東方茜日誌   作:ミユメ

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【第22話】 白浪天狗

~茜 視点~

 

 

 

天狗の村 自室

 

 

 

「………ん……んみゅ」

 

 

 朝、私は目が覚めた。

 左側の庭から眩しい太陽の日射しを受けながらも起き上がる。

 

 

「…あー、そのまま寝ちゃった」

 

 

 私は、布団を引かずに畳の上で寝ていたそうだ。

 まあ、昨日は頭の中がパンクしてたせいで、速めに寝ようって考えた結果でもあるんだけど…

 

 

 …………も…で……!

 

 

 ん?広間で声が聞こえる。

 

 

「また会議をしているのかしら、頑張るものねー」

 

 

 昨日もそうだが、本当に会議ばかりしてそうだ…折角だし、ちょっと覗いて行こう。

 そう決めた私は、襖を開け、ブーツを履いて廊下を進んで行った。

 

 

 

 

 

少女移動中…

 

 

 

 

 

天狗の村 広間

 

 

 

 

「今度また同じ事をしてみろ!貴様を処罰するぞ!!」

「申し訳ありませんでした!」

 

 

 …ふむ、どうやら会議ではなく、叱っているようだ。

 白亜が怒鳴り、鼻高天狗の男が頭を下げて謝っている。

 うーん、それにしても白亜ったら厳しいわねー…私が天魔だった時はそんな厳しくしたことない。

 と言うか、あまり怒鳴らかったと言うか、なんと言うか…

 ん?別にめんどくさかったとかそんなんじゃないよ??

 20%真面目で80%めんどくさいだけだから。

 大丈夫……うん、大丈夫…

 

 

「はぁ…もう下がって良い」

「失礼させてもらいます」

 

 

 っと、白亜が少し飽きれ気味に言って、しぶしぶと天狗が出て行った。

 

 

「……あの天狗、何かしたの?」

「え、うわっ!?…茜、さん……いつからそこに」

「白亜が怒鳴り終わったあたり」

「そう、ですか」

 

 

 私が白亜に何かしたのかを聞いてみると、驚いてこちらに向いてきた。

 …私ってそんな影薄かったっけ?

 薄くないよね?

 いや、今はどうでも良いか…

 

 

「あの天狗が、居酒屋で酔って到るところを壊したんですよ」

「ほぇー…天狗はそうは酔わないわよ?」

「はい、そうなのですが…どうやら酒樽を2個飲んで酔い潰れたそうです」

「…樽て……ぇえ」

 

 

 酒樽とか鬼か、鬼なのか!

 天狗がそんな酒樽を2個も飲めば大半は酔い潰れるわ。

 

 

「…あ、今から出掛けるんだった」

 

 

 どうでも良いことを考えていると同時に、本来の目的思い出した。

 危うく忘れかけて居た。

 

 

「そうなんですか、分かりました。お気をつけて」

「うん、またねー白亜」

「はい」

 

 

 私は白亜に手を振り、扉を開けて外に出た。

 

 

 

 

天狗の里

 

 

 

 さってはて、今日は紫に会う日だぞーっと。

 まあ、会えると思うけど…

 だって昨日刹那は会えると保障してくれたし。

 取り敢えず向かいますか――

 

 

「貴様が止めなかったせいで、俺が怒られたじゃねぇか!」

「す、すみません」

 

 

 …ん?なんか奥の家から声が聞こえる。

 私は少し気になり、その家の前で立ち止まる。

 えーと、看板には待機部屋…かな。

 そう筆で書かれていた。

 私は気になったので、その待機部屋へと入って行く。

 

 

「それに!何で俺だけでお前等白浪は怒られないんだ!ふざけるなよ!!」

 

 

 …白浪天狗が6人に、さっきまで白亜に怒られていた鼻高天狗が一人。

 周りの白浪達は見て見ぬ振りをしている。

 状況から見て、あの天狗達は居酒屋に行って、鼻高天狗が勝手に酔って、白浪が止めなかったから怒っていると…

 あの天狗は自業自得と言う言葉を知らないのか…

 

 

「来い!今から貴様等に訓練を付ける!」

 

 

 天狗はその言葉を最後に、白浪達を連れて家を出ようとする。

 

 

「ちょっと待ちなよ、そこの天狗さんやい」

 

 

 私はその状況を見てられず、出ようとする天狗の前に立つ。

 

 

「何だ貴様は!」

「その白浪達は、上司に敵わないから止めれなかったんだよ。分かる?力の差って言うのがあるのよ」

「だからこうして力が弱い軟弱者に訓練を付けるのだ!」

「貴方、自分で酔っといてそれ?」

「ッ!下っ腹は下っ腹らしく働いて居れば良い!!」

 

 

 …等々、言っちゃいけない言葉を言ったよこの天狗……

 

 

「…そう」

「なにを…!?」

 

 

ズドン!

