「ミユメ先生の教室」
この世界における『亡霊』について説明しておこう。
まずは『幽霊』との違い。この二つは完全な別物。
幽霊とは即ち、人間に限らず生物無生物、あらゆるモノに宿る『気』の塊である。
形も持たず姿も持たず、生者に話し掛ける事も無ければ襲う事もない。
ただふわふわと漂って、冥界へ流れるだけの存在なのだ。
対して亡霊とは、人間が死して幽霊となった者の内、生に強い執着を持った者がなるモノだ。
未練等と言う物を持つのは人間くらいである為、人間以外は亡霊にならない。
その執着から生前の姿形を保っており、体温すら持ち、生者に触れる事をも可能にする者まで居る為、傍目には生者との見分けがつかなかったりもする。
時には自分が死んでいる事に気付いていない亡霊なんてのも居るのだ―――
だが執念の塊である亡霊は、存在するだけで周囲に悪影響を及ぼす。
具体的には、寒気がしたりツキが落ちたり気力が失せたり病に掛かったり。
まあ下らない物から洒落にならない物まで大小様々であるが、傍迷惑な事この上ないのである。
既に死んだ身である亡霊は、当然死ぬ事もない。しかし弱点はある―――自分の死体だ。
自分が死んだ事に気付かない亡霊は、死体を見ればそうと知って消えてしまうし、そうでない普通の亡霊は死体を供養されれば成仏せざるを得ない。
故に亡霊は、存在し続ける為に自身の死体を何処かに隠してしまう事が多い。
…こんな所かな?
此処、テストに出ますので覚えておく事ね()
~茜 視点~
冥界
さあ、紫…貴女が決めないと、意味がないのよ……
「…私、は……幽々子を、生き返らせたい」
恐る恐るで、紫は答えた。
「……そう、分かったわ。じゃあ、準備かしら?紫、幽々子を封印させる事出来るよね」
…実を言うと、私は封印だとかそう言うのはまだ熟知していない。
術とかなら、完璧と言っても良い程なんだけども……
「えぇ、まあ出来るわ」
「おっけぃ、じゃあ私が結界を外した瞬間に封印を御願いね」
「準備が少し必要だから、待っててくれるかしら」
「分かったわ」
紫は幽々子を持ち上げて、私が作った結界前、もとい西行妖へと行き、幽々子を下に置いた。
そして、スキマを開いて…
「藍ー!ちょっと来なさいー!!」
そう、大声でスキマの中に言った。
「はいはいはい、今行きますよー!」
応える声が聞こえ、スキマからその声を出したであろう九尾の狐妖怪が出てきた。
八雲 藍…金髪ショートで狐耳を隠す帽子を被り、何やら神々しい青と白の服を着て、後ろに尻尾が9つある。
まあ九尾である。
藍は紫の式神であり、雑用をよくされている。
…藍、お疲れ様。
「何でしょう?紫様」
「ちょっと封印結界を作るのを手伝ってもらえるかしら」
「わかりました」
藍はそれだけ応えて、次に紫が所々指を指して指示をする。
…ふむ、色々しているねー……あ、そうだイズナは――
私はイズナが気になったので、イズナの方へと歩いて、隣に座った。
『のー、茜…まだ結界からは出ていかんのか?』
「ん?あ、もう良いよ」
私はイズナの周りに張っていた結界を解いた。
するとイズナは私の方へと歩いて、膝に乗り、体を登ってきていつもの右肩へと来た。
『ふー…』
「ねえイズナ、なんで右肩に乗るの?」
溜め息を一つ吐いたイズナに、私は質問をする。
毎回気になる事だったからだ。
『何か落ち着けるから』
いや、意味が分からん。
「どう?」
私は更に聞いてみる。
するとイズナは少し首を捻らせて考え込むかの様な姿となる。
『んー…茜と同じ視線だから?』
余計意味が分からん。
「…そう」
何かこれ以上聞いても、意味が分からないので適当に話の糸を切る。
まあつまりは、私と同じ高さの目線で見れるから落ち着けると…ますますよく分かんないね!
