~茜 視点~
妖怪の山 家
「はぁ……暇ー」
起きて、服を着るまでが5分、その後何をしようか考えられず、畳の上で大の字になっている。
霖ちゃんと会って、もう1週間…
刹那が博麗の巫女を止める日、私は行かなかった。
何故?
だって、言っても邪魔になるでしょ?勘だけど。
あー…それにしても暇である。
何か、何かないの……
…それにしても、何だか広間が少しざわめいているのは気のせいなのかな。
会議…?
あぁ、会議か。そうだね。そうに違いない。
…ダッダッダッダッ!スパァン!!
「茜さん!来て下さい!」
「…………ぇ?」
急に白亜が走って来て私の部屋の襖を強く開けた。
私はそれを見て少し固まる。
何々どうしたの。
私は取り敢えず体を起こして白亜の方へとモソモソと歩く。
「どうかしたの?白亜」
少し頭を掻きながら聞いてみる。
「良いから来て下さい!!」
「わわっ!?」
白亜が強引に私の袖を掴んで廊下を走らされる。
せめてブーツを履かせる権利を下さい。
っと思いながらも、白亜に袖を掴まれながら走って付いて行く
少女移動中…
ザワザワ…
広間では、いろんな天狗達が集まっており、ぎゅうづめに近い状態だ。
大天狗、鼻高天狗に白狼天狗…などの全天狗が見てとれる。
白亜が段差を上がっていつも座っている畳へと行くと座って私を手招いた。
私は無言で段差を上がって白亜が居る方へと行く。
「これを見て下さい」
「んー?」
白亜が新聞一面に載っている記事に指を差した。
「今日の号外なんです。何でも、この幻想郷のルールが作られたとか…」
「…スペルカードルール、ねー」
その新聞の見出しには「幻想郷に新しいルール!?その名もスペルカードルール!!」っと、大きく書かれており、そのスペルカードルールの内容も細かく書かれていた。
「そう言えば、茜さんが起きた時にスペルカードって知ってる?っと聞いていましたが…知っていたのですか?」
「え…えぇ、まあ…紫から少し聞いただけよ」
「そうなんですか…」
まあ嘘なんだけれども…
私は取り敢えず白亜の隣に座り込んで新聞をじっと見ながら考え込む。
…さて、スペルカードルール…か……
どうしよう、弾幕だとかあまり好きじゃないのよね。
まあ、好きじゃないだけではない。使えないって言うか弾幕放てても少ない。
前にも言ったが、私は銃からでしか弾幕は出せない。
はてはてどうするか?
紫に何とか頼んでみるとか、そんなもんであろうか…
……ま、それしかなさそうだよね。
格闘もありにしてもらう。
「あややや、これはこれは噂の天魔様のお師匠さんじゃないですか」
「んみゅ?」
畳の上に置かれていた新聞を見ていたら、前方で声がしたので私は顔を上げた。
…なんだ文か。
射命丸文…報道部隊の鴉天狗だ。
写真機に紐を付けて首に掛けており、団扇をミニスカートの右に付けて文花帖を左手に持っている。
髪は黒のショートヘア
瞳は少し暗い赤
「文々。新聞」と言う独自の新聞を発行しており、何処よりも速く正確な情報を提供している。
そんな彼女が、もろ分かりな営業スマイルで私の前に居る。
「…何?」
私はあまり興味を示さないような顔をする。
いや、まあ「心の中」ではもう有頂天ですよ?
射命丸文と初めて会ったもん。
いやはや、此処まで美人さんとは思わなかった。
しかしだな、あれだ。営業スマイルさえなかったら本当に良かったのに…!
って気持ちもある。
ちぃ、営業スマイルまじスマイル…
スマイルスマイルまじスマイル。
……もはや何言ってんだ私は?
まあ取り敢えず、こんぐらい私の「心の中」では有頂天なのである。
意味が分からなかったらそれでよし。
忘れてしまわれば尚良し!
…それよりさ、奥の方で何かこっちの方をチラチラと見てくる白浪天狗が居るんだけども……あ、椛だ。
「いやー、その新聞を読んだ感想を伺ってみたいなと思いまして」
…ん?感想、ね…
私は新聞右上の題字を見てみると、「文々。新聞」と書かれていた。
ふむ、えぇと……
…ノーコメントってありなのかな。
ぶっちゃけて言うとさ、そんな読んでもないから内容とかあんま理解してないのよね。
故に感想が言えない。
言えないったら言えない。
それより椛が気になる。
「ごめんね。あまり見てないの」
私は取り敢えず、文の顔を見ずに奥に居る椛を見ながら正直な事を言うことにした。
「あややそうですか、それは残念です。あ、もし宜しければ、貴女様のお名前を――」
っと、文はどさくさに紛れながら私の名前を聞こうとする。
そこで、先程からずっと見ていた椛が「はわわわわ」っとたぶん誰にも聞こえない声で言うと共に立ち上がって猛スピードでこちらにくる。
「ちょ、ちょっと文さん!流石にそれは駄目ですよ!?」
「も、モミジ!何で止めるんですか!」
椛が急いで文の腕を付かんで引っ張るが、文は抵抗する。
「あのお方は今天魔様とお話をしているんですよ!?まずいですって!」
「それでも!それでも私は取材…じゃなくてお話に混ざりたいのよ!!」
…取材をしたいって、今此処で取材ってどうかしてるよ文……
まあ良いけど、良いけどさ!