 

 胸ぐらを左手で掴んで足を払って木の床に叩きつけた。

 つい、その天狗に苛立ちを覚えたせいで手を出してしまった。

 あぁ、ヤバイ…何も考えずに手を出してしまった。

 このまま謝るとか…出来る訳ないよねー……

 こうなったら最後までやっちゃいますか。

 

 

「ぐっ!…貴様、許さぬぞ!」

「…私も貴方を許さない」

 

 

 私は右手に拳を作り、程々に手加減をして天狗の頬を殴った。

 

 

「――ッ!」

 

 

 天狗が左手で自分の殴られた頬を抑えていた。

 この天狗、あまり頑丈でもなさそうね…

 さて、もうこの辺にしておきたいが…何分、この天狗はあることをしていない。

 なので私は言う。

 

 

「…謝りなさい」

「誰に、だ…!」

「白浪全員によ!」

 

 

 私は掴んでいた左手を上げ、無理やり立たせる。

 白浪達は背後に居る。

 

 

「……」

 

 

 しかしそれでも天狗は何も言わず、ただただ私を睨んでいた。

 たぶん、私も彼を強く睨んでいるであろう。

 

 

「速く言わないと、次に目覚めるのは三日後よ?」

 

 

 流石にこれじゃあ洒落にならないので、私は殺気満面な笑顔で言う。

 すると天狗は寒気がしたかのように体をビクリと動かし――

 

 

「ッ!?す、すみませんでした!!」

 

 

 大きな声で謝る。

 

 

「はい、行って良し」

 

 

 謝った天狗の胸ぐらを離すと、すぐさまに出て行った。

 …やり過ぎた……かな?白亜に怒られそう。

 私は反対側に目を向けると、白浪達が私を見て、呆然としていた。

 

 正直居心地悪い。

 

 もう用事はないし、さっさと私も出よう…

 

 

「…あの!」

 

 

 扉に向かおうとそちらに体を向けさせると、後ろから一人の声が聞こえた。

 私は声がした方へとまた背後に目を向ける。

 

 

「……何?」

 

 

 椛が、私の近くまで来ていた。

 

 

「その、ありがとう…ございます」

「別に、当然な事をしただけよ。まあ、上司には逆らえないから、当たり前でもないのだけどね」

 

 

 私は普通の笑顔で椛にそう言った。

 天狗では上司に逆らえない。だから、私は珍しいと言った形であろう。

 天狗と言うのは、そんな社会なのだ。

 

 

「貴女様は、一体誰なんですか?」

「…そう、ね……白亜、まあ今の天魔様の師匠で良いんじゃないかしら」

「…はー……そう、ですか」

 

 

 椛が何だか困ったような、そんな目で見てくる。

 

 可愛い……はっ!

 

 如何せん、こんな所で心に花を咲かせている場合ではない。

 いや、別に良い状況でもあるんだが……

 もし咲いたら、椛をなでなでしてしまう。

 今この状況で意味も不明でなでなでしたら全員呆然から唖然に変わるであろう……

 

 

「まあ私の事を師匠だって言っていたからあってはいるわよ。少し深く言うと、私も昔は天魔をしていただけ」

「えっ!?」

「……もう辞めたけどね」

 

 

ヒソヒソ、ヒソヒソ…

 

 あることをカミングウトすると、周りの白浪達がヒソヒソ話をし始めた。

 

 

「昔の天魔様ってまだ生きているんだ」

「凄いよね、昔なのに肌とか綺麗だよ」

「え、って言う事は今の天魔様より強かったりするのかしら」

「どうだろ…」

 

 

 …強いかどうか……それは分からない。

 何せ戦った事などないからだ。

 今度戦ってみようかな…?

 

 

「…まあ、もう私は行くわ、用事もあるし」

「あ、そうなんですか、分かりました。すみません、引き留めたりして」

「ううん、気にしないわよ。それじゃ、またね」

「…また」

 

 

 私は椛と白浪達に手を振り、家から出た。

 

 

「…今から行っても、紫居なさそうねー」

 

 

 朝から色々あって、行く暇がなくなった。

 今は丁度昼くらい…ふむ。

 

 

「…そうだ、人里行ってみようかな」

 

 

 もう此処は幻想郷、何かあるのではないだろうか。

 

 私は翼を大きく打って、空へと舞った。

 

 

 

 

 

 

少女移動中…

 

 

 

 

 

人里

 

 

 

 

 人里の入り口より離れた場所で、私は翼を仕舞って入って行く――

 

 

「お嬢さん、妖怪の山からよく帰ってこれたね!」

「え?えぇ、まあ…運が良かったのかなー?あはは…」

 

 

 っと、門番に言われて少し対応に困ったが、何とか誤魔化せた。

 まあ、妖怪の山から人里に戻ってくるだなんて、凄いでしょうね。

 ――さて、人里だ…

 活気溢れていると言うか、何て言うか…

 妖怪は、まあ若干感じられるわね。

 ただ人間に化けたりとか、そんな感じであろう。

 

 

