東方茜日誌   作:ミユメ

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【第23話】 二人の再会

~茜 視点~

 

 

 

上空

 

 

 

 幻想郷を上空から見るのは、これで何回目だろうか。

 いや、まあ別にそんな100や1000回も見てもいないのだが、見慣れてしまった。

 それは、私の記憶力が良いからであろう。

 まあ実質は、私の能力「切断させる程度の能力」で"記憶忘れを切断"させているから記憶を維持しているだけなんだけどもね。

 故に、忘れた物が今一つない。

 代わりに思い出すのに少し時間が掛かる。1万年以上の記憶だ。頭の中がおかしくなる。

 どこぞのインデックス様かって言う話なのだが、別に――

 …いや、この話はもう棚の上に置いておこう。

 

 さってはて、それは兎も角どうもおはようございます。

 昨日は蛮奇と会ってからそのあとぶらぶらして疲れて寝て、朝早く起きて博麗神社に向かっている所です。

 もう、そろそろ行かないといけないかなーって思ってさ…うん。

 さ、もう博麗神社が見えてきた。

 

 

 

 

博麗神社

 

 

 

バサッ、バサッ…カツン

 

 

「居るかなー…居なかったらまた明日に行かないと」

 

 

 私はぶつぶつと言いながら賽銭まで歩いて行く。

 

 

「紅夜、か」

「ん、おー刹那」

 

 

 そこに、刹那が前も同じ場所、神社右手側から出てきた。

 いつもと同じ巫女の服で、相変わらずの無表情な顔だ。

 

 

「紫なら居るぞ、会いたいなら上がって良い」

「そう?じゃあ遠慮なく」

 

 

 私は刹那から許可を得て、ブーツを階段前で脱いで刹那に後ろから付いて行く事にした。

 

 

「刹那ってさ、妖力を感じるのとか敏感なんだね」

「まあ、な…修行のお陰なのかもしれん」

「へー…例えばどんなの?」

「そうだな…昔までは生身で崖から堕ちたり、拳だけで木を倒したり……だな」

「…貴女人間なの?」

「人間だが?」

 

 

 刹那が歩きながら顔を私に向けて微笑んだ。

 人間がやることじゃないよ?普通…

 っと、刹那が足を止めて右側の襖をに手をかけて開けた。

 

 

「あら刹那、外に居た妖怪は……」

「あぁ、紅夜だったよ」

「やっす。紫、探したわよ?」

 

 

 紫が、私を見て固まる。

 表情すらも、体さえも固まっている。

 そして、ゆっくりと立ち上がった。

 

 

「茜…なの?」

「そうだけど?何をそこまで驚いているのよ?」

「…………な…ぃ…」

「?…紫?」

「…んな…さぃ……」

 

 

 紫が何かを私に何度も何度も何かを言っている。

 よく見ると、目には少し涙が見えた。

 

 

「…ごめん、なさぃ……茜…っ!」

「ちょ、ちょっと紫!?」

 

 

 紫が、私に聞こえるように言った後、泣き崩れた。

 何でそこまで泣くのかが、私にはわからない…

 私はうずくまった紫に近付いてしゃがみこむ。

 

 

「何で謝るのよ、紫」

「…私…ぐすっ……茜、に…嫌われたんじゃ、ないかって…!だから、だから…ごめんなさい…」

 

 

 え、嫌われたって…何で?

 どう言う事であろうか。

 

 

「何で嫌われたって思ったの…?」

「…500年前に、最初頼んだのは幽々子の手助けをして、その上に大結界を張るのも手助けしてほしいって、言ったじゃない…?」

 

 

 三日前…あぁ、いや。500年前か…あの日はクッタクタだったからねぇ……流石にずっと動くのは体に響く。

 

 

「う、うん。そうだね」

 

 

 私は思い出しながら「そうだね」と言う。

 紫は私を涙が溢れている目をしている。

 しかしそれは、ただの涙目ではない。真剣な目で見ている。

 

 

「明日に張ろうって事になって、来てみたら…貴女は、茜は…目を開けてくれなかったのよ…!何度呼び掛けても、何度揺さぶっても…起きてくれなかった!どうしてなのっ!?何でなのよ!!」

「…………」

 

 

 紫の強い言葉が部屋に響き渡る。

 こんなにも声を上げて言うのを見るのは初めてだ。

 私はそれに圧倒し、黙ってしまう。

 いや、何も言えないのだ。私は紫に何で私が眠っていたのかを聞こうとしたのに、逆に聞かれるとは想像も出来なかった。

 紫の仕業ではないとなると、一体何故私は眠っていた…?

