ちょっぴりえっちな美少女アヴュールとまじめなモンジャラのレポート   作:木村直輝

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1日目_お昼_アサギシティ

――ここは アサギ シティ

  とおく はなれた いこくに

  もっとも ちかい みなとまち――

 

「う~ん‥‥‥!」

 ポケモンセンターから出てきた一人の若い女性が、日差しを浴びてひかえめなのびをする。

 二十歳前後だろうか、とてもかわいらしい顔立ちをしている。

 ダークブラウンのつややかな髪を低い位置で二つに結んだ彼女の名はアヴュール。

 ピタッとしたタートルネックの赤いシャツに白いショート丈のジャケットを羽織り、黄色と黒のショートパンツを合わせている。

「‥‥‥」

 そんなアヴュールのうしろには、一匹のポケモンがいた。

「モンジャラ、お腹空いたね」

「もじゃー」

 “ツルじょうポケモン”モンジャラ。

 アヴュールとモンジャラはこのジョウト地方に、つい先ほど船でやってきたばかりだった。

 遠い地方からやってきたアヴュールたちは、まずポケモンセンターを訪れ、荷物を預けるなどして観光をするための支度を整えていたのである。

「じゃあ、予定通り、まずはご飯食べに行こう!」

「もじゃー」

 アヴュールはモンジャラの返事を聞くと、首から下げていた小型の電子端末をつける。アヴュールの住む地方で普及している、便利な携帯用の電子端末だ。

「お店は‥‥‥えーっと‥‥‥‥‥‥あっちー‥‥‥かな」

「もじゃっ」

 歩き出すアヴュールについて、モンジャラも歩き出す。

「ジョウト最初のご飯はねぇ~‥‥‥、何だと思う?」

「もじゃぁ?」

「なんと、洋食です!」

「もじゃっ」

「港町だから海の幸かなぁ~って思ったんだけど、港町と言えばもう一つ! 洋食が熱いんです!」

「もじゃー」

「ほら、港町って色んな国の文化が入ってくるでしょ? だから、洋食屋さんもいっぱいあるみたいなの」

「もじゃぁ‥‥‥」

「それに、アサギは牛肉が有名じゃない? ということで‥‥‥」

「‥‥‥」

「まずは、ビーフシチューを食べに行きたいと思います!」

「もじゃー!」

「って言っても、アサギ牛は流石に高いから、普通の牛肉なんだけどね‥‥‥」

「もじゃぁ~」

 アヴュールとモンジャラは楽しそうに話しながら、港町を歩いていく。

 遠くには先ほどまでアヴュールたちが乗っていた大きな客船が停泊しており、他にも何隻かの大型船舶が見える。そして、東の方にはひときわ目立つ大きな塔が立っていた。

「ねぇ、モンジャラ。あれ見て!」

「もじゃっ?」

「“アサギのとうだい”だよ? すごいねー。おっきー!」

「もじゃー‥‥‥」

 アサギシティの南東には、アサギのランドマークとも言える高い灯台が立っている。別名、“かがやきのとう”。

「アサギシティではね、昔からポケモンが夜の海を照らしてたんだって。それを(まつ)って出来たのがあの灯台らしいよ?」

「もじゃー」

「今でもあの塔の上にはポケモンがいて、海を照らしてるんだって。すごいね!」

「もじゃー!」

「ご飯食べ終わったら、一緒に写真撮ろう!」

「もじゃっ!」

 アヴュールたちは灯台から視線を戻し、海から離れて街の奥へと入っていく。

「この辺は意外と都会、って感じだね?」

「もじゃー」

「えーっと、お店は‥‥‥あっちの方かな」

「‥‥‥」

「あっ、ねぇ。ビーフシチューの後は、ちょっと海を見ながら休憩しない?」

「もじゃー」

「洋食の後は、ケーキがいいかなぁって。えっと、待ってね‥‥‥。ほら、これ!」

 周囲を確認してから、道の端でかがんで電子端末の画面をモンジャラに見せるアヴュール。手の中の画面には、断面が整えられていないふわふわのスポンジに、赤いイチゴと白いパウダーシュガーが乗ったかわいらしいケーキが映っている。