「うーん、昔と違うのは、妖怪が居るくらいでしかないわねー…」

 

 

 見るところ、やはりと言うべきか、あまり屋台が変わっていない。

 そんな屋台を見渡していると…

 

ドン

 

 

「うわっ、と…」

「………」

 

 

 誰も居ない場所で、家の角から来た人にぶつかってしまった。

 

 

「大丈夫?」

「……………」

 

 

 …ふむ、無言、ですか

 ん、妖力が少しあるわねこの子…

 赤髪で、髪の後ろには紫のリボン

 上着の赤いコートで首まで隠れており、中に黒い服で赤いミニスカート

 

 あれ、この子まさか…

 

 

「ねえ、貴女、ろくろの妖怪よね?」

「ッ!?」

 

 

 私が言ったら、その少女は驚いて私から距離を少し取って警戒し始めた。

 

 

「…陰陽師か」

「陰陽師なら聞かずに問答無用で退治しに掛かると思うけど?」

「……妖怪なのか」

「えぇ、妖怪よ、まあ翼を隠しているからね。此処人里だし?」

「なるほどね…」

 

 

 そう言って、彼女は納得すると警戒を解いた。

 あれ、単純だ…

 てっきり熱いバトルみたいな展開になると思ったが…まあ気のせいか。

 それ以前に、戦いたくありませんけどね!

 

 

「貴女の名前は?」

「何でアンタに教えないと駄目なんだ」

「え、駄目なの?」

「私は誰とも馴れ合う気はない」

「まあそう言わないでよー」

「しつこい…」

「言ってくれないんだもん」

「アンタよくそんな性格で嫌われているんじゃないの?」

「かもね」

 

 

 本当は初めてこんな性格なんだけど…

 

 

「…言ったらもうどっかに行ってくれるのか?」

「どうだろね」

「めんどくさい人……」

「まあそう言わないでよー、私は紅夜 茜って言うのよ」

「勝手に話を進めるしね…」

「そう言わずに、ほら」

 

 

 今の私の性格はかなりうざいであろう。

 うん、やっといて何だけど、私もこの性格がうざい。

 

 

「はぁ……赤蛮奇(せきばんき)だ」

「へー、赤蛮奇…蛮奇で良いかな?」

「もう、勝手にしてくれ…」

 

 

 物凄く呆れた顔で言われた。

 そりゃそっか、まあ名前なんて聞かなくても知っていたけど、教えてもいない相手に自分の名前知られていたら不自然でしょ

 

 

「蛮奇は何で人里で住んでるの?」

「アンタ、私に質問攻めしないでくれるか」

「それもそっか」

 

 

 だよねーって気分。

 質問攻めとか嫌われるもんねー…

 これ以上嫌われたら今度会った時知らん振りされそうだから、短いけど此処までにしておこう。

 

 

「じゃ、私はちょっと他の場所も見に行きたいし行くわ」

「勝手に行けば良いじゃないか…」

「それもそうだけどさー、蛮奇だって私なんか無視してどっかに行けば良かったんじゃなかったかなー?」

「ッ!」

 

 

 そう、今気付いたが蛮奇は私が質問攻めさせようとしたのに何処にも行かずに聞いていた。

 それはつまり、構ってほしかったって事だ!

 …あら、何だか蛮奇の顔が赤くなってきてる。

 

 

「べ、別にアンタの話だなんて無視してやっても良かったさ!けどあんまりにもしつこかったから仕方なく聞いてやっただけよ!!」

 

 

 しつこいならどっか行けば良いのに…

 矛盾してる。

 それにしてもツンデレである。

 か、可愛い……

 

 

「蛮奇ったらツンデレねー、可愛い♪」

「は!?ちょっ、んぐっ…!!」

 

 

ギュゥウウウウ…

 

 …あ、つい可愛過ぎて抱いてしまった。

 蛮奇が私の胸に埋まっている。

 私は勢い余って我を忘れて抱いてしまった事に気付いて、蛮奇を放した。

 

 

「はぁ…はぁ……こ、殺す気なの、アンタ」

「いやー、つい蛮奇ちゃんが可愛くて」

「私をちゃん付けするな!」

「うふふふふふ」

「わ、笑うな!!」

 

 

 顔を真っ赤にさせて怒鳴る蛮奇ちゃん可愛い…はっ!今思えば私、可愛いしか言ってない。

 いや、まあ可愛いから可愛いと言っても良いんだが…

 

「もう私は行くからな!」

「うん、またねー蛮奇ちゃん」

「あぁもう!ちゃん付けするな!!」

「じゃあ蛮奇が可愛い時にちゃん付けするね?」

「するな!」

 

 

 最後に蛮奇…もとい、蛮奇ちゃんが言って、走って私の来た道へと行ってしまった。

 するなって言われても、無理かも、私。

 

 

「んー、また会えるかなー…」

 

 

 蛮奇とまた会える事を祈りながら、私は真っ直ぐに進んで行った。

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