 

 

「…あか、ね……」

「…え、何?」

 

 

 考えていると、紫がまた口を開く。

 今度はさっきなんかよりも小さな声で

 

 

「私の事…嫌いに、なった……?」

 

 

 ………ない。

 

 

「…そんな訳ないじゃない、紫とは友達よ。そうそう嫌いにはならないわ」

 

 

 そう、私は、友達を嫌いになったりはしない。

 妖怪の賢者「紫」、永遠に幼き紅い月「レミリア」、悪魔の妹「フラン」、紅き館の門番「美鈴」、永遠と須臾(しゅゆ)の罪人「輝夜」、月の頭脳「永琳」、不老不死の人間「妹紅」、白き天魔「白亜」、妖怪の鷹「イズナ」…もちろんまだまだ増やす。

 友達は、大切にしないと…

 

 

「まあ、紫…もう泣くのをやめなさいよ、美人な顔が勿体無いわよ?」

「ぅ…ん……ありがとう…ずずっ」

 

 

 紫がスキマを開いて中からハンカチを取り出し、鼻を啜った。

 そして涙を拭き、ハンカチをスキマに放り投げた。

 

 

「これで、良いかしら」

「うん、バッチグーだよ紫!」

「ふふ、相変わらず、テンションが高いわね…茜」

「まあそうじゃないと人生楽しくないわよ」

 

 

 私が笑い、紫も釣られて笑う。

 良かった。何とか湿っぽい雰囲気から抜けだせれた…

 まさか紫が泣くとは思いもしなかったなぁ――

 

…ガタッ

 

 

「ん?」

 

 

 今、襖の奥から音がしたような…

 

 

「…霊夢、盗み聞きはあまり良くない事だぞ」

 

 

 え、霊夢?

 刹那が言った言葉に、私は引っ掛かった。

 すると、音がした襖が開くとそこには紅白の巫女、もとい博麗霊夢が居た。

 

 博麗霊夢…博麗神社の巫女、自称、楽園の素敵な巫女で東方ゲームでの主人公。貧乏な巫女とも言われる。

 彼女の能力は「空を飛べる程度の能力」で、人間なのに空を飛べる。

 性格はまあ…めんどさがり屋だ。

 しかし金の話となると食い付いてくる。

 因みに勘が鋭い。

 

 

「お母さんが妖怪と話していると不安で仕方がないんだもん…」

 

 

 霊夢が少しジト目で見ながら言う。

 

 

「私なら大丈夫だから、霊夢は不安になる必要はないさ」

「……お母さんがそう言うなら、分かったわ」

「あぁ、心配を掛けてすまないな霊夢」

「気にしていないわ。それじゃ」

 

 

 霊夢が刹那だけに手を振り、襖を閉めて奥へと歩いて行く足音がして聞こえなくなった。

 

 

「すまなかったな、霊夢が盗み聞きをするとは思わなかった」

「…いえ、別に構わないわ」

「私も、あまり気にしてはいないよー」

「…すまない」

 

 

 それにしても、博麗霊夢が居るとは思わなかった。

 でも今は刹那が博麗だから……代わったら、あの異変が来るのかしら?

 その代わる時期は何時なのかな…うーむ。後で聞く事にしよう。

 

 

「…そろそろ、私はもう行かないと駄目だわ」

 

 

 っと、そこで紫が少しスッキリしているような顔で立ち上がる。

 

 

「え、紫もう行くの?」

「えぇ、少しやっておかないといけない事があってね。それじゃ、またね」

「またねー、紫」

「またな」

 

 

 手を振って隣にスキマを作り、中へと入って行ってスキマが消えたのを確認し、刹那に向き直る。

 

 

「刹那」

「…あぁ、分かっている。言うよ」

 

 

 ひとつのテーブルに左右座布団に座り、向き合って喋る。

 それにしても流石、博麗の巫女…勘が鋭い。

 何も言わずとも相手の思考を見抜いているようだ。

 

 

「…私は、明日に博麗の巫女を止めるんだ」

「それまたどうして…」

「霊夢は今、15歳だ…博麗の巫女と言うのは、その年に成るんだ、だから…私は止めなければならない」

「…………そう」

 

 

 博麗の巫女って、15歳でなるんだね。

 それにしても明日か。

 明日にはスペルカードルールが出るのかなー…

 

 

「…博麗の巫女が霊夢に代わったら、スペルカードの弾幕ごっこが始まるの?」

「そうだ」

 

 

 いちお聞いてみると、刹那は何の迷いもなくストレートで答える。

 

 

「…弾幕ごっこねぇ……」

 

 

 弾幕…弾幕とか私、作れたっけ?

