言葉が過った。
いや、迷うな。押しとおれ!
何があっても驚くな、ただ真実だけを見ろ。
目にするものは全て現実、嘘偽りはない。
逃げれるな、恐れるな。
現実と真実に戦え。
……よし、落ち着いてきた。
すると、星熊はまたもや右拳を振るってくるのが見えた。
私はそれを今度は顔を右に避けさせ、左拳でおもいっきり顔面を殴る。
吹き飛びもしず、星熊は少し私を見て左手で私の左腕を掴んできた。
うっそ、マジでっ!!?
「捕まえたあぁぁーっ!!」
驚くなと、私は誓ったはずなのに、予期もしなかった出来事に驚いてしまう。
星熊はそのまま右拳を大きく豪快に後ろに下げ、振るう。
狙いは後頭部。
当たれば気絶、最悪頭がもぎ取れるであろうその拳に、私は右腕を間一髪で間に入れて防ぐ。
ミシッっと、確実に骨が折れた音がする。
壮大に痛い。
しかし、今が絶好のチャンス……!!
私は左脚で後ろから星熊の両膝を凪ぎ払ってバランスを崩させ、捕まれている左手で私を掴んでいる星熊の左腕を掴 み、片手で投げ込もうとする。
しかし、その意図(いと)に気付いたのか、星熊は腰を落とす。
極端に遠心を低くして、体を持ち上げるのを難しくさせたのであろう。
「――ぐうううううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅーっ!!」
「――ぬあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーっ!!」
雄叫びを上げながら、極限の力比べを展開する。
その姿はさながら、天へ昇ろうとする龍と、大地に爪を突き刺し、それを阻止する虎であった。
天秤は水平を保ったままで、ビクともしない。
ぐぅ…こうなったら……無理矢理でも…!
私は骨が折れたばかりの右腕の手で星熊の左腕を掴む。
ミシ…
更に骨が軋む音がする。
力を加えれば加える程に、その軋む音は増えていく。
痛い、此処まで痛いのは久々だ。
もう止めてしまいたい。
そんな弱音が出る。
しかし、負けても居られない。
負けたくはない。
絶対に勝ちたい…!
ギシッ!
その意思を最後に、私は右腕にも力を入れると、等々、粉々にでもなってしまったであろう音がする。
だが進歩は出た。
先程までは動きもしなかったあった筈の天秤が、少し傾く。
私は大きく息を吸い
「いっけえええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーっ!!!」
ありったけの力を左腕に注ぎ、徐々に、徐々にと持ち上げる。
そして……
ズドオオォォン!!!
星熊を頭から地面に叩き付けた。
「がはっ!?」
っと言う、星熊の声が聞こえる。
それと同時に、掴んでいた力が緩んでいる事に気付いた私は、すぐに振りほどく。
「ハァ…ハァ……」
私は乱れた呼吸を少しずつ落ち着かせながら後ろへと下がる。
気付けば、周りのギャラリーは黙って息を飲んでいた。
シーン…っとした空気が出来る。
しかし、それを打ち砕く者が居た。
「いっつつ……」
案の定、星熊であった。
頭を抱えながらも、少しだけ震えていた脚で立ち上がる。
その姿は最早、化け物を越えている。
鬼が強すぎて、私どうしたら良いのか分からないようになってきたわぁ…
もう正直言う。
何なんですかあの化け物は…
頭部を本気で地面に叩き付けても生きているとか……駄目だ、もう何も信じられないような気がしてきた。
すると星熊は私を見て小さく笑う。
星熊の頭部からは、血が少し出ており、その血は顔を通って口まで垂れる。
「私の全てを、茜。アンタにぶつけるよ」
…え?
全てを…?
一発で骨が折れるくらいの威力なのにその上の威力を与える気ですか。
もう喧嘩ちゃう、ただの殺し合いや…
手合わせでもない、ただの殺し合いや……
なんだこれ、もう明日の太陽拝めそうにもないんですが、どうしましょう?
あぁ糞っ、それより右腕がまじ痛い。
ずっとジンジンと痛む。
そんな事を考えていた時だ
「四天王奥義――」
星熊は大きく右足を上げて地に靡(なび)かせる。
その一つの衝撃は地にあった砂を少し浮かせた。
あ、やばい…何かこの後出す奥義の名前、分かりたくもなかったけど、分かってしまったかも……
「三歩必殺!!」
…………逃げたいです。
だが逃げては駄目だ。
此処は相手の出を見てみよう。
どんな攻撃方法か分からないし、これは三歩目まで様子見を――
ズンっ!
する……とか、そんな甘い考えをしていた時期が、私にはありました。
いや待てや、一歩目でもう近くまで居るぞっ!?
どうなっているんだ!?
そんな考えをしている間にも、また一歩、踏みつける。
今度は最初なんかよりも、高く、強く、大地を踏み砕くかのように
ズンッ!!
大きく音を立て、同時に余波が地面を振動させた。
その振動は数回を数秒で起き、私の足から何か嫌な音がした。
骨が粉々に砕かれたのだ。
しまった、足が動かない!?
どうやら二歩目では相手の動きを止めさせる為の攻撃らしい。
能力で治そうとするが、三歩目がもうすぐで踏み終わる。
もう治す暇も、茶化す余裕すらもない。
えぇいこうなったら!!
"相手の拳の威力を切断"
私はやむ終えずで能力を発動させ、余った左拳で勇儀の右拳に目掛けて殴った。
ズドォォォォオオオオオン!!!
お互いの拳はぶつかり合い、大きく音がなり、私は星熊を吹き飛ばしていた。
そうして星熊は、岩の壁に思いっきり背中からぶつかってめり込んで動かずに止まった。
「………………ッ」
私は止まったのを見て、足の痛みに堪えられず膝を付いた。
「…え……星熊さんが、負けた?」
「嘘だろ、四天王の星熊さんが!?」
静まり返っていた周りの鬼達(ギャラリー)は、勇儀が負けた事に色々と喋っていた。
そこに、イズナが私の方へと飛んでくるのが見え、私の目の前へと降りてきた。
『おいおい、大丈夫か?どっか怪我は?』
「あはは、何か色々骨が潰れたよ」
『そりゃ無茶苦茶だな…』
「大丈夫だよ、能力を使えば治るし…」
私は物質能力で、バラバラになった足の骨を元の形へと直していった。
そして、完全に元の形へと戻し、私は立ち上がる。
「ほら、ね」
『…今度からあんま無茶はしないでくれるか、心配するぜ』
「あら、心配してくれるの?ありがとイズナ」
『…ッ……たく、速く萃香とか言う奴探すぞ』
イズナにお礼を言うと、急に横を見初めて話を変えた。
もしかして…
「イズナったら照れてる?」
『なっ、んな訳ねーだろ!!』
「ふふふ、またまたー、嘘が下手なのね」
『うっせー、俺は雄だぞ!照れるのは当たり前だ!!』
「うふふふふふ」
『笑うな!!』
イズナが照れてる所が何ともかわいい感じ。
「まあ、そうね、萃香を探すしかなさそうよねー」
私は少し気持ちを切り替え、探す事にする。
「その必要はないよ?」
「…ん?」
しかし、突然後ろから声が聞こえてきた。
私は後ろに振り向くと、そこには萃香が居た。
いつの間に…
『なんだぁ?あの小さい女の子は』
「…伊吹萃香だよ、イズナ」
『はぁ!?』
「よく知ってるね、そうだよ、私は酒呑童子こと伊吹萃香、鬼の頭領なんかやってるよ」
…さて、会えたのは良いけど、どう話を進めようかしら……喧嘩だけは避けたいよ!!