ですが、最後の最後に言いたい事があるので、32話の所で報告
あの日…
真夏が居なかったら。出会えて居なかったら。私は此処には居ないであろう。
私はあの時に真夏を取り込み、人間と妖怪のハーフとなった。
「別れはある」
そんな事は百も承知だ。
だが、真夏だけは…生きていてほしかった……
何時までも、何時までも…生きていてほしかった。
しかしそれはもう叶わぬ事。
過去を手放し、今を生きて行く…
吸血鬼姉妹を助け、紅魔館の住人となり、人食い妖怪と出会い、妖怪鷹と旅に出て、妖怪の賢者に頼まれ、天狗に話をつけ、鬼と戦い、冥界の姫を亡霊とさせ、眠りにつく。
科学が発達し、忘れ去られて行く妖怪。
幻想になりつつある外の世界の妖怪達は、此処、幻想の郷…即ち『幻想郷』へと招待される。
『幻想郷』は、忘れ去られた妖怪、人間が集う楽園の場。
外の世界では、そんな舞台を描いたゲームがある。
それが「東方project」だ。
私は昔、その東方project――即ち、東方が大の好きであった。
いつもこういうシリーズのキャラクターや世界観を見ては、幻想郷に行きたいと何度思ったか…
死ねば行けると言う話もあったが、死にたくはなかった。それは何故か?
人間、誰しも『死』と言うものは恐れる。
無論、私もその恐れる人間の一人だ。
――しかし、予期もしない時に、私は死んだ。
痛かったさ、死ぬ時は必ずしも『痛み』はある。
交通事故が起きた時、まず息が吸えなくなり、次に視界がボヤけて行った。
ただ『痛み』だけが体中に走り、回りからの騒がしいであろう声や悲鳴でさえも聞こえなかった。いや、聞き取りづらかった。
……話が逸れたが、東方の世界は実在した。
現に、私は幻想郷で暮らし、日誌を書いている。
今、そこに暮らして、「幸せですか?」と聞かれれば、私は何の迷いもなく「幸せだ」と言うであろう。
こんなにも、現世よりも開放感ある素敵な楽園に不満などない。
…前書きは此処までにしておこう。
これより先は、紅霧異変の前、初めて幻想郷で私が目覚めた日から始まる―――
~茜 視点~
……ん、んぐ
私の意識が戻ってきた。
少しづつ瞼を開けて行き、視界には天井が見えてくる。
…しかし、何故暗いのであろう。
少し見渡してみると襖が全て閉まっており、端には蝋燭が一本燃えていた。
私は取り敢えず、何だかダルい体を起こす。
「……あれ、私、布団なんか敷いて寝ていたかしら?」
気付くと私は布団で寝ていた。
白亜が敷いてくれたのであろうか…まあ寝る時は朝だったしね。
私は立ち上がり、布団を簡単に畳んで隅っこに置いた。
「イズナ…は、何処に行ったのかしら……」
イズナが居なかった。
まだ帰って来ては居ないのであろうか?
「………ん?」
…何やら、広間で話声がかすかに聞こえる。
会議なのか…?
ちょっと様子を見に行こうかな。
私は庭の反対側にある襖に近付き、手を当てようとした時…
バチッ!
小さく電流が流れて弾かれる。
「…………結界…ね」
襖には結界が張られており、触ると少し痛い。
私は目に妖力を送って、周りを見渡す。
「…なに、この結界の数…!」
周りを見てみると、結界がたくさん隈無く張られていた。
封印結界に、対応結界、腐化阻止結界……
そんな色々な結界が張られていた。
何故?どうして??
「……これは白亜に聞いてみるしかなさそうね」
私は封印結界だけを切断能力で無効にさせ、襖を開けて広間へ繋がる廊下へと出た。
少女移動中…
天狗の村、広間
「――は、此処から此処までの範囲の警備をもう少し上げるべきかと」
「だがしかし、そうなると他の警備が疎かになるではないか」
どうやら、会議中のようであった。
広間には多くの天狗がお互いに喋りあい、意見を出し合って居た。
その中から白亜を見付け出した。
「白亜!!」
「だから……だ、誰だ貴様は!我等天魔様の部屋から来るとは!!」
「うるっさいわね!私は白亜に用があるのよ!!」
「な、貴様!天狗にその様な態度を取って、生きて帰れると思うなよ!!」
「おい、やめておけ!お前は知らないからそんな言葉言えるけどな!あのお方は天魔様の友人である者だぞ!!」
「…え……ま、まじかよ」
ヒートアップしていた中で、私を知っていた天狗が、怒鳴って来た天狗を止めた。
分かってくれれば良いけど、私も少し言い過ぎたかもしれない…
っと、天狗の中で一人が立ち上がり、私を見た。白亜であった。
「…茜さん、ようやく……起きられたのですか」
「…ようやく?」
白亜は目を伺うかのような表情をしながら私に言う。
ようやく起きられたとはどう言う事であろうか…まるでずっと眠っていたかのような……
「はい、茜さんは、今日で丁度500年間、眠っておりました」
「500年間!?」
「…はい」
500年間、私は寝ていた?