隣の白亜が文に冷たい視線をしているから言いづらい。
いや、冷たい視線って言うか、何か怖いような呆れてるような顔である。
「文、貴女は礼儀と言うものを知りなさい」
そこで白亜は口を開けて文に言う。
「ほら!天魔様だってそう言ってらっしゃるのですから離れますよ!!」
「ちょ!あぁぁぁぁ……」
バタンッ!
椛が文を強く引っ張って無理矢理外に出た。
扉が勢い良く閉まると、しーーん…っとなる。
「……白亜、文って言う人はいつもあんな感じなの?」
「えぇ…まあ、礼儀知らずと言いますか、なんと言いますか…」
「ほーん…」
んー、でも絶対今度取材しにくるよ…ねー?
原作通りの性格、意地であれば絶対だ。
その時は…答えないと駄目だね。
無駄に時間が掛かるだけだ。
「…あ、ちょっと私は紫に会いに行ってくるわ」
私はその事を思い出して立ち上がる。
「あ、そうですか、お気を付けて」
「うん、またね白亜ー」
少し手を振ってから白亜に背を向けて段差から降りる。
…そーいえばブーツを私の部屋襖前に置いてるんだ。
仕方ない、戻ろう…
っと、私が広間左側の廊下へと進もうとした時だ。
「あの、すみません!」
「ん、ん?」
まだ10分も経ってないのに二度も呼ばれる。
私は「また?」っと思いながら少し戸惑って声がした後ろに顔を向けると、白狼達が居た。
周りは無論、全員こちらに注目している。
うわー…こりゃないわー……
あんまりこう言うの慣れない。
「宜しければ、貴女様のお名前を聞かせて下さい!」
っと、一人の白狼がそう言った。
…って言うかアンタ等もかい!!
そんなに私の名前が聞きたいのか…
名前ってそこまで重要性あったっけ?
右手を顎に付けて考え込んでいると
「アンタ達!良い加減にしなさいよ!!」
隣の白亜が立ち上がって大きな怒鳴りを上げる。
その声は広間全体に響いて天狗達は皆体をビクリと動かして大半は冷や汗をかく。
まあ、私だけは何とも思わずボケーっとしながら白亜を見ているんだけどもね。
え、おかしい?
…ま、まあおかしいのであろう。
だって天狗の長である天魔様が怒りだしたんだもん。
怖いであろう。
「す、すみません…」
そこで、私に聞いてきた一人の白浪天狗が謝って一歩下がる。
えぇ、何この感じ…あんまり好きじゃないんだけど……
どうするか?
……あぁ、でも無いこともないね。
私は「心の中」でニヤニヤしながら無表情で白亜に近付く。
すると白亜は自分に近付いている事に気付くと、怒っていた顔が拍子抜けな顔になる。
「え、な、何ですか…茜さん」
「…………」
少しずつと戸惑る白亜。
それでも近付き、あと一歩で白亜にぶつかる所で止まる。
そして両手を白亜の肩に乗せて顔を近付ける。
すると顔は徐々にと赤くなって行く。
カワエエわー…
そう思いながらも顔を近付ける。
「ちょ、ちょちょちょっと茜さん!待って――」
ペロッ
「ひゃぁああ!?」
キスと見せ掛けて、頬をペロリと軽く舌で舐める。
白亜は驚きと緊迫感で脚の力が抜けて膝を付ける。
「あんまり怒りすぎるのも良くないわよ、白亜」
「…………」
取り敢えず硬直して私を見上げる白亜に言って、振り返る。
全員先程の状況が理解出来ず仕舞いで口を開けて呆然としている天狗が多かった。
そんな中で一呼吸入れる。
「私は紅夜 茜、1万年以上生きているただの天狗よ」
二度目の自己紹介をする。
まあ、一回目は500年前なんだけれどもね。
見ると、一度見た事がある天狗が少人数と知らない天狗が多い。
これじゃあもう一度自己紹介をしなければいけない状況でもあった。
しかしあれだ、全員黙りこんでいる。
とっとと私は此処から離れておこう。
「…まあ、そんな訳で宜しくね」
最後にそれだけを言って廊下の方へと進み「じゃ」っと言って右手を上げて進んで行く。
…少女移動中
「……満更でもないことしちゃったなー」
廊下を進みながら心の声を口に出して言う。
まあ、もうそんな事は慣れたけど…
さて、私のブーツはー…あった。
部屋の襖ちかくに置いてある私の黒いブーツ
「はぁ…んー、紫は何処に居るかなー」
ブーツを履きながら、紫が何処に居るか考える。
だがまあ、理論上からしても、結論からしても、博麗神社になる訳なんだけれども…
正直何か運試しみたいなのめんどい。
行っても居るか居ないかだ。
なんだこのイベントシーンみたいなの。
ゲームじゃああるまいし…
「私なら此処に居るわよ?茜」
「………ぇ」
いきなり、閉まっている私の部屋の中から声が聞こえた。
…今日は驚きがいっぱいな気がしてきた。
私は襖を開けて中を確認してみる。
「…何で紫が居るの」
「色々とお話をしたいじゃない」
「………」
嘘くせえぇ…
笑顔で言ってくる紫がなんか妙に嘘臭くてなんとも言えん。
取り敢えずそんな事は良いとして、今履いているブーツを脱がなければ…
…めんどくせええええぇぇーっ!!
