~咲夜 視点~
「これにて私の手品は、おしまいです」
カランと、彼女が持っていた槍が手から離れて床に落ちる。次に彼女自身が倒れた。
呆気ない勝負であった。
だが1分も経たないうちに終わるその勝負(殺し合い)は、私にとってはいつもの事だ。
能力で時さえ止めれば、何であろうが誰であろうが抗えぬモノ。
「…さて――」
片付けようかしら。
そう言おうとする時、パチパチパチ!っと何処からか手を叩いて拍手をする音がホールに響き渡る。
拍手をしている者を探そうとすると、すぐに見付けた。
ホール中心に、たった今殺したはずの彼女が立っていたのだ。
私は目を疑い、見開いてしまう。
「ブラボーブラボー、最っ高に良い手品だったわ」
彼女は拍手を止めて驚いている私を見つめる。
「…ありえない……」
ただ一つ、ありえないと言う言葉が口から出る。何故なら彼女はもう殺した。ちゃんと手応えだってあった。
なのに彼女は何事も無かったかのような平然の顔で居る。
まるで手品かのように…
「ありえない?残念、これがありえるのよねぇ」
「じゃあ、これは何!?」
「んー?」
私は下で倒れている彼女の体を指差す。
立っている方の彼女は私が指を差した者を見ると、右手を少し上げてパチンッと、指を鳴らす。
するとどうであろう。倒れている彼女が何か細かく粉となって消えていく。
そして跡形も無く消えると、四本のナイフと槍だけがそこに残った。
「…貴女は、手品師かしら?」
「さぁ、どうでしょう?まあ少なくとも私は――」
彼女は言葉の途中で私から目を離し、緑色の長い羽織のようなものを何か空間のスキマに入れ、次に白い天狗の服を脱いでそれも空間の中に入れる。
そうしてから黒いインナー服のようなモノを着ている状態になった彼女は私を再度見始める。
「只の天狗よ」
少し微笑んだ感じでそう言った。
「その天狗が、あまり調子に乗らない方が良いわよ!」
私は時を止め、彼女目掛けてナイフを十本、二十本、三十本と、次々に飛ばす。
そのナイフは彼女の目の前で止まり、あと数センチで当たる所。
「さあ、今度こそ…おしまいです」
時を戻す。
それと同時に止まっていたナイフは動き出し、投げた時と同じスピードで彼女に襲い掛かる。
今更避けても無駄なそのナイフは、止まる事も無く進む。
しかし、あと少しで彼女に当たる所で壁のように大きな黒い空間の切れ目が出来上がる。
私のナイフは全てその空間に入り、やがて閉じられた。
「…ふっ、それも手品のつもりですか?」
「別に手品でも何でも無いわよ?」
彼女に問うとニィっと、笑うかのように表情を変えさせる。
それはただ笑っているだけではない。何か楽しんでいるような、私を試しているかのような顔。
私はその表情が気にがかり、時を止めて周囲を見渡す。
「!?」
そして気付く。
私の上にはナイフが入っていった空間の切れ目が出来ており、その中から今まさにナイフが私を目掛けて落ちてきていた。
それに気付いて、咄嗟に後ろに大きく一歩下がり、天井に出来た空間の切れ目の範囲内から出て時を戻す。
ズガガガガガッ!っと、ナイフの雨が降ってきた。私が先程立っていた所だけが狙われていた。
「やっぱし駄目、か…」
外れた所を見て、彼女は言った。
やっぱし、と言う事は、最初から私が避けられる事は分かっていたと言う事なのであろう。
「避けられると分かっていてやったのかしら?」
「そうだけど?」
「随分と、舐められたものね」
「そうかしら?」
避けられると分かっていて尚それをすると言うことは、私は何らかのヘマを犯して当たるであろう。もしくは気付かずに当たるであろうと思われたのであろう。
それはつまり、彼女にとって私はその程度の実力であった。と思われた事だ。
私はそこに腹が立ち、歯を強く噛んでから鋭い目で彼女を見る。
「貴女に私の実力を訂正させてあげます」
ナイフを右手に十本、左手にも十本を持って彼女に投げ付ける。休む暇もなく私はナイフを出しては投げる。中には彼女を狙わずに敢えて違う場所にも投げて計100本ものナイフを投げた。