「よく分かんないよイズナ」
『俺もよく分からん』
「はぁ……」
自分でも分からないってどう言う意味なんだか…
「茜ー!準備が終わったわよー!」
「ほーい!」
私は立ち上がり、紫の方へと歩いた。
すると、藍が今更かのように私を見て驚く。
「あ、茜さん、お久しぶりです」
藍は少しにこやかに言う。
最後に会ったのは月面戦争の日以来だ。
「久しぶりー藍、どう?紫の雑用の調子は」
「あはは…そうですね、まあいちおは慣れてきたのでそう気分も落ちていませんよ」
「へー、私は慣れないと思うけど…最初紫と会った時に、式神にならないって言われた時はビックリしたわー…もしなっていたら雑用だなんて」
800年程前の話だ、紫と初めて会った日、紫は突如としてスキマで現れ、私の式神にならないかと言ってきた時がある。
「こら、茜、もうその話は忘れてよ」
その話を聞いていた紫が私を見てそう言う。
「だって、紫が歳上の人に式神にならないって言ってくるもんだからさー、ふふ」
「そうだったんですか…紫様」
『ほぉー、紫って奴は知らずに茜にそんな事言ったのなー』
「その話はやめ!封印やるわよ!」
「はいはい」
そんな会話をして、少し怒った紫が仕切り直した。
「……紫、後悔は…しないでね」
いちお私は確認の為に聞いておく。
もしこれで失敗でもすれば、幽々子は体が消え、本当にこの世界から居なくなるからだ。
「…えぇ」
それは百も承知であろう紫は、少し小さく言う。
「…そう、じゃあゼロって言った瞬間に結界を外すから、御願いね」
「分かったわ」
紫がそう言って座り込み、幽々子の体を両手で置いた。
「良いわよ」
表情は真剣そのもので、ただジッと幽々子の腹に置いた自身の手をただ見つめていた。
「……3!…2!…1!…0!!」
パチンッ
0と言う言葉と同時に左手で指を鳴らす。
西行妖を囲んでいた結界が外れると、そこに紫が封印結界を発動させた。
幽々子の周りに描かれていた結界が光を放つ。同時に、西行妖の勢いが落ちてくる。
ズン!
最後に、そんな鈍い様な音が鳴り響き、一瞬圧力が掛かると共に、西行妖の全ての花びらが散ってきた。
その桜の花は桜吹雪となり、視界が見えづらくなる。
「……封印、成功よ」
桜吹雪の奥で、紫の声が聞こえた。
どうやら、成功したそうだ。
何だかハラハラしたわ……ん
私は少し伸びをすると、視界が徐々に良くなってきた。
そこで一つ、あることに気付く。
西行妖近くに、一人の少女が立っていたのだ。
髪はピンク色のショートヘアで、水色の帽子と水色の服…西行寺幽々子である。
「……ゆゆ、こ…」
紫が幽々子の近くまで走り行くと、近付いてくる足音に気付いて紫を見た。
「貴女は…誰?」
…どうやら、記憶を無くして亡霊となったようだ……
やはり、無理がありすぎたのかなー…
「幽々子…ごめんなさい……」
「どうして、謝るの?」
紫には、とても辛いであろう…一番の親友でもある幽々子が、記憶を無くして紫の事を覚えてはいないのだ。
…私はもう、関係ないわよね…もう引くとしよう。
私は切断能力で空間に穴を開けた。
『もう良いのか?』
「…離れた方が、良いと思ってね」
『そうか…分かった』
そして、空間へと入り、冥界への空間を消した。
天狗の里
冥界から出て天狗の里に降り立つ、太陽が山から登り初めていた。
朝であった。
そう、朝だ。
「…寝たいわ」
その事に気付いた私は、どっと疲れ果てる。
もうマジ糞眠たい…
『そんなに眠たいか』
「そんなに眠たい…鬼と喧嘩やら西行妖の封印やらで、もうくったくただわ……」
『倒れるなよー』
「それはないと思う…」
『さようか…』
とりあえず私は、白亜と出会ったあの豪華な屋敷へと足を踏み入れた。
ガチャ
何も考えず、扉を開けると…
「此処の警備が少し甘くなっているのですが…ん?誰だ、今は会議ちゅ…う……」
天狗同士で会議が行われていた。
目の前の光景を見て私は少し唖然とし、我に返る。
「…あはは、ごめんなさい。また来るわ」
二度目だよ!私何してんの!?
