~茜 視点~
鬼の住処
どうも、皆様方
ビュン!
えーこんにちは
ヒュン!
今ですね、とてもとても危険な…おっと
ビュ!
危険な状態です。何故?
それは…
ガシッ!
スー…
今、萃香と戦っており、萃香は能力で霧になって私をめっちゃ攻撃してきています。
霧から拳が出来て殴っては消えて、殴っては消える。
さっき一回掴んでみたけど、霧となって消えました。
つまり反撃出来ません。
正直どうしてこうなった!!
遡る事、5分前
「何か帰ってきたら騒がしくてさぁ、急いで帰ってきたんだけどこれどうなってるんだい?」
萃香が私に問い掛けて来た。
「えーと…」
「頭領!こいつが星熊さんを殺ったんだ!!」
「へぇー…?」
殺った?いやいや殺ってないけど?
何アイツ嘘付いてんの鬼の癖に、後で殴る。
「いや、別に「じゃあ勇儀の仇、討たせて貰うよ!」やって…はぃ!!?」
突然、萃香が能力で自身を霧にさせた。
そして、現在に至る訳でしてー…
どうしよう、話聞いてもらえそうにもないや…
「ほらほら!避けてばっかじゃいつか死ぬよ!!」
「まったくそんな殺生な…」
萃香が殴るのを止めない、それどころか徐々に攻撃速度が上がる。
真面目にどうしよう、何か手は…
ズドン!!
…え?
何か隣から鬼が吹き飛んで…
あ、勇儀が殴った後のモーション取ってる。
って事は勇儀が鬼を殴ったらしい。
何で!?
「私はねぇ、嘘を言う奴は大っ嫌いなんだよ!茜は私を殺っちゃいない、ただの喧嘩だ!!」
腕と顔には少し血が出ていて、私を庇うような言い台詞…やだ、勇儀カッコいい……
「勇儀!?生きてたのかい!!?」
霧だった萃香が、元の体へと戻して勇儀に顔を向けて驚いた。
「生きてるさ、あの鬼が嘘を付いていたからねぇ、ちょいと殴ったよ…」
飛んだ鬼の方を見てみると、凄い壁にめり込んでる…うわー、こわー……
すると、勇儀が私の方へと歩いて来た。
そして止まり、手を出した。
「良い喧嘩だったよ、私はアンタが気に入った!!」
「…それはどうも、私は二度とあんな命懸けな喧嘩はごめんだけどね」
私は笑いながら、勇儀が出した左手を握り、握手をした。
力はあまり込めずにしてくれたので、物凄く助かった気持ちもある。
「…喧嘩、なんだよね?勇儀」
「そうだよ、萃香、茜とは本当に良い勝負が出来たよ!私に勝つ奴が居るとは思わなかった」
そう、笑いながら勇儀が萃香に言った。
まあ、満足してるそうだし…いっか
「じゃあ私とも「それはやだわー…」喧嘩…何でさー!」
何でって、無理無理。
もう鬼とは戦いたくない…
本音だ。
そして本心だ。
『…ぅ、ぅぐ……』
うん?何だか下から声が…
あれ、イズナだ。
「どうしたの?イズナ、バテちゃって」
『死んだ振りだ、もう意味ないけどな』
「あー…そう?」
どうやら死んだ振りだったそうだ。
たぶん萃香が霧だった時に殴られるのを恐れてそうしたのであろう。
イズナは起き上がり、翼を何回か羽ばたき、私の右肩へと飛んで来て止まった。
「…それで、茜、萃香に話があるんじゃないのかい?」
「え、あーそうだったわ」
「ん?何だい??話って」
ちょっと忘れてた。
楽園計画の話をするためだけに戦闘って嫌になるよね…はぁ
「実は、八雲 紫が楽園計画をするらしくて、その楽園を作る範囲が妖怪の山も入っているからよろしくって所かしら」
「へー、紫が?」
「? もう会ってるの?」
「うん、只、戦おうって言ったら逃げて行ってさー、何で毎回戦おうって言ったら逃げるのかな?」
「あはは…仕方がないと思うよ、めんどくさいの嫌いな妖怪だし……」
そう、紫は本当にめんどくさがりだ。
天狗の村は本当に紫だとめんどくさいであろう。
私は今の天魔が知り合いだったから良いものの、紫なら確実と言っても良いほど戦闘となるのではないであろうか。
鬼ではもう問答無用で勝負を仕掛けてくるし…
中々詰んでたのね…紫、どんまい!