そして最後に一本のナイフを素早く投げる。そのナイフは桜花の色のようにピンクの色を放ちながら違うナイフの刃にぶつかり、方向を変えさせると同時に、その一本のナイフの速度が上がっていく。
金属と金属の音を鳴らしながら彼女に近付く。彼女はナイフを全て見た後に、動き始めた。
華麗に紙一重でナイフを避けていく。だがその避けているナイフはただの気を引かせるようなもの。
本当の攻撃はあのピンク色の線を描きながら速度を上げていっているナイフだ。
そのナイフは正面の彼女の上を通ってナイフに当たり、軌道を変えて斜め下の彼女の後ろに行って避けられたナイフにぶつかってまるで三角形を描くかのようにして背中へ向かう。
「ッ!?」
目にも止まらない程に速く加速したそのナイフは、目の前のナイフに気を取られていた彼女の左腕に突き刺さる。
一瞬彼女は動きが止まり、すぐにまた出す。
ただ一本のナイフを除いて、ナイフを全て避けきった。
「…よく、計算しきれたものね」
彼女はそう私に言ってから突き刺さった左腕のナイフを抜き取って床に落とす。
その左腕からは血が滲み出てきているのを確認した後に、手を握ったり開いたりしていた。
「それで、まだ続けるのかしら?」
「んー?止めたいって言ったら止めてくれるのかしら??」
「まさか。貴女は殺して追い出します」
ナイフを両手にそれぞれ一本出し、扇子を片手で広げるようにしてナイフを5本にする。
両手を下げるとナイフとナイフの刃が少し当たってジャラっと音が鳴る。
「殺さずに追い出してくれないかしらねぇ」
「…問答無用です」
下げていた両手を下から上に上げて十本のナイフをクロスさせて彼女目掛けて放つ。
「さってはて…」
彼女はそのナイフを横に避ける。
「そろそろ反撃と行きますか」
そう言い、表情が変わる。まるで鬼神かのような顔で、私を射抜くかのような眼で、私を強く見てくる。
一瞬、その表情を見て唾を飲み込み、産まれてきてきてから今にあたるまでに二度目の恐怖をする。
いや、これは恐怖じゃない。恐怖なんかじゃない!
二度目の恐怖なんていらない。そんなのはあの時闘ったお嬢様だけで良い!
自分で言い聞かせ、両手にナイフを更に計十本出して彼女に投げる。そのナイフは、自分の恐怖を殺すかのように鋭く、速く打ち消したいが為に速かった。
それを彼女はまた避ける。
しかし、ただ避けるのではなかった。消えたのだ、目の前から。
「何処に!」
私はまず後ろを向き、次に右や左と見たが、何処にも居なかった。諦め少しで視界を前に戻す。
「!?」
見た瞬間、私は絶句する。何故なら、彼女が右手に拳を作って振りかぶって居たからだ。
咄嗟の事に、私は自分の顔の前で右腕を前に左腕を後ろにさせてクロスさせる。
すると次の瞬間、右腕に今までにない程の痛さを実感させられる。骨から何かが折れる音がし、吹き飛ばされる。
背中から壁に強く叩き付けられ、口から血の塊が出る。その血は床に落ち、私はその血が落ちた床に倒れる。
「ぐ、つうっ…!」
痛みが背中から来るなか、その痛みを噛み砕くかのように歯を食い縛りながら起き上がろうとする。
右腕を使って体を起こそうとすると、堪えられない激痛がその右腕から走り、また体が倒れる。
右腕はもう完全に役に立たない。いっそのこと、切り捨てたいくらいであった。
そんな考えをしながら、それでも尚、私は立ち上がる為に、今度は左腕だけを使う。右腕からの痛みは無いが、代わりに背中から感じられる痛み。
体を何とか起き上がらせ、右足を使って体を持ち上げるかのようにし、両足で支えながら立つ。
息が荒れ、肩から息をする。一回一回、息を吸ったり吐いたりする度に体が痛む。
それでも、それでも私は立ち続ける。
戦いで二度も負けたくはない。
だから立ち上がる。誰がなんと言おうとも……立ち続ける。
「…もうすでに限界のはずよ?死にたいの?貴女」
「はぁ…はぁ……」