二度も会議妨害しちゃったよ!
あぁもう死にたい…皆に土下座したいくらい申し訳ないのが分かる。
何なんだ今日は、災難が多すぎる。
はぁ……
私は心の中で溜め息を吐き、扉を閉めようとすると
「ま、待って下さい!茜さん!!」
奥に居た白亜が、私を呼び止めた。
「…どうしたの?」
「い、いえ、会議中ですが、どうぞ中へ」
「…………そう」
私は本当に失礼申し分ない気持ちで入り、扉を閉める。
「またあのお方が来られたぞ」
「何度見ても綺麗だし、何か威圧感凄いよな」
「俺も、俺もあんな風に威圧感出したいな…」
「お前には無理だろ」
「いや、なれるって俺なら」
「一生出来ないから諦めとけって」
「ひでぇな……」
ガヤガヤと辺りの天狗達が私に関して色々と話をしていた。
紅魔館のパーティーを思い出す。
『茜、大人気だなー』
「あはは…そう、だね……」
正直そんな人気は要らない…
「えー、会議はまた明日に「はい!ストップ!!白亜待って待って」持ち、越…し……どうされました?」
白亜が言おうとした言葉に勘付き、止めさせる。
「いや、その…会議は続けて貰ってほしいわ。代わりに何処か寝る所ないかしら…」
「あ、はい!ではこちらに」
白亜が前方に歩いて、奥の部屋へと向かう。
天狗達はその通る道を空けて行く。
「何だか申し訳ないわねー…」
「いえいえ、お気になさらず茜さん」
廊下を歩き、ある所で白亜は奥の部屋の襖を横に開けた。
中は和風…下は畳で広く14畳はある。かなり綺麗にされており、ベランダには庭が見える。
…しかし何故であろう、何処かでこの部屋を見た事が……
そう考えていると、私の視界に白亜の顔が入る。
「わかりますか?実はこの部屋、茜さんが天魔様だった頃の屋敷の部屋なんですよ」
……………
あああぁぁーっ!!そこだ!
成る程、初めてなのに何かしっくり来ると思ったら、そう言う事か。
「ほぇー…凄いわね!よく再現出来たものだわ」
そう、本当にあの部屋だった。
私がまだ男で、真夏の家で泊まる事になって貸してくれた部屋は、実は真夏の部屋だったのだ。
真夏は代わりの部屋として、庭から右の襖、開けるのを考慮していた部屋を使っていた。
まさか、私に貸してくれた部屋が、真夏の部屋だっただなんて…思ってもおりませんでした。
「えっと、それでは、私は会議の方へと戻りますので、ごゆっくりとお休み下さいね…それと、この部屋は、茜さんがもし生きていたら、使ってもらおうと考えていた部屋ですので、どうぞ好きな時に使って下さい!」
「え!?そうなの、ますます申し分無いわね…今度何かしてあげるわ♪」
「え、そ、そんな…構わないですよ、茜さん!そ、それじゃあ会議に行ってきます!!」
そう言って、白亜は急いでもと来た廊下を走って行き、会議をしていた広間へと行く。
「あ、いってらっしゃいー…」
少し呆然としていて、遅れて言った。
『…何か慌ただしく出て行ったな』
恥ずかしがり屋なんじゃなかろうか。
イズナの声に、私は心の中でそう呟く。
さて、廊下で突っ立っているのもなんだし、入っておこう。
私はブーツを脱いで、部屋へと入る。
久しぶりな感覚で、何だか落ち着ける。
体を横にすると、イズナが私から降りて畳の上に立った。
「…イズナー、私は寝るから、好きな所行っておいでー」
『ん?そーか…ならちょっと色々見てくるわー』
「うにゃー、行ってらっしゃいー」
『おう、じゃあ茜もおやすみなー』
そう言い、イズナ翼を羽ばたかせては庭の方から空に飛んで行った。
…はて、これでやっと寝れる。
そう思うでしょ…?