「これ! シンプルだけど、美味しそうでしょ」

「もじゃー!」

「このケーキを買って、“アサギのとうだい”の写真を撮って、そのあと海を見ながらちょっとだけ休憩しよっか?」

「もじゃー」

「その前に、まずはお昼ご飯だね」

 楽しそうにお喋りしながらしばらく街中(まちなか)を歩いたアヴュールたちは、ついに目的の洋食屋さんに辿り着く。

「ここだ! 意外と小さいお店だね。カフェみたい」

「もじゃー」

「ちょうど席、空きそうだよ。先、入っちゃおっか」

「もじゃっ」

 会計を終えた先客と入れ違うようにお店に入ったアヴュールたちは、間もなくカウンター席に通される。少し薄暗い店内が、落ち着いた雰囲気を(かも)し出している。

 ランチメニューもやっていたが、アヴュールは最初から決めていたお店の定番メニューである“ビーフシチュー”を注文した。

「このお店の先代さんは、船乗りでコックさんだったんだって」

「もじゃー‥‥‥」

「その先代さんのソースを受け継いだ、歴史のあるドゥミグラスソースがこのお店の売りらしいの」

「もじゃー」

「楽しみだねっ」

「もじゃー!」

 期待に胸を膨らませながら楽しく談笑するアヴュールたちの前では、店主が慣れた手つきで料理を用意する。それを手伝うのは奥さんたちだろうか、それとも熟練のスタッフだろうか。間もなくアヴュールとモンジャラの前に、サラダとライス、そして平たい皿に盛られたビーフシチューが運ばれてくる。

「わ~‥‥‥、美味しそー!」

 白い湯気を上げるビーフシチューは、スープ皿ではなく平たいお皿に盛られている。

 ステーキのように真ん中に盛られた牛ほほ肉の上に、たっぷりのブラウンソースのようなシチューがかかっており、その周りをマッシュポテトで作った土手が囲んでいる。

「いただきます!」

「もじゃー!」

 手早く写真撮影を済ませると、さっそく、まずは普通にビーフを一口ほおばるアヴュール。

「ん‥‥‥」

 ほろ苦い風味が口に広がる。塩気の強い濃厚なドゥミグラスシチューが、ナイフで切るのも難しいほど、ほろほろとした肉を包みこんでいる大人な味だ。

 次は、海の波のようにうねったマッシュポテトの土手を一口食べてみる。

「んー‥‥‥」

 ほのかな塩気となめらかな口触りのポテトがクリーミーで、口にした時はねじれていたポテトが口の中でほどけていく。

「‥‥‥モンジャラ。ナイフ、ちゃんと使えてる?」

「もじゃっ!」

 ツルで器用にナイフとフォークを繰るモンジャラを、アヴュールは笑顔で見つめる。

「じゃあ、塗ってみようか?」

「もじゃー!」

 アヴュールたちは、今度はナイフにポテトを取ると、それを一口大に切った牛肉にバターのように塗ってから口に運んだ。これがこの店のおすすめの食べ方なんだそうだ。

「‥‥‥んー! 美味しい‥‥‥」

 少し塩気の強いシチューとなめらかな口触りのクリーミーなポテトが混ざり合うことで、口の中で絶妙な味のバランスが完成する。ほろほろとした肉の旨味を(のが)さないように噛みしめ噛みしめ、アヴュールは飲み込む。

「ふぅ‥‥‥」

 アヴュールは隣を見る。小さな体で懸命にナイフとフォークを使い、おんなじ料理を食べるモンジャラがいる。

「‥‥‥もじゃぁ?」

「ふふ。美味しいね」

「もじゃー!」

 うれしそうに返事をするモンジャラに、アヴュールは優しく微笑む。

 昼時のアサギシティで、一人と一匹は、海のようなしお気を感じながら穏やかな昼食を楽しんだ。

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