前に居る彼女の声が聞こえる。顔を見ようとするが、見えなかった。視界がボヤけている。
目にゴミでも入ったのだろうと思い、左手で目を少し擦って見るが、変わりはし無かった。
これはもう無駄だと思い、諦めて左手にナイフを一本出して握る。
「もう一度言うわよ?死にたいの?」
「貴女には、関係ない!」
背中の痛みを感じながら彼女に走り込み、彼女の顔に目掛けてナイフを突く。
しかしそれは容易に顔を横にさせてギリギリに避けられ、左頬に少しかすっただけだった。
そして彼女は血が滲んでいる左手で私の左手首を素早く掴んできて右手で肩を掴んで後ろに向けさせられ、掴まれた左手を後ろで上に上げさせられる。
「つううぅっ!!?」
腕がおかしな方へ上げられ、折れそうな程に曲げられる。左手の握る力が段々と抜けていき、手からナイフが落ちる。
どうにか切り抜けようとも、出来なかった。右腕さえ使えればナイフが持てるのに、全然動かないにも人惜しいくらいになっていた。
そこで彼女は私を前に倒してきて体は床に縫い付けられたかのようにされ、背中から膝で押さえてきた。
完全に動けない、何も出来ない状況である。
私は悟った。
あぁ、負けたんだ。
っと。
しかし、そんな事を許さない心があった。
こんなのではお嬢様は護れない。
コイツに勝たなければ、私は役目を果たせない。
お嬢様の所へは行かせない、絶対に…!
意思を強く持ち、右腕を動かす。
痛さなんて関係なく、ナイフを出して握りしめる。
だが…ナイフを出して握りしめた所で、私は何も出来ないで居た。
攻撃すらも出来ない状態で、ただ右手でナイフを一本握りしめていた。
無性に悔しかった。悔しくて悔しくてしかたがなかった。その悔しさを握り締めて消すかのように強く握る。
「…貴女もよく頑張った方よ」
そこで、彼女は話し出した。
「悔しいんでしょ?私に負けて。嫌なんでしょ?負けるのが」
「…………」
彼女の言葉を、私はただ聞いていた。
正しかったのだ。全てあっているのだ。
それを彼女が分かっていた事に、少し驚く。
「負けて悔しがるのは当たり前。けど負けても、後で悔しがるのは無くなるわよ」
「ッ!…貴女に、貴女何が分かるって言うの!?私はメイド、お嬢様の為になら何でも出来る!例えこの身が消えようと、それでもお嬢様を守るのが務めよ!!」
知った口のように言われ、私はただ思った事を全て叫んだ。
それはホールに響き、やがて静まり返る。
「……そうね」
彼女はポツリと言い、私を掴んでいた手を離して立ち上がる。
私はそれを見計らい時を止めて起き上がり、すぐに彼女から離れて大きな扉を背にホール中央に立って彼女の背中を見ながら時を戻す。
「…でもね、メイドが死んだら。そのお嬢様はどう思うのかしらね?」
「決まっているじゃない。私はただの捨て駒、あぁ死んだかと言って終わるに決まって――」
「それはあり得ないわね」
言葉の途中で割り込んで来て、私の方へ振り返る。
「あり得ない…?じゃあ他に何があるのかしら」
捨て駒なんかに、何を思う。
メイドなんて他にたくさん居る。だから私が居なくなってもお嬢様は何とも思わないであろう。
なのに彼女はあり得ないと言う。他に何があると言うのか。
「悲しむんじゃ、ないかしらね?」
「……あり得ないわ」
お嬢様がメイド一人死んだくらいで悲しむようなお方ではない。
だから否定する。あり得ない、と。
「いいえ、そのお嬢様……レミリアならきっとそうなるわ」
「!?何故貴女がお嬢様のお名前を…!」
「むかーしむかしに、ちょっと会った事があるからよ」
「…私はそんな話、聞いた事も…な、い……?」
途中、言葉がいき詰まり、ある話を思い出す。
――昔に、私とフランを助けてくれたある天狗が居るのよ。その天狗は、私達なんかよりもずっと綺麗で、強くて、凄く長生きな天狗よ。今頃何処で何をしているのかしらね…
「……………」
私は彼女をまじまじと見る。
綺麗な肌と顔立ちに、天狗。
いや、他の天狗かも知れない。彼女はその天狗ではない。