「んー…それで、話って言うのはそれだけかい?」
「まあそうなるわね、話はそれだけよ…楽園計画には反対しないで良いのかしら?」
「そうだねー、あまり良くはわからないけど別に良いよ」
「…そう」
『あまり分かっていないって…大丈夫なのかこの女の子』
「ふふ…イズナ、それ萃香に聞かれたら殺されるわよ?」
「ん?イズナ?」
「あぁ、私の肩に乗っている鷹の名前よ」
「へー、そのイズナ…?が何か言ったのかい?」
女の子って言ってました。
何て言おうとしたけど、どうしようかなぁ…
『おい茜、言うなよ…これは冗談抜きだぞ』
「イズナが萃香の事を女の子って言ったのよ」
『はぁ!?ちょ、言うなよ!!』
「へー、そのイズナって言う鷹、中々良い度胸してるじゃないの」
『ひぃいい、殺される!』
すると、イズナは私から飛び立とうとすると…
ペシ!
『グヘッ!』
ドサッ…
いきなり霧がイズナの腹まで来ており、反応に遅かったイズナが腹をデコピンで叩かれて落ちた。
「結構手加減したんだけどなー」
『あんの野郎…まじで俺を殺す気か……』
「イズナが余計な事を言ったからで、しょっと」
私は落ちていたイズナを左手で掬うように掴み、横にさせてから右手で土を払って、右手でイズナの横の体を抑えてあげた。
『あー、まだ腹痛ぇ……』
イズナが動けずに、そんな事を言っていた。
「もしかして、相当痛かった?」
「まあ、痛い痛いってずっと言ってるよ」
「ありゃー、それは悪かったね」
『謝ってる用に見えねぇ…』
「元はと言えばイズナが悪いんだし、当たり前だよ」
『…茜が言わなかったらよー、こうにはならなかったのに』
イズナがそう言いながら、私の顔を見てきた。
やだ、かわいい…
で、私が言わなかったらこんな結末にはならなかったと言う事は棚にあげておこう。
「まあ良いじゃない♪」
『良くねぇ!』
笑顔で言うと、イズナが少し暴れてそう言った。
「ほらほらあんまり暴れない」
『くそー……』
「…えーと、もう良いかな?」
「え、あぁごめんごめん」
イズナと会話をしていると、萃香がもう良いかと言った。
まあもう良いんだけど、なんだろうか
「アンタ、茜はさ…もしかして100年前までは天魔様とかしていなかったかい?」
「!?」
突然な質問に、私は少し驚いた。
え?私、萃香と出会ってた??
真夏の記憶を漁ってはみるが、そんな記憶はない…じゃあ何故?
「…そうだけど、何で萃香がそれを知っているの?」
「いやー、私は色々と見て来ているからさー…霧になって少し見た事があるんだよ、それで今思い出して聞いてみただけさ」
「そっか…」
そう言えば、萃香は結構霧となって色々な場所へと行っているんだっけ。
楽しそうだね。
ただ視界とかはどうなっているんだろう?
一辺に違う景色を見れば、今何処に飛んでいるのか分からなくなるはずだ。
…いや、待てよ。
確か噂によれば、一人一人の萃香の分身は個別の思考、視界となるんだっけ…
まあつまりは、レプリカ召喚みたいな?
「あー、まあ聞きたいのはそれだけだよ…気になっただけだから」
どうやら、質問はそれだけだったらしい。
じゃあもう帰ろうかな…
「へぇ、私は天狗の長と戦っていたのかい?だったらあの力は納得が行くねぇ、いやぁ楽しかった楽しかった!!」
星熊…もとい、勇儀は頭から血が出ている事を気にもせずに笑い。いつの間にか酒が入った巨大な盃を片手に持ってグビグビと飲んでいた。
「ズルいよ勇儀!」
そこに、少し怒(おこ)な萃香が勇儀に近付いてそう言う。
「あっはっはっ!ズルくて結構さ!」
「ええい、こうなったら勇儀!勝負しろ!」
「お?やるかい?」
「覚悟ー!!」
…ど う し て こ う な っ た ! !