しかしまだ話さなければいけない人物…いや、妖怪が居る。
「………で?幽々子との再開はもう終わったのかしら?紫」
「…あらあら、またバレたのね……」
何もない所からスキマが現れ、紫が出てきたかと思うと、スキマの下の部分に座った。
「因みに、何時から気付いていたの?」
「この部屋に来た瞬間よ」
「…ほぼ私が貴女を見つけた時からじゃない……何で貴女には私が見ている事が分かるのかしらね」
知らないよ。
「……それで、何よ?紫」
「そう、ね…まずはお礼を言わせて欲しいわ、天狗と鬼に話を付けてきたのと、幽々子を甦らせた貴女には、感謝しているわ、ありがとう」
「…座りながらお礼言われてもねー、まあ気にしないのだけれど」
「前から茜は、そう言う人だものね」
「……………そう、ね」
前から、か……
確かに合ってはいるけどね。
「んで、お礼を言うためだけに来たのかしら?違うんでしょ?」
「…まさかそこまで読み取って来るだなんてね、そうよ、まだ話はあるわ」
「…はぁ」
今日で何度溜め息を吐いているであろう。
もう分からない。
「…なに?」
取り敢えず、話を聞くだけ聞くことにしよう。
そう思い、続けさせて貰うように言う。
「近々、楽園の周りに大結界を張ろうと考えているのよ。この子とね」
そう言うと、紫は新しくスキマを出してきた。
するとスキマからは、紅白の巫女服を着たショートヘアの女の子が出てくる。
…あぁ、もうそこまで行ったのね。
「彼女は博霊の巫女と言って、今度張る大結界の管理をしてもらう子よ」
「えっと、初めまして、博霊 零名(はくれい れいな)と申します。よろしくお願いいたします」
礼儀正しく、零名と言う巫女はぐーたらしている私に自己紹介をする。
「んみゅ、よっこいしょ…私は紅夜 茜、よろしくねっと」
私は体を起こして零名に体を向けさせて座りながら自己紹介をした。
失礼なのは分かるけど、今眠たいので立ちたくない…
決してめんどいとかそんなのではないので悪しからず。
「…それで、張るまでは良いけど…その後に安定しているかの確認もしないと駄目なの。その確認を手伝ってくれるかしら」
「んー、了解了解ーじゃあ明日にしようかー」
「明日って…今からしとうとーー」
「紫、私を寝かせて?」
紫が続きを言う前に、私は紫に満面な笑顔を見せながらそう言った。
たぶん今日でこの笑顔が最後であろう。
「そ、そう…分かったわ。明日にしましょう…じゃあ、おやすみ」
「おやすみなさいませ、茜様」
そう言って、紫はせっせとスキマへと入り、零名は下から出たスキマに落とされた。
荒い、荒すぎる…
仮にも巫女だぞ、もうちょっと丁寧に扱って欲しいものだ。
「…さて、やっと寝れるわ……」
誰からも視界を感じ取られなくなり、心が落ち着く。
朝に寝るのはあまり好めないが、本当に眠いのだ。
私は寝転がり、ふと色々と考える。
――妖力ちょっと使いすぎたかなぁ…特に大結界を作り上げるあれだけで全妖力の3割を持っていかれちゃった。
そして鬼の戦いでの疲労…これが一番疲れる。
「はぁ…」
また溜め息を吐く。
「…もう、寝よう」
私はポツリと、誰も居ない部屋で言って目を閉ざす。
一瞬にして、眠りに付いた。
………
……
…
さてはて、次話で幻想郷編となります。
PCを修理に出しており、投稿が出来ません。現在はVITAで少々編集しているくらいです。
そろそろまたPC買おうかなぁ…っと思ってきた今日この頃。
予約投稿がこの話までしか出来ておらず、次の投稿が遅れます。
まあ気になる方は…お手数ですがPIXIVへ……
待てる方はそのまま待機しちゃって下さい。一週間以内には投稿出来ますから。はい。
↓PIXIVでの第21話です。(2014/6/3現在の地点で第31話まで行っています。)
http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=3728632