そう思い込み、左手にナイフを出して人差し指と中指、親指でカードのように掴む。
「まだ、戦意はあるのね」
彼女はそれを見て呆れたかのような顔になる。その顔が、私には不愉快なモノであった。
その顔を無くさせるように、持っていたナイフを素早く彼女の顔に投げ付ける。
しかしそのナイフは、止められた。掴んだのだ、素手で…
「次は、特別に私が手品をお見せするわ」
そう言って、彼女は持っているナイフで少し遊び、次にそれを私に向けてくる。
一体何をする気であろうと考えていると、すぐに光景に変化が現れる。
床に落ちているのと刺さっている。あるいは壁に刺さっているありとあらゆる全てのナイフが動きだし、刺さっているナイフは抜かれ、方向を向ける。
それを見た時には、私の回りはナイフで囲まれていた。
「なっ!?」
そのナイフは全て私に刃を向けていた。
「貴女が投げた計147本のナイフ、全部お返しするね」
そして、彼女が持っていたナイフを投げると同時に、全てのナイフが私を襲ってくる。
そこで私は、時を止めた。
…しかし、動きはしなかった。
逃げられない程にナイフがあったからだ。
足が動かず、ただただ呆然としていた。絶望しているかのような感じで居た。
このまま時を戻せば、確実私は死ぬ。
だからって、抜け道が無い。後ろを見ても、扉の近くにまでナイフが私を狙っていた。
……もう、抗えない事なのであろうか。
心の中でその言葉が過った。
…このままずっと居ても仕方がない……
だから私は、時を進ませる。
何もかも、諦めて目を瞑る。
もうじき激しい痛みが身体中から出るであろう。
そう思っていた。
「……………」
…………?
だが、痛みは愚か、音すら聞こえなかった。もうナイフは当たっていてもおかしくはないのに、一体何がどうなっているのかも分からず、瞼を少しずつ開けてみる。
すると、ナイフは一本残らず消えていた。
床にもなく、壁にもない。
消えていた。
「ふふっ、タネも仕掛けも――」
そこで、前に居る彼女は楽しんだような笑みを見せながら喋る。
「御座いません」
それだけを言い、彼女は奥へと進もうと私に背を向けて歩き出した。カツカツとブーツの音を立てながら…
私はそれを、無言で見ていた。
ただ呆気に取られ、何も言えず、動けず、表情が取れずに立ち尽くしていた。
しかし彼女は、途中で止まり、振り返る。
「怪我とか全部治しておくけど、今度はスペルカードルール、ちゃんと忘れないようにしておきなさいよ」
微笑みを出して、私に告げた。
「…………」
そうして静かになったホールに取り残されたのは、間抜けのように立っていた私だけとなった……
~茜 視点~
紅魔館 大図書館
「ゲッホケホッ!」
「……………」
「大丈夫ですかぁパチュリー様?」
今、私は大図書館に居て目の前にはパチュリーが喘息で咳を出していて隣の小悪魔が面倒を見ていた。
因みに私は呆れたような冷たい目線になっていると思う。
遡る事10分前
紅魔館 大廊下
あああぁぁーっ!
痛かったあああぁぁぁーっ!!
マジ糞痛かったか。たった一本避けられなかったピンク色のナイフ…あれヤバかった……中々に痛い。腕が貫かれたような痛みだ。
まあ傷跡とかは治せるが、痛みだけは取れないモノだ。
さてはて。まあそんな事はおいておき、この廊下も前から変わらずで長い。
私はそう思いながらも飛ぶ。
もうめんどくなったのだ。歩くのが。
…んみゅ、あそこに居るのは……
「…あれ、貴女は誰ですか?」
っと、背後に居た私に気付いたのか、振り向いて頭に?が出てきているような表情をした赤髪の彼女。
彼女は小悪魔だ。
小悪魔…赤髪のロングで頭部左右に小さな悪魔の翼があり、背中にはまあまあ大きな悪魔の翼がある。
服は黒メインのワンピースだ。
その彼女が、両手で本を数冊持っていた。
「侵入者ってところかしら」
「あら、そうなんですか、頑張りますねー」
「驚いたり攻撃とかしてこないのね」
「だって悪魔ですから」
「ですよねー…」
じゃない!