私の目の前では、勇儀と萃香の取っ組み合いが繰り広げられていた。
その回りにはギャラリーが囲んでおり、熱戦が始まる。
本当に、鬼って喧嘩好きだよね…
取り敢えずもう此処に用はないし、出よう。
『茜、あれ止めなくて良いのか』
「鬼の喧嘩を止めるだなんて勘弁してほしいわ?それに、喧嘩するほど仲が良いってね」
『…はー……さようか』
周りの鬼達が歓声を挙げてきた。
「…さ、行こうかしら」
『おうおう』
私はもと来た道を戻って行った。
少女移動中…
空洞前
「ふー…もうだいぶ暗いわねー…」
気付けば外はもう夜であった。
星を見る限り、深夜の1時くらいであろうか。
取り敢えず、ちょっと天狗の里に行って泊めてもらおうかしら。
「ねえイズナ、天狗の村で泊まってみるけど大丈夫?」
『んー?…あぁ、まあ良いぞ?』
「そ、じゃあ早速…ッ!?」
翼を出して飛ぼうとした瞬間…
クパァ
突如、下からスキマが出てきて、私とイズナは落ちて行った。
ドサッ
気付くと、私はお尻から落ちたようで、少し痛い…
全く、何なのだ紫ったら……
「茜!ちょっと手伝って!!」
「…え?」
私は声に反応し、辺りを見渡して見ると何やら屋敷の中であった。何より、何本もの桜…此処は……
『冥界』
真夏の時に、一度だけ紫に誘われて行った事がある。
そして幽々子にも会った。
…いや、今は昔話をしている暇でもないか。
『ぅ…あか、ね……』
「イズナ!?ちょっと待ってて!」
イズナが突然苦しみだした。
たぶん死の力によって起こったのであろう…
私はイズナを地面に置き、切断能力で死の力を消す結界をイズナの周りに出した。
『ぐ…ぅ……助かったぜ、茜…』
「取り敢えず、そこを動かないでよ、イズナ!」
私はイズナが安静になって行くのを確認してから私は立ち上がって振り返り、紫を見る。同時に、あの桜《西行妖》も見える。
西行妖(さいぎょうあやかし)は満開になっていた。
一瞬我を忘れてしまう程の美しい死の桜。
どくん、どくん…っと、心臓の鼓動の様な動きと共に、桜色の妖気を吐き出していた。
「あの妖気、死そのものね…」
死の力、もとい死の妖気…強い妖怪にはその死の力は効かないが、然程強くない妖怪や人間が浴びると、自分で首を絞めたり、刀で自身を刺したり、息を止めて死のうとしたりする。
失礼な事だが、イズナはそこまで強い妖怪ではない。
たぶん息が出来なく、いや、息を止めようとしていたのであろう。
……そして何より…胸に小刀が刺さっており、その周りは血で真っ赤に染まっている服を着た幽々子が隣に居た。
「状況を伝えてくれるかしら?」
「…朝に、幽々子の所へと行くと、目の前で小刀を懐から出して自分の胸を刺して……その後に、西行妖が暴走し始めたのよ」
「なるほど…じゃあまずあれを抑えるのが先ね……」
結界…は無理かな…?
溢れている妖気が濃すぎる。
恐らく完成する途中で圧し負けて潰されるだあろう。
「…出来るの?」
紫が少し焦っている表情で問い掛ける。
「一瞬だけで良いから、あの死の妖気を抑えて」
「え?」
「え、じゃないの」
「あんなのを抑えられる事が出来るの?」
「出来るからやって!」
「…分かったわ」
私は少し苛立ってしまい、小さく怒鳴ってしまう。
それに気付いたのか、紫はしぶしぶと扇子を右手に持ち、上に掲げる。
「ふっ…!」
そして小さく息を吐き、同時に扇子を広げて上から下にへと振り下ろす。
途端、莫大な妖力が西行妖の妖気を覆い、一気に凝縮し始める。
「今よっ!」
「よし!」
私は紫の声に応え、開いた右手を前に突き出し、そこに妖力をあるだけ全部纏め上げ、西行妖へ走らせ
「妖気切断大結界!!」
右手をグッと閉めて、茜色の巨大な立方体の結界を展開させた。
これで大丈夫であろう。
「ふー……」
「…見事よ」
「ありがと、紫」
私は一つ、息を吐く。
紫は隣に居た幽々子の近くで膝を付いた。
「幽々子…幽々子……!」
「………………」
紫が、幽々子のお腹に手を当てて、泣きながら幽々子と呼んでいた。
けれど、その返答は来ない。
もう、死んでいるから……
泣いている紫が傍に居るが、私は大して何も思わず、目を閉ざしている幽々子をただジッと見つめていた。
冷酷な事だが、私は悲しくもないのだ。
何故か?
それはたぶん、一度しか会った事がない、言わば他人だからであろう。
しかし、本当にそうであろうか?
否、違う。
「…ねえ、紫」
「……なに…?」
私は視線を変えずに続ける。
「……幽々子にまた、会いたい?」
「!? まさか、生き返らせるつもり…?」
「それに近いけど、少し違うわ」
「どう言う事?」
涙を拭いながら泣くのを止め、私に向いて立ち上がった紫が、私の言葉をどう言う意味かを聞いてきた。
人を生き返らせる死者蘇生の術は禁忌だ。
それはどんな妖怪だろうが何だろうが出来やしない。
しかし、この世界は何だ…?
妖怪が入れば天狗も居る。妖怪鷹、不老不死者、亡霊だって居る。
彼岸と此岸のある世界だ。
死は、決して終わりではない。
「幽々子を、妖怪桜の下に封印させ、亡霊にさせるのよ」
「亡霊…?」
「そう、亡霊よ…ただ、何らかが起きる場合があるわ。例えば……記憶が無くなった状態で亡霊になったり…ね」
「そんな…」
「…紫、決めるのは私じゃない。貴女が考えて決めるのよ…私はどんな返答でも、それに協力する」
そう言うと、紫は少し俯いて考え始める。
さあ、紫…貴女が決めないと、意味がないのよ……