そんな馬鹿な、普通に寝ているだけでそこまで眠らない。
何がどうなって…
…いや、それは置いておき、部屋に張られていた結界についての話だ。
「あの部屋の術は、誰がしたの?」
「それでしたら、紫さんが張られました」
紫か……
何故か少し予想は出来ては居た。
結界と言うのは、殆どの妖怪、人間は使えない。
「そう…分かったわ……」
「あの、茜さん…どうして、500年間も眠られていたのですか?」
「……それは、私にも分からないの…」
「そう、ですか…」
そう、分からないのだ。
紫と明日は大結界を張ると言う話をして、それから眠った。
そして起きたら500年間が経っている。
…そうだ、大結界は!
「白亜!この世界って今は何て言うの!」
「え…確か、幻想郷と…言います」
「幻想…郷……」
幻想郷…幻想郷は、日本の人里離れた山奥の辺境の地に存在するとされている。
妖怪などの人外のものが多く住んでいるが、僅かながら人間も住んでいる。
幻想郷は強力な結界によって幻想郷外部と遮断されているため、外部から幻想郷の存在を確認することはできず、幻想郷内に入ることもできない。
同様に幻想郷内部からも外部の様子を確認することはできず、幻想郷から外へ出ることはできない。
ただし、幻想郷には外の世界で失われ「幻想になった」ものが集まるとされ外の世界で減少した生物(トキなど)が幻想郷で増加したり、外の世界で消えつつある道具などが幻想郷に現れることもある。
このように特殊な環境にある幻想郷では、外の世界とは異なる独自の文明が妖怪たちによって築き上げられている。
なお、幻想郷は結界で隔離されてはいるものの、異次元や別世界といったものではなく、幻想郷も外の世界も同じ空間に存在する陸続きの世界だ。
次に結界についてだ。
幻想郷の周りには、幻想郷と外の世界とを分ける2種類の結界が張られている。
1つは「幻と実体の境界」であり、もう1つは「博麗大結界」である。
幻と実体の境界――幻と実体の境界とは、500年以上前に八雲紫が立案・実行した「妖怪拡張計画」において張られた結界である。
外の世界に対して幻想郷を幻の世界と位置付けることで、勢力が弱まった外の世界の妖怪を自動的に幻想郷へと呼び込む作用を持ち、日本以外の国に住む妖怪まで引き寄せるという。
だがしかし、勢力が弱まっていない妖怪は招待として送られる場合もある。
博麗大結界――博麗大結界とは、百数十年前に張られた幻想郷と外の世界との往来を遮断する結界であり、博麗の巫女によって管理されている。
博麗大結界は「常識の結界」であり、外の世界と幻想郷の「常識」と「非常識」とを分け、外の世界の「常識」を幻想郷の「非常識」に、外の世界の「非常識」を幻想郷の「常識」の側に置くというものである。
物理的なものではなく論理的な結界だが非常に強力で、妖怪でも簡単に通ることはできない。
この結界は、紫を含む賢者たちの提案によって作成されたものとされている。
また、そもそも幻想郷はこれら結界によって外の世界と区別されることで、「幻想郷」として成立しているのだとされている
余談だが、幻想郷は内陸の山奥に位置するため、幻想郷内に海は存在しない
っとまあ、説明はこんな所であろう。
そんな世界が、もう…出来ていた。
「…じゃあ、スペルカードって……知っているかしら」
「いえ、分かりませんが…何なんですか?それは」
「あ、いえ…気にしなくて良いわ」
どうやら、幻想郷は出来ていてもスペルカードまでは出来ていないようだ。
となると…まだ博霊霊夢も居ないか、居るかってところか。
「あのー、天魔様…本当にあの方は天魔様の師匠みたいなものなんですか?」
私が頭の中で色々と考えていると、私に怒鳴って来た天狗が白亜にそんな事を聞いていた。
「そうよ、私の、師匠みたいな者よ」
「………そう、ですか…」
白亜が問い掛けに答えると、天狗が私をジロジロと見ては顔をそっぽに向ける。
一体何故…?