悪魔が敵を見付けて攻撃してこないのは…うーん……
侵入者=悪い事=悪魔
だから?
わ、わからない…
「それで、レミリア様にお会いに?」
「あー、そうなるのだけど…まずパチュリーに会いたいかなぁ…」
「パチュリー様ですか、でしたら付いてきて下さい、案内しますよー」
「…流石、悪魔ね……」
侵入者を案内するとか本当にどうかしていると思う。
そこで彼女が進んで行くので、私は付いていく。
「…ねえ、貴女は名前何て言うの?」
「私ですか?私は小悪魔と呼ばれています」
「へー…私は紅夜 茜、まあ宜しくね」
「宜しくされましたよ…さ、こちらの部屋がパチュリー様の部屋です」
ガチャ
紅魔館 大図書館
薄暗い中、広い図書館に入る。
ほえー…でっかい本棚が沢山ズラリと綺麗に並べられていて本がパンパンにある。
多すぎる……
なんだこれ、巨人並みに大きいぞ本棚。
そして奥まで続いていて先が見えない。
「たぶん奥でぶっ倒れておりますよ」
「あー…そうなんだ」
そして、奥まで行ってパチュリーを見付けると、座って机にぶっ倒れて咳を出している哀れな有り様な訳である。
「…大丈夫なの?」
「ケホッ!…貴女、誰よ……ケホケホ!」
「紅夜 茜よ、貴女は?」
「…パチュリー・ノーレッジ……」
パチュリー・ノーレッジ…紫のロングで帽子を被り、その帽子の左には月のバッチが付けられており、パジャマのような白のような紫色の服装である 。
魔法使いで、吸血の住む館で住んでいる事から悪魔、魔法使いと悪魔を組み合わせれば魔女と言える人物だ。
能力は「魔法(主に属性)を使う程度の能力」で、生命と目覚めの「木」、変化の動きの「火」、基礎と不動の「土」、実りと豊かさの「金」、静寂と浄化の「水」、能動と攻撃の「日」、受動と防御の「月」の七属性だ。
しかし、とても引き籠りがちなので体が弱い。
「そんなのじゃ、博麗の巫女にも勝てないんじゃないの?」
「…貴女には、関係ないわ」
「そう…まあ頑張りなさい、勘だけど、今日巫女が来るわよ」
そう、まあ勘だが、今日博麗の巫女である霊夢が来そうなのだ。
「本当に来たら、無理矢理でも立ち向かうまでよ…ケホッ!」
「…まあ無理しないでね、それじゃ、私はそろそろおいとまさせて貰うわ」
「…何処に、行くの」
「レミリアの所よ」
「レミィの所には、行かせないわ…!」
パチュリーがそのまま言葉の通り体を無理矢理起き上がらせて、私を強く睨む。
「…大丈夫よ、私が異変を解決するんじゃない、それは博麗の巫女の仕事であって、私はレミリアに会いたいの…後、フランにも……ね」
「!…貴女、まさか」
「? 何??」
そこでパチュリーは驚いたような顔をさせた。
私はそれが気になり、聞いてみる。
「…レミィと話をしていたとき、たまにだけど、ある人の話をしていたわ。紅夜 茜…何で思い出さなかったのかしら」
そう言った後、パチュリーは椅子に座った。
レミリアってば、そこまで私の事を思わなくても良いのに…
まあそこまで会いたかったっと言うことでもあると思うが…
「んー、まあ取り敢えず、納得したなら行ってくるわ。またね」
「……また」
私は手を振った後、後ろに振り返って飛んで出口へと向かう。
さ、次はレミリアね…
少女移動中…
紅魔館 屋上
私は、紅魔館の階段を上がりに上がって屋上の屋根がないバルコニーのガラス扉を開ける。
ガチャ
奥の白の丸いテーブルに、椅子に座っている背後のレミリアが見える。
「あらあら、博麗の巫女と言うのは、随分と来るのが速いのね」
声は今までに聞いた事もないような重いような、カリスマが溢れる声であった。
だが体は幼女故に、威圧感がない。
「……………」
「無言?最近の巫女と言うのは、無口な者が多いのかしら?」
…うん、ごめん。私博麗の巫女でもないただの天狗なんですが……
レミリアのカリスマ溢れる声は、外の風で流されるようにこちらまで聞こえる。
だが体は幼女だ。
「まあ良いわ。今宵は素敵な血のように染められた満月…さあ、楽しみましょ…ぅ……」
レミリアが立ち上がり、後ろに振り返ると、徐々に言葉が小さくなっていった。
まあ、ね?