あぁくそ、何でブーツ履く前に答えなかったゆかりん!
「…そのブーツは、何処で買ったの?」
「え、これ?これは河童に頼んで作って貰った物だよ」
「そう…」
ブーツを脱ぎ、紫が座っている右にあるテーブルへと行き、紫の反対側で座る。
「それで、話って何よ?」
私は右手で頬杖ついて聞く。
「そうね、まあ今日から決められたスペルカードルールについて話があるの」
「あー…そうなんだ」
「えぇ、まあ話をすると言ってもいちおルールを言うだけよ」
「あぁ、もうそのルールならさっき広間で天狗達と見たわ」
「あら、そう」
新聞でルールやらと色々と見たからもう問題ない。
スペルカードルールと言うのは、普通に殺し合うのではなく、遊びだと考えれば良い。妖怪なら妖力、人間なら霊力、神は神力と言った力を練り込んで弾の形にしてそれを相手に当てれば良い。
いちお言っておくが、当たると気絶しそうなほどの激痛に負われる"くらい"だから覚悟しておくこと。
なので当たると痛い、それだけだ。
その弾などを弾幕と言い、体力が有る限り攻撃しまくるのは禁止で、スペルカードと言った札…言わば自分の必殺技だが、使える枚数は決まっている。
決着の付け方は、そのスペルカードの弾幕を全て避けきるか、相手に弾幕を当てるかどちらかだ。
「ねえ紫、スペルカードルールは良いけど、弾を出しあって"勝負"するその"勝負"の名前とか決まっているの?」
「え…あ」
「…決まっていないのね」
「そこまでは考えていなかったわ…」
名前なしの勝負だなんて嫌だよね。
っと言うことでこの弾幕勝負の名前は、やはりあれでしょう。
「じゃあ弾幕ごっこって言うのはどう?弾は弾幕と言って、殺し合いじゃなく遊び感覚だからごっこ」
「へー…良いわね!それ、それにしましょう、後でまた告知しないとね」
「それは良かったわ。でさ、紫……一つお願い事があるのだけど」
「何かしら?」
喜んでいた紫に私はお願い事を聞いてもらう事にした。
「その弾幕ごっこなんだけどさ、私の場合は格闘をありにして欲しいのだけど…良いかな」
「別に構わないわよ」
「えっ、それ本当?」
「本当よ、だって貴女なら町を壊すくらいの力は出さないと信じているもの」
「あはは…ありがとう、紫」
ふー、何とか格闘を使っても良いと許可が得られた。
普通弾幕と言うのは格闘ではなく弾の撃ち合いなのだ。
…まあ、弾幕 対 格闘だなんて勝敗もう付いてるんじゃないかな、普通ならね。
うん、普通なら、ね。
まあ何にせよ、私は格闘を使えるようになった。
だがしかし――
「スペルカード作らないと駄目だよねー…」
そう、スペルカードだ。
それがないと話にならない。
「別に無しでも良いのよ?負けても知らないけど…」
「うげー、それは嫌だわ…紫はもうスペルカード作れてたりするの?」
「一枚だけならね…」
そう言って紫はスキマを隣に作って中から一枚のカードを取り出して私に見せる。
廃線「ぶらり廃線下車の旅」
………待てや、これあかんって。妖怪であろうが何であろうが当たれば普通は死ぬ奴だぞ。
これはまあ名前からして分かると思うが、この技は大きなスキマを開けて中から廃線された列車が向かってくる。
そのスピードはだいたいで80Km/h
北海道の普通列車の速度だ。
そんなスピードで当たりもすれば、ブッ飛ぶとかそんな問題では済まない。
確実死ぬぞ…あれ……
「は、速いねー…まあ当り前か」
取り敢えず何も見てない事にして言う。
それにしてもスペルカード…あー、私スペルカードとかそう言う作るのあんまりした事ないからね……
「後で考えようかしら…で、他にも話はあるの?」
「いえ、ただスペルカードルールについての内容を言いたかっただけよ…まあ、もう知っているようだから意味無かったけどね」
紫はそう言いながら見たくもないスペルカードをスキマの中に戻す。
「そっかー…じゃあもう何処かに行ったり?」
「まあそんな所ね、スペルカード作り頑張りなさい。茜」
「うん、そうだね」
それだけを言って立ち上がり、紫は隣にスキマを出した。
「まったねー紫」
「えぇ、また」
私は座りながら手を振ると、紫も手を振り、スキマの中へと入って行った。
「…さて、スペルカード作り頑張ってみようかしら…はぁ」
そうして私は、スペルカード作りをする為に約一週間ほど閉じ籠ったのである。