 それ以前に作り出せたっけ?

 …うん?あれ??

 私、今までの戦闘で弾幕とか出したシーン………ない。

 …詰んだ。終わった。遊べない。

 

 

「だから紅夜、今後の異変は…頼んだ」

「………え」

 

 

 ……え?

 いや、まじ待ってほしい。

 まず私は弾幕なんて作り出せるのか?

 「弾幕」と言うのは、まあ簡単に言えば銃の弾だ。と言っても、本物の弾丸ではない。

 そんなん使われたら堪ったもんじゃない。

 弾幕には

 人間なら霊力を固めて撃つ「霊力弾」

 妖怪ならば、妖力を固めて撃つ「妖力弾」

 っとまあそんなもんがある。

 雑魚妖怪や妖術が苦手な者にも容易に扱え、燃費は良く、威力の調節も自由自在。

 使う者によっては、連射や速射に追尾弾すら可能な超便利な技法だ。

 そんな超便利な弾幕なのだが…

 

 ぶっちゃけ。私は使えない。

 

 確かに妖力はある。1万年以上生きているので、そりゃもうめちゃくちゃある。

 

 だが使えない。

 

 いや、本当に使えないと言う訳でもないんだが……銃が無いと出せません。

 別に本当の弾丸を使うわけではない。

 その銃の弾の代用として妖力を固めた弾を入れて使うのだ。

 それ以外…例えば手から出すだなんてものは出来ない。

 目から弾を出すだなんて夢のまた夢。

 …いや、目から弾は引くか。

 兎も角、何故出せないのか…?

 ははっ、分かったら苦労しませんよ。

 

 

「あぁ…うん。まあ良いよ」

 

 

 取り敢えず一旦頭の思考を真っ白にして承知する。

 別に銃を買えばどうとでも出来るので、苦はない。

 …たぶん。

 

 

「すまないな」

「いや、気にしないでよ」

 

 

 まあ異変とかは、楽しんだもん勝ちだ。

 楽しむさ。うん。

 

 

「…じゃ、私も帰ろうかな」

「そうか、分かった」

「うん…少しでも長く、霊夢と一緒に居てあげなさいよ。お母さん?」

「茶化さないでくれ」

 

 

 笑いながらそう言うと、刹那が微笑いをした。

 私は立ち上がり、出口の襖へと歩き、開けて刹那の方へ顔を向ける。

 

 

「じゃあね。刹那」

「あぁ」

 

 

 最後に手を小さく振って、襖を閉めた。

 

 

 

 

 

 

少女移動中…

 

 

 

 

 

上空

 

 

「ふぅ…昼間ね……んー」

 

 

 今、昼間になっており、太陽は斜め上にある。

 何処に行こう……あ

 

 

「久々に、霖ちゃんに会おうかな」

 

 

 次の目的地を決めた私は、魔法の森へと飛んで行く。

 

 

「んー、と…お、あったあった」

 

 

 私は魔法の森、入り口付近に下り立った。

 そして翼をいつも通り仕舞う。

 目の前、香霖堂と言う木の看板を扉上に立てており、右や左には物が溢れている。

 

 

「一輪車に、サッカーボール…うわ、ゴルフクラブまで……」

 

 

 本当に色々とある…

 さて、それじゃあ中に入ろうかしら。

 私はドアの取っ手に手を伸ばし、押して開けた。

 

カランカランカラン

 

 

「おや、いらっしゃ…い……」

「やほ、霖ちゃん」

「…真夏」

 

 

 ドアを閉めて、私は霖ちゃんが座っている奥のレジが置かれているテーブルの方へと向かう。

 

 

「君と会うのは、何年振りかな」

「んー…700年前くらいじゃないのかしら?」

「はは、もうそこまで経ったのか」

「私の言葉を信じるのねー」

「君は記憶が良いじゃないか、だから信じるのさ」

「ふーん…」

 

 

 私は適当に近くのストーブの上に座った。

 

 

「…ところで、翼はどうしたんだい?」

「え?…あぁ、仕舞ってる。邪魔くさいじゃん?」

「それもそうだが……」

 

 

 霖ちゃんが私を見ながら考え込む。

 対して私は、呆然とその顔を見る。

 

 