そりゃ勘違いしてたからそうなるよね。
決して私は悪くない。
「…何で……貴女、が………」
「あれ、居たらいけない?じゃあ帰るわ」
幽霊を見るかのように言うレミリアに私は少しショックを受けて振り返って帰ろうとする。
「ま、待って茜!」
後ろに行こうとすると、レミリアが私を呼び止め、私は体をレミリアの方へと向き直す。
「今まで、何処に居たのよ!」
「んー…幻想郷に居たわよ?」
「じゃあ何で帰って来なかったのよ!!」
「何で、かー…」
何で…まあ正直に言うと紅霧異変が来るまで会わないようにしてました。
だなんて先読みした事言ったら疑われるから、此処は…
「そうねー、レミリアが驚いて泣くところを見たかったから?」
案外本当の事だったりもする。
「酷い…」
シュンっと、レミリアの翼が力なく下に落ち、顔は少し涙目であった。
や、やばい可愛い!!
……はっ
「まあ冗談よ、たぶん」
「たぶんだなんて、信用出来ないわ…」
気の所詮である。
「気にしない気にしない…それでレミリア、この紅い霧は、レミリアが出しているんだよね」
「…えぇ、そうよ」
「ふーん…」
まあ、知ってたけどね。
それにしても、スペルカードルールが出来て一週間くらいなのに、速くも異変を出させるだなんて流石だよね。
何も怖くは無かったのであろうか。
「止めに、来たの?」
「あぁ、それは博麗の巫女の仕事だし、私じゃないわ」
「そう…会いに来てくれた、だけ?」
「それもあるかなー……ねえレミリア」
「何かしら?」
ある事を思い付き、私は真剣な顔をする。
「フランは、何処?」
するとレミリアは、少し驚いてから、表情を曇らせて私から目を離す。
「……フランなら、地下室よ」
「どうして?」
「だって、あの子、まだ自分の能力を制御仕切れていないわ…だから」
「だから、またフランを地下室に?」
「……えぇ」
また、フランを地下室に入れたのか…
あぁ、めんどくさいなぁ……
「因みに、何年間入れていたのかしら?」
「今日で、495年…よ……」
「…フランの能力はまだ制御出来ていないと?」
「まだ、出来ていないわ…」
「…そう……レミ――」
言葉の途中で、門番の方角から何かが壊れた大きな音がした。
…霊夢が来たかな?
「…やっぱし良いわ、私はフランの所へ行ってくるから、博麗の巫女との戦いを頑張るのね」
「あ、茜…」
私は後ろに振り返り、屋上のバルコニーを後にした。
「さて、屋上から地下室までちょっと時間掛かりそうねぇ…地下の扉までは飛んで行こう」
そうして翼を広げて、階段へと向かう。
~レミリア視点~
久々に会った茜が、フランの話をすると少し無表情と言った感じで振り返る。
私は危険だと呼び止めようとしたが、遅かった…
「…………」
「お嬢、様…」
「!? 咲夜!」
考え事をしていると、急に咲夜が隣に膝まつけていた。
メイド服がボロボロで血が少し出ている。
「侵入者を二人、逃しました…」
「二人…?」
博麗の巫女と、誰かしら…
「はい、博麗の巫女と…天狗を、逃しました」
「天狗…あぁ、そう言えば咲夜には茜の事を話した事がなかったわね」
「茜…?」
「えぇ、逃した一人の天狗は、この紅魔館の住人の一人よ」
「…え?」
茜が此処、紅魔館の住人だと言うと咲夜が驚いた。
何故そこまで驚くのかが分からないが、今はその話をしている時間はない。
「それより、巫女の方は今何処に?」
「博麗の巫女でしたら、もうじき来ます」
「そう、分かったわ。咲夜、貴女は離れておきなさい」
「畏まりました」
そう言って、咲夜が消える。
…茜の事が気掛かりだけど、こっちの相手をしないと……
~フラン視点~
…………上で、何かを感じる。
少しボロいベッドに座り、顔を上にあげて呆然とする。
薄暗い石で出来た部屋、上を見ても下を見ても、回りを見ても石で出来たコンクリート…
前までは死んだメイド達が居たが、それはもう居ない。
「…何で、私…こんな部屋に居るんだっけ……」
消えそうな声で、部屋には響かない。
何で、居るんだっけ…
"アイツ"が、閉じ込めて……
そう言えば、御姉様を"アイツ"と言い始めたのは、その閉じ込められた数年くらいだった。
「上で、アイツは楽しんでいるのかな……」
楽しんでいる…?私を、置いて……
……もう、無理………許せない
アイツが…許せない……!