「…あの、茜さん」
「うん?」
「その…服を着たらどうでしょうか……」
「…あぁ」
私は今自分の服について見ると、上はキツキツの黒いヒートテックみたいなのを一枚だけで、下は黒いロングスカートであった。
…正直、それだけでもイイ気もするのだが……
「じゃあ服を着ようかなぁ…」
「そうした方が良いですって」
「めんどいって言ったら?」
「無理矢理でも着せます」
「…はぁ」
どうやら、それほどにまで駄目らしい。
私は取り敢えず服を着る為に、白亜がくれた自室へと戻る事にした。
幻想郷、上空
さってはて…何があるやらと…
私はお気に入りの服を着て、幻想郷を上空から見渡す。
…妖怪の山、迷いの竹林、人里、博麗神社、魔法の森、命蓮寺、太陽の畑、霧の湖、紅魔館…
他は結界によって封じられており、行けないであろう…
「……紫が居そうなのと言ったら、やっぱし博麗神社よねー…」
紫の家は、神隠しであって、何処にあるのかは分からない。
噂では、外の世界にあるのだとかなんとか…
…まあ、博麗神社に行こう。
少女移動中…
博麗神社、中心
博麗神社の中心に私は降り、ブーツが岩で出来た地面に当たって音が鳴る。
「さて、紫は居るかしら…」
私は周りを見渡しながら言い、奥の神社の賽銭へと足を踏み入れる。
…すると
「誰だ」
っと、声が神社の右の方から聞こえた。
男みたいに力強い感じで、少し重い声…
そして、その声の人物であろう者が神社端の右から出てきた。
此処からでも見える腕の傷痕、そして黒い長髪で顔は少し暗くも、威圧があり、何より、紅白の巫女服…
あ、あれは……
「…巫女……」
巫女、博麗神社の巫女である。博麗神社の巫女は代々、博麗大結界を管理し、妖怪を退治し、異変が起きればそれを解決している。
幻想郷の維持のためには、博麗神社と博麗の巫女が不可欠であるとされる。
その巫女が、今目の前に居る。
「妖怪か、神社に何をしに来た」
「紫を探しているのよ、知らない?」
「紫…紫ならば、先程帰った」
「あー…そうなのね……それは残念だわ」
紫が帰ってしまわれたら、もう行き先が考えられない…うーん、弱った。
「…紫は鬼役神出だからな、早々来ないであろう」
「だよねー…はぁ」
「明日も紫は来ると思うが…?」
「え、本当に?」
「保証はする」
明日かー…その間どうしようかなー……暇だわー……
折角だし、彼女と少し話でもしようかな…?
「ねえ、今暇?」
「いちおは暇だが、何か用なのか」
「まあちょっと話をしない?」
「…茶を用意してくる」
「ありがとー」
表情を変えず、私と話をしてくれる事になり、茶を用意しに行った。
私はとりあえず、賽銭前、階段横に座った。
スタ、スタ
あれ、速い…
彼女が茶を両手に奥から帰って来た。
「紫が来た時の残った茶だが、良いか?」
「えぇ、全然構わないわよ」
「すまない…」
そう言って、左手で持っていた方の茶を私に渡してくれる。
「ありがと」
私はそう言って茶を両手で受け取る。
うむ、温い…まあ、それが丁度良いのだけど。
彼女は、私の右に座り込んで右手で持っていた茶を少し啜る。
「…ねえ、貴女は…名前は何て言うの?」
「……人から名を訪ねる時は、相手からと言うのでは?」
「あはは、そう来た?」
…ん?
待てよ……おかしい、彼女が、この言葉のセリフを言えるのか?
このセリフはどこぞの漫画とかのセリフだが……まさか?
「…ねえ、貴女……昔は違う世界に居たりしなかった?」
「!?」
そう私が聞くと、彼女が少し驚いて私に振り向いてきた。
当たり、だったのかな。
「………どうして、それを」
「人から名を訪ねる時は、相手から名乗るもの…よくある漫画の有名なセリフじゃない」
私は笑って、そう先代に言った。
「…なるほど、そちらも、私と同じだと言う事か……」
「えぇまあそうよ、初めて私以外に違う世界から来た人を見たわ…」
「私も、初めてだ」
現世から来た人など、そうそう会えない者だ。
そんな珍しい同士に会えて、私はとても嬉しい。
もしかしたら、この世界も…
「ねえ、東方Projectも知っている感じ?」
「ああ、知っている」
「へー、私達って結構似ているのかもね?」
「どうだろうな」
どうやら彼女も、東方projectを知っていた。
私と似ていると言ったら、少し苦笑してそう言った。
「あ、そうだ…私は紅夜 茜って言うの、よろしくね」
「…博麗刹那(はくれい せつな)だ、よろしく」
「刹那だね、りょーかい」
「……ところで、紅夜は…天狗、なのか?」
「そうだよー、ただ、天狗でもあって人間でもあるだけ」
「つまり、霖や慧音と同じか…」
「そおゆう事…あぁ、そー言えば慧音にはまだ会っていなかったわね…」
「寺子屋まで行けば、すぐ会えると思う」
「寺子屋かー…うん、今度行ってみるわ」
…っと、そんな色々な会話をしていると、太陽が山に沈み始めていた。
「うーん、もうじき夜ね…」
「そうだな」
私は持っていた茶を一気飲みした。
かなり冷えていた…
「さて、今日はもう帰るわ、茶ありがとねー、刹那♪」
「構わん、またな」
刹那に手を振ってから、私は天狗の村の方へと大きく翼を打って飛んで行く。
明日は、紫居るよね…結界、私が眠っていた理由、聞かないと……