「翼ありの真夏が、僕は見たいかな」

「えぇ、なにそれ。霖ちゃんって翼フェチだったっけ?」

「ふぇち…?」

 

 

 …あ、今の時代にフェチとかそんな言葉無いか。

 

 

「あぁ、いや。間違えた。翼好きだったっけ?」

「ふむ?そうではないよ。ただ、いつもは翼を仕舞っていない状態で会っていたからね。違和感があるんだ」

「なるほど」

 

 

 確かに真夏の記憶では、翼を仕舞わずに会っている。

 真夏は、翼を仕舞うと言う事をあまり…いや、極端にしないのだ。

 それは何故かと言うと――

 

 

「普通の美人な人間に見えるからね」

 

 

 …霖ちゃんが言ってくれたように、人間に見えるらしいのだ。

 まあ確かに、翼が無ければただの人間だ。

 外見は人間そのものだからね。

 真夏は、そう言うのがあまり好きではなかったようだ。

 故に、翼を仕舞わずに居た。

 それにしても、霖ちゃんって美人とか普通に言えるんだね。

 恥ずかしくないのであろうか?

 

 

「ふふっ、霖ちゃんは相変わらずの人よね」

「どう言うことだい?」

「そのままの意味。で、翼見たいの?」

「あ、あぁ…まあね」

「そっか」

 

 

 私はヒョイとストーブから降りてから仕舞っていた翼を大きく出す。

 

バサッ

 

 そう音を立てて両翼を広げた。

 両翼、この店(香霖堂)壁端まで届いてしまったのだ。

 

 

「…長い、ね」

 

 

 霖ちゃんは唖然として一言口にする。

 

 

「長生きしたらこんなもんじゃないのかな?」

 

 

 翼は、昔まではそんな端までは届くほど長くはなかったのに、今では届くほど長く、大きい。

 年々、長くなっているのだ。

 不思議である。

 

 

「うーん、妖怪については僕は詳しくないよ…阿求に会って聞いてみたらどうだい?」

「稗田家、ねぇ…」

 

 

 私は翼を縮めて考え込む。

 稗田家は代々、ある能力を受け継いで行っているのだ。

 それは「一度見たものを忘れない程度の能力」…霊夢がもうじき博麗の巫女になるのであれば、今は9代目の稗田阿求であろう。

 まあ霖ちゃんもそう言ってたから阿求なんでしょうけど…

 けど、会ったら幻想郷縁起を…あぁ

 まあつまり質問攻めされると言った方が良いであろう。

 

 

「知っていたんだね。じゃあもう言わなくても、分かるかい?」

「うん、大丈夫…今度会うよ」

「そうかい…で、何の用なんだい?」

「んー、会いたかっただけなんだけどなぁ…あ、じゃあ火縄銃を14本欲しいのだけど、大丈夫かな」

 

 

 14本…何故14本も要るかと言うと、携帯用なのだ。

 真夏は右翼のマントに7本と左翼マントにも7本の火縄銃を付けていた。

 しかし、常に付けていると火縄銃同士がぶつかり合ってジャラジャラと煩い。

 …その火縄銃は、手に取って射つ方法もあるが、翼を広げて射つと言うのもある。

 普通火縄銃は、両手で持って火縄に火を付けてから狙いを定めて射つのだが、真夏は炎の術を熟達しているので、その必要はなく、中に火薬を入れて弾を入れるだけで射てる。

 火薬に炎の術を使えば速攻で射てるのだ。

 …だがまあ、私の場合は普通の火縄銃を使う訳ではないんだけどね。

 

 

「火縄銃、か…14本と言うことは全部なんだね、壊れたか盗まれたのかい?」

「んー、無くしたって言うべきかなー…」

「無くすって、君はそこまで物忘れでもないであろう」

「本当に無くなったのよ」

 

 

 私が真夏の体を取り込んで、起き上がった時には全ての火縄銃はなくなっていたのだ。

 盗まれた、と言う可能性はあるとは思うが、あんな戦場だったところでそんな事をする人は居るのであろうか…

 

 

「うーん…ちょっと倉庫に行ってくるよ」

「りょーかいだよー」

 

 

 そう言って、霖ちゃんは部屋の奥へと入って行った。

 その間、なにか色々と見てみようかなー…

 私は店内をうろうろしながら歩き回る。

 

 

「ふーん…うわー、ゲームボーイカラー……電池ないからつかないでしょうねー…こっちは、ビデオテープ…懐かしい」

 

 