私は立ち上がり、届きもしない天井に手を伸ばす。
「キュッとしてドカァアン!!」
能力を使い、術と天井をぶち壊すと、大きな爆音と共に瓦礫が多く落ちてくるが、それらも能力で壊しながら上へ、上へと飛んでいく…
…そして。
「…やっと、空に出れた……紅い…紅い月、綺麗」
最後の天井を壊すと、そこには紅い霧が周りにあり、空には丸い、紅い月があった。
それはまるで血で染められたように綺麗な月。体がゾクゾクとする。
「フランッ!?」
紅い月を見ていると、後ろの方から聞き慣れた声が聞こえた。
「……御姉様…」
後ろを見ると、アイツが居た。
見ると、紅白の服を着た黒髪で後ろ髪に少し大きな赤いリボンを付けており、右手には細い木の棒に先端には白い紙を付けているのを持って、紅白の周りをくるくると回っている赤と白のボールがあった。
あれが何だかわからないけど、そんな事はどうでもいい。
「御姉様、ずるいよ…御姉様だけ楽しそうな事してて」
アイツの手にはグングニルを持っていた。
それはつまり、戦っていた…
私も、私も戦いたい…!
私は両手を前に出し、丸い頭くらいの大きさの炎を出してそれを武器に変える。
魔剣「レーヴァテイン」
蛇の形のような黒い棒、両端にはスペードのような形をしている。愛用の私の魔賢だ。
「ッ! フラン!止めなさい!!」
「どうして?御姉様だけ良くて、私は駄目なの?…ねえ、何で?」
「フランは能力の制御が出来ていないわ!そんな状態で…」
「制御?それなら出来ているよ?」
「え?」
左手にレーヴァテインを持ち替え、右手を広げて前に出す。
そして、紅白の右腕を標的にする。
「!? フラン!!」
「キュッとして、ドカァアン!!」
グシャァ!!
右手をグーにすると、紅白の右腕が無くなり、無くなった所から血がたくさん出る。
「グッ!?」
「アハハハハハハッ!!どう?ちゃんと制御出来ているでしょ?御姉様!」
「フラン…!」
紅白が体勢を崩していき、落ちていく…が、途中で白と黒の服で箒に乗った金髪の人間が紅白を空中で掴み、紅魔館の屋上へと行った。
屋上には、紫の長髪の人と白髪のメイドが居た。
だがそんな事を気にもせず、私はアイツを見る。
「今度は御姉様の番だよ!」
レーヴァテインを前に出して、長い炎の剣へと作り上げる。
メラメラと燃えている感じの刀身だ。
「フラン!貴女とは、戦いたくないわ!!」
「…だったら、御姉様で遊ぶ!」
私はアイツに突撃し、レーヴァテインを上からおもいっきり振る…が、当たらなかった。
「!? 咲夜!!」
気付くと、アイツとメイド…咲夜と言う者が居た。
「お嬢様は、此処に居て下さい!」
アイツにそう言うと、咲夜が一瞬で消えて、私の周りには複数のナイフが飛んできた。
急な事に、私はレーヴァテインを右へ左へと振るうが、ナイフは身体中に掠れて行く。
「ぐぅ!! めんどくさいなー!」
レーヴァテインで全てを防げる訳もなく、徐々にストレスが溜まる。
「そこだっ!」
「うっ!!」
時折瞬間移動する咲夜のタイミングを計らってレーヴァテインを振ると、体に少し掠れた。
そうして右手を前に出し、咲夜を標的にする。
「キュッとして――」
「やめなさい!フラン!!」
能力を使おうとすると、ビュン!っと風を貫きなが向から赤い槍が私の前を右から通り過ぎる。
その右を見ると、アイツが居た。
「御姉様が庇うだなんて、そんなにあの咲夜と言う人が大事なの?私より、大事なの?」
「ちが、フラン!私は…」
「もう良いよ、御姉様なんて…もう……要らない!!」
私はレーヴァテインをアイツの方へと右から振るう。
アイツは戸惑っていて、無防備であった。
今度こそは…!
だがしかし、そこでまたしても邪魔は入る。今度は左から銃弾のようなモノが飛んできて私のレーヴァテインを刀身から弾き飛ばした。
「…ッ!また私の邪魔をするのは誰!?」
左は確か紅白やらと居る屋上だ。その中で、誰かが私の邪魔をする奴…
見ると、一人多かった。
全身黒の服だが、両翼には白い布が付けられて、体を横に、顔を前にして両手で長い銃を持っていた。
…見覚えが、ある…
…あれは…
「………茜、お姉ちゃん…?」
顔立ちが全然変わっていない、茜お姉ちゃんが居た。
~茜視点~
「茜、お姉ちゃん…?」
離れている所で、フランの声が聞こえる。
普通ならば聞こえないであろうあの距離。
だが私は耳が良いので聞こえる。それはもう普通に聞こえる。
私は両手で持って構えていた火縄銃を手離して空間に落とす。
「…アンタ、誰だ?」
「ん?」
下で、黒と白の金髪少女が私を見て問い掛けてくる。
見ると、眠っているであろう霊夢の両肩をを支えており、隣ではパチュリーが霊夢の治療をしていた。
「まず貴女は?」
「え、あ、あぁ…私は普通の魔法使い 霧雨魔理沙だぜ」
「そう、私は只の天狗 紅夜茜よ」
「……只の天狗じゃないでしょ…」
「霊夢!?」
私が名前を名乗ると、霊夢が目を開けてそう言った。
「おい霊夢、大丈夫なのか?」
「大丈夫じゃないわよ、急に右腕を消し飛ばされて…」
「あぁ、まあそうだよな…」
「…私が只の天狗じゃないって、どう言う意味?」
魔理沙が霊夢を心配して、私は霊夢が言った只の天狗じゃないと言う事に少し気にがかった。
「…貴女、昔は1万年くらいは天狗の一番お偉いさんをしてたそうじゃないの」
「「え!?」」
おぉぅ、知られてた。
私の正体を知ると、魔理沙とパチュリーが驚いた。
おかしいなー、私、霊夢にこんな事話した覚えがないのだけれど…まあ十中八九、あの人かなぁ…
「…誰に聞いたのかしら?」
それでも私は、いちお聞いてみた。
「たぶん貴女も予想は出来ていると思うけど、私のお母さんよ」
あー、やっぱり刹那なんだ…
刹那とはかなり仲も良くなり、お互いの前世の事や、他色々も雑談した。だからまあそれほどには仲は良かった。
…今は何処に居るかは分からないけどね。
「刹那ったら、晒すのが速いのなんの…あ、もう私は行くわ」
「行くって…あの吸血鬼の所に?」
「そうよー、まあ大丈夫…たぶん」
霊夢が私を少し心配して言ってくる。
「じゃあね」
私は最後にそう言って、コンクリートの手摺を飛び越えてレミリアの所へと向い、フランを見る。
「フラン…久々ね」
「…茜、お姉ちゃん……何で、何で止めたの…!」
「止めるわよ、姉妹喧嘩だなんて見てられないわ」
「茜お姉ちゃんも、私の邪魔をするの?」
「邪魔?もしかしてレミリアを殺す邪魔??」
「それ以外に…何があるの!?」
その言葉を最後に、フランはレーヴァテインを両手で持ち、構える。
うん、これはかなりオーバーヒートしてるわ。
「もぅ…もう、御姉様も、茜お姉ちゃんも……嫌ぃ…大っ嫌い!!」
「…メイドさん、レミリアを屋上に頼むわ」
「畏まりました」
「ちょ、ちょっと茜…!」
レミリアが何かを言おうとしたが、途中で咲夜と共に消える。
…って言うか何で咲夜は侵入者の私に敬語を??
ま、まあいっか…とりあえず、今はこっちに集中ね。
さあ、どう行こうかしら…ね。