 本当に色々な物があるものだ。

 真夏の記憶だけだと何が何だか分からないとは思うが、私は前世の記憶があるので、とても分かる。

 懐かしい物ばかりだ。

 ――思えば、元の世界に戻りたいだなんて、考えた事ないなー…親は産まれつきで居ない、友人は…居ないか居るかだ。

 …戻りたいか、ねぇ……

 

 

「…今は此処が楽しいし、考えなくても良いか……お?」

 

 

 私は、壁にハンガーで掛けられている一つの服を見付けて体が止まる。

 

 

「おー、カッコイイ…」

 

 

 その服を手に持って触ってみる。

 触り心地は大々着物みたいな感じだ。

 緑色の長い袖無しのコート、胸らへん両方に白くて丸いもふもふが付いている。

 

そわそわ…わくわく

 

 私は興味本意でそれを着てみる。

 

 

「おー…ピッタシだ!」

 

 

 私の足が見えるくらいの所まで長さはあり、とてもしっくりくる。

 

ジャラ、ジャラ…

 

 

「…ふー、14本有ったよ……って、何しているんだい?」

「着てみたの!」

 

 

 ドヤッっと言った感じで霖ちゃんに向く。

 

 

「どうかな、似合うかな?」

「うん、まあ似合っているよ」

「本当に?じゃあ買おうかしら♪」

「それはどうも、よっこいしょ…」

 

 

ジャラララッ

 

 霖ちゃんが両手で持っていた14本の火縄銃をレジのテーブルに置き、いつも通りの椅子に座った。

 

 

「えーと…火縄銃14本で7000円かな?」

 

 

 ………うん?

 

 

「え、7000…円?」

「ん、そうだが…もしかして持っていないのかい?」

「い、いや…あぁ……」

 

 

 ちょっと待て、今「円」って言った…?

 前までは「践」や「文」だったのに、「円」…?

 まじか。最早私の前世の世界ではないか。

 500年って、伊達じゃないな。

 んで、金なんだけども…

 

 そんなもんない。

 

 ある訳がない。私が持っているのはそれら言った「践」と「文」だ。

 どうするか…今から作れるか…?

 

 

「もしかして、昔のお金しかないとか…そんなのかい?」

 

 

 何故バレた。

 

 

「そう、なる」

「ふむ。じゃあその服と火縄銃14本……20文でどうだい?」

「え、良いの?」

「物々交換と考えて貰って良いさ」

「なるほど」

 

 

 物々交換か、確かにそっちの方がありがたい。うんうん。

 私は心の中で頷き、切断能力で空間を切って手を突っ込んで適当に掴み、戻す。

 

 

「…はい、霖ちゃん」

「え、いや…28文あるのだが……」

「適当に掴んだらそうなったわ。別にもう使えないならそれで良いよ」

「はぁ、貸しを作らせるものだね…」

 

 

 別に貸しを作りたくてしている訳でもないんだけどね。

 

 

「まあ、また今度に貸しを返させて貰うよ」

「頑張ってね」

 

 

 私は微笑いしてそう言い、火縄銃を一本一本手に取っては切断能力で作った空間の中に入れる。

 

 

「…その空間は、スキマと同じなのかい?」

「んー?うん、そうだよー…出来るかなーって思ってしてみたら、出来ただけ」

「そうか…」

 

 

 火縄銃を見ながら、空間へと入れて行くだけの簡単なお仕事。

 …そして、最後の火縄銃を空間に入れてから空間を消して霖ちゃんを見る。

 

 

「どうだったかな?倉庫にあった中で一番綺麗だった物ばかりを取ってきたが」

「全部問題ないよ、ありがとね」

「それは良かった…」

「うん、じゃあ私はそろそろ帰って寝るわ」

「そうかい、分かった。またのご来店を待っているよ、真夏」

 

 

 …………

 

 

「…霖ちゃん」

「ん?何だい」

 

 

 私は後ろへ向こうとしたが、一つ言いたいことを思い出したので、霖ちゃんを呼んだ。

 

 

「昔居た私の家はもうないの、今は妖怪の山、天狗の里の屋敷が私の家になったよ」

「そうか…やはり、月の住人に攻撃されたんだね…」

「…そうだね。あと、私の名前もその日から変えたの、紅夜 茜ってね」

「分かったよ。茜…これで良いかい?」

「うん、じゃ今度こそまたね、霖ちゃん」

「あぁ、またね。茜」

 

 

 霖ちゃんに手を振って振り返り、扉を開ける。

 

カランカランカラン…

 

 そして私は扉を閉め、天狗の里へと飛